第3話 シュエリー、パーティーに誘う。視点、シュエリー
今、この不潔な大男を倒した美しい天才魔法使いの名前が知りたいって?
私の名前はシュエリーよ。
ま、貴族相手といっても私の魔法にかかればこんなもの。
さて、もう1人も片付けますか。
残りの男は、仲間を残してまるで鹿のような速さで逃げていった。
「お、覚えてろよ! 兄貴に頼んでお前をぼっこぼこにしてもらうからな!」
貴族のくせに無様ね、だからギルドのランク制度は信用できないのよ。
私の方がやっぱり強いじゃない。
「うわぁ!」
走る男の方を見ると、ぶつかって誰かが倒れていた。
何あの人、棒の先にうん◯?
おっと、危うくとんでもないことを想像しかけたわ。
とっとと帰りましょう。
「いってぇなあもう」
…ったく、しょうがないわねもう。
私は足を反転させて、倒れ込んだ男に接近した。
「そこの人、怪我なさって?」
あれ、この人どこかで見覚えが...えーっと。
「あっ! 勇者パーティーにいた人ね。盾使いのカタリナ、微笑みの女神と言われる弓使いのミリア、リーダーのカリブ。
あなたは~、ごめんなさい何をしている方なの? ていうかその茶色い人形持って一体どうしたんです?」
「あはは、ありがとう。
俺はシュンだよ。
この人形は、ちょっとスライムを探すためにね。
勇者パーティーは最近辞めさせられたから、こういうクエストしか受けられなくって」
私は彼の全身を、くまなく観察してみた。
細身でへらへらした顔、どこからどう見ても強そうには見えないわね。
だけど、勇者パーティーにいたのだからきっとかなりの実力者ね。
そうだ、いいことを思いついたわ。
「あなた、私とパーティーを組んでくださらないかしら?」
「えぇ!? そんな無理だよ、俺が君レベルと組むなんて」
「はぁ!? なんなのその言い方! 私の実力を舐めているようね!」
この方も私のことを村人出身だからと馬鹿にするのね。
いいわ、私の実力を見せつけて首を縦に振らしてやる。
「ええ!? 待ってよ! 俺は別にそんなつもりで言った訳じゃないから! ねぇ落ち着いてってば」
「うるさい! 勇者パーティーにいたお方が、勝負から逃げる気?」
私が魔法陣を展開した直後、彼はバタリと再び倒れ込んだ。
「まだ何もしていないわよ! あなた死んだふりでもしているの? 馬鹿らしい」
罵っても反応がない、もしかして死んでいる!?
私は急いで彼の身を起こした。
彼の腹部から「くぅー」、と音が鳴る。
「まさか、お腹が減って倒れたとかじゃないでしょうね! もう、起きなさいよ!」
何度か顔を叩いてみたが、お腹が時々鳴る以外反応がない。
このような人が、本当にあの勇者パーティーの一員だったの?
そうだ、魔力鑑定できるこの水晶で確かめてみましょう。
「鑑定!」
嘘...水晶が割れるなんて聞いたことないわよ。
私はもう1つの水晶を取り出し、自分を鑑定した。
やっぱり、偽物じゃないわ。
この人、水晶で測れないほどの魔力量を持っている…ということなの?
やっぱり、こんな見た目しても勇者パーティーにいた人はただ者じゃない。
いいわ、ますますパーティーに入れたくなってきたじゃないの。