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第14話 勉強仲間ゲットだぜ

 翌朝、ローザスの計らいで時間までゆっくりと休ませてもらった桜の体調はすっかり良くなっていた。

「サクラちゃん、行ってらっしゃい。」

「うん、行ってきまーす!」


 ローザスに見送られ、いつにも増して綺麗に身支度を整えているレイクと向かうは美香の元。

 出て行った時は気付かなかったが、外から入ると流石は王城という佇まいだった。


「失礼致します。」

 聖女のいる塔へと向かい、ドアを開けると、以前見た時よりもずっと綺麗になった美香が待ち構えていた。奥には偉そうにウィルも座っている。


「桜ちゃん、久しぶり。変わりない?」

「…あ、ひ、久しぶり。美香さんはなんか、変わったね。」

「そう?最近は薬草でポーションを開発したりしててね、とっても楽しいの。」

「もうすぐ旅に出るんでしょ?」

「ええ。日本にいた時も海外旅行なんて数えるほどしかしたことなかったからとってもドキドキするけど、でも楽しみなの。桜ちゃんにもお土産買ってくるからね!」


 美香が桜を呼んだのは何か用があるわけではなく、ただ旅立ちの前に顔を見ておきたかっただけのようだった。


「あー、あのさ、悪いんだけど、これ、翻訳終わったから確認してもらってもいい?」

「もうこんなにいっぱいやったんだね!偉いね。」

 美香はニコニコと嬉しそうに聖女の日記と照らし合わせ、桜の紙を確認していく。



「うん!すごいすごい!間違ってなかったよ!英語苦手って言ってたのに、すごいね!」

「あー…ね。」


 本当は昨日の時点で何個かミスがあった。スペルがよく分からなかった箇所もあり、全てレイクに指摘されて直したのだ。


 美香が確認を終えると、神官の一人が水晶をかざし

「この者が書いた文字で間違いありません。」

と確認をした。

 聞けば、“別の世界からやってきた者が残した書物である”ことが彼らの中では重要なのだと言う。

 本来はやってくるのは聖女しかいないので、イコール聖女が書き残した書物になるわけだが、桜は例外として、神官たちも聖女ではないが、別の世界からやってきた桜の存在を書物に関してだけは同等の価値があるものだと認めることにしたのだとか。


(あぶなかったー。レイクとかに書いてもらわないで良かった。)



「ふんっ、少しは役立つところがあるようだな。」

 ウィルは偉そうに腰掛けたまま鼻で笑った。


「ウィリアム王子、この者は騎士寮内での仕事も問題なくこなしております。どうか城内に留まることをお許しください。」

「…まあいいだろう。」

「ありがとうございます。」

 レイクは生意気なウィルに対し深々と頭を下げていた。




 美香との挨拶を終え、寮に戻る道で桜はレイクに先ほどのやり取りがなんだったのか問いたが、レイクは答えをはぐらかした。


(こう言う時は…)


「ワンくん!!!いる!?」

「ちょ、勝手に部屋に入ってくるなよ!」

 桜は寮に戻るなりカイルを訪ね、経緯を説明した。



「あー…まあ残っていいって言うなら良かったじゃん。」

「そう言うことじゃないじゃん!出て行けって言われてんのも知らなかったし。お城からは出て行ったのに、ここからも出て行けってこと?」

「ここも一応城内だからな。城の門の中だろ?」

「あいつ王子なのに心狭すぎじゃない?ビンタしたことまだ怒ってんのかな?」

「はぁ。王子様にそんなこと言えるのもお前くらいだよ。」

「レイクに謝らせちゃって、悪いことしたなー。」

「レイクさんは優しい人だからな。」

 カイルの尻尾がパタパタと揺れていた。


「…なんかさ、ランランとワンくん、いつもレイクの意見に従うよね?レイクのが年上?ランランが一番年上に見えるけど。」

「年齢で言ったらラングレーさんが20歳で、レイクさんは18のはずだけど。でもレイクさんは俺らよりずっと高貴な方なんだよ。」

「こうき?」

「身分が上ってこと!それでも俺みたいな獣人にも差別しないで接してくれるし、レイクさんはさ、なんて言うか、格好良いんだよ。」

「ふーん。てか獣人だとなんでダメなん?ワンくんの耳とか尻尾、可愛いじゃん!」

 桜がカイルの頭を撫で回すと、カイルは恥ずかしそうにその手を振り払った。


「…俺達は魔法が使えないんだよ。俺なんか文字も読めないし、まだ体も小さいし。」

「マ?あたしも魔法も使えないし、文字読めないよ!ワンくん、あたしと一緒じゃん!

 えー、じゃあさ、一緒に勉強しようよ!一人でやるより一緒にやった方が楽しいし!」

「な、何で俺がお前と一緒に」

「ワンくんあたしの騎士なんでしょ?」

「うっ。」

「それに最初めっちゃ敬語使おうとしてたけど、超下手だったし。あたしも敬語苦手だから使わないけど、レイクみたいになりたいならさ、勉強した方が良くない?」


 カイルのピンとしていた耳が垂れ、しばらく考え込んだ末に

「自分が護衛の時間だけやる」

と渋々桜の提案を了承したのだった。



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