コロナウィルス禍の中から見える差別と偏見
(* ̄∇ ̄)ノ 奇才ノマが極論を述べる。
コロナウィルス禍の自粛が続く中で、家庭内暴力、虐待などが増えている。
自宅で長期間、家族が共に過ごしていることがストレスの原因になっている。コロナ失業もいよいよ増加し、社会不安の高まりから身近な弱者をストレスの捌け口にする事件が増えそうだ。
緊急事態宣言の延長により外出自粛は続くことになり、家庭内虐待は増加すると思われる。
またコロナウィルス禍の中で、医療感染者への『コロナいじめ』が現れた。
■法務省
以下、法務省のホームページより
『新型コロナウイルス感染症に関連して,感染者、濃厚接触者,医療従事者等に対する誤解や偏見に基づく差別を行うことは許されません。
公的機関の提供する正確な情報を入手し,冷静な行動に努めましょう。
また,法務省の人権擁護機関では,新型コロナウイルス感染症に関連する不当な差別,偏見,いじめ等の被害に遭った方からの人権相談を受け付けています』
コロナウィルスによるイジメ、ハラスメント、差別などの問題が目につくようになっている。
■ジャパニーズ、イジメ
日本のイジメの実態がアメリカCBSニュースで報じられた。タイトルは、
『窮地に立つ日本の看護師、相次ぐ攻撃的な“コロナいじめ”に直面』
内容は、
『現場で働く日本の看護師や医師たちの肩には、さらなる重圧がのしかかっている。それは、同胞である日本人から受ける、いじめ、ヒステリー、そして、ハラスメントという重圧だ』
コロナウィルス禍の中で、日本の医療従事者が差別や偏見によって虐げられている様子が、海外で報道された。
「なぜ看護師が外を歩き回っているんだ? 馬鹿げている。ウイルスが広がっているのはお前のせいだ」という罵倒。
公園では子供を連れた看護師が、
「病院で働いているんですよね? ここから出て行ってくれませんか」と言われた話など、看護師が保育施設に子供を連れてこないように言われた話などが紹介された。
■不当な批判に対する声明
2020年2月22日、一般社団法人日本災害医学会が声明を出した。
『新型コロナウィルス感染症対応に従事する医療関係者への不当な批判に対する声明』
ダイヤモンド・プリンセス号で対応した医療従事者が『ばい菌』扱いされていたこと、謝罪を求められていたことに対する抗議だ。
日本災害医学会
「新型コロナウィルス感染症対応に従事する医療関係者への不当な批判に対する声明」
https://jadm.or.jp/sys/_data/info/pdf/pdf000121_1.pdf
現場で人命を救うために活動した医療者が、職場において『バイ菌』扱いされるなどのイジメ行為。
子供が保育園、幼稚園から登園自粛を求められたこと。
職場管理者に現場活動したことに謝罪を求められたなど、の人権侵害に抗議する声明文。
■旧優生保護法
人は不安になると他者に責任転嫁したり、関係があるとした者へ攻撃する、または自分より弱い相手に八つ当たりで暴力的な行動を起こす生き物。
さらに日本人にはハンセン病に対する差別など、病気に対しては根強い差別心がある。
ハンセン病患者に対し、強制隔離や入所者が結婚する条件として行われていた優生手術(避妊手術)などの『旧優生保護法』が、病人への差別心を育てたのかもしれない。
1948年から施行された優生保護法は、優生思想のもとに、強制隔離、中絶や不妊手術を強制し行っていた。
優生保護法は子供を減らそうという人口政策の一環として行われ、強制不妊手術の被害者は1万6千を越えると言われている。
障害のある人は産まれてくるな、という恐ろしい思想がかつての日本では法律となり施行されていた。
法律もまた人の創作物であり、間違うこともある。人に無謬はありえない。そして、過ちと解れば直さなければならない。
1996年に、優生保護法は『母体保護法』へと改正された。旧優生保護法とは24年前には日本に存在していた。
国の『ハンセン病問題に関する検証会議』の最終報告書によると、1949年から1996年までハンセン病を理由に不妊手術をされた男女は1551人。堕胎手術の数は、7696件に及ぶ。
■映画、もののけ姫
「侍と百姓だけの時代劇が取りこぼした人を描こうとした」「業病と呼ばれる病を患いながら、それでもちゃんと生きようとした人々のことを描かなければならないと思った」
宮崎駿監督が映画『もののけ姫』で、ハンセン病の患者をモデルに描いた病者を出演させた訳をこう語る。
■精神病院と隔離
日本は精神病院が世界一多い国である。
世間体を気にする日本人の体質が、日本の精神病院の増加を促したが、この異常な状態を知る人は少ない。
日本は、精神病院のベッド数が世界一多い。一般の疾病の入院日数が30日であるのに対し、精神科への入院日数はその10倍以上(390日)になっている。世界の主な国と比較をしてもこの入院日数は異常と言える。
一般病院の精神科も加えたベッド数は約34万。
世界の精神病床の総数は約185万であり、その約五分の一を日本が占めていることになる。
世界の精神病入院患者の五分の一が日本人であるとも言える。
OECDの調査によると、アメリカやドイツ、イタリア、カナダ、などは千人当たり0.5床を下回る。千人当たり1床を超えているのはベルギー、オランダ。人口当たりのベッド数を見ると、日本では人口千人に対し2.7床で、千人当たり2床を越えているのは日本だけとなる。
これには日本の精神病院の入院日数の長さが原因になっている。
