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第1話 聖女召喚って何なの!?

 立花タチバナ サクラ、18歳。今年で高校3年生になった彼女の朝は早い。5時に起きてシャワーを浴び、髪を乾かしながらデコ弁を作る。おかずの熱を冷ます間に髪を緩やかに巻き上げ、今日もバッチリとメイクを施す。


「よしっ、今日も私可愛い!」

 鏡の自分を見つめ、にっこり笑って、最終チェック。自分で自分を褒め称える。いつものルーティンだ。


「お母さん、お弁当置いておくからね。行ってきます!」

 

 ガチャリと扉を開けば、太陽の眩しい光で目が眩む。

 良いお天気に気持ちが上がったのも束の間、隣の扉が開いた。


「あ、桜ちゃん。おはよう。今日は良いお天気だね。」

 隣の住人、倉橋クラハシ 美香ミカだ。桜は美香が苦手だった。


「あー…美香さん、おはー。」

 今日は髪も決まって良い気分だったのにな。いい歳して髪も真っ黒でボサボサ、メイクもしてないし、服もマジダサい。私がこんな格好してたら即叩かれるわ。



 桜の気怠そうな表情など伺う様子もなく、美香はにこにこと話しかけてきた。

「桜ちゃん、もう高校3年生だっけ?随分大人っぽくなったね。」


 隣同士、桜が幼い頃から面倒を見てもらう関係性ではあったのだが、趣味嗜好の合わない二人は次第に離れていき、今ではお節介な美香の存在を桜は嫌っていた。


「美香さんは、なんて言うか、全然変わんないね。」

「そうかな?」


 エレベーターを待つ二人の間に沈黙が流れ、桜のイライラは募るばかりだった。

 (自分から話しかけてきたなら最後まで話題振ってよ!気まず!)


「…美香さんがこの時間に家出るの珍しくない?いつももっと早いよね?」

「そうなの!今開発してる薬がね、まだ試験段階ではあるし、実証実験もまだだから、全然まだまだなんだけど、ちょっとうまくいきそうでね!それでね」


 美香は薬剤師として大手医療メーカーで新薬の開発をしていた。興奮し出すと話が止まらなくなる癖も昔から変わっていない。桜はにこやかに笑いながら、「ウザ」と心の中で呟いた。


「私やっぱダイエット中だから階段で行こうかな。」

と逃げ出そうとした桜の腕を美香が引っ張った。

「丁度、エレベーター来たから一緒に行こう!」


 チンッと音を立てて開いた古いエレベーターに美香に引っ張られる形で乗り込むと、そこにはあるはずの床がなく、二人はそのまま遥か彼方へと落ちて行った。



「「え……きゃーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」


 今まで乗ったどんなジェットコースターよりも怖い、あると思ったものがなかった恐怖。

 桜も美香も大声で叫び続けたが、落ちても落ちても、地面につくことがなかった。



「やばい、マジでやばい!なにこれ!死んだ!やばい!」

「さ、桜ちゃん、落ち着いて!目を開けてみて!!」

 数分経ち、冷静さを取り戻した美香の声で桜が目を開けると、見たこともない、キラキラとした空間の中を落下していた。



「は?なにここ?え?天国?なにこれ?死んだ?」

「わ、分からないけど、感覚はあるようだから死んではいないと思うの。」

『その通り!死んでないよ!』

「「え?」」


 咄嗟に差し出されていた美香の手を握りしめ、辺りを見渡してもキラキラと光っているだけで誰もいない。


『君たちは僕の作った世界の住人に呼ばれたんだ。予定外のことが起きてしまっているから思ったより時空が歪んでしまっているけど。あ、でもほら、もうすぐ目的地が見えてきたね。』

「ちょっと!なんなのあんた!どっから喋ってんのよ!ヤバすぎ何だけど!」

「さ、桜ちゃん落ち着いて!」

「姿見せろぉぉおおおぁあああああああ!!」


 桜の怒鳴り声とともに、二人はポンっと見知らぬ場所に落とされた。さほど高い位置から落とされたわけではなかったが、硬い石の上に落とされれば二人とも無傷ではいられなかった。

「いったぁ〜。マジなんなのアイツ!」


「…おお!!!聖女様だ!!!!!やった!成功したぞー!!!!!!!!」

「は?」

 桜と美香を取り囲むように、全身白い衣装を身に纏った杖を持った男たちが騒ぎ始めた。中には泣いている者までいるようだった。


「な、なんなのよ、アンタ達。」

 流石の桜も大勢の大人に囲まれては萎縮してしまったが、そんな桜を守るように美香が震える手で抱きしめてきた。



 ワーワーと騒ぐ彼れを諌めたのは、一人の少年だった。

「静まれ!!!!!…おい、神官、あれを持って来い。」


 見るからに高そうな物を身に纏った少年は、そっと片足をつき、神官と呼ばれる男から受け取った球を差し出した。


「無礼をお許しください。私はアストリア王国の王子、ウィリアム・ロイヤル・アストリア。

 国を救っていただきたく、聖女召喚の儀を行いました。どうか、この球を触れてみてはいただけませんか?」


 美香がおずおずと差し出された球に手を触れると、ガラス玉のように見えた球が光り輝き出し、また歓声が上がった。


「おお!さっ、貴女もどうぞ。」


 球の光が消えた後、桜が触る。何も起こることはなく、少年の顔つきが変わった。


「…聖女は貴女だけのようですね。床に座っていてはお体に悪い。詳しい話は別室で行いましょう。私のことはどうぞウィルとお呼びください。」

「え、あの」

 桜のことは最早いないも同然のようにウィルは美香にだけ手を差し伸べ、美香をどこかへ連れて行こうとした。当然これには桜も黙っていはいない。


「ちょっと待ちなさいよ!!何なのこれ!何かのドッキリ?とにかく、もう何でもいいから、さっさと戻してよ!学校遅刻しちゃうじゃん!」


 ウィルは騒ぐ桜にため息をつき、

「うるさい女だな。戻す方法はない。

 だがお前は聖女ではないからな、どこに行っても構わないぞ。さっ、聖女様、行きましょう。」

と一言言うなり桜に背を向け、美香をエスコートするかのように退室しようとした。


「ちょっと!ちゃんと話を聞きなさいよ!!」

 ウィルの態度に怒りが頂点に達した桜は、神官が持っていた先ほどの球を掴み、ウィルへと投げつけた。


「な、なんてことを!!!!!」

 当然王子であるウィルの周りにいた剣を持つ男達が球は受け止め、ウィルが怪我をすることもなく、球も無事ではあったが、そういう問題ではない。



「王子である私に対する無礼!この者を牢に入れろ!!!」

「は!?えっ、マジで痛いんですけど!何なの!話してよ!バカ!エッチ!変態!触るなぁ!!!!!」

「桜ちゃん!」



 数名の男に取り押さえられ、桜はあっという間に牢へと閉じ込められてしまったのだった。

新しい小説を書き始めました。

サクサク読める楽しい小説にしたいと思っているので、

よければブックマークと評価をお願いいたします。

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