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第19話 シュン、マッサージをする。視点、シュン

「はぁ、はぁ。全員気絶させたぞ。これでいいか?」


 額の汗を拭い、俺はシュエリーさんに報告した。

馬車でくつろぐ彼女に、イラつかずには居られない。


「そう。これで明日、ギルドの人に引き渡せるわね。

後、料理の準備お願い」


「はいはいわかりましたよ。結局また雑用ね!」


 俺が皮肉をいうと、シュエリーさんはムスっと顔をしかめ、こちらを見た。


「あなた、私に借金があるの忘れてるの?」


「借金って、俺と組みたい建前なんじゃないの? カリブがいたときそんな感じのこといってたじゃない」


 馬車から降りようとすると、彼女は持ち運ぼうとした鍋を魔法で浮かせた。


「おい、なんだよ」


 鍋を馬車の中に戻したシュエリーさんはうつ伏せになり、杖で背中を指した。


「ふん、料理は後でいいわ。マッサージをお願い」


「あのなぁ、料理の後にそんなこともさせるつもりだったのか?」


「話をしたいんじゃなくって?」


 俺はため息を吐いて、仕方なく彼女の背中をマッサージし始める。

まったく、カリブと引けを取らないよ。


「あんっ。そこもっとお願い」


「へ、変な声だすなよ!」


 慌てる俺を見て、シュエリーさんは「ふふ」と鼻で笑う。


「さて、あなたが不満に思っていることを解消していきましょうか? あ、マッサージは止めないでね」


 はぁ、やっと理由を知れるわけね。


「私があなたと組んだ理由は3つよ。

1つは私のMP回復。

貴族と比べて私はMPが少ないわ。

どんなに強力な魔法を使えてもそれでは意味がないの。

2つ目はあなたの魔法。

星破壊しちゃうやつね。

あれは確かに普通は使えないし、役に立たないわね」


 淡々と容赦ない言葉を並べられ、心にグサグサとダメージを負わされた俺は若干マッサージの手を緩めた。


「ちょっと、手が止まってるわよ」


「少し休んだだけじゃないか、えいっ」


 仕返しのつもりで親指で強く、彼女の背を押した。


「シュン!」


 やば、やりすぎたかもしれん。

俺も盗賊たちみたいにムチでやられるんじゃないかと若干不安を感じた。

しかし、振り返ったシュエリーさんは頬を染めながらサムズアップをしてみせた。


「今の最高! その強さでお、ね、が、い」


 シュ、シュエリーさんってもしかしてとんでもない変態なのか?

俺はとまどいながらも手を動かした。

すると、彼女は先ほどまでとは違い、吐息を漏らし、艶のある声で話を再開した。


「あなたの、ま、法はぁ。たしかに普通では使えなぃぃのだけれどぉ! それはモンス、タァと戦ってた場合の話。

対人だったらぁ、あなたの力を見せつけるだけでぇ、色々な戦い方ができるのぉ、おほ」


 集中できないよこんな声だされながら話されても。

マッサージの強さを緩めると、シュエリーさんは不服な顔で一瞬こちらを見る。


「少し腕がつ、疲れたからさ。少し緩めさせてよ。

ていうか、対人なら俺の魔法が役に立つっていうけど具体的にどうやるんだよ? 

ねぇ、聞いているシュエリーさん」


「はぁ、折角気持ち良くなってきたのに。

もういいわ、その理由は明日アジトに乗り込んだらわかるわ。

今日は眠くなってきたから寝るわよもう」


 シュエリーさんはそっぽ向いて布に被さり、目を瞑った。

話の途中ということもあり、俺は彼女の身体をさする。


「まだ話終わってないじゃん。

せめて3つ目の理由は答えてよ。

ねぇ、ねぇってばシュエリーさん」


「うるさぁい! 3つ目は前答えたでしょもう! あなた、次私が寝るの邪魔したらどうなるかわかっているんでしょうね!」


 彼女は頬を紅潮させながら、ムチをしならせた。

思わず後ずさると、彼女は再びそっぽを向き静かになった。

それ以上は何も言うことができないというのは察してくれ。

とはいえ、俺がパーティーで雑用やMP回復以外にも役に立つことができるのか?

自分もほどなくして目を閉じるが、自分がどのように役に立つのかについて考えたり、シュエリーさんのマッサージされていた時の反応が頭に交互に浮かんだ。

とてもすぐに眠れる状態ではなく、明日は寝不足気味になった。

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