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天国の歩き方  作者: 三田村 保歩
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それから二年後、郷原は武ちゃんと丸ちゃんが結婚したことを、天国日報の人事欄で知った。アマテラス様が福利厚生の一環として天国憲章を改正し、公務員同士の結婚を許したのだ。かねてからこっそり交際していた二人はめでたく結婚したようだ。

郷原のもとに招待状が届いた。式場は「天国会館T302、三階・天空の間」研修最終日に、丸ちゃんに案内された、天国の入口の横にある時計台の建物だ。発起人「ツネゴンズ一同」とある。

会場に赴くと、ツネゴンズの選手が総出で受付やら会場設営をやっていた。みんなユニフォーム姿できびきびと動いていた。まるで津田組若頭と姉御の結婚式の様相だ。

久しぶりに吉田と再会した。天国に来てから五年が過ぎ、二十二歳になった吉田は、初々しかった新入社員のときより更に童顔になっていた。一緒の研修メンバーだったヒトミを紹介された。二人とも順調に修業を続けているようで、魂も年相応にきれいになっていた。

主役の武ちゃん、丸ちゃんは入口に仲良く並び、満面の笑みで皆を迎えていた。

津田さんが仲人となり、野村監督のボヤキ節の乾杯で式がスタートした。衣笠さんの味のあるスピーチに続き、星野さんが二年前、奥尻島での優勝決定戦、丸ちゃんから回し蹴りを食らった逸話を面白おかしく披露して、爆笑の渦が広がった。

続いて丸ちゃんからの近況報告があった。今後、指導教官は完全に郷原に引き継いで、自分はツネゴンズのマネージャー兼裏番長に専念すると言う。当の郷原には何の相談もなかったが、自分を信頼してくれた証として嬉しかった。

ツネゴンズのメンバーも二十名に増え、今年のペナントレースは、ライバルのボヤキーズと首位争いをしていた。津田さんは合宿所を自分の手で増築し、丸ちゃんがメンバーの食事、洗濯などフル回転で世話をしているとのことだ。

「丸の内のOLとは正反対だけど、生き生きしてるよな」

吉田に問いかけた。

「丸くなりましたよ。最初会ったときは、つっけんどんとして怖かったですから……」

最初の研修で、散々ダメ出しされたことを思い出しているようだ。

「つね子姉さんたら、天国にきてまであんなに頑張らなくてもいいのにね」

「つね子姉さん?」

ヒトミは丸の内さんから口止めされている本名をこっそり囁いた。彼女にとっては、やっぱり秋田の作り酒屋のつね子姉さんなのだろう。

郷原は、今の丸ちゃんが今までで一番輝いているように見えた。丸ちゃんの選択は正しかったと改めて感じていた。


先日天国日報の一面に、野球チーム以外にサッカーチームができると掲載されていた。更に、芸術家や映画監督なども、天国の新しい公務として認めていく予定だとも書かれていた。それを受けて、翌日の天国日報の芸能欄に『いかりやと志村、天国でドリフ復活か!』ワイドショーのような見出しに、多くの修行者が歓喜した。

モノクロの天国も、少しずつ彩が加えられていくようだ。


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