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7~イベント~

 ニーナの武器、魔女の接吻を創る際に1キロ周囲の敵を殲滅した為に十分程歩くがいまだ接敵していない。

 本当はサクッと雑魚狩りしてもらって自分の力に自信を持ってもらおうと思っていたのだが、いくら絶対に邪魔されたくないと思っての行動だったとは言え周囲1キロの殲滅はやり過ぎたのかもしれない。

 当の本人と言うと、レイが創り出したレイにも全くもって理解出来ていない謎物質の立方体である魔女の接吻に頬擦りしながらご機嫌に歩いているのだが。

 それから更に十五分程歩き、目的地に着いた事によりナビが終了する。

 結局接敵する事無く目的地、地上に見える建物は風化や魔物等に壊されたのかその殆どが屋根壁がボロボロになっていて、境界が曖昧ではあるが恐らくサッカーコート二面分程度の広さの遺跡へ到着する。

 地上に見える建物、と言ったのはこれだけ拓けた場所ならイベント的に地下があるのでは、と考えた為である。

 その地下で待ち受けるのはボス戦だとレイは考えている。

 魔女の接吻を創った時点でこのボス戦ニーナに任せようとは決めていたが、流石に雑魚で肩慣らしをして欲しかった。

 

「精霊さんいませんねえ。」

 

 ニーナが魔女の接吻を胸元で抱き、周りを見ながら言う。

 魔女の接吻の重さは約50キロである、約50キロである。

 

「それ重くないか……?」

「ほんのちょっとだけ重みを感じないでもないですけど、特に問題はありませんよ?」

 

 もう一度だけ言おう、魔女の接吻の重さは約50キロである。

 それを15歳の女子高生が平然と持っている。

 それだけでニーナは自分の能力を信じてもいいと思う。

 

「うーん、手分けして辛うじて残ってる建物の中でも見てみるか。」

「そうですね、では私はあっちを探してみます!」

 

 そう言って入った位置から左手に見える建物へと駆けて行く

 

「今のとこ魔物は見当たらないけど一応気を付けろよ!」

「分かってますよー!」

 

 ニーナを見送って自分はニーナの駆けて行った反対側の探索を始める。

 勿論ルナさんのネタバレは禁止しているので一軒一軒確りと確認する。

 確認しながら、ほんの八時間程前にオークの集落でも同じ様な事をしていたなと一日の密度の濃さを感じる。

 もっと言えばオークの集落どころか牢からの脱出から現在の精霊探しまで半日程度しか時間が経っていないのだが。

 

(あれ……働き過ぎなのでは……)

 

 そう考えるが現在のクエストはタイムリミット(ナターシャの余命)付きであり勿論休む訳にはいかない。

 因みに本人は感覚として三日程度だった、らしいので気付いてないが、半日動きっぱなしどころか牢の中で約二ヶ月不眠不休で過ごしている、能力がバグると人は色々と鈍感になるのかもしれない。

 

《マスター》

 

 十二時間労働とかブラックかよ、なんて考えてるとルナさんからお声がかかる。

 

「ん?どうしたルナ」

《ニーナが魔物に囲まれてますが、どうしたいですか(・・・・・・・・)?》

「どうした……え?もしかして見に行かない方がいい?」

 

 ルナさんの言い方がなんだか不穏である。

 恐らくニーナのピンチ、と言う訳でも無さそうなので合流の必要も無さそうではあるのだが、その様な言い方をされればむしろ気になってしまうというのが人の性、距離自体はそれ程では無いので軽く駆けてニーナの様子を見に行く

 若干後悔した。

 魔女の接吻はそれなりに重量があり、5メートル範囲で自由自在に動かせ壊れない、つまり硬さもかなりのものなのでそれなりにその物を武器としても使えるだろうが、能力的に考えれば魔道具よりの武器である。

 

「きゃはははッ!ほらほら逃げないと死んじゃいますよー!

