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怪異蒐集家 不条漣  作者: まままつり
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かくれんぼ

いつもの学校のはずだった。


二学期の九月の始め、夏休みの宿題で自由工作が終わっていなかった僕は学校で一人粘土をこねている。

家で作ればお姉ちゃんが「だから、余裕をもってやれって言ったのよ。」と、からかってくるに決まっているので学校で終わらそうという考えだ。

なかなかの傑作が出来上がり、時計を見ると五時を指しているのが分かった。

さすがに六時までには帰らないとお母さんにも怒られるだろうと急いで帰り支度を始める。

ランドセルを背負い教室のドアを開けると窓の外は真っ暗闇で、この時間帯でこんな暗さだったかと首をかしげる。

廊下を進み、階段を下りていくと違和感を感じ始め、五時だというのに人の気配が全く無く、いつもであれば校庭でサッカーをしている連中の声や、校内の見回りをしている先生が居るはずだが人っ子一人いない。

1階に着いて階段正面の玄関に向かい、不気味な静けさから背筋に嫌なものを感じる中、下駄箱で運動靴に履き替えると玄関の扉に手をかける。

扉を押しても鍵がかかっているのかまったく動かないので、鍵の部分を捻ってからもう一度扉を押すが結果は変わらなかった。

他の扉も同様に試してみるが扉が開く気配はない。

もっと遅い時間まで残っていた日もこんなことはなかったので様子がおかしい。


「だれか―!せんせーい!扉があかなくて出れないです!」


大声を上げても廊下に声が溶けていくのみで反応はない。

先生たちはまだ帰っていないだろうと思い、職員室に行けばどうにかしてくれると考えた。

職員室は玄関と同じく1階にあるので、面倒だとは思いながらも上履きにまた履き替えて職員室に向かう。

足早に職員室に向かう中も誰ともすれ違わず、自分の足音とランドセルの音だけが聞こえる。

職員室の扉の前で立ち止まり、ノックをしてから扉を横に引く。


「失礼しまー...す...え?」


電気はついているのに先生は一人もいなかった。

ここまでくると閉じ込められてしまったという考えが頭を巡り、嫌な汗が噴き出してくる。

もう窓から出てしまおうと思いついて職員室に入り、窓側まで駆けて行き焦る気持ちで窓に手をかけるがびくともしない。

隣の窓、隣の窓、隣の窓、試しても試してもびくともしない。


「こうなったら最終手段だ。」


端に置いてあったさすまたを手に取ると、窓を割ってしまおうと突撃した。


「いやああああああああ!!!!!」


ガキーン!ガキーン!とぶつかる音が部屋中に響き渡るが、窓ガラスには傷一つ付かないで体力だけが消耗する。

肩で大きく息をするように乱れた呼吸を整えていく。


「窓ガラスってこんな硬いの?」


ふと時間が気になり時計を見ると針がない。

時間すら分からず途方に暮れていたその時、「ピン、ポン、パン、ポーン」と、放送室からの呼び出し特有の音がスピーカーから響き渡る。

放送室に誰かいるかもしれないと顔を上げて希望が湧いた。


「今からかくれんぼをするよ。鬼は君だよ!捕まえられなければ永遠に出られないよ。」


ポカーンとしてしまった。

いたずらにしてはとても趣味が悪い。

どうすればいいか頭が働かずその場でじっと動けずにいるとスピーカーから声が響く。


「さあ、私を見つけてごらん。」


その言葉と共に蛍光灯の光がが消え、僕は立ちすくんでしまった。



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