3
吉田が目を開けた。
「ここから、十分ほど先の研修所まで急いで行ってほしい」
ストロー隊の隊長が目の前の一本道を指さした。他のメンバーはすでに到着しているとのことだ。意識を失った吉田は後れを取ったらしい。慣れない小道を駆け出した。
周りは現世と同じで、空があり、太陽があり、空気がある。でも、どことなく白っぽい世界だ。緑や赤やオレンジの原色系の色彩が見当たらない。白黒テレビの背景に、薄っすらとパステル調の色合いがにじんだような世界だ。それでも地球と同じ地面がある。草花の周りに蝶が舞い、木々の枝から鳥のさえずりも聞こえてきた。
――現世と変わらないじゃないか。
少し安心して足を速めた。ただ、人のいる気配がない。車や自転車なども見当たらない。
課長は先に行ったのだろうか? 田舎のあぜ道のようなところを駆けていく。
暫く走っていくと、文明らしきものが見当たらないこの場所に、場違いな三階建ての建物が見えてきた。歩調を緩め、ゆっくりと建物に近づいた。外観は田舎の公民館のような建物だ。中を覗くと木造の質素な作りだが、丁寧に磨かれた廊下が目に入った。
受付の白装束の女が軽く会釈した。そういえば天国で会う人は皆白装束で無表情だ。この女も黙ったまま、手前の部屋に入るように促した。
教室のような作りの部屋には、三人のメンバーが着席していた。野球のユニフォームを着た三十代の男。二十歳ぐらいのキャバ嬢風の女。二人とも天国行きのプラットフォームで見かけていた。もう一人は全身黒ずくめの男。薄汚れた黒頭巾を被り、顔は良く見えないが、歯だけが白く光っていた。明らかに異様な風貌だ。
吉田は野球選手の隣に座った。
――課長がいない!
胸騒ぎがした。天国ロードを昇ってきたときのことを思い出していた。あのとき雷が矢に落ちて気絶した。意識を戻したとき、ストロー隊に抱きかかえられていた。そのとき、なにか黒い物体が、ものすごいスピードで天国ロードの横を落下していくのを見たような気がした。そういえば、魂に矢が刺さっていない。雷が落ちたときに抜けてしまったのだろうか? 心の奥にすっきりしないものが残っていた。
ドアが開き、若い女が現れた。高めのハイヒールをコツコツ鳴らし、ゆっくりと教壇に立った。膝上の黒のタイトスカートからは細くて形の良い足。丸の内を歩いていそうなキャリアウーマン風の女だ。
「私はあなた方の指導教官を務めるT302 K11です」
ハイヒールで教壇に立つと、吉田よりはるかに背が高く威圧感があった。冷たい声にどことなく気だるさが漂った。
「これから一週間、ここで研修を行い、三日間の休みのあと、希望コースを選んでもらいます」
――どこかで聞いたことがある声だなぁ……
吉田が思い出そうとしていたとき、
「あんた、プラットフォームでレクチャーしてくれた白装束の方ですよね?」
隣の野球選手が、子供が大発見でもしたかのような大声を出していた。
――そうだ。プラットフォームの白装束の女だ!
吉田も心の中で叫んでいた。
「そうよ」
それがどうしたの? と言うような、冷めた反応だった。
「服が全然違うので、わかりませんでしたぁ」
後ろのキャバ嬢も嬉しそうに手を叩く。
「鬱陶しいのよね、白装束とかいうあの服装。レクチャーのときは規則だから着てるけど、ここは目が届かないから着ないのよ」
どこか人を見下したような態度で、長い髪をかき上げた。
「T302のなんとかってどういう意味ですか?」
緊張感漂う空気の中で、何の躊躇もなく野球選手が踏み込んだ。
「意味なんか無いわよ、コードネームよ。あなたさっきから余計なことばかり詮索しないで下さる」
気が強い女性上司が、容赦なく年下の部下を叱責するような言い方だ。
「コードネームじゃなくて名前無いの? ニックネームでもいいからさ」
吉田はこの場面で平気でタメ口で切り返す野球選手のタフさに感心した。
「ありません」
これ以上何も言うな。とばかりきっぱりと否定した。
にもかかわらず、
「じゃあ、丸の内さんでいいかな? なんか丸の内にいるきれいなOLさんみたいだからさ」
隣を見ると、野球選手が何の屈託もなくニコニコ笑っていた。
「キャハッ、それいい~、丸の内さん、ぴったりー」
後ろのキャバ嬢も輪をかけた。
「あなた方、ここをどこだと思ってるの? なめたことばっかり言ってるとぶっ殺すわよ」
天国でこんな言葉を耳にするとは思わなかった。
早速研修がはじまった。初日は「天国概略」の講義だ。
丸の内さんはゆっくりと四人を見渡すと、気だるい口調で話し出した。
「現世にいるときは、天国がこんなところにあるなんて誰も想像しないでしょう。死んで初めて見える世界があることを、まずは認識してください。それと、人間は死ぬと同時に幽体離脱によって、天国で修行をするための新しい身体に生まれ変わります。現世で生きてきた魂の記憶から、あなた方の最後の姿が再現されているのです」