 うふふッ次はどの子がトマトみたいになりたいですかー?」

 

 そこには魔女の接吻を両手で振り回し、時に投げ、時に操作して何体ものぐちゃぐちゃにされた魔物の死体と血の海を作り出しているニーナの姿があった。

 その表情は恍惚としており、頬を赤く染め汗をいて時に身体を震わせてはもじもじとしていた。

 レイが駆け付けてから数分その様な光景が続き、そして遂に生きた魔物の姿は無くなった。

 ニーナの足元は完全に血の海、周りの魔物は見るも無惨な姿、ニーナは呼吸荒く肩で息をしている。

 レイは僅か数メートルの距離でその光景を見ていた。

 ルナがどうしたいですか(・・・・・・・・)と聞いてきた理由を理解する。

 少し落ち着いたのか呼吸が整ってきたニーナが振り向く、その顔や服には魔物の返り血で染まっている、表情はいまだ恍惚の表情で上気し、マンガ的な表現で言えばその瞳にはハートマークがある様な状態だった。

 ゆっくりとニーナが近付いてくる、その足取りは覚束無い。

 それは別に魔物にやられたとか疲れ切ってるからでは無い。

 手を伸ばせば触れられる程の距離まで近付いて動きを止める、その顔はあまりにも淫靡で瞳は潤んでいる。

 そして先程までのゆっくりな動きが嘘の様に素早い動きでレイを抱き締める。

 

「佑兄……ごめんなさい……身体が火照って……」

 

 そう言ったニーナに押し倒される。

 

「佑兄……佑兄……」

 

 レイを呼び続けながら返り血に染った自らが纏っているものを一枚一枚脱いでいく

 まるで金縛りにあったかの様にニーナから視線を逸らす事が出来ない。

 そして最後の一枚、下半身を覆ってたそれを脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿をレイへと晒す。

 ルナのストップはかからない、あんな聞き方をしてきたのだこうなってしまえば止めようとは思っていなかったのだろう。

 僅か数メートル先には魔物の死体と血の海、噎せ返る程の血と獣の匂いの中で、そんなもの気にならなくなる程にニーナを抱いた。

 

「時間は大丈夫ですかいルナさんや。」

 

 約一時間何度も何度も抱き、現在ニーナはレイのシャツを着て膝枕で寝ている。

 

《マスター次第です。

 ああなってしまったニーナをそのままにする方が色々と問題だったので特に止めはしませんでしたが、既に一時間程ロスしているので巻き(・・)で行く必要があります。》

 

 まさかルナから『巻き』なんて言葉を聞く事になるとは思っていなかった。

 結局ボス戦はレイが片付ける事になりそうである。

 

「しかしニーナちゃん戦闘狂だったとは……」

《能力が上がったりした後の初戦闘だったから余計だと思いますよ。

 流石に普段からアレではCランク冒険者にはなれてないでしょう。》

「そうだよね?今回だけだよね?」

《…………はい。》

「その間はなんなんですかルナさん!?」

 

 ルナとそんな人間らしいやり取りをしているとニーナがもぞもぞと動く、目覚めたようだ。

 

「おはようニーナ」

「んー?おはよー?」

 

 寝惚けてるのかまだ意識がハッキリしていないらしい。

 暫く虚ろな瞳でレイと視線を合わせ、その顔が徐々に赤くなってくる。

 漸く脳が覚醒して現状を思い出し、あまりにも恥ずかしいのかレイからばたばたと離れる。

 

「おはようニーナ」

 

 改めて挨拶をする。

 

「あ……あの……おはよう、ごじゃいます…………」

 

 すごく動揺しているのが伝わってくる。

 そのあまりの可愛さに抱き締めたくなったが今は流石に逃げられそうだったので諦めた。

 自分の格好に気付いたニーナは周りを見渡して自分の服を探し、少し離れた位置に畳まれて置いてあるのを見付ける。

 それを拾い上げて建物の陰へと駆けて行く

 数分で着替えたニーナはレイのシャツを手に持って出てきた。

 ニーナの服は新品同様、とは言わないが先程まで血糊がべったりだったのが嘘の様に綺麗になっている。

 所謂『生活魔法』と言うやつである。

 どんなに魔力を込めても攻撃に転用出来る規模にはならないので膨大な魔力を持つレイからすれば本当に助かる魔法でだ。

 そして実はこの『生活魔法』は生活を便利にするちょっとした魔法なのは勿論なのだが『性活魔法』の側面もある。

 『生活魔法』の中に『避妊(アンバース)』などの性生活に必要な物も含まれているのだ。

 どの様な状況に置いても避妊率100パーセントを誇る深く考えても仕方の無い謎魔法なのである。

 閑話休題

 

