表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/122

第26話 飲み直し。視点、シュン

 俺は頭を抱えていた。

なぜなら、ずぶ濡れになった男が覚めるどころか更に顔を赤く染めたからだ。


「邪魔すんじゃねぇよ次から次へと。

この女も拒否してないから触らせたんだろ? きっとこいつも酔ってるから動かねえだけだ。

なぁ、そうだよなぁ姐ちゃんよぉ」


 男がそう詰め寄るも女性はただ無言で席に座っていた。


「なんとかいったらどうだ! こんのあま」


 女性のフードを勝手にとると、男はぶつぶつと何か言ってその場を去った。

なんだ? あんなに怒っていたのに偉く呆気なく下がったな。

ていうかよく見ると座ってる女性ってカリナさんじゃないか。


「待ちなさいあなた! 彼女に謝りなさい」


 シュエリーさんは女性から離れようとする男を捕まえて、えらい剣幕でくってかかった。


「あ? 耳長の気色悪い女に何を謝罪するんだ? つうか手を離せや」


「それよ。

あなたから声かけてセクハラして、挙句に暴言吐いて帰ろうだなんて失礼にも程があるでしょ! 彼女に謝りなさい! 今すぐ!」


「シュエリーさんもお酒飲み過ぎだって。

落ち着いて、もうカリナさんに迷惑かからないみたいだしいいじゃないかこのままで」


「シュン!

あなたはそうやってFランクとか馬鹿にされても黙って静観しているようだけどね、私は腹が立つのよ!

カリナさん、あなたもなんか言ったらどうなの?」


 そんなこと言って、いちいち反発してもキリがないだろうに。

こういう輩には穏便に過ごした方がいいに決まってるじゃないか。

まったく、シュエリーさんは飲み過ぎて少し暴走気味だ。

男とシュエリーさんの口喧嘩を俺が割って入り納めようとしていると、奥からガタイのいい店員が迫ってきた。


「そこにいる君たち! 喧嘩をするなら外でしろ! ほら、出てけ!」


 俺たちは店員に押され、店の外へと追い出された。

男は地面に唾を吐いてからこちらを少し睨み、その場を去った。

俺は男を捕まえようと暴れるシュエリーさんを取り掴み、水を飲ませる。


「何すんのよシュン! んぐ」


「シュエリーさんが暴れないって言うまで飲ませるからね! ほら!」


 口が塞がりこもった声しか聞こえないが、まだ怒っているトーンであることがわかる。

しかし、しばらく水を無理やり口に注いでいると彼女は冷静になったのか暴れなくなった。

一様演技かもしれないからと思い、さらに飲ませてみる。


「ごぽっ! 殺す気か! んぐっ」


 シュエリーさんはえずいて俺の腕を手で叩いた。


「あ、ごめん」


 鼻から水を逆流して垂らしているし、流石に演技じゃないな。


「あぁもう、水で服がびちゃびちゃなんですけどぉ!?」


 目を充血させながら彼女は俺の胸元を掴んだ。


「今度何か奢るから、許して! ていうかカリナさんはいいの?」


 そう言うと「ハッ」とした顔をしてシュエリーさんはカリナに駆け寄った。


「大丈夫かしらカリナさん? あの人に何かされてないかしら?」


「問題ないです。助けてくださりありがとうございます。

私はこれで」


 そう言うとカリナさんは月夜に照らされて煌めいて見える銀髪を靡かせ、その場を去ろうとした。


「いや待ってカリナさん。

これから一緒に飲み直さないかしら? 私たちのせいで店を追い出されちゃったし」


「確かに、シュエリーさんが暴れなきゃこんなことには。

どっか他の店のお酒奢りますよ」


「いや私は酒を飲まないので結構です」


 お酒を飲まないのになぜ酒場に?

俺とシュエリーさんは顔を見合わせて頭に?を浮かべる。


「じゃ、じゃあ何か好きな食べ物とか?」


 カリナさんは再び口を閉し、黙り込んだ。

あんまり人と付き合いたくないタイプなのかもしれないな。

無理に付き合わせるのも可哀想だし、どうするかなぁ。


「じゃあお家でお菓子でも食べましょう! ね!」


 シュエリーはそういうと、強引に彼女の手を握った。

そして、彼女に引き連れられてカリナも歩き出したので俺はそれを追いかける。


「シュエリーさん、夜中に騒いだらミエリーちゃんたち起こしちゃうんじゃ」


 そう耳打ちすると彼女は顔を向け、小さく声を出した。


「じゃああなたの実家とかどうかしら? 貴族なら実家はお屋敷なんでしょ?」


「えぇ!? そんないきなり無理だよ」


「迷惑かけた相手に何も返さないのシュン。

それにね、こんな真夜中に女の子を1人返すっていうのかしら?」


「もうわかったよ。

先に行って説明してくるから、後から来てよね」


「じゃあほら行った!」


 シュエリーさんに尻を叩かれた俺は、渋々実家の屋敷へ帰った。

はぁ、貴族っていっても貧乏なんだけどなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