世界で精神病床の入院日数の平均が50日を超えているのはポーランドと日本だけであり、150日を超えているのは日本のみとなる。
世界中のほとんどの国で、精神病患者が50日以内に退院しているが、日本では平均約296日もかかる。国際的にみると異常な数値となる。
■奇異なる日本の精神医療
かつて日本医師会長、武見太郎(1983年79歳没)が、私立精神病院を牧畜業者と指弾した。
入院患者を家畜のように扱う精神病院の経営を痛烈に批判した。この言葉は日本の精神医療の異様さを語る歴史的な名言とも言われる。
1950年代末から、社会治安を守るために精神病者を精神病院に入れよう、というキャンペーンを国が行うようになる。
1960年に医療金融公庫の融資が始まる。
1965年『精神衛生法』が改正される。
『緊急措置入院制度』が導入され、精神病者を本人の同意無く、簡単に入院させることができるようになる。
その後、国の低金利融資を受け私立精神病院の建設ラッシュが続く。精神病者を多く長く入院させることで経営を続ける私立精神病院の在り方を、武見太郎はまるで牧畜業者と同じだ、と非難した。
病院を経営する為には、精神病者の長期入院が利益率が高いとして、日本の精神病院のベッド数が増加していった。
これを後押ししたのが、精神病者を治療するよりも、隔離、監視し社会から排斥すべし、という当時の民意が背景にあると思われる。
治療よりも監禁を優先した日本の精神医療。
1960年から精神病の治療の進歩を諦めたとされ、現代では日本の精神医療は他の先進国に比べて50年は遅れている、と言われるようになる。
■宇都宮病院事件
1984年の宇都宮病院事件では、
入院患者を病院裏の畑で農作業に従事させ収穫物を職員に転売する。
症状の軽い入院患者に他の入院患者の食事介助をさせ、介護日報をつけさせ、患者を管理する患者職員として、無給で働かせた。その際、医療業務である注射や点滴までも行わせた。
ベッド数を上回る患者を入院させた。
死亡した患者を違法に解剖した。
などの違法行為が行われていた。また、入院の必要が無いのに監禁された、というもと患者からも訴えられた。
1983年4月、食事の内容に不満を漏らした入院患者が看護職員に金属パイプで約20分にわたって乱打され、約4時間後に死亡した。
また同年12月にも、見舞いに来た知人に病院の現状を訴えた別の患者が、職員らに殴られ翌日に急死している。
この事件は国連人権委員会で討議され、日本政府に改善勧告が出されている。
事件発覚までの3年余で、院内死した患者は200人以上に上るという。
『入院患者は固定資産』『精神医療は牧畜業』とも揶揄されるのは、資本主義リアリズムの末期状態だろうか。
収容ビジネスの次のターゲットは、認知症の高齢者だ。日本の精神病棟は、新規の精神疾患の入院者が減る傾向にあり、穴埋めするために認知症患者を入院させている。
■まとめ
社会治安を守る為に異物を排除しよう、というのは日本に限らず世界で見る人間の宿痾でもあるのだろう。
社会不安が増大する中で、人権軽視となり人権侵害、イジメ、ハラスメントなども増大する。
そしてときには経済的に利用するなど、法律化されたものなどある。大衆の恐れを利用して作られた、人間の牧畜業と揶揄される精神病院は、法律に守られ国の支援を受けて作られた。
人の不安が人を排斥し、またその恐怖を利用してビジネスに繋がることがあった。
それが愚かな間違いであったことをこの国は一度学んでいる。
現状、問題になるのは、新型コロナウイルス感染症の患者、感染者の治療に当たる医療従事者やその家族に対する異常な偏見と差別、嫌悪など。
これらに対し、日本赤十字社が動画をネット上に流している。
タイトルは、
『ウイルスの次にやってくるもの』
コロナウィルスへの恐怖から人と人が傷付けあい罵りあう状況とは、ウィルスより恐ろしいかもしれない、と警告する。
「非難や差別の根っこに、自分の過剰な防衛本能があることに気付こう」
と、この動画の中にある。
医師や看護師の子供がイジメに遭うだけでなく、施設から拒否される事態まで発生しているのは異常な事態だろう。
また、感染者に対する差別言動やインターネット上のヘイト投稿、デマの流布などが全国各地で相次いでいる。『被害者』を『加害者』のように扱う事態が現れている。
休業や外出の自粛が要請されている中で,DVや虐待の増加も懸念される。
コロナウィルス禍から、差別と偏見と嫌悪が広がりつつある。
病を恐れての差別が何に繋がるか。
感染への不安が差別を生み、その差別を恐れて症状を隠す人が増える。症状を隠したまま日常生活を行い、結果として感染が拡大する。
歴史において伝染病とは差別と虐殺の歴史でもある。
14世紀の欧州を襲ったペストの流行では、ペストの感染源だとされてユダヤ人が虐殺された。その数は16,000人。
伝染病の古典的な『ソーシャルディスタンス』とは、差別と虐殺のことを言う。
コロナウィルス禍の中で、民族差別、感染者への差別、医療関係者への偏見、イジメに虐待が問題になっている。
この機に今一度、人権とは何かを調べてみるのもいいのではないだろうか。
そして、現場で苦労している医療関係者のやる気を削ぐような行為は慎むべきである。
■最後に
コロナウィルス禍による人権侵害、虐待、などは、法務省の人権相談窓口へ。法務局は相談窓口の電話利用やホームページのインターネット相談をを呼びかけている。