井の中のセイウチ
1話 酪天
海の音 香る潮騒 静かで彼の宝物の島
その浜辺で釣りをする一匹のセイウチ。此処には彼しかいない。この島とこの景色しか彼は知らない。
「...」
釣った魚を豪快に頭から食べる。お腹が空いたら食べる。疲れたら日向で日光浴。それが彼の毎日だった。まぁ、変わったことと言えば...
「何してるの?せいうち」
この島にいつからかいる女の子が隣にいるくらいだ。
「ねぇ何してたの?」
「...」
彼は喋らない。そもそも喋れない。何故彼女が此処にいるのか見当もつかない。
女の子は彼の隣で絵を描いている。海の、魚の、島の、そして一匹のせいうちを、飽きることもなく鼻歌交じりでキャンパスに書いていく。そんなものが楽しいのかと彼は首を傾げるが、まぁ、いいさと、また飽きる事なく釣りを始めた。
ある時だ。女の子がとある漫画を彼に見せてきた。
なんだこれは?とせいうちが思案していると、
「これ、今私が一番好きな漫画なの!天才バカボンって言うんだ」
彼はその漫画とやらに少し興味を覚えた。なるほど、彼女が描いていた絵に文字が加わったものらしい。
「...ww」
読んでみると、まぁおもしろい。腹の奥から込み上げる笑みを必死に堪えながら、どんどん読み進めていく。
「気に入ってくれてよかった」
彼女は僕に笑いかける。せいうちも、めったに見せない笑顔を彼女に見せた。
「あ、せいうち笑った!」
ハッと我に帰り恥ずかしさのあまり彼は顔を隠す。女の子はニコニコとせいうちの笑顔を見れて嬉しそうだ。
そんな日々が続けばいいのにと、せいうちは...
次の日、女の子はもうこの島にはいなかった。どこを探しても誰もいない。またこの島に来るのではないかと、せいうちは何日も、何月も、何年も待ち続けた。
...でも、彼女は来なかった。いつもの日課であった釣りや日光浴も全然楽しくない。心にポッカリと穴が空いた気分だ。
「...」
...思えば、自分はこの島と海と釣りしか知らない。あの海の向こうは全く知らない。
「...」
行ってみようかな?彼がのそりと体を動かし海の中に入った瞬間だった。
「!?」
ドボンと、足を滑らせ、海の中に顔面から入ってしまう。海の中にどんどん沈んでいく。そういえば、ろくに体を動かして無かった。泳ぐ方法なんて知らない。本当についてないと、せいうちは薄れる意識の中、目を閉じた。
初投稿。やり方よく分からん。