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第44話 シュン、数千の敵を跡形もなく消す。視点、シュエリー

 私がカリナの方を見つめると、無数の敵が振りかぶっていた。

シュンとミリアさんが駆けつけるには未だ距離がある。

ミリアsあんが矢で何体か射抜いているけど、それでも残りの敵が多すぎる。

何か手を打たないとこのままじゃカリナが危......。


 私は杖を手前の地面に向けた。

あぁ、彼女とここが転移魔法で繋がれば助けられるのに。

なんでできないの?

目の前の石ころを蹴飛ばすと、奥にあった石にぶつかり動きを止めた。

その瞬間、脳内という泉に水滴を垂らし、波紋が広がるようにじわじわとイメージが浮かび上がる。


 このイメージならもしかしたらいけるかもしれない。

そう思い、頭に紙を想像する。

その紙に線を描き、端と端に点を付ける。

そして、紙を丸めて点同士を重ねる。

出来たわ! 線が本当に点になってるじゃないこれ!


「光のマナよ集え!」


 私は思い描いたイメージを消さぬよう、より一層集中し光の魔法陣を展開した。

発光する粒が手前の地面に展開した魔法陣に集まり、次第に明かりを強くした。


「グルゥヴァ!!」


 ゴブリンキングが咆哮を発するとほぼ同時に、私は唱えた。


「テレポーション!」


 その言葉が言い放たれるや否や、カリナの身体は光包まれる。


「成功…よね。やった」


 いや、喜んでいる場合じゃない。

カリナの容体を確かめないと。

私は彼女の身体を膝に抱えて観察した。

右腕は骨折しており、切り口が血が流れ出ている。

私は応急措置でローブを破り、出血箇所に巻きつけた。


「シュエリーさんそれ、お母さんのって…」


 こちらに戻ってきたシュンは肩で息をしながらそう話しかけてきた。


「構わないわ。お母さんもきっと、間違ってないって言うと思うから…」


「そうだよね! 変なこと言ってごめん!」


「ミリアさん! カリナをお願いするわ」


 私は気絶した彼女をそっと抱え、ミリアに渡した。

立ち上がった私はシュンに視線を送る。


「準備はいい? シュン」


 そう声をかけるとシュンは無言で深く頷いた。

こちらを見ることはなく、数千の群れに目線を固定している。

その姿を見て私はやっと絶望的状況でありながらも勝てる見込むが沸いてきた。


「光のマナよ集え!」


 今度はこの一つの点から奴らのいる複数の地点を繋げる。

緑色の彼らの肌は地面に集まる光のマナによってより一層、明るく見えた。

私はもう一度、シュンの方へ顔をやる。

展開している魔法陣に手をかざし、敵に集まる光よりさらに眩しいエネルギーが集合していた。

いいわよシュン! それで全員塵にしてしまいなさい!

私は微かに微笑みながら再び唱える。


「テレポーション!」


 言い終わったコンマ数秒の出来事だ。

視界に映る隅々までもが光に包まれる。

あまりの輝きに私は一瞬で目を手で覆った。

轟音も今までの比ではなく、大きな滝が数百メートルという崖から流れ落ちるような凄まじいもの。

それが10秒は続き、後もう少しで鼓膜が弾けるのではないかと考えだしたらようやく止まった。

私がゆっくりと瞼を開くと、遠くに森が見えた。

壁も天井も消え去り、地面だけが洞窟にいたことを確かめさせる。

周囲は先ほどまでとは違い、実にのどかで時折、鳥のさやずりが聞こえるような穏やかさだ。


「助かったの私たち? ねぇシュン」


 洞窟を跡形もなく消滅さした張本人を見ると、何故か白目を剥いて倒れていた。

心配して仰向けの身体を屈んで見つめてみると、「あぅあぅ」と泡を吹いて変な音を出していた。

どうやら、自分で発動させた魔法の音にびっくりして倒れたよう。


「シュンさんって本当に凄いですよね」


 カリナを背負いながら、こちらに来たミリアさんは耳栓を抜いた。


「あなた、ドジになのに耳栓なんか持ってたなんて。ずるいわよミリアさん」


 私がそう口を尖らせて言うと、彼女はまた身体全体で「えー!!」と悲しさを表した。


「シュエリーさんって毒舌ですよね。まぁ、ドジなのを自覚しているから用意周到なんですけどね」


 彼女はそう言い終わると、私の隣に腰を落としてきた。

そして、シュンのほっぺをプニプニと触り優しく微笑んだ。


「あんなに凄い魔法を使って私たちを助けてくれたのに。こんな可愛い寝顔して、シュンさんって不思議な人ですよね」


 うっとりとしながら頬を揉む彼女に私は少し引いた。

白目剥いて泡吹いてるのに、これが寝ているように見えるってどんな目をしているのかしらミリアさん。

ドジとかそういう問題なのこれ?

でも、やっぱり最後はシュンが頑張ってくれるのよね。


「あっ! シュエリーさん頭撫でた! ずるいです! 私もやりたーい」


「な、撫でてないわよ! ただ髪についていたゴミを取ってあげただけ!」


 こうして私たちはとりあえず危機を脱することができた。

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