何度も同じ研修を繰り返しているからだろうか。どことなく投げやりで、面倒くさそうな言い方だ。
「やっとわかったよ。だからオレは泥のついたまままのユニフォームなんだ」
「あたしなんか手術着よ。そんなことなら着替えておいたのに……」
「プラットフォームのレクチャーでも言ったけど、幽体離脱した身体もこの天国も、現世の人間には見えないの。霊感の強い人などは、ちょっとだけ見えたり、気配を感じたりするようだけど……」
丸の内さんは、黒板に同じ大きさの丸を左右に並べて書いて、手元の鏡を間に置いた。
「こんな感じかしら、天国と現世の位置関係は。真ん中の鏡が、ちょうどプラットフォームがある場所よ。プラットフォームはたいてい雲に覆われているから分からなかったと思うけど、実はたくさんのプラットフォームが集まった集合体なの。あなた方がレクチャーを受けたT302は、その中の一つなのよ」
「土星の環のような感じでしょうか?」
吉田は集合体と聞いて、中学受験のとき塾で習った土星の環を思い出していた。
「ちょっと違うわね。土星の環は氷の粒の集合体だけど、プラットフォームはもう少し大きくて、平べったいのよね。魂は毎日地球のあちこちから天国に向かって昇ってくるから、地球全土をカバーするために、たくさんのプラットフォームが、この辺りに集っているの」
「地球全土って……。想像つかないわ」
キャバ場が小首を傾けた。
「地球をスイカのように、赤道で真っ二つに切った、断面ぐらいの大きさって言えばイメージつくかしら」
「そんな大きなものが地球のそばにあったら、飛行機とかぶつかったりするんじゃないのか?」
隣の野球選手が真顔で子供のような質問をした。
「たまにロケットなんかが近くを通ったりするけど大丈夫。現世の人には見えないし、触ることも出来ないものだから。でも私達のように死んでしまったら、現世と天国の両方の世界が見えるのよ」
吉田はようやく、現世にいたときとの違いがイメージできてきた。
「それで、それぞれのプラットフォームから決められた天国の入口に向かってロードが繋がっているのよ」
「知ってるよ、すごかったよな。透明のチューブみたいな中に入ってなー」
野球選手が遊園地のアトラクションにでも乗ってきたかのように、周りのメンバーに同意を求めた。
「チューブと言っても、現世では存在しないもの。だから雨が降ったり風が吹いたりしたら、中に入ってくるのよね」
吉田は天国ロードを昇る途中で台風に巻き込まれ、雷が落ちてしまったことを思い出していた。
「天国の入口は、プラットフォームの数だけあちこちにあるの。どの入口から入るかは、プラットフォームで決まるけど、あなた方四人はたまたまT302になったのね」
「T302って、地球で言うとどのあたりなんですか?」
吉田は天国に昇ってくるとき、白い天体に日本列島があるのを見て驚いた。今いるこの場所がどのあたりになるのかずっと気になっていたのだ。
「現世で言うと、東京の西側かあたりかしら……」
「ウソだろ、東京タワーもスカイツリーもなかったぞ」
「ぼくも田舎のあぜみちしか見あたりませんでした。車も電車も走ってなかったです」
「私も信じられないわ。ここに来るまで誰とも会わなかったしお店もなかったわ」
「ここは文明も技術の発展もないから、手つかずの地球が残っているの」
――ここが東京だなんて……。
吉田は現世で最後に見た、マンション屋上からの、アスファルトに固められた建物だらけの東京を思い出していた。
「プラットフォームでは、天国ロードに入る順番を待っていたの。地球と天国は同じ角度の地軸で互いに反回転しているから、T302に入れるタイミングは一日一回、四名って決まっているの」
だから、嵐が来ようが来まいが、天候に関係なく順番が回ってきたのか。
「さっきの話に戻るけど、太陽はちょうどこの辺かしら……」
丸の内さんが、もう一度鏡を黒板のプラットフォームの位置に置いてから、反対の手を前に伸ばして拳にした。
「こうして見ると、天国は鏡に映った地球のように、何もかもが反対に動くの。現世と同じように二十四時間で一日が流れるけど、太陽は西から昇って東に沈む。時計の針も逆回転しながら時間が戻っていくの」
吉田は二つの円の真ん中に置かれた鏡を見ながら、左右対称の天体が、時計の歯車のように、互いに逆回転している様子をイメージした。
「太陽が西から昇るって……」
キャバ嬢が驚いたように声を出す。
「最初みんな驚くけど、次第に慣れるわよ。外を見たらわかるけど、さっき、左側に見えてた太陽が少しだけ右側に動いたのが分かるかしら」
「本当だ、俺の影がいつもと反対に動いてる」
野球選手も机に移った自分の影を見ながら驚いた。
「そう言えば、教室の時計もここに来た時は十一時だったのに今は十時半ぐらいになっている」
――確かにそうだ!
