プロローグ① 死に始め
どうもこんにちはこんばんは。今回、初めて投稿してみました、カビもちです。
この作品は、異世界転生ものではありますが、無双系ではありません。
評価がつくかつかないかは分かりませんが、取り敢えず連載しようとおもいます。
キーンコーン
一日の終わりを告げるチャイムがなる。沢山の生徒がドヤドヤと学校の中から出てきた。
「おーい、拓真ぁ!」
自分の名前を呼ぶ、1人の男子生徒の声に、彼 ―鏡 拓真は振り返った。
「何だよ。」
「今日のカラオケ、お前も行くんだろ?」
「もちろん、行くぜ。今日は部活もないしな。」
友人と喋りながら、いつもの帰路を歩いて行く。
拓真は、いわゆる陽キャだった。金色に染めてある髪、耳にはキラリと光るピアスを嵌めている。遠くから見ても分かるような派手な見た目だ。サッカー部に所属し、レギュラー入りもしていた。
拓真たちの横を何人かの青年が通り過ぎていく。
「今週のルン様は最高だったなぁ。」
「うんうん、まさかあそこでミラクルパワーに目覚めるとは。」
それぞれバッグに女の子のストラップや、バッジを付けた彼らはフンフンと興奮しながら喋っていた。どうやらアニメの話をしていたらしい。
その後ろ姿を見ながら、拓真の友人が呟いた。
「オタクって、本当キメェよな。」
「ん?あ、あぁ。そうだな...。」
それ以降も雑談をしつつ、拓真たちは歩いた。しかし、拓真は何処となく不自然な感じだった。
拓真は家に着くと、すぐさま自分の部屋に飛び込んだ。そしてこれまた素早い動作でパソコンを立ち上げる。目当てのサイトを見つけたので、ワンクリックする。
サイト名は...「アニメ、『美少女剣士ミラエルのはちゃめちゃ異世界冒険』公式サイト」。
「マジ?今度イベントあんのかよ....嬉しすぎる。」
ブツブツ言いながら画面をスクロールしていく。
拓真は、いわゆる隠れオタクだった。
しばらくすると、机に置いていたスマホがブーっと音を立てた。見ると、友人からのLINEメッセージが届いていた。
『カラオケ、そろそろ家出ろよ。』
その文を読み、拓真は少し顔をしかめる。だが、しかし、すぐに椅子から立ち上がると、外に出る準備を始めた。
カラオケ店に着き、個室の扉を開けると、既に沢山の見知った顔が集まっていた。
「よー拓真、遅かったな。皆もう揃ってるぞ?」
友達の橘 祐治が話しかけてくる。
「悪いな、これでもお前に言われてすぐ来たんだが。」
「何だ〜?俺のせいだって言うのか?」
個室内は賑やかだった。話し声や笑い声が沢山聞こえる。拓真は飲み物を取りに部屋の外に出ることにした。
ボタンを押し、流れるコーラを見ながら、拓真はため息をついた。
(....めんどくさい。)
別に行きたくはなかったんだ。話たくない奴と、興味もないことで、話さなければいなかったりする。それは、とてつもなく面倒で、退屈だ。
だけど、行かなければいけない。ノリの悪い奴と思われないために。好かれるために。
でも、それでいいのか?それは、俺自身の意見を抑えてまで大事なことなのか?分からない....。
そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「やぁ、鏡くん。」
声の方をみると、ニコニコと笑う、眼鏡を掛けた少年が立っていた。
「....よう、小鳥遊。」
小鳥遊と呼ばれた少年は、ニコニコ顔のまま、さらに話しかけてきた。
「嬉しいね、僕の名前を覚えてくれてるなんて。僕たち殆ど喋ったことないのに。」
「当たり前だろ?同じクラスの奴の名前くらい全員覚えてるよ。」
「いやいや、同じクラスでも結構名前知らない人とかいると思うよ。特に僕みたいな目立たない奴。」
小鳥遊は、こう言っているが、彼は結構目立つ奴だった。テストでは毎回一位。特に、生物が得意で、時折、先生も驚かせるようなことを答えに書いていた。さらに、顔も中々のイケメンで運動も出来て、絵も上手く、料理も出来る....逆に彼にできないことはないのではないだろうか。
小鳥遊は、自分もジュースをいれると、ヒョイと持ち上げたのだが、そこで手を滑らせたのか、グラスを落としてしまった。バチャッと拓真の足にジュースがつく。
「うぉっと。」
拓真はジュースのかかった部分を見るために、一旦自分のグラスを台の上に置き、屈み込んだ。
そのせいで、見えなかったのだ。小鳥遊が拓真のグラスに白い薬のようなものを入れるのが。
小鳥遊は、一瞬ニヤリと笑うと、すぐさま心配そうな顔に変わり、自分も屈んだ。
「ごめんよ、鏡くん。手が滑っちゃって。」
「いいぜ、このくらい、全然大丈夫。」
小鳥遊が渡してくれたハンカチでズボンを履きながら、拓真はそう答えた。小鳥遊もドジなところがあるんだなぁなんて考えながら。
部屋に戻ると、部屋はさらに騒がしくなっていた。元いた席につき、グラスを傾け、コーラを
流し込む。
その時、拓真の体に異変が起きた。
何だ。
息が激しくなってくる。
何だ。
世界がグニャリと曲がる
何だ、何だ、何だ、何だ、何だ、何だ、何だ
動悸が激しくなって行く。
何だ、これは‼︎
「グァァァァァァッッッ‼︎!」
余りの苦しさに叫び声を上げると、拓真はバッと立ち上がった。周りのクラスメートが何事かと視線を浴びせてくる。
「悪りぃ、ちょっとトイレ行ってくるわ。」
無理矢理、口角を上げながらそう言うと、拓真は一気にダッシュした。
拓真が出て行った後、部屋の中は先程までとは全く違う雰囲気になっていた。拓真を心配する声、何なんだと文句を言う声、皆、ざわついていた。
そんな中、橘 祐治は不安を感じていた。
(嫌な予感がする...。)
中学から拓真とつるんできた祐治だったが、彼のあんな姿は初めて見た。あんな、苦しそうな姿を...。
様子を見に行こうかと決めあぐねていると、ダンッと音がした。
見てみると、小鳥遊が立っていた。
そして、彼は口を開いた。
「僕が見に行ってくるよ。」
そんなにコイツ、拓真と仲良かったっけ?と思った祐治だったが、さっきの拓真の辛そうな顔を思い出すと、そんな思いは吹き飛んでしまった。
「そうだな、じゃあ、俺も一緒に行くよ。」
「いや、君にはここに残って、みんなをまとめて欲しい。騒ぎになっても困るしね。」
「そ、そうか。じゃあ、頼む。」
その言葉を聞くと、小鳥遊は扉を開け、走り去って行った。
どうだったでしょうか?正直一番最初の話だったので、良いも悪いもないかもしれませんが、少しでも楽しんで読んでくれたら幸いです。