手を繋ごう! 君と僕はいつも一緒!
僕の好きな女の子は、この世の中にはもう居ない。
僕の好きだった女の子は、僕と彼女が13歳の時に白血病で
彼女が亡くなってしまった。
僕と彼女は、“純愛”だった。
僕は彼女の目も、ろくに見る事もできず手も繋げないでいた。
彼女が僕の横に並んだだけで、僕の心臓がバクバクしていた。
僕は照れ隠しで、彼女にちょっとだけ意地悪な事を言ったりもした。
今思えば? 13歳らしい男の子だったと思う。
好きな女の子をイジメるような事だ。
懐かしい想い出、愛おしい想い出、彼女との最後の想い出。
・・・僕は大人になっても、未だに彼女の事を忘れたことはない!
大人になった彼女を今も思い浮かべる。
僕は今でも、彼女が亡くなった日に彼女のお墓参りをする。
彼女の両親も、僕が来てくれる事を喜んでくれていた。
ただ、彼女のお母さんは僕に会うとこう言うんだ。
『アイオ君も、26歳になったのなら? もうあの子の事を忘れて
新しい“恋”を始めてもいいんじゃない?』
『・・・お母さんの言ってる事は、よく分かります! でも今でも
僕は彩加ちゃんの事が忘れられない! ごめんなさい、期待に応えれ
そうになくて。』
『・・・いいのよ、アイオ君がいつまでも彩加の事を想ってくれている
事は凄く嬉しいの! そうやって彩加がアイオ君の記憶の中で今でも
生き続けてくれてるかと思うとね。』
『ありがとうございます。』
『・・・でも、いつか彩加の事を忘れて好き女性を見つけてね!』
『・・・・・・』
『・・・わたし、アイオ君をまた困らせてしまったわね。』
『い、いえ、気にしないでください、お母さん!』
『“わたしはね、もう一人息子ができたみたいで嬉しいのよ。”』
『・・・お、お母さん、』
最後に、彩加ちゃんのお母さんが僕にそう言うとまた泣き出してしまった。
いつも僕が彩加ちゃんのお墓参りに彩加ちゃんのお母さんと会うと、、、?
同じような話になる。
僕に新しい恋人でもできたら嬉しいと言ってくれるのだ。
だけど僕は今でも彩加ちゃんの事だけが好きなんだ。
他の女性を好きになるなんて今の僕には考えられない!
・・・もし? 今でも彼女が生きていたら?
この考えが、今でも僕は拭えないでいる。
確かに、僕の目の前で彼女は亡くなった。
13歳のまま、僕の大好きな彩加ちゃんのまま亡くなってしまったところ
を僕は今でも忘れられない!
だけど? もし生きていたら、彼女は今どんな姿になってるのだろう。
夢のような事を、僕は考えるようになっていた。
僕はきっと、“過去の記憶の中で生きている”のかもしれない。
それでも僕は彩加ちゃんの事が大好きだ!
今でも変わらず、彩加ちゃんの事だけを考えている。
*
・・・そんな時、高校生の姿になった彩加ちゃんそっくりの
女の子と僕は街で出逢う。
僕は完全に、彼女に心を撃ち抜かれた!
ちょっと女っぽくなっている彩加ちゃんに出逢えた。
友達と仲良く話をしながら僕の横を通り過ぎて行った。
僕は追いかけて、彩加ちゃんそっくりの女の子に話しかける。
『彩加ちゃん?』
『・・・えぇ!? 人違いですけど。』
『ごめんね、よく似ていたから。』
『・・・い、いえ、』
彼女は少し頭をかしげて、また友達と話しながら歩いて行った。
僕は彼女の後をバレないように着けて行った。
彼女の名前や歳、何処の高校に通っていて、趣味や好きな事まで
調べつくそうと思った。
・・・そうすると? 彼女は親に黙ってバイトをしていた。
僕はそれが分かると、彼女と同じバイト先に連絡して面接をしてもらう。
正社員の仕事をしていたが、彼女とどうしても同じバイト先に入りたい!
会社にはバレないように、バイトをはじめる事にした。
バイト先で、皆の前で僕は店長に紹介される。
『今日から新しく入ってもらう、柳木アイオ君だ! 皆よろしく頼む!
教えてもらうのは? “田井川うり! 柳木に教えてやってくれ!”』
『・・・あぁ、はい!』
『よ、よろしくお願いします!』
僕は運がいいことに、お目当ての彼女に仕事を教えてもらう事になった。
『田井川です! 柳木さん、よろしくお願いします!』
『こちらこそよろしくお願いします!』
『・・・以前、私達会った事がありますよね?』
『あぁ、そ、そうかもしれませんね。』
『ワタシに似た人と間違えてませんでしたか?』
『あぁ! そうでしたね、本当に似てたので間違えてしまったのかな?』
『もう“その人とは会えたんですか?”』
『・・・えぇ、会えました。』
『良かったですね、じゃあ、手順を最初っから教えますね。』
『・・・あぁ、はい。』
彼女は僕に丁寧に教えてくれた。
13歳のあの時の僕なら、少し彼女を揶揄ってしまうとところだが、、、。
26歳になった今の僕は、僕より随分と年下の彼女が可愛くてしかたない!
真剣に、しかも丁寧に僕に仕事を教えてくれる彼女。
・・・僕はいつしか、本気で彼女を好きになってしまう。
まるで年の離れてしまった彼女のようだった。
性格も亡くなった。彼女によく似ている。
ただ高校性の彼女は、少し頑固なところがあった。
僕の大好きだった彼女は、おおらかで怒った事がない女の子だったから
それも新鮮に想えた。
大人になっていったら? 彼女も頑固なところができたのかなと僕は
少しそう思ってしまったからだ。
生きている人間には“変化がある!”
少しづつ成長していく中で、性格が多少変わる事はよくある事だ!
そんな彼女を見ているのも僕は好きになった理由かもしれない。
僕は歳の差があるのを承知で、彼女に告白した。
彼女も大人の僕を好きになってくれた。
彼女の好きな事や好きなものに僕は興味がもてた。
彼女と同じ景色をこれからは一緒に見ていたい!
・・・僕は“亡くなったそっくりの彼女を連れて。”
彼女のお母さんに会いに行った。
『あら? アイオ君、今日はどうしたの? いつもと来る日が違う
じゃないの?』
『・・・お母さん、』
『・・・えぇ!? 彩加なの? 彩加が生き返って会いに来てくれたの?』
『アイオ君、この女性は誰?』
『お母さん、“僕の新しい彼女なんです!”』
『アイオ君、これはどういう事、、、?』
『びっくりしたでしょ! 彩加ちゃんにそっくりで。』
『“彩加ちゃん?”』
『ごめんね、うりに黙ってて! うりは僕の大好きだった彼女に
そっくりなんだよ、この女性はその彼女のお母さんなんだ!』
『彩加!』
『・・・・・・』
『また会えるとは思ってなかった、会いたかったわ!』
『お母さん、』
『・・・・・・』
僕は亡くなった彼女のお母さんと彼女にそっくりのうりにちゃんと
僕の想っている事を伝えたんだ。
『お母さん、これからはうりと僕は幸せになります!』
『・・・アイオ君、』
『うり、僕はうりが亡くなった彼女の代わりとして好きになった訳
じゃない! 君を心から大好きになったんだ! だから手を繋ごう!
これからは、君と僕はいつも一緒だよ。』
『・・・ううん!』
最後までお読みいただきありがとうございます。