「落ち着いたか?」

「あ、はい佑兄ごめんなさいです……」

 

 遺跡の中を二人で歩きながら会話をする。

 いまだに落ち着き切ってはいないようだ。

 あの後十分程わたわたとしていたニーナだったが、現状を思い出して漸く精霊捜索を再開する事が出来た。

 とは言えネタバレは禁止のままだが時間が押してる事もありナビは解禁した。

 なので今はナビに従って精霊の行方だとかイベントの開始位置だとかに向かっている。

 そんなに広い遺跡では無いのでニーナを抱いた位置から一分程度の距離だったが。

 

「ネタバレ禁止で一応進められる限りはきちんとイベントを進めるつもりだけど、もし時間がかかりそうだったらゴリ押しで突破する。」

「そうですね……私のせいで時間が余計にかかってますからね……」

「ごちそうさまでした。」

「佑兄恥ずかしいです……」

 

 行為を思い出したのか頬を染める。

 そんなニーナを見てブレンの街に戻る頃にはもう朝だろうが、帰ったらまた抱こうと心に決めるのだった。

 帰ったらと言うか気持ち的には今すぐ帰りたいぐらいだった。

 なのでこの後のイベントは本気で巻き(ゴリ押し)になる可能性の方が高くなっている。

 普段のニーナも勿論可愛いが最中のニーナは何倍も可愛くなるのがいけない。

 

「案の定地下か……」

 

 建物の一つに隠されていた地下への階段があった。

 絡繰りと魔法の二重で巧妙に隠されていたので、ナビを解禁してなかったら恐らくこの階段を見付けるだけでニーナを可愛がっていた時間ぐらい掛かっったのではないだろうか。

 

《マスターなら仕掛けなんて関係無いじゃないですか。》

「そうだな、ナビがあったからちゃんと仕掛けを解いたけど、そうじゃなかったら無理やり開けてたと思います。」

 

 階段を降りると二畳程の空間に扉があるだけ、隠されていた階段を降りてきたのだから当たり前だが精霊もいない。

 ここで足踏みしていても仕方が無いのでニーナと視線を合わせ、頷きあって扉に手をかける。

 魔女の接吻の能力の一つ、『恋人』固有能力の『拒絶』はどんな被害も一度だけ必ず無効化する、というものだがこれは逆に言えばその無効化が起こらない限りは能力が継続する。

 だから何があってもいい様にニーナには階段を降りる前に『拒絶』を使用してもらってる。

 レイは最初この『拒絶』の能力は目に見えない障壁を張る様なものだと思っていたのだがどうやら違うらしい。

 これが外部からの攻撃を無効化する能力だったなら見えない障壁を張る、だった可能性もあったが、『拒絶』はどんな被害(・・)も無効化する能力なので、その仕掛けはルナにも分からないらしく、そういうものなのだと考えるしかない。

 しかも恐らくではあるが『拒絶』で『生死』で肩代わりした死も無効化出来る可能性もあるのだとか。

 それが本当に出来るのなら、リアルゾンビアタックが出来そうだ。

 扉を開いて中へと入る。

 天井の高さは降りて来た階段の長さなどを考えると10メートルまで無いだろうがそれでも十分に高く、部屋の中はごちゃごちゃしているので正確な広さは分からないが地上の遺跡と同等かそれよりも広いと思われる。

 

「研究所……てより実験所って感じだな。」

「科学、じゃないですよね。多分化学(ばけがく)……錬金術、ですかね。」

「多分な、問題は遺跡があるんだから昔は人がいたんだろうが、今ではここが未踏の地なんて言われる場所の奥地、て事だな。」

「なんだよ騒がしいな……」

 

 ニーナと会話をしていると、入って来た扉からそれ程遠くない位置に寝起きなのか欠伸をかみ締め、茶色い髪はボサボサでパッと見はレイより若そうで、レイよりも身長の高い恐らく180後半ぐらいの白衣を着た男性が姿を現す。

