第二話 私は提案にのる事にした
少しでも楽しめましたら幸いです。
ルーシェからの唐突な誘いに戸惑っていると
説明するように話を続けてくれた。
「ごめん、変な言い方しちゃったね
要は、僕の国に亡命しないかってことだよ」
「ルーシェ、それって意味分かって言ってるのよね」
他国に亡命すると言う事は今住んでいるこの国の
全ての権利を捨てるということである。
重要な情報などを握っていれば命も狙われる。
しかし、よく考えてみると、私はもう失うものはない、
私が気にするのは研究が続けられるかどうかだ。
「もちろん、僕としては
アリアの研究を継続させるのが目的だから」
心を見透かしたような提案をしてくるルーシェ。
私も気持ちは固まりつつあった。
「そう言うってことは、
研究施設かなにかに所属するってことかしら?」
最悪ラボに閉じ込められて実験、研究の日々。
でも、別に悪くないと思える。
「いや、アリアにはこちらの学院に来てもらうつもり、
もちろん研究室も用意するよ」
予想していた答えと裏腹に、
あまりに高待遇すぎて逆に怪しくもある。
しかし、私は研究が続けれるならそれでいい、
それなら後は決まっている、ルーシェを信じるだけだ。
「分かった、ルーシェを信じて付いて行くわ」
あっさり決めた私に驚き顔のルーシェ。
直ぐに破顔して嬉しそうにする。
「良かった、この状況で断られたら……しないと…」
何か最後は不穏な事を言ってたようだけど
あえて聞かなかったことにした。
「どうせ、失うものなんて無いから助かったわ
ありがとう、ルーシェ」
「お礼なんて必要ないよ、
僕も国の為になると思っての事だから」
ルーシェの言葉は私の研究にそれだけの価値があると、
言ってくれているような物だ。
自分自身を褒めそやされるより嬉しい言葉だった。
まあ、容姿で褒めそやされたことなど無いけど。
「それで、具体的な計画はあるのかしら」
流石に爵位を持って亡命すれば国際問題になりかねない。
他の学院から生徒を引き抜いたとなれば醜聞に繋る。
タイミング的には私が爵位を失って学院を去る時だろう。
「何もなければ、退学のタイミングで
こちらの学院に編入してもらうだけなんだけど」
ルーシェが何かに対して警戒しているのは分かった。
恐らく聞いても教えてはくれないだろうけど。
「その言い方だと、何かあるかのようだわ」
「うん、そうならない為にも緊急事態として、
本国から応援を呼ぶよ、明後日には到着すると思う」
彼の母国ってエルファリス皇国だったはず、
馬で飛ばしても一週間は掛かるはずだけど?
そんな思いが顔に出ていたのか彼は悪戯っぽく笑うと
「ちょっとした極秘ルートがあるんだ
今は教えられないけど、ごめんね」
「私のために動いてくれるのだから、
深い詮索はしないわ」
あの言いようだと国家機密も関わっている気がする、
余計なこと知らないのは身の安全を図るためでもある。
「本当にアリアはいい娘だね、
この国は後悔するよ君を手放したことに」
またしても、私を褒めそやそうとするルーシェ。
社交辞令的なものだと分かっていても彼に言われると、
胸が温かく感じるのは不思議だった。
「それじゃあ、私は荷物の整理をしておけばいいかしら」
「そうだね、持って行きたい物と置いて行っても良い物
それぞれを仕分けしてくれてると助かるかな」
話を聞いてると配送の手配もしてくれるような雰囲気で
至れり尽くせりの高待遇である。
高待遇ついでに少し厚かましく聞いてみる。
「実験器具は持っていっても良いのかしら?」
「市販品ならこちらで用意するから
特殊な器具だけ教えてもらえればこちらで運ぶよ」
想定通りの言葉に、隠しきれず笑みがこぼれる。
それを見定めたルーシェは呆れ顔で言う、
「アリアって、本当に研究の事しか頭にないよね」
「私から研究を取ったら何も残らないわ
貴方もさっきそう言ってくれたじゃない」
ルーシェがさっき言ってくれた言葉を思いだす。
私の言葉を聞いて、彼が何故か慌てて弁明する。
「確かにアリアの研究は大事だけど
それ以上に君という存在が重要ってことで……」
「????……同じことではないの?」
ルーシェの言っている意味が分からず首を傾げる。
「はぁ、アリアも相変わらずだね
必死になった僕が間抜けだったよ……」
良く分からない内にルーシェは一人納得して溜息を吐く。
普段の彼は優雅な振る舞いで澄ました印象が強いけど、
たまにこうやって一人で狼狽する癖があり少し心配だ。
「兎に角、私は荷物の整理をしておけばいいのね」
「それでお願いするよ、
あと明後日まではなるべく出歩かないでね」
今更、退学になった私などに、
興味を持つ輩などいないとは思うが心に留めておく。
ルーシェは再度念を押すと明日また来ると言って帰った。
私はそのままベッドに横たわると目を瞑る。
ルーシェのおかげで先程まで感じていた不安は拭い去られ、
改めて研究が続けられる喜びが湧き起こる。
居ても立っても居られなくなった私は
ベッドから起き上がると実験器具が置かれた机に向かう。
心を落ち着かせるため、荷物整理は後回しにして、
部屋で出来る実験研究を始めた。
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