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第70話 カリブ、ミリアとの交渉を失敗する


 こいつら、トイレの中で何してやがんだ?

よく見りゃ天井がぶち壊れて、瓦礫も散乱してるじゃねぇか。

おまけにゴーレムがあの憎たらしい女2人を捕まえている。


「か、カリブさん! お願いです、助けてください!」


 あのミリアが俺様(カリブ)に、こんな目を潤わせて頼み込んでくるとはなぁ。

だが、いくらミリアといえど今までの無礼を許すわけにはいかない。

ここは少し、交渉の余地がありそうだ。


「ミリア! そんなに助けて欲しいなら、やってやってもいいぜ?」


「ほ、本当ですか!」


「あぁ、ただし条件が一つある。1発やらせろ」


 はは、喜んだ顔からみるみると頬が紅潮していきやがる。

そそる表情してくれるじゃねぇか。

そうだ、悩め悩め。

ま、悩んだところで生きたければ選択肢は一つしかないのだ。

床についたら俺様の寝技を使って、シュンの野郎から奪い返してやるぜ。


「わかりました。カリブさん、お願いします」


 ミリアがそういうと、隣のダークエルフは憎らしそうに俺を睨んできた。


「まぁそう怒るなよ。なんならお前も一緒にやるか?」


「ふざけるな! 誰が貴様なんぞと」


「あれ? そんなこと言っていいのかな? 助けるのやめよっかなぁ〜」


「くぅ……悪かった」


 うぅ、たまんなぁなぁオイ。

俺のことを見くびっていた女どもが、こうも服従するとは。

最高だ、早くヤリてぇ。


「ということだ、悪いがそこのモンスターには死んでもらう」


「やめといた方がいい。お前は部外者だ、今なら見逃してやる」


 ほぅ、喋るゴーレムとは珍しい。

なるほど、ミリアたちが苦戦するわけだな。

ま、俺様には関係ないが。

剣を抜いて、俺は力を溜め込んだ。


「ふん、やる気か。ならいいだろう、この女たちを握りつぶしてから……!?」


「喋りすぎだ雑魚! お前が視認していた俺は、残像だ」


 俺は剣術ハヤブサを発動し、死角から奴へ斬りつけた。

一撃目は石の硬さに剣が弾かれる。

へっ、クソ硬えな。

仕方ねえ、ドラゴンキラーを使うか。

二刀、三刀目は波のような衝撃波が周囲に広がると同時に、丸太のような両腕を切断した。


「やるなぁ、勇者の中でも才能は一番と噂されるだけのことはある」


「お前、ゴーレムのくせに物知りだなぁ。そうだ、俺様はこの国最強の剣士だ!」


 カエサルが老ぼれた今、俺様以上に才能がある男はいねえ。

今の悪評はただの間違い。

俺様の実力をもう一度見せつけてやれば、全部元に戻る。


「だがな、お前は一番にはなれねぇよ」


「あぁ!?」


「お前のその無駄にMPを消費する戦い方じゃ、どんなに強い技を覚えても意味ない」


 モンスター如きが俺様の戦いぶりにケチ付けるだぁ?

舐めたこと抜かしてんなこいつ。

俺は再びありったけのエネルギーを圧縮し、剣を握る。


「7星斬!!!」


 奴が腕を再生し終えた直後、ドラゴンキラーに匹敵する威力の斬撃を一瞬にして7回放った。

両手両足を切り、胴を水平に切り離す。

首から上が僅かに浮遊したタイミングで胴を巻き込み、最後に垂直で真っ二つに粉砕。

ゴーレムの身体は粉々になり、何も発しなくなる。


「はぁ、ハハハっ! ざまぁねぇな! ゴーレム如きが俺様に生意気な口叩くからこうなんだよ! しね!」


 肩で息をしながら、俺はゴーレムの破片を蹴り飛ばした。

たくっ、かっこよく華麗に助けてやろうと思ったのに。

締まりが悪いことしてしまった。

まぁいい、やることはやった。

さ、ミリアたちはどこだ……。

扉の方を見ると、ミリアはこちらに深く頭を下げた。


「騙してしまいごめんなさい! 身体は差し出せませんが、後日お土産を送らせていただきます。それでは!」


 早口でそう言うと、彼女は扉の向こうへ消えていった。

おい、おいおいおいそりゃぁねぇだろ!

俺様が助けてやったんだぞミリア!

急いでトイレを出ると、2人は巨体を担いで追いつける距離にいた。


「待てミリア! てめぇ、いつからそんな汚ねえ考え持つようになりやがった! 覚悟しろよ! 捕まえたら容赦しねぇからな!」


 後一歩、彼女の裾を掴める間合い。


「カリブ様! やっと見つけました」


 捕まえる確信を持ったその時、聞き馴染みのある声の主に進路を塞がれた。

鎧を纏い、俺とそう身長差がないブス女だ。


「カタリナ! てめぇ、よくも俺様のお楽しみを邪魔しやがったな!」


 手を振り上げると、腕を掴まれ連行された。

クソ、何なんだよどいつもこいつも。


「カリブ様申し訳ございません! ですが、カリブ様の試合がすぐなので急いでください! お叱りは後で受けます」


「クソクソクソ! ふざけんじゃねぇ!!!」


 この溜まりまくった鬱憤、晴らさずいられるか!

対戦相手をボコボコのギットンギットンのズタズタにしてやらぁ!

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