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第10話 シュエリー、覚悟を決める。視点、シュエリー

 (シュエリー)はスマインの壁から跳ね返る魔弾を防御するため、周囲を水の壁で覆った。

魔弾は跳ね返ってきて水の壁を貫通するけど、速度と威力が落ちて目視で避けられる。


「へぇ、賢いねぇシュエリーちゃん。でもそれじゃあいつまで経っても俺を倒せないよぉ? おらおらおらおらおらぁ!」


 スマインは容赦なく高速でジャブを放ち、水の壁を攻撃した。

一方から魔弾を一点に集中して攻撃したり、周囲の壁に跳ね返らせて四方八方から狙ったりしてきた。

こいつ、本当に強いわね。

一点を狙われたら魔力をそこに集めなければならない。

四方八方に撃たれたら魔力を分散させなければならない。

不規則にそれを繰り返してくるから、壁の厚みが薄くなったところの魔弾の速度が落としきれない。


「うーん、傷だらけの女の子もエロいなぁ。そそるぜぇシュエリーちゃん」


 擦り傷とはいえ身体中に出来れば動きが鈍る。

やっぱり私、貴族には勝てないの?


「おらぁ、今度はジャブじゃねぇ! スマッシュだぁ!」


 スマインは先程までの魔法陣より、さらに大きく展開した。

同時に、焦げるような音に加えて髪が靡くほどの風がその拳型の陣へ送られていく。

殴るたびに魔法陣にマナが凝縮するのがわかる。

あれは、炎と風の魔法。

今までの比ではない火力の魔弾が飛んでくる。

私は負けるというより死を予感した。

シュンさんが助けてくれるという考えがあったけど、魔法を本当に発動できないとしたら?

先程の行動から真実味が増したからだ。


◆◇◆◇◆


 私は過去の記憶が頭によぎった。

それは、病気で寝たきりの母とのある日の会話だ。


「お母さん、どうしてお薬飲まないの? このままじゃもっと元気じゃなくなっちゃうよ」


「お薬はもう時期買えるようになるよ。お前は心配しなくていい」


 そういって、やつれた顔の母は私の頭を撫でた。

物心がつき始めた歳の私でも、母の病気が普通じゃないことはなんとなく察していた。

だから私は、立派な魔法使いになってお母さんとミエリー達に、美味しいものをたくさん食べれるぐらいのいい暮らしをしてもらいたいと考えていた。

でも、それが母を苦しめた原因だとはまだ知らなかった。


 私は冒険者になるには実力が認められればいいと思っていたんだ。

だけど、本当は高い入会料を払わなければ認められなかった。

私宛に届いた請求書の手紙は全て、母が私に知られる前にとっていた。


 ......それを知ったのは母の上に墓石が建てられてからだった。

その時から私は誓った。

まだ何が起きたのかなんて知るよしもないミエリーとエミリーのためにも、私は絶対に上級魔法使いになってやると。

お母さんのお墓が貴族に負けないぐらい豪華にしてやる!


◆◇◆◇◆


 今のは走馬灯というやつなのかしらね

だとしたら、本当に悔いが残るものね。

悔いが残りすぎて…...。


「死んでたまるかぁ!!!」


 私は残りの全魔力を前方に集めた。


「死ねぇ! 炎の乱撃スマッシュ!」


 スマインの魔法陣から炎の魔弾が飛んでくる。魔弾はカマイタチをまといながらスクリューして回転していた。


次の瞬間、目の前を眩い光が包んだ。

もしかして私、死んじゃった?

 

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