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第93話 カリブ、黒いオーラを放つ剣をもらう

 騒がしいところへ行くと、柄の悪い見るからに道を外れてた者たちがいた。

(カリブ)はそんな彼らが大人しく並んでることに奇妙さを感じた。

だが、恐らくここがそうなのだろう。

刻印を改ざんしてくれる裏の社会の者。

闇医者と同じく、国が認可していない商売だ。


 俺とカタリナはそよ列の最後尾に並ぶ。


「もしかして、裏ルートで刻印を改ざんするんですか? バレないんですか?」


 カタリナは不安に思いながらもそう話しかけた。


「バレはしない。噂によれば、国に仕えてたが訳あって辞めさせられた者が営んでると聞いた」


「兄ちゃん、急いでるからどいてくれや」


 彼女に答えていると、割って入り俺らを列からつまみ出す男が現れた。

その男は何食わぬ顔で先ほどいた場所に並んだ。


「おい、てめぇ舐めてんのか?」


 俺はその男に啖呵を切り、背に手をやった。


「あぁ? なんか文句あんのかよ!」


 その男が殴りかかる瞬間、俺は染み付いた癖に深く後悔した。

握ろうとした剣は無く、そのまま頬に衝撃を与えられて吹っ飛ぶ。

地面に倒れ込むも、俺は睨みつけた。


「ハハハ! こいつ勇者パーティーのカリブじゃねぇか! ダッセェ、剣持ってないのに握ろうとしてやんの」


 列に並ぶごろつき共に様々な声で笑われた。

クソ、この国から出てそういうのもおさらばしようとしてたのに!

最後にこんな仕打ちかよ!


「カリブ様、列が乱れました。今のうちに、先頭に並びましょ」


 カタリナは全てを理解して、そう言い放った。

あぁ、そうだよな。

こんなことに腹を立てても、もう世話ない。

早く国を出て、新天地で……。


「願い下げだよ!」


 奥から輩たちの中にかき分けてこちらに向かってくる誰かがそう声を漏らした。


「お前さんらは名と顔がこの国で知られすぎている。

改ざんするリスクが高すぎて、どんなに金を積まれても無理だね」


 老人はそう冷たく言葉を紡ぎ終わると、何事もなかったように奥に消えていった。

俺とカタリナは、ただその言葉を聞いて呆然とした。


「ハハハ! お前らに居場所なんてどこにもねーってことだよ。さ、とっととここから消えちまえ!」


 石を投げられながら、俺たちはその場を後ずさるしかなかった。

あぁ、どうやら俺らはスラブの人間以下の存在になっちまったらしい。


「あ、ちょっと待てや!」


「きゃっ!」


 背後からカタリナの悲鳴が耳に入る。

振り向くと、男たちが彼女の両手を拘束して舌舐めずりをしていた。


「お前の居場所は俺らのところだ」


「貴様らぁ! 大人しくしてればいい気になりやがって!」


 俺は殴りかかろうとするが、四方からの攻撃になす術もなく倒れた。

クソ、いくらなんでも数が多すぎる。

剣さえあれば、こんな奴ら。


「カリブ様! お願いします、従いますから。だからどうかこれ以上、カリブ様には……」


「ふーん、まぁ暴れてもらったほうが興奮するんだけどなぁ。仕方ない、いいぜ」


 男たちの手が、彼女の身体の隅々まで回された。そして、薄暗い路地裏の角へと集団は消えていく。


クソ!

クソ!

クソ!


 俺は勇者族のエリート、才を羨ましがられた男。

そんなこの俺様が、女1人救うことができねえって言うのかよ!


「な、なんなんだよお前! や、やめろー!」


 角の方から、男たちの阿鼻叫喚の声が響いた。

もしかして、誰かが?

俺は雀の涙ほどの力を振り絞り、彼らの後を追った。

角を曲がると、血の臭いが一瞬にして鼻腔を通った。


「お、お前が全員殺したのか?」


 目の前に映った光景に、思わず瞳孔が開く。

数十人はいた体格のいい男たちが、喉や胴を切られて絶命していた。

その男たちの血の海の中、ポツンと黒いオーラを放つ剣を握る何者かがいた。


「か、カタリナは!」


 俺はあまりの衝撃に我を失いかけるも、彼女のことが気がかりとなり正気を取り戻した。

周囲を見渡すと、血だまりの中にカタリナが倒れていた。

まさか、……彼女も!?

すぐに駆け寄り、様子を伺う。

よかった。

目立った外傷は無く、気絶しているだけか。


「た、助けてくれた礼はいう。だが、貴様は一体?」


「助けただと? 違うな、その女の額をよく見ろ」


 ローブの何者かは、そう返してきた。

俺は咄嗟に彼女の額に目をやる。

すると、そこには呪いの刻印が刻まれていた。


「き、貴様! カタリナに何をした!」


「答えずとも察しろ。お前には選択権などない、見殺しにしたくなければな」


 何者かはその黒いオーラを放つ剣を、膝をつく俺の目の前に突き刺した。

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