吉田は時計の針が逆に動くのが、オカルト現象のような気がしてゾッとした。
「でも丸の内さん。いきなりびっくりする話でついて行けないんだけど。時間が戻るってよくわからんよ。まさかだんだん若くなるわけでもないし……」
野球選手は考えるより前に、思ったことが口にでるようだ。
「私、プラットフォームであなたに言ったわよね。修行が進むとだんだん若くなるって。何度も同じこと言わさないで下さる。ここは修行の場なの。遊びにきたわけじゃないのよ」
吉田もその話は聞いていた。修行をやり終えると、背中に羽の生えた天使になって、現世のどこかに転生することを。天国は、汚れた魂を浄化する、魂の再生システムだということを。
「天国は現世の写し絵のように、大きさも地形もほぼ同じ。山もあれば海もある。太陽からの距離も同じだから四季もある。山には動物がいて植物も育ちます。海や川には魚だってたくさんいるのよ」
気を取り直した丸の内さんが説明を続けていく。
「食べられるのですかぁ?」
キャバ嬢が手を上げて質問する。
「食べられるわよ。でも私達は死んじゃったから本当は食事を取らなくても大丈夫なの。でも、長い修行を続けていくには、現世にいるときとできるだけ同じ生活リズムを維持することが重要だから、みんな楽しみの一つとして畑で作物を作ったり、海で魚を採ったりしながら質素な食生活を楽しんでいるわ。公務員が運営している無料の食堂もあったりするから、気分転換で利用しても良いのよ」
「すごーい。天国って誰が作ったんですかぁ」
キャバ嬢がいちいち手を上げて質問する。
「地球ができたときからあったのよ。学術用語としては『青い(ブルー)地球』と『白い(ホワイト)地球』という言い方もあるの。双子の地球として、地球ができたときからここにあったのよ」
まさに双子の地球だった。
静かな宇宙に並んで浮かぶ二つの天体を見たときの衝撃が、吉田の脳裏に蘇った。
「でも白い(ホワイト)地球に色々仕組みを作って、今の天国にして下さったのはアマテラス様。最初は天国ロードもストロー隊もなかったから、みんな自力でここまで昇ってきたの。当時はストロー隊もなかったから、天国に昇って来られた魂は、半分ぐらいだったと云われているのよ」
――ぼくなんか、ストロー隊がなかったら、絶対に天国にこられなかったよな……。
「天国に公務員制度ができたのも最近のことなの。この辺りのことは、この本に詳しく書いてあるから、時間があるときに目を通しておくといいわ」
丸の内さんは、書棚から『天国ヒストリー』という分厚い本を取り出した。
「アマテラス様って、何処にいるんですか?」
「下々のところには決して姿を現さないから、ごく一部の上層部以外、拝謁したことがないの。とてつもなく美しく、優しく、神々しいお方であるということしか聞かされていないのよ」
ここで初日の講義は終わった。研修中四人はそれぞれ二階の個室に寝泊まりすることになっていた。丸の内さんの部屋は三階の教官控室だ。
吉田が部屋に入ると、隅に布団が一組と真ん中に卓袱台が置いてあるだけの質素な部屋だった。研修に関係ないものは何も置かれていなかった。
疲れ切って布団にもぐり込んだが、今日一日いろいろなことがあって神経が高ぶっているのか、なかなか寝付けなかった。
教室に戻り、丸の内さんが講義で紹介していた「天国ヒストリー」を持ってきた。
眠れないとき、分厚い本を手に取って一枚一枚めくっていくのが吉田の習慣だった。決して本の中身を読むわけではない。果てしない単純作業を繰り返すうちに、次第に疲れて眠ってしまうのだ。
さっそく「天国ヒストリー」を手に取りページをめくりだした。吉田の現世での習慣が魂に刻み込まれているからだろうか。いつもの通り徐々に心地よい疲れに包まれて、あっという間に眠ってしまった。
翌日は修行で使う三点セットの講義だ。
丸の内さんは黒板に、『ヒストリー』『天国時計』『黒装束』と大きく書いた。
「修行コースを選択すると、この三点セットが支給されます」
教壇の上に三点セットらしきものが並んでいた。
「これがヒストリーです」
左端の分厚い辞書のような本を取り上げた。
「この中にはその人の現世での全記録が書き込まれています。日記帳のように一日分が一ページに綴られているので、寿命によって厚さが違います。また表紙の色も様々です。魂の色と同じ色に反映するからです」
「ちょっと待った。それじゃあ、そのヒストリーって一人ひとり特注品なのか?」
野球選手が相変わらず思ったことを口に出す。