 部屋に入った時にこの男に気付かなかったのは恐らくこの男性が床で寝ていたからだろう。

 レイは研究者然としたこの男見てなんだコイツという風にしか思わなかったのだが、ニーナの反応は違った。

 目の前の男を驚愕の表情で見ながらその名前を呟く

 

「ベリト……ベリト・ケミー……」

「…………誰」

 

 この世界で知ってる名前は数えられる程度しかないので当たり前だが名前を聞いてもピンと来ない。

 ただニーナの反応を見る限り余っ程の大物らしい。

 

「あー、そりゃ佑兄は知りませんよね。」

 

 呆れられた様に見られるがこの世界に来てからその殆どを牢で過ごしてるのだから仕方無いじゃないですか。

 

「ベリト・ケミー、この世界に九人しかいないSSランクの冒険者の一人です。

 基本的にこのSSランクの人たちって奇人変人ばかりで、基本根無し草で放浪癖があって、目の前のこの人みたいに人外魔境にいる事も珍しくないので緊急時捕まえられる様に全てのギルドに人相書きが貼りだされてるんですよ。」

 

 まさかのこの世界の最高戦力の一人であった。

 見た目は強い様には見えないがその格好とこの場を見た感じ恐らく錬金術師、やはり強いというイメージは全く無い。

 それでもSSランクの冒険者だと言うのだから強いのは間違い無いだろう。

 そもそもこの世界の錬金術はなんなんのか、少し前に語ったがスキル『言語理解』というものがある、その時は触れなかったがその本質は言ってしまえば自動翻訳である、『言語理解』なのに自動翻訳とはこれ如何にとも思うがそもそもスキルというもの自体が理解の及ばない謎の力なのだ。

 だからこの世界のその技術をレイやニーナは錬金術と呼んでいるが、それはあくまでレイたちに分かる言葉に置き換わっているに過ぎない。

 恐らく近い物として錬金術と翻訳されているので根底はそれ程差は無いのかもしれないが、元の世界の錬金術は普通に考えれば戦う為の術では無い、つまりこの魔法の世界の錬金術は某鋼の様に戦闘向けの術の可能性もある。

 さて、目の前の存在がSSランク冒険者、恐らく錬金術師のベリト・ケミーだと言うのは判明した。

 問題は現状である、レイはここでボス戦が発生すると予想していた。

 だが冒険者とは個人の善悪はあるものの基本的には人の味方寄りの存在の筈である。

 つまり、普通ならば戦闘が起こる筈は無い、普通ならば

 

「俺の睡眠の邪魔をした罪は重いぞ」

 

 そもそもSSランク冒険者って奴らが普通では無いらしい。

 確実にある程度チャートを飛ばしてイベントを進めている自覚はあるが、理由はどうあれこの場でベリトと戦闘になったのは間違い無い筈、しかしその理由が睡眠の邪魔をしたからというのは『勇者用イベント』としてはどうなのだろうと思わないでもない。

 それともチャートを飛ばしたせいでやっぱりフラグが抜けてるのか、とにかく時間が押しているので折角の初最高戦力との戦闘だが真面に戦ってやるつもりは、無い。

 

「これでも食らっときな。」

 

 ベリトは何処から取り出したのか、両手に一本ずつ手にしていた謎の液体が入った試験管をなんの躊躇も無くレイへと投げてくる。

 軌道を見た感じ恐らく空中でぶつけて割り、中の液体を反応させようとしている。

 直接ぶつけられるのならまだしも、反応させて気化されると流石に面倒臭い。

 レイ自身は仮に謎の液体を直接かけられようとりゅーさん、じゃなく硫酸の池を泳げる程度には薬品に耐性があるし、気体になったとて恐らく『状態異常無効』が仕事をしてくれる。

 しかしニーナは、多分レイの血を取り込んで『状態異常耐性』ぐらいは得てそうではあるが、そういう訳にはいかないのでレイは割る事無くその試験管を空中でキャッチした。

 

「マジか。」

 

