表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第1話 覚醒(笑)

全話で言っていた通りかなり長くなりました。

 拓真は、町の中心部を見てまわっていた。しばらく歩いたおかげで、少し頭が冷えたようだ。拓真は小さく息を吐き、ここまでで分かったことを整理した。


 ーザッと見た感じ、それなりに文明は進んでいるようだった。ただし、機械類などはまだない。おそらく、中世ヨーロッパくらいだろう。この辺はよくある異世界ものと何ら変わりはなかった。想像していた通りだ。


 ところで、一つ問題点に気が付いた。


この世界、日本語が通じないのである。

英語や中国語とも違う、独特な言語だった。もしかしたら、世界を探せば似たような言葉を喋る民族もいるのかもしれないが、残念ながら拓真の頭の中にはインプットされていなかった。


「言葉が通じないってどうなったんだよ。普通、自動翻訳機能とかあるもんなんじゃねぇの?最初っから詰んでんだろ、これは...。」

拓真はぶつくさと文句を言いながら、階段を降りていく。すると、突然、肩に誰かの手が乗った。


 ビクッとして振り向くと、そこにはネコミミを生やした拓真と同い年くらいの美少女が立っていた。


「○★*£♯.<・▼◇◇◎▲♭?」


突然のケモミミに拓真の思考はフリーズする。

しかし、3秒の間で復活し、拓真は満面の笑みを浮かべてこう言った。

 「YES!」


 ガヤガヤガヤ

拓真たちはレストランのようなところにいた。ネコミミ少女が連れてきたのだ。

「○*▼*・☆♪<>...。」

相変わらず彼女が何を言っているのは分からなかったが、拓真はニコニコと微笑みながらウンウンと頷き返した。

 

 (は〜、幸せだ〜。)

まさか一生のうちにリアルケモミミ少女を見れるとは誰が思うだろうか。拓真のテンションはMAXまで上がっていた。

(これは理不尽な理由で死んだ俺への神様のご褒美だろう)

 拓真は幸せな時間を大いに楽しんでいた。


 しかし、幸せな時間は長くは続かないものである。


 喋り声が聞こえてくる。どうやら新たに客が入ってきたようだ。声の方を見ると2人組の男がいた。

片方はほっそりとしていて、猫背気味、もう1人はがっしりとした体格をした大男だった。

 そして2人はズンズンと歩いて来ると、ガタイのいい方がネコミミ少女の腕を掴み上げた。


「○★☆*♯€⁉︎」

少女は必死に抵抗の声を上げる。

拓真は、突然の出来事に一瞬唖然とするが、すぐに頭を切り替えた。


 (そうか、ここでコイツらをボコボコにすれば一気に俺の株は上がる...よし!)

ガタンと椅子を倒して立ち上がる。


「かかってきな、テメェら...ぶちのめしてやるよ!」

「*...♤〆◆#$ ⁉︎」

2人組は少したじろぐ。

「見せてやるぜ!異世界転生者パゥワァァァァ‼︎!」

拓真は思いっきり拳を振り上げた。


 ドゴォッ‼︎


鈍い音がする。強烈なダメージを喰らったようだ。

ただし喰らったのは拓真の方だが。


 「グッハァ!」

1メートルほど吹っ飛んだ拓真は苦しげな声を上げた。細い方が足を突き上げている。どうやら拓真は蹴られたようだ。


「○*→♪☆€?」 「*♪¥=」

2人組が話し合っている。


 拓真は焦っていた。

 (何でだ?何で何で何で?何で俺が倒れているん

 だ?異世界パワーはどうしたんだ?そして何よ 

 り...)

 ー痛い。

動こうとすると痛みが走る。口からは血が流れていた。

(このまま動かないでやり過ごそうかな...?)

ふと顔を上げる。少女の泣きそうな顔が目に入った。

 (...違う...よな。ここで諦めるのは、まだ...早いよ

 な。)

「ウォォォォッッッ‼︎!」

全身の力を振り絞り、拓真は立ち上がった。

2人組は驚いた顔で拓真の方を見る。

 拓真は、隣の机に乗っている、赤い液体の入った瓶を掴むと、蓋を外し、2人に向かって投げつけた。

 

 ビチャッ


2人の顔に赤い液がかかる。


 「「○*●●●● ‼︎」」

男たちが悶え苦しむ。

ビンゴだ、やはりあの赤い液はタバスコのようなものだった。

 大男の方は目にも入ったらしいゴロゴロ転がりながら両手で目を押さえている。


「今だ!」


拓真は少女の手を取ると、走り出した。


どれくらい走っていたのだろうか。拓真は立ち止まると、ゼーゼーと息をした。


少女が心配そうに見て来る


「◎★...♦︎€□♡♠︎...。」

申し訳なさそうな顔で彼女は言った


 拓真はニコリと笑うと少女に話しかけた。

「何を言ってるのかはよくわからないけど、大丈夫だぜ。これでも俺は昔、サッカー部に入ったたからな。」

少女も少し笑う。ホンワリとした空気が流れた。


 すると、背後から物音がした。

見ると、さっきの2人組が立っていた。


「○*♦︎>♭#...。」


2人は怒りのためか、顔が真っ赤になっていた。(ちなみに唇はプックリと膨れていた。)