「あなたうるさいわね。これから説明するから、少し黙ってなさいよ」
丸の内さんが手元のヒストリーをぺらぺらめくると、それぞれのページの色が違っていた。
「書かれている内容、穢の度合いって言えばいいかしら。それによってページの色が違うのよ。それぞれのページの色が、絵の具を溶かしたように混じり合って表紙の色になるの。そして、表紙の色が魂の色になってるの」
ヒストリーと魂の色は常に一緒ということだ。
「私はいまこうしてヒストリーをめくっているけど、これは練習用のヒストリーだからできることです。実際は、その日一ページしか開けません。他のページを見ることはできません。それから、現世の日記と違って、死んだ日から始まって、生まれた日で終わります。一度読んだページは消えていくので、だんだん薄くなっていくのです」
「ヒストリーの色は日々変化していくんですね」
「そうよ。修行が進むにつれて、魂もだんだんきれいになって行くのよね。現世で過ごした日々を一日単位で振り返り、当時の出来事を思い出しながら、一つひとつ穢れを払っていくのが修行の基本スタイルと言っていいかしら」
丸の内さんはヒストリーを閉じて四人を見回した。初めて聞く話に四人のメンバーは、口をぽかんと開けたままだった。
「その日のページが消えると、表紙の色が変わりヒストリーも薄くなります。それに連動してあなた方の魂の色も日々変化し、最後に、ピカピカに浄化された魂が、現世に転生するのです」
吉田は改めて、汚れた野球ボールのような自分の魂を見た。よく見ると矢が刺さっていた場所に、鋭い刃物で魂の表面をこすったような痕が残っていた。
「はい、じゃあ次は天国時計よ」
丸の内さんは真ん中の時計を手に取った。それは現世の腕時計と同じ形をしていた。
「天国には現世のような文明の利器はほとんどありません。修行に必要な最低限の施設と道具があるだけです。その中でこの天国時計は、数少ない文明の利器と言ってもいいかしら……」
「オッサンの腕時計みたいだな」
「可愛くないわ」
野球選手とキャバ嬢が雁首揃えて天国時計を覗き込んだ。つられて吉田も覗き込むとやっぱり秒針が逆に動いていた。針が逆回転する時計を見るとオカルト映画を見ているようで気持ちが悪くなる。
「三時のところにある数字は何ですか?」
現世の腕時計では日付や曜日が出る場所に、見慣れぬ五桁の数字が並んでいるのに気がついたキャバ嬢が質問した。
「修業の残り日数よ」
これは、現世に戻るまでのカウントダウンであり、修行者にとって何よりも重要なものらしい。単調な修行の中で、励みとなり目標となる、モティベーションの維持には欠かせない数字ということだ。
「現世ではよく、今日は天気がいいですね。とか言って、意味ない挨拶しているけど、天国では、あと何日ですか? って天国時計を見せ合うのが日常だから覚えておいて」
初めて耳にする現世とは異なる習慣に、四人は相変わらず口を開けたままだった。
「じゃあ最後、黒装束ね」
丸の内さんが、右端の黒装束を広げて見せた。柔道着のように腰の辺りを帯で締める作りになっていた。天国に来て白装束は何度も見かけたが、黒装束を見るのは初めてだった。
「これは天国における修行者の制服です。公務員の制服は何度も見かけた白装束です。見ただけでわかるように区別しているのよね。あたしは着ないけど……」
丸の内さんは、規則に縛られるのが嫌いなようだ。
「修行コースを選択すると、今日説明した三点セットが支給されます。あ、黒装束は一年に一回、新しいものが送られてくるわ。だんだん体型も変わっていくからね」
「俺等の身体って体型が変わるのか?」
「あなたって、ホント人の話を聞かないのね。あたし、修行が進むとだんだん若くなって、最後は羽の生えた天使なるって。三回ぐらい言ったわよね」
「いやあ、何度聞いてもホントかなって思っちまうのよ……」
「修業を続けて行けば分かるわよ。魂の映像に連動するから、身体も変わるし着ているものも変わるのよ。私のように公務員になってしまえば、永久にこのままだけどね……」
丸の内さんの最後の言葉はどことなく寂しげだった。
三日目は、魂の取り出し方の研修だ。
四人は今日から研修用と背中に書かれた黒装束を着用した。
机の上には、練習用と書かれたヒストリーが置いてある。
「ちょっと、ここを見てくれる。ヒストリーの表と裏にくぼみがあるの」
ヒストリーの表紙を触ってみたら、真ん中に浅いくぼみがあった。
「自分の魂を取り出して表側のくぼみに載せると、魂が水晶玉のように変化して、その(・・)日の(・)ヒストリー(・・・・・)の(・)場面が映し出されるの」
