第13話 シュン、パーティーを組まされる。視点、シュン
俺は先ほど、スマインを撃退しちゃったんだ......。
「で、一体どういう訳か聞かせてもらおうじゃないの」
案の定、シュエリーさんに詰め寄られている。
「あはは、やっぱり言わなきゃダメだよね」
「「お兄ちゃんすごーい!」」
双子は身体全体で俺の腹部や腕にしがみついて離さなかった。
仕方ない、別に秘密にしたくてしているものじゃないし。
「わかった説明するよ。俺の魔法は6属性に分かれる前の源流というか古いやつらしいんだ」
シュエリーさんは目を点にしながらも頷いた。
うんまあ、魔法は炎・水・土・風・闇・光の6属性が当たり前だから受け入れづらいのは仕方ない。
「その源流ってのは今の魔法みたいに魔力を自在に操って発動できるものじゃないんだ。マナそのもの、つまり魔力をそのまま放出するしかない」
彼女は眉をしかめて頭を抱えた後、はっと何か理解したのか顔を上げた。
「つまり、魔法の操作ができないから加減ができないってこと?」
「そう。
とりわけ俺は魔力量が人より多すぎるから、発動させると星を破壊してしまう威力になっちゃうんだ」
「ヤバすぎるでしょそれ。
ていうかもしかしてだけど、横にあれ撃ったら......」
「うん、たぶん(地球が)壊れる」
シュエリーさんはドン引きしたのか後ずさり、そっぽを向く。
ここまで暴露したのには理由がある。
俺が無能で使えないやつというのを本当にわかってもらうためだ。
今まで、勇者パーティーで雑用やMP回復しかしてこなかった。
それでも役に立ててると思えてよかった。
でも実際は足手まといや邪魔者だったんだ。
シュエリーさんはそこまで悪い人には見えないけど、パーティーを組んだら徐々に嫌な気持ちになっていくだろう。
お互い組まないほうがいいんだ。
だから、馬鹿にされてもいいから今度こそ誤解されないようちゃんと伝えた。
「じゃあシュエリーさん、日も上ってきたから俺は帰るね。
恩は返したと思うからまたね」
「「いっちゃやだお兄ちゃん」」
俺は双子の頭を軽く撫でた後、足を踏み出した。
「あなた、どこへいくつもりなのかしら?」
振り返ると、声の主であるシュエリーさんは不気味な笑みを浮かべていた。
え、なんだあの顔は。
また何か企んでいそうな雰囲気を感じた俺の予感は、見事的中した。
笑みを浮かべながら近づいてきた彼女は、俺の真ん前で立ち止まり、話しかける。
「シュン、手を出してくれる?」
俺は不気味に思いながらも圧を感じて、仕方なくジェスチャーされた場所へ腕を伸ばした。
「はいこれ請求書」
シュエリーさんは俺の手のひらにびっしりと文字の書かれた紙を置いた。
「え? 請求書ってなんの?」
彼女はにっこりと笑い、指を上へ指した。
俺は薄々察して、冷や汗をかきながらも空を見上げた。
すると、彼女の家の天井は俺の魔法によってさっぱり消えていた。
「いやぁ、綺麗な青空だねシュエリーさん」
「そうねぇ、でも青空は家じゃなく外でみたいのよね」
「あははーですよね。それで、いくらになるんでしょうか? 俺さっきもいったけどFランクでして、生活費を稼ぐのでいっぱいいっぱいなんですけど。そこのところなんとかお願いできませんかね」
「うん無理! は、ら、え。1000万ジェニーぃ♡」
「む、無理だってそんな大金! 後さっき助けたんだからせめて修理代割り勘とかにしてよせめて!」
シュエリーさんは首を横に振り、要求を拒否した。
嘘だろ、こんな大金を払えなんて無茶苦茶だ。
俺が頭を抱えて膝から崩れ落ちると、彼女はトンと肩に手を置く。
「どうしても無理っていうなら条件つけてあげてもいいわよ。その請求書の最後のほう読んで?」
条件? 条件ってなんだ?
一括じゃなくて分割払いでも可とかいうものか?
くしゃくしゃに丸め込んだ請求書を開き、俺は最後の一文を読み上げた。
「どうしてもすぐに修理代を出せないなら、可愛い可愛いシュエリーちゃんとパーティーになること。
そうすれば報酬から少しずつ返済することも許す!?」
どういうことだ!?
シュエリーさんはFランクで魔法も発動できない俺と、まだパーティーを組みたいって考えているのか。
意味がわからない、さっき落ち込んでたじゃないか。
「まぁ、貧乏なシュンには他に選択肢なんてないわよね?」
「は、はい」
こうして俺は、中級魔法使いのシュエリーさんに、パーティーを無理やり組まされることになった。
正直、先行きが不安でしかない。