拓真は小さく息を吸った。


「しつこい男は嫌われるぜ...?」


ジリリと後ろに下がると、一気に男たちに向かって駆け出した。


 ブンッ


拓真が拳を突き出す。細身の男はヒョイっと避けると、一発、拓真の腹に蹴りを入れる。

 「クッッ...。」

拓真はすぐに体勢を立て直すと今度は大男に殴りかかった。


 ドスンッ


今度は当たった。当たった...が、大男は全く平気そうな顔をしていた。

 「★♡*▽?」

男は拓真の胸ぐらを掴み、振り上げた。

拓真は軽々と吹っ飛んでいくと、ガツンと地面に激突した。

 「クッッソォォォ‼︎」

再び立ち上がろうとするが、今度は細身の男に蹴られる。

 「ゲホッ‼︎!」

拓真は地面に突っ伏した。


「◎♤♭◆ ‼︎」

少女の声がする。どうやら連れて行かれそうになっているらしい。


 クソッ、クソッ、クソォ‼︎!

拓真は悔しさで涙を流した。

 

 何で...何でなんだよ!何でこんなことになってる

 んだ!理由も...理由も何も分からない!

拓真はギリリと歯軋りをする。


 そうだよ...何でなんだよ...何であの子は連れ去ら

 れそうになっているんだよ...連れ去られる理由も

 分からない。

 せめて...せめて言葉が...言葉が分かれば...。


 その瞬間、拓真の身体が光輝いた。


 「!!!!??」


拓真の体がフワリと宙を浮く。そのままストンと地面に着地した。


「ッッッ‼︎?」


男たちが驚いた顔で拓真を眺めている。

 拓真はニヤリと笑った。


「ハーハハハハハー‼︎!やってしまったなキミタチ!どうやら僕は覚醒してしまったようだよ‼︎!もう俺様を止められるやつは誰もいねぇぇぇ〜‼︎!」


拓真は高笑いをすると、男たちに殴りかかった。

そして...吹っ飛んだ。拓真の体が。男の蹴りを喰らって。


「ゲファァ‼︎?」


全員が拓真の飛んで行った方向を見る。もう拓真の体は光っていなかった。


(((何なのコイツ...?)))


この時、その場にいた拓真以外の全ての人間がそう思った。


拓真はバッと顔を上げると叫んだ。


「何なんだよコレェぇぇ〜!今のは絶対覚醒してるやつだろ!何で俺が負けたんだよ⁉︎」


「し、知らねぇよ!お前こそ何なんだよ!さっきから俺らの邪魔ばっかしやがって‼︎」


「はァァァァ〜〜⁇こちとら天下の鏡 拓真さんですけど?なんか文句あんのか、コラァァァァッ...て、今なんて言った?」


「は?『お前こそ何なんだよ』って...てかお前喋れたのか?」


「?」

「???」


2人仲良く疑問系を頭に浮かべる。


 もしかしてさっきの光ってー

拓真は汗を浮かべる。

「単に言葉が喋れるようになっただけかよ‼︎ふざけんなマジで‼︎!」

拓真は怒りの声を上げた。


「こっちこそふざけんなだよ!さっきから何なのお前!さっきから光ったり、叫んだりさぁ!マジでキメェんだよ‼︎」

細身の男が叫ぶ。大男は元々寡黙なのか、はたまた唖然として声が出ないのか何も言わずにその様子を見ていた。が、突然口を開けると、少女の腕を持ち上げ、拓真に尋ねかけた。


「ところでお前、俺たちが何のためにこの女を吊るし上げようとしているのか、分かってるのか?」

「そりゃぁ...この子を自分達のアジトに連れ去って、あんなことやこんなことをするためじゃないのか?」

「違う、俺たちはそんなしょうもないことはしない。」

「じゃあ...。」

「俺たちはコイツを騎士団に連行するためにお前らを追ってきたんだよ。この女はな、男をたぶらかして金を巻き上げる詐欺師なんだ。」

拓真の動きがピタリととまる。


「…さぎし?」

「詐欺師だ。」

大男がウムと頷く。


 さぎしかぁ〜。そうか、さぎし、詐欺師...


「マジ?」


「「マジだ。」」

男たちは平然と頷いた。


拓真は女の方に顔を向ける。


「マジ?」


「う、嘘に決まってるじゃないですの〜。オホホホホホ〜。」

女はダラダラと汗を流しながら、逆にホントに詐欺師なのか疑ってしまうくらいぎこちなく笑った。


…………。


「申し訳ございませんでした。この人は貴殿方に献上いたします。」

拓真は両手を前に広げて、意を伝える。

そして、クルリと回れ右すると、その場から逃げるようにダッシュした。


「テメェェェ‼︎どこ行くんだ!こんなに可愛い私と喋れたんだからそれ相応の代金置いてけやぁ‼︎!クソッ!あいつは使えると思ったのにっ!って、お前ら何すん...やめ...。」


後ろから女の叫び声が聞こえて来る。

拓真は走り続けた。振り返らずに、息が切れるまで、どこまでも。

 

そうしないと涙が溢れそうだったから。




 







 

 


 

どうでしょうか?少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