「占い師がよくやるやつだ」
「そんないい加減なものじゃないわ。精度が全く違うのよ」
吉田は自分の魂が取り出せるということに驚いた。
「裏側に載せると、今、現世で(・)起きて(・・・)いる(・・)ことが映し出されます」
「同じじゃねーの?」
野球選手が首を傾けた。
「全く違うのよ。ヒストリーの場面は一日ごとに過去に遡っていくけど、現世では通常通り時間が進むから、現世と天国ではどんどん時間差ができるのよ」
「時間差って……」
キャバ嬢もよくわからないようだ。
「ここにいると、時々現世のことが気になったりするものよ。そういうとき、今、現世で何が起きているか確認できるのよ。でも、この操作はちょっと難しいから、明日以降の実践研修でやるわね」
丸の内さんはとりあえず質問を締めきった。
「今日のところは自分の魂を取り出して、ヒストリーの表紙のくぼみに載せてみましょう」
四人が一斉に自分の魂を取り出そうとするが、何かが引っかかっているようで上手くいかない。四人とも触り慣れていない魂を、おっかなびっくりいじっていた。
一番最初に野球選手が取り出した。一度魂を持ち上げて、音がするまで右側に回してから、下に引っ張ると簡単に取り出せたと言っている。それを聞いたキャバ嬢と黒ずくめの男が、同時に取り出した。
臆病な吉田は、取り出すとき痛くはないのだろうか? 取り出したあと元に戻せるだろうか? 余計な心配ばかりして、魂に触れることさえ出来ずにいた。それを見かねた丸の内さんが、「根性ないわね、こうやるのよ」と、吉田の魂をわしづかみにして引っ張りだした。吉田はびっくりしてのけ反ったが、痛くもかゆくもなかった。
「修行のやり方は、まずヒストリーを読んで、その日に何があったかを思い出します。それから、今のように魂を取り出して、改めて映像を見ながらその日の出来事を客観的に振り返るのです」
「そんな簡単でいいのか。だったら毎日五分で終わっちまうな」
「どうしてあなたは、なんでも短絡的に考えるのかしら。たしかにあなたが言うように、五分で終わる日はあるわよ。でも、そんな日ばっかりではないの。自分なりにどう反省して、消化したらいいか分からない日だってあるのよ。収まりが付かなくて、徹夜で修業する日だってあるのよ」
――そうだよな、ぼくなんか毎日いろいろあって、とても五分じゃ終わらないよな……。
そんなことを思っていたら、キャバ嬢が手を上げた。
「修業が早く終わった日はどうすればいいんですかぁ?」
「自由よ。外に出て散歩したり、修行棟の図書館で読書してもいい。明日の実践研修で教えるけど、魂を裏側に載せて今の現世の様子を見てもいいしね」
研修四日目。
今日から三日間。魂の操作に関する実践研修だ。
丸の内さんは黒板に四つの言葉を板書した。
『アマチャン・アマチャン・アマテラス』
『アマチャン・アマチャン・イクテラス』
『アマチャン・アマチャン・モドテラス』
『アマチャン・アマチャン・クエッション』
吉田は初めて聞く怪しげな言葉を見ながら心の中で反芻した。
「これらの呪文を使って、現世に残してきた家族や友人の様子を確認したり、場合によっては現世に行って助けることもできるのです」
――死んでしまったのに現世に行けるって? 本当にそんなことができるのか?
驚きと共に、母と妻、それに生まれてくる子供のことが脳裏に浮かんできた。
「一つ目の、アマチャン・アマチャン・アマテラス。これは『現世投影の呪文』です。昨日さわりだけ説明しましたが、魂をヒストリーの裏表紙に載せてこの呪文を唱えると、現在の現世の様子が浮かんできます」
丸の内さんは怪しげな占い師のように呪文を唱え、練習用の魂に両手を添えて上下左右に動かした。
「左右に回すと場所、上下に回すと時間を調整できるのよ」
四人が丸の内さんの周りに集って、魂の映像を凝視した。
「時間はある程度調整できるのよ。少しだったら過去に遡ぼることもできるのよ」
細くて長い指をほんの僅か動かして、時間を戻していく。
「難しいのよね、自分の見たい場所と時間を特定するって……。両手の微妙な操作と力加減が必要なの。相当の鍛錬が必要だから覚悟して」
四人揃って魔法にでも掛けられたかのように魂の変化にくぎ付けになっていた。
「二つ目のアマチャン・アマチャン・イクテラス。これは『現世行きの呪文』今の現世投影の呪文で場所を特定してからこれを唱えると、その場所に行けるのよ」
――それって、ここから現世に行けちゃうってこと?