 先程まで怠そうな表情をしていたベリトだが、流石にその光景には目を見開いた。

 ベリトの戦い方は基本的には薬品を駆使したものである。

 勿論仮にもSSランクの冒険者なのだから肉弾戦もそれなり以上には出来るが、その戦い方でSSランクまで上り詰めている。

 決して某鋼の様な錬金術では無い。

 そもそもあの異端とも言える解釈の錬金術はこの世界では主に『土属性魔法』で殆ど再現出来るのである。

 ベリトの戦い方の特性上、試験管はそれなりの速度で何かに当たれば必ず割れる、という程度には壊れ易く出来ていて、その強度は手で握れば子供でも十分に割る事が可能な程度であり、ベリト自身が試験管を手にしている時は指で落とさない程度に軽く挟んでいるだけ、つまり投げられた試験管をキャッチしようなんて考えれば手に当たった時点で割れ、中の薬品をその身に浴びる事になる筈である。

 

「この程度で驚かれちゃ困るぜ錬金術師さん。」

 

 そう言ってその二本の試験管の中身を口に入れ、そのまま飲み込んだ。

 

「おい!それは二つの薬品は合わされば気体になって体積が爆発的に膨れ上がるんだぞ!」

 

 流石にそれには焦ったのかベリトは声を荒らげる。

 しかしそんな事その戦い方を見ていれば気付いているし、なんならこの薬品はそのまま取り込めば人体にかなりの悪影響を及ぼす、というのだってルナさんからコソッと報告されている。

 

「『状態異常無効』舐めんなよ?」

 

 レイの様子に変化は無い。

 そもそもこの世界に来た時にレイに発生した『状態異常無効』と言うスキルはゲーム的に考えれば毒や麻痺等のバッドステータスを無効化するものなのだと考えがちだが、額面通りに捉えるなら平常を保つ(・・・・・)スキルであるとも言える。

 つまり状態の異常を無効化するならば、明らかに肉体に害を及ぼしそうな体内での気体化なんてさせる訳が無い。

 普通に考えれば薬品反応を無効化するとか意味が分からないが、相変わらずの理解の及ばない謎の力である。

 

「完全にバグキャラですよね佑兄……」

「チートキャラに言われると余計に刺さるから止めてくれ……」

「ところで、今にも顎が外れそう表情をしてるあの人放っておいていいんですか?」

「ああ、そうだな、ちょっと砕いてくる。」

「くだ――え?今物騒な事言いませんでした?」

 

 ニーナが何か言ってくるが、それを気にせず手に持ったままだった空の試験管を放り投げて、むしろもう外れてるのではないだろうか、と思う程に口を開いて驚愕の表情をしているベリトに一瞬で肉薄し、その手足の骨を全て同時に一呼吸のうちに砕く。

 あまりにも刹那的な出来事だった為か、立っていられなくなり床に倒れてから数秒して漸く声にならない悲鳴を上げる。

 

「本当に容赦ないですねえ……」

「これがいちばんはやいとおもいます(笑)。」

「その後秒単位で更新される人の気持ちも考えてあげて下さい。」

 

 一部の人たちにとって黒歴史となる呪文を唱える。

 数年後には十秒も二十秒も更新されてるのを見ると流石に不憫になる。

 

「でもまぁ手足を使い物にならなくすんのが本当に手っ取り早いのよね。

 多少加減ミスっても即死させるような事も無いし」

「元はそれなりに整ってる顔をしていた筈なのに、今では人に見せちゃいけないような表情してるんですが……」

 

 言われ改めてベリトを観察する、確かに言われれば中々に顔は良い、と思う、今は白目剥いて泡吹いてるので正直見せられないよ(・・・・・・・)という感じになってしまっている。

 パッと見は人間だと思っていたがその耳は尖っている、恐らくハーフだと思われる。

 尖った耳をした種族というのはそれなりに多い、人族ならばエルフやドワーフなど、後はこの世界の精霊も妖精の様な見た目をしているので多分尖った耳をしているのではないか。

 この世界のエルフは日本人がよくイメージするエルフと同じく耳長で、ドワーフは背が低く男女問わず差はあるもののガッシリした体格をしている。

 しかしハーフとなると見事なまでの合いの子となる、稀にどっちかに寄る、と言うより片方の特徴しか受け継がない子が生まれるらしいが、基本的にはこの世界のハーフはどっちつかずの見た目をしている。

 と、ベリトの種族が何なのかを考えている時にルナさんが教えてくれた。

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