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Hack Revolution  作者: 川瀬時彦
The fifth hack
19/26

Part.1 (5)

 俺にとっては散々な内容だったこないだの作戦、しかし彼女は俺と違いある程度の成果を残せたと思っているらしい。それは今俺の目の前で力説する彼女を見ればよくわかる。

「先日の私と望月での潜入作戦によりビル内のサーバーをハックしたわ。それ自体も喜ばしいことだけどそれ以上に重要なのは、彼らの弱点を割り出すことが可能かもしれないということ」

 彼女は腕組みをした状態から右手の人差し指をたてる。

「多くのサーバーをハックしてるなら当然どこか手薄になってるからそこを狙おうってことか?」

 光成がその意味を解釈した。

「いいえ、おそらく手薄、もしくは無人になっているところはそもそも私たちではどうやってもハックできないわ」

 彼女は否定する。

「どーしてだよ? 楽に勝てればそれだけで結構だ。無人のところだなんてハックしにいかないでどーする」

 彼女は人差し指を違うわねと言う様にふらつかせた。

 そして視線を横に落とし何かを思案した後、俺たちに説明しはじめた。

「そーね、まずはサーバーのネットワークについて説明するわ。ハックした各所のサーバー同士はそれぞれを結びつけネットワークを構成することができるの。もちろんそれぞれのサーバー間のやりとりも円滑になり、情報伝達もしやすい。でも私たちや彼らハッカーにとっての利点はそれだけじゃない。ネットワークを形成することによってサーバーのセキュリティは相互に増強しあいとても強固なものになるの。もちろん私たちのハックする二三のサーバーではその効果も薄い。しかしそれがいくつもの数になれば、どんな攻撃にでも耐えうるようになるわ。つまりそこを守る必要性はなくなるの。彼らの勢力化のサーバーには確かに手薄な場所がある。でも、そこはそもそも守る必要性がないくらいにセキュリティが高い場所なの。よって私たちがそこへ出向いていくらハッキングしても無意味なのよ」

「逆に言えばセキュリティが低い場所もあるってことか?」

「そうね。ネットワークの中枢にあるサーバーほどセキュリティが高くなり、末端のサーバーほどセキュリティは低い。私たちのハッキングでも破る事が可能かもしれない」

「つまり、敵が重点的に守る場所はセキュリティが弱いから、そこを目安に攻めればいいのか」

 俺は半ば勝手に話をまとめてみたつもりだった。

「いえ、そうとは限らないの」

「限らない?」

「ええ、確かに敵はセキュリティの低いサーバーも重点的に守ってるわ」

「低いサーバーも?」

「考えてみないさい。重点的に守るって事はそこがセキュリティが低いと公言するようなもの。それは敵だってわかってる。だから彼らはそれをカモフラージュする為にあえてセキュリティの高いサーバーにも多くの戦力を配置しているの。もし間違えてそんなところに攻め入ったとして、仮に敵を押してサーバーにたどり着いてもハッキングには長時間を要する。その最中到着するであろう敵の増援からの攻撃を耐え続けるのはどうしたって無理な話ね」

「セキュリティが低いサーバーと見せかけているとも考えられるわけだな」

「じゃあ、どーすれば本当にセキュリティの低い、つまりはお前の言う弱点を見つけられるってんだよ?」

 光成は種明かしが待ちきれないようだった。

「今回手に入れたサーバーは複数のサーバーとの通信の痕跡が見られたの。そもそもあのビルのサーバーは敵が私たちをはめるために用意した囮のサーバー。もちろんそんな役に重要なサーバーを持ってきたりしない、当然あれは末端のサーバーよ。でも、末端のサーバーがなくなるということはその次につながっていたサーバーが末端になるということ。そしてあのサーバーには他のサーバーとの通信の痕跡がある。つまりどういうことだか思うかしら?」

「現時点ではその通信されていたサーバーが末端になっている、と」

「そう、そこを狙えばいいの。敵はデータを消すことはしたけど、ネットワークから完全に切り離すことを忘れていたのよ。だから私たちがサーバーをハックしたにもかかわらず他のサーバーはビルのサーバーとコンタクトをとろうとしていた。もちろん今はそのミスに気づいたようでその反応もなくなった。でもそのときのデータは保存してある。目黒さん、これどれくらいで解読できそうかしら?」

 御影は目黒へとファイルを転送する。

「……一週間くらい」

 その覇気のない喋り方は普段と変わらない。

「休みに入るし、丁度いい頃ね」

 そう、彼女の言うとおり来週より待ちに待った夏の長期休暇なのだ。といっても俺は例年は何もしなくていいこと(宿題をのぞく)を楽しみにしていたのに、この発言によりどうやら面倒なことになることは必至なのでその待ち遠しさは半減した。

「はー、わかるまでまだそんなにかかるのかよ。何にもねえと体がなまるぜ」

 光成はそう言っては話が終わったものだと思い、立ち上がった。

「だから今日は別の作戦を実行することにしたの」

 御影の言葉に光成は興味を取り戻したようだった。

「弱点がわかんねえのに何を?」

「それは南高の勢力の話。今回はおそらく彼らのサーバーじゃないわ」

「奴らでなければ誰なんだよ?」

「それは私にもわからないの。だから今回はそれを調査する意味合いもあるわ。場所はここ」

 彼女はそういって地図で場所を示す。

「……ここにか?」

 その場所はハッカーが暗躍するにはどうにも似つかわしくない場所だった。

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