本当にそんなことができるのかと驚く中、丸の内さんは淡々と説明を続けていく。
「三つ目のアマチャン・アマチャン・モドテラスは『天国戻りの呪文』。こっちは現世に行ったあと、ここに戻るための呪文ね。あ、イクテラスとモドテラスは両方とも三回連続で唱えてね」
さすがの野球選手も声が出ない。目を点にして口を開けていた。
「で、最後のアマチャン・アマチャン・クエッション。これは『質問の呪文』呪文を唱えても魂が反応しなかったり、使い方がわからなくなったときにこれを唱えれば、その原因や解決方法を、魂の映像を通して教えてくれるのよ」
四人とも、催眠術にでもかけられたような放心状態になっていた。
「ちょっと駆け足だったけど、まあ、実際使ってみないとピンとこないわよね……。でも、注意してほしいことがあります」
改まって四人を見渡して、大きめの声で切り出した。
「修行中に現世に行けるのは三回だけ。一回につき十分間という制約があります」
「しょっちゅう行けるってものでもないのか……」
催眠術から醒めたかのように、野球選手がかすれた声を出した。
「あたりまえでしょ、旅行じゃないんだから。それと、現世行きの呪文と天国戻りの呪文は危険が伴うから慣れてから使うことね。しばらくは、現世投影の呪文を使いこなすところからはじめること。いいわね!」
「どんな危険があるんですかぁ?」
「うっかり制限時間が過ぎちゃうと、ここに戻れなくなるのよ」
「もうすぐぼくの子供が生まれます。現世に行って抱っこすることはできますか?」
吉田の切実な願いだった。
「あなたはやめた方がいいわ。一番トロそうだから。うっかり天国戻りの呪文を忘れたり、言い間違えたりして制限時間が過ぎてしまうと、魂が天国と現世との気圧差に耐え切れなくなって粉々に砕け散ってしまうのよ」
「魂が砕け散ってしまうとぼくはどうなっちゃうんですか? 死んでしまったのに、もう一回死ぬっていうことですか?」
吉田は魂を失うイメージがつかめないでいた。
「魂がなくなると~ あなたは~ 永遠に現世を彷徨う~ 幽霊になってしまうのでえ~~す」
丸の内さんが両手をだらりと下げて、子供を脅かすときのように幽霊の声色で吉田を脅かした。
「現世投影の呪文ちゅうのは、江戸時代までさかのぼることも出来るんかい?」
黒ずくめの不気味な男が初めて口を開いた。
「それは難しいわ。せいぜい一、二か月が限界じゃないかしら。両手を上下に回していくと、ある程度までは時間が戻るけど、そのうち何も映らなくなってしまうから」
顔の表情が黒頭巾で隠れ、この男が何を考えているのかさっぱりわからなかった。
五日目、六日目。
四人は魂の操作に関する実践研修を続けた。
呪文の使い方や魂の操作をなんとか覚えたところで、丸の内さんは、現世に行ったときの注意点をいくつか示してくれた。
「死んだ人間が現世に来ていることを悟られるのは良くないの。でもどういうわけか死んだ人間が写真に写ってしまうことがあるのよね。無用な混乱は避けた方がいいでしょ」
「知ってるよ。心霊写真とか念写っていうやつだろ。やっぱりあれは本当だったんだ」
野球選手が納得したようにうなずいた。
「ほんとかどうかはよくわからないわ。でも、こっそり行ってこっそり返って来ることね。霊感の強い人は気配を感じたり、中にははっきり見えたりする人もいるから注意が必要なの」
「なんか泥棒みたいだなあ。それじゃあ、現世行って誰かを助けたいとき、どうすりゃいいのよ?」
丸の内さんはちょっと困った顔をしてから、書棚から『指導教官の手引き』と書かれた書物を取り出しパラパラめくりだした。
「ああ、ここに夢の中に現れてメッセージを伝えることができるって書いてあるわ」
「夢の中に現れるってどうやって?」
「ん~。念を送るって書いてあるわ……」
「念を送る? サインみたいなもんか?」
野球選手が監督が出しそうなゼスチャーを真似して色々やりだした。
「その辺は天国でも研究中でよくわからないのよね……。でも、ペットが気づいて、吠えまくるなんていう話はよく聞くわ、動物を利用するのも手じゃないかしら」
「俺の家族は、ペットなんか飼っていなかったしな。家族だけに分かる、サインみたいなものがあったらいいんだけどな……」
「でも一番注意しなければならないのは時間管理よ。みんな久しぶりに現世に行くと夢中になって時間が経つのを忘れるの。十分なんてあっという間だから、必ず天国時計を持って時間を確認すること。これが鉄則よ」
「確かに十分じゃ一回表の攻防で終わっちまうもな……」
野球選手は何かにつけて、野球をベースに物事を考える。
「あと、最近の事例なんだけど……」
丸の内さんが手引きをパラパラめくっていた。
「現世に行ったとき、地面とか水とか、昔から当たり前に存在するものには触ることができるけど、建物の壁や床など、人間が後発的に作ったものの中には、触ろうとしても触れないものがあるの」
