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第27話 シュンの実家。視点、シュエリー

 私はカリナさんと共に、少し都市部から離れた郊外へ来ていた。

シュンに説明された道順を辿り、屋敷の前まで来てみたけどすごいわね。

貧乏とはいえ、外観はやっぱり派手な装飾がされている。

貴族が住んでますと言ってるようなものだわ。

私もこんなお家にいつか住めたらいいなぁ。


「さ、カリナさん入りましょ」


 ここまでずっと何を話しかけても、カリナさん素っ気ない返ししかなかったわね。

でも、この屋敷でくつろげれば少しは緊張がほぐれるってものよ。

大きな入口の扉を開くと、そこは外観からは想像もできない光景が目に入った。

たしかに広いけど、所々壁や床にひびや埃がある。

盗賊たちが廃墟にしていた屋敷よりは幾分マシといえるけど、貴族がこんな所に住んでても満足なものなのか?

そんな不思議な気持ちになっていると、奥からシュンと他3人がこちらに向かって歩いてるのが見える。

シュンはいつも通りの服装だけど、あの2人は恐らくご両親かしら?

あと使用人が1人だけ?


「おーいシュエリーさん、待ってたよ」


 シュンは汗まみれでこちらに着く。


「シュン、なんでそんな疲れてるのかしら?」


「あはは、床が抜けて親父がそこに埋まっちゃってね。

みんなで上げてたらシュエリーさんたちが来たから」


 私がそれに笑っていると、奥からシュンのご両親が来た。


「はじめまして、私はシュエリーといいます。

シュンさんとはパーティーを組んでいる仲間なんです。

そしてこちらはギルド運営スタッフのカリナさんです。

今日は夜分遅くに失礼いたします」


「あはは、これはこれは。

いつもシュンが世話になっているようだね。

どうぞゆっくりしていってくれよ」


 私が深々と頭を下げると、それに続いてカリナも無言ではあるが同じ動きをした。

シュンのご両親も貴族だけど、やっぱ人がいいようね。


「にしてもシュンがなぁ、シュンがまさか」


 彼の叔父様がそう口走り始めると、シュンは急にそわそわしだした。


「おいやめろ親父、なんか変なこと言おうとしてるだろ」


「うん? 変なことじゃないよう。

ただ、まだ子どもだと思っていたシュンが一晩で2人の女性を相手出来るほど立派な男になったんだなあと。

いや漢か、がはは」


「な、やっぱり言いやがったな。

違うからねシュエリーさん、俺はそんなこと思ってないから! 親父が勝手に妄想してるだけだから!」


「シュン! 私ばかりか、ちょっと会ったばかりのカリナさんにまでそんな邪な目で見ていたのね! 覚悟なさい」


 私は杖を持ち出し、シュンに向けて威力を弱めたブラストを放った。

後ろの壁に頭を打った彼は目を回している。

魔法を放った後は、瞬間的にヒートアップした頭がゆっくりと冷えていく感覚を感じ、やりすぎてしまったと認識した。

ご、ご両親がいるのに今のは流石にダメよね。

怒られるかしら~、チラっ。


「あなた! もしかしてあの若い子たちに興奮しているの? 私というものがありながら!」


 ご両親の方に顔を向けると、叔母様がまるで子どものように泣きわめきながら叔父様に詰め寄っていた。

どういう状況かしらこれは。


「誤解だ! 愛しいマイハニーよ」


「嘘よ! だって私肌だって最近少しカサカサしてきちゃったし、あなたが離れるのも無理ないもの。あー捨てられるんだ私―いやだー。て、あなたなにを...きゃあ!?」


 私は思わず両手で目を塞いだ。

叔父様が、叔母様の服を両手で引きちぎってしまった。


「本当に誤解だハニー。シュンの盛んな姿を見て、俺もお前と今日熱い夜を過ごしたくなっただけさ」


 頬を赤らめる叔母様に、すかさず叔父様は唇を奪おうと、顎を持ち上げた。

もしかして、お、おっぱじめたりしないわよねこれ?

ちょっと、シュン! 早く起きなさいよ!

カリナさんはなんでそんな無表情であの光景見れるの?

もうどうなってるのこのカオスな状況。


「こら! ご客人の前ですよお二人とも!」


「「いてて、ハナイさん。耳はやめてください」」


 このカオスな状況を救ってくれたのは使用人のハナイと呼ばれる女性だった。

使用人と主人という関係で本来は立場が反対なのだけれど、どうしてか今は彼女がご両親の耳をつねっている。


「まったく、反省しましたかお二人とも!」


「「はい、ごめんなさい」」


「たく、ただでさえ厳しい生活なのに服を壊しちゃってもう」


 ハナイと呼ばれる女性が睨むと、2人は「ひぃ」と怯えた声を漏らす。


「はい、これで直りました。着てください奥様」


 ハナイは叔母様の破れた上着を目にも止まらぬ速さで縫い直し、元の状態とほぼ変わらないまでに戻した。

シュンも裁縫が得意でよく直してもらってたけど、ハナイという方は比べれられないほどの早業ね。

て、関心している場合じゃない。

そうして、ご両親はハナイと呼ばれる使用人に連れて行かれ正座で説教を受けさせられていた。


「えーっと、じゃあシュエリーさん俺たちはあっちの部屋でお祝いの続きする?」


「え、ええそうね。あれは大丈夫なのかしら?」


 私は思わず、ご両親の方を指さした。


「あ、うん。気にしないでいいよ」


「ご、ごめんなさいね私も誤解して」

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