第68話 ミリアとカリナ、男子トイレへ突入!
私は、カリナさんが小走りで進んでいくのを少し遅れて追いました。
なぜ急にこんな事になったのかわかりません。
でも、どうやらエレファントさんを尾行しているってことは察しが付きました。
顔とか身体は大きくて威圧感ありますけど、彼が手下なのではないかと疑っているのでしょうか?
「ミリアさんは席に戻って構いません」
あれこれと考えていると、カリナさんは小さくそう声をかけた。
「せめて、何をしているのか教えてもらえませんか?」
そういうと彼女は少し速度を落とした。
「あれです」
彼女が指したその先にはフードを被った何者かがいました。
気づかなかったけど、あの人もエレファントさんの事を追尾している。
「カリナさん、なら万が一のためにもシュンさんたちに知らせた方が……」
だけど彼女は首を横に振った。
「お2人にこれ以上、悩みの種を作るのはダメです。
試合以外でも気を張らなきゃいけないのは、辛いでしょうから。
それに、やっぱり全部私がきっかけで起こった事ですし」
町に戻る途中、丘でもこんなこと言っていましたねそういえば。
彼女は今まで1人で生きて来た分、誰かに助けられると背負いすぎてしまうのかもしれない。
「カリナさん、シュンさんに言われたこと覚えていますか?」
だとしたら、私が彼女の負担を無くしてあげたい。
彼女は何も言わず、黙り込んだ。
答えを待たず、私は口を開いた。
「仲間を大切にしろっていうカリナさんのおばぁちゃんの言葉です。
あれはやはり、命を投げ捨ててでも! という意味じゃないですよ」
数秒程間を置いて、カリナさんはゆっくり応えた。
「分かっています。私はただ、恩返しがしたいんです。
仲間は損得じゃないと言われましたが、それでも助けられてばかりはどうしても……あっ」
考えすぎたのか、彼女は躓いて倒れかける。
「なら大丈夫です! 私も一緒に恩返し、手伝います!」
私は彼女の腕を強く掴み、転倒するのを防いだ。
「あ、ありがとうございます。ではお言葉に甘えます」
「はい!」
また少し、カリナさんと仲良くなれた気がします。
「あ、ミリアさん!」
嬉しくなっていると、彼女の顔が一段と険しくなる。
エレファントさんの後に続いて、フードの男がトイレに入っていく。
それを追いかけようと、カリナさんは動き出します。
「カリナさん、あそこは男性用ですよ? 流石に入るのは」
そういうと、彼女は首を傾げた。
カリナさん、あなたも立派な女の子なんですからそこは気にして欲しいです。
「とにかく! ここで待ち構えて、何かあったら突入しましょう! ね!」
「は、はい。そこまでいうなら」
ふぅ、何とかセーフです。
と思ったのも束の間、トイレから鈍い衝突音が響く。
誰かが壁にぶつかったみたい。
「あ、ちょっと待ってカリナさん!」
流石にこのハプニングが起きてしまったら、止めることは不可能なようです。
仕方なく私は覚悟して男性用のおトイレに突入。
「うわぁ、モンスターだぁ!」
中に入ると両手で頭を抱えた誰かが、一目散にトイレから逃げ出していきました。
あの方の後ろ姿、見覚えがあるような気がします。
「うぅ、クソ」
しまった!
改めてトイレの部屋を見ると、エレファントさんが壁を背に倒れ込んでいました。
吹き飛ばされた?
この大きな身体に打ち勝つ人がいるんでしょうか?
いや、そんな事より安否を確認しなくては。
「大丈夫ですか? 動けますか?」
声をかけてもうめき声しか上げない。
かなりの重傷みたいです。
早く治癒魔法をかけてもらわないと危ないかもしれません。
「カリナさん! 急いでここから……」
て、カリナさんどこに!?
というか、目の前にこんな壁ありましたっけ?
なんか動いてるような?
「ミリアさん、逃げて!」
これは……壁じゃなく、ゴーレム!?
ということは、この壁の下から聞こえる声はカリナさん。
もしかして、下敷きになってしまっている?
嘘でしょ、早く救出しないと。
「ダークエルフの身体向上魔法は、大したもんだ。
ゴーレムの一振りを防ぎ切るんだもんなぁ」
な、モンスターが喋った!?
巨大な岩のような拳が引き上げられると、その下からカリナさんが現れた。
双剣で攻撃を防いでいたんだ。
でも、ダメージがかなり入ってるのか立ち上がるのがしんどそう。
「ミリアさん、こいつはモンスターではありません」
駆け寄る私に、彼女はそう発した。
モンスターじゃない?
じゃあ、このゴーレムは一体……。
「そう、わしの魔法じゃよ」
え、これを魔法使いが操作しているってこと?
ありえない、モンスターをコントロールする魔法は闇魔法の中でも相当高度だと言われています。
そんな魔法を使える人間がどうして、エレファントさんを。
て、ありえなくないですよね。
イヴァンの仲間と考えれば。