「透明人間のように素通りしてしまうってことかい?」
「そう。初めて現世に行ったとき、みんなびっくりするみたい。何に触れて何に触れないかは『天国シンクタンク』が事例を集めているところで、まだはっきりと定義づけができていないのよ」
「なんのタンク?」
「アマテラス様がお作りになった研究機関よ。私は知らないけど、現世では妖怪研究家で有名だった方が理事長をやってるの」
「わかった、ゲゲゲの鬼太郎書いた人だろ」
野球選手が反応した。
「確かそうだわ。水木しげる先生って言ったかしら。彼が五年前にここに来てから一気に研究が進んだの。今は、天国シンクタンクの誰もが認める第一人者で、毎日、寝る間もおしんで研究に没頭しているっていう噂よ」
吉田もゲゲゲの鬼太郎は好きだった。子供の頃、テレビアニメを欠かさず見た。
――ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲー ――
独特のテーマ曲がはじまるとドキドキした。特に三番の、――お化けは、死なーないー。病気も何にもない! ――のフレーズが子供心に強く刺さった。この頃、死ぬことの意味を知って怖くなっていた吉田は、この曲を聴いてどんなにお化けを羨ましく思ったか。できるものなら自分もお化けになりたいと、本気で思っていた……。
「現世のことについては、まだまだ分からないことがたくさんあるの。水木先生は現世に行ったときの事例を集めているようだから、あなた方も、行く機会があったら彼に報告すると喜ばれるわよ」
吉田の脳裏に現世に残してきた妻と母の姿がぼんやり浮かんできた。
「ところであなた方、現世にいたとき、神様に助けられたって感じたことはなかったかしら?」
講義の最後に問いかけた。
「そういえば……」
キャバ嬢が手を上げた。
「子供の頃、お父さんが事故で死んで、お母さんと二人で暮らしていたんです。お母さんは遅くまで親戚の家で働いて、私は一人で寝ていました。夜中に急に犬が吠え出したので、部屋を出たらお母さんがお風呂場で倒れていたんです。隣の家に飛び込んで、救急車を呼んでもらったから助かったんですけど、あのときって、死んだお父さんが……」
「きっとそうよ。お母さんまで死んじゃったらあなた一人になってしまうでしょ。心配になったお父さんが天国から来て、犬を叩き起こして帰って行ったのよ」
父親を思い出したのか、キャバ嬢の両目に涙が浮かんでいた。
「そういえば、ぼくも思い当たることがあります」
今度は吉田が話し出す。
「大学受験のときでした。翌日の受験票をカバンに入れて早めに布団に入ったのですが、夢の中に死んだ父が出てきたんです。ものすごい顔で怒っていたので、びっくりして飛び起きて受験票を見たら、別の大学の受験票だったんです。あれは、天国の父がぼくのミスを教えるために来てくれたのでしょうか?」
「間違いないわ。おっちょこちょいのあなたが、また失敗するんじゃないかって、天国でハラハラしながら見てたのよ。それにしても、せっかく危険を冒してまであなたを助けに来たっていうのに今まで気がつかなかったの? お父さんも、さぞがっかりしてたでしょうね」
母が教育ママで、いつも陰ながら味方になってくれた父を思い出すと泣けてきた。
「子供の頃、俺が悪さしたとき、天国の神様はお見通しよって、おふくろが口癖のように言ってたけど、あれも、あながちウソじゃないってことかもな……」
二人の話を聞いた野球選手がしみじみとつぶやいた。全身黒ずくめの男は、三人の話など何の興味もなさそうに、窓の外を見たままだった。
研修最終日を迎えた。
今日は一日がかりで、天国の施設を見学する日だ。
朝から西日が強い暑い日だ。
「この服、ホントかったるいのよねぇ」
この日丸の内さんは、帯を外した白装束をコートのように羽織って現れた。今日は研修所の外に出るので、仕方なく白装束だけ羽織ってきたようだ。
「今から公務員の特権を一つ見せるわね」
そう言って白装束のポケットから笛を取り出すと、空に向かって吹き鳴らした。小鳥のさえずりのような音色がこだまし、どこからか、ふわふわした雲の塊が下りてきた。四人は驚いて後退りした。
「大丈夫、これは『雲っこ』って言うの。公務員が使う乗り物よ」
その得体の知れない物体は、その名の通り雲でできた乗物で、白装束の胸ポケットの笛を鳴らすと、近くの雲がタクシーのように現れる。行き先を告げると、飛行機並のスピードで、目的地まで運んでくれる便利な乗物だ。ただ、快晴のときなどは、雲っこが見つからないので苦労するらしい。
恐る恐る乗り込むと、遊園地のコーヒーカップのような作りになっていた。五人がふわふわの椅子に向かい合って座ると、丸の内さんが「T302の入口まで」と行き先を告げた。雲っこは五人の重さをものともせず、軽々と浮かび上がり、音もなく目的地に向かって最短距離で飛び立った。
あっという間に見覚えのある三階建ての時計台が見えてきた。地面に下りると、直径三十センチぐらいのマンホールの扉に「T302」と書かれてある。
天国の入口だった。吉田を助けてくれたストロー隊にお礼を言いたかったが、休憩時間なのか、姿は見えなかった。
時計台を中心に数軒の建物が並んでいた。建物といっても、どれも木造で質素な造りのものだ。三階建ての時計台が「天国会館」と呼ばれT302を管轄する役所だ。
天国会館の右隣は二階建ての郵便局。天国の唯一の通信手段は手紙であり、手紙を書いてポストに入れると、公務員の配達員が定期的に回収する。それを一旦管轄の郵便局に集めて、雲っこで各地に運ぶのだ。各地から届いた手紙は、地区の配達員が同じく雲っこで届ける仕組みになっている。これもアマテラス様がお創りになった、天国インフラの一つだ。最近天国で発刊されるようになった『天国日報』という日刊紙も、毎朝雲っこに乗った配達員が配っている。
郵便局の隣には三階建ての長屋が建っていた。これは公務員宿舎で、丸の内さんも普段はここに住んでいるようだ。
天国会館の左隣に白壁の『天国ホスピタル』があった。怪我や体調を崩したときに治療をする施設だ。天国には、細菌やウイルスの類はなく、肉体的な病気にかかることはないが、不注意による怪我や、修行や公務を続けるうちに、ノイローゼやうつ病など心の病を発症することはあるらしい。そうした治療が必要なときに使われる施設のようだ。
T302の中心地から、のどかなあぜ道を南に向かって歩いていくと、同じ形の複数の建物が見えてきた。修行棟だった。A棟からJ棟まで十棟の五階建ての建物が中庭を囲むように建っていた。中庭の芝生に多くの黒装束が目についた。性別も年齢も様々だ。数人で雑談している者もいれば、ヒストリーを枕にうたた寝をしているものもいた。中に入ると、何人もの修行者とすれ違う。みんな天国時計をつけ、様々な色合いのヒストリーを小脇に抱えていた。すれ違うとき、軽く会釈をしてくれた。みんなもの静かで礼儀正しい。一階から四階までが修行者の個室で、最上階に図書館と集会スペースがあった。ちょうど四階に空き部屋があったので、中を見せてもらった。四畳半ぐらいの小部屋に、布団と卓袱台があるだけだ。あまりに質素で小さな部屋を見た吉田は心細くなった。
「今回たまたま出会ったメンバーは家族のようなものだから、これからも協力していくことね……」
丸の内さんは、修行者の様子をどこか羨ましそうに眺めていた。
そこから再び雲っこに乗ってT302地区の南端に向かった。ドーム型の大きな建物が見えてきた。その横を木製の柵が、隣の地区との国境のように続いていた。
そこは天国の入口の正反対に位置する『天国の出口』だった。
天国の出口は、入口と同じくT302と書かれた直径三十センチぐらいの小さなマンホールだ。これを見ると、地区ごとに入口と出口があり、修行のスタートから終わりまで地区単位で管理されていることがよくわかる。
出口の横に、ドーム型の建物にソフトクリームのような屋根を乗っけた建物があった。たくさんの子供達の賑やかな声が空に響いていた。幼稚園児ぐらいの子もいれば赤ちゃんもいた。ここは修行者が六歳になると入所する施設で専門スタッフが世話をする『クリームハウス』と言う施設だ。
この施設でピカピカに磨かれた魂は、隣の天国の出口から現世に旅立つのだ。
天国に入るときは、プラットフォームから一本道の天国ロードを昇ってきたが、現世に戻るときは、この出口から中間地点のプラットフォームまで下りて行き、そこから先は、背中の羽根を動かして、自分の意思で好きな場所に転生するという。
一通りの天国施設の見学を終えると太陽は東に沈みかけていた。急いで雲っこを呼んで研修所に戻ってきた。
久しぶりに太陽の下を一日中歩き回ったせいか、ぐったりして寝っ転がりたくなった。
丸の内さんから、三日以内に選択コースの申告書を出すように、三日間は研修所に待機するので悩んだら相談するようにと指示された。
話は変わるが、ここ数年、アマテラス様のご配慮で天国にも福利厚生制度が整ってきた。
例えば『天国日報』という新聞が発刊されるようになった。ここには、今日はだれが天国に来て、だれが修行を終えて現世に戻ったというような天国内での情報が掲載されている。
三年前には、単調な天国での生活に最低限の娯楽も必要だと、野球チームを作ることが認められ、天国日報のスポーツ欄に、チームの紹介や、選手や監督のインタビューなどが掲載されることもある。ちなみに、野球チームに入るには、公務員コースを選ばなくてはならない。
少し前まで、天国に来て公務員を選択するものはほとんどいなかったが、最近は時代の変化なのか、公務員コースを選択するものが増えているという。そのため、ストロー隊や指導教官、郵便局やクリームハウスのスタッフなどの既存の公務に加え、天国日報の発刊や野球チームなど、新しい職務を作って公務の幅を広げているようだ。