第4話 ユーリ 15歳の誕生日④
夜になって俺は夕食を食べに食堂へ向かった。するとそこには使用人総出で俺を迎えてくれて、リュートさん、カーラさん、シュウ、両親、そして愛しのアンリがランと共に迎えてくれた。俺が食堂に入った瞬間、アンリが俺に飛びついてきた。
「お兄様、誕生日おめでとうございます!!」
ああ、、、最高だ。
「アンリ、ありがとう。」
俺はそう言って笑い返す。その両親や師匠2人からもお祝いの言葉をもらい、内内でパーティをした。うちの家は俺たち家族のうち誰かが誕生日を迎えた際には使用人も席についてみんなでご飯を食べる。俺は実はそれが楽しみだったりする。そうして俺は楽しい時間を過ごした。
パーティが終わってそれぞれが各々の仕事なりなんなりに取りかかったところ、父さんの号令で書斎に家族とシュウ、師匠2人とレヴィア、ランが呼ばれた。
「父さん、用事ってどうしたの?」
「うん、まずはだ、お前へ誕生日プレゼントを送りたいと思う。」
そう言って父さんは俺に俺の身長より少し短いほどの杖を渡した。
「これって杖だよね?でもなんか違う様な、、、」
「説明は後でする。先にアリア達からもある様だから受け取れ。」
俺は言われた通り母さんの方をむく。
「私からはアンリと一緒に送るわね。はい、アンリ、渡してあげて。」
「お兄様、アンリはお母さんと一緒にお兄様に似合うと思ってこの前街に行った時にネックレスを買いました!」
俺はアンリと母さんが選んでくれたネックレスを受け取る。それはチェーンに金色の金属を加工したものを土台として、その上に赤い宝石が一つ、美しく嵌っていた。
「ありがとう、アンリ、母さん。とても嬉しいよ。」
「えへへ、、、」
俺はお礼を言ってアンリの頭を撫でる。
「その金色の基盤だけど、オリハルコンでできているわ。」
「うん、そうだろうと思ったよ。高かっただろうに、、、ありがとう。」
「良いのよ。それを見た時に目をすごく奪われて、あなたにはこれがふさわしいってアンリと私は引きつけられたのよ。ただ不思議なもので店員さんにはそれが普通の金でできたものに思えていたらしくてオリハルコンだって気付かなかったみたいなの。」
「へ〜不思議なこともあるんだね。」
この時ユーリ達は知る由もないが、実はこのネックレスはアリア達以外に見つからない様に隠蔽が施されていた。このネックレスがただのネックレスでなく、ユーリの物となるのは必然であった。しかし、隠蔽されていたという事実は彼らは知ることはない。
「それじゃ、次は俺たち家族からだな。レヴィアお前が代表して渡してやれ。」
レヴィアはそうして俺の前にきた。
「これが私たちからあなたへのプレゼント。はい。」
渡されたのは装備だった。手の甲から肘までを覆うフィンガーレスグローブ、ブーツ、フード付きのロングコートだった。フードと首回りにはファーがついている。
「それは俺とカーラが冒険者時代に討伐した魔物の素材で知り合いの腕の良いドワーフに作ってもらった。着てみればわかるけど自動温度調節がついていてサイズも自動伸縮する付与がされている。装備としてもそこらの皮の鎧なんぞよりよっぽど耐久力があるぞ。」
「そんなすごいものを、、、ありがとう。」
俺はお礼を告げる。みんなからもらえたものがすごすぎて、とにかく嬉しかった。
「さて、、、ユーリこれからお前に話したいことがある。俺が渡したものも含めてだ。」
ローグはそう切り出すといつになく真面目な顔をするのだった。
「まず、プレゼントを渡すだけだったらリュート達を呼ぶ必要もなかった。各自で渡せば良いことだしな。今日みんなに集まってもらったのは他にも理由がある。」
「えっと、、、それは?」
「今日でお前は成人した。それでだ、お前には家を出て行ってもらう。」
「・・・え?」
「あなた、それじゃ勘違いするでしょ!」
「あ、ああ、ユーリ、俺が言っているのはな、旅をしろってことだ。」
「旅?」
「お前はこの15年間俺やリュート達から指導を受けた。戦闘の実力は同年代に比べたら何歩先も抜きん出ているし、大人とも競り合うだろう。だが、お前には経験が圧倒的に足りない。そしてお前より強いやつはここにいる俺ら以外にもいることだろう。お前には世界を知ってもらいたい。このままここに住んで俺の跡を継いでも良くないと思うんだ。実際お前は学園に行く年になった時も家で勉強する方が為になるって家から出なかったからな。だからお前には旅をしてもらう。」
「そっか、、、」
旅か、、、5年前に学園行くのを断ったのは家で十分できるってのもそうだけどアンリと離れたくなかったからなんだよな。今も離れたくはないけど、、、自分としては、、、外でどれだけ自分の力が通用するのか知りたい。自分の限界まで戦ってみたい。
「父さん、俺旅にでるよ。自分が満足するまで旅に出る。だから、俺が帰ってくるまでくたばらないでくれよ。」
「誰に言ってるんだ。俺は死神から嫌われてる男だぞ。死にたくても死なねえよ。」
「そうだね。安心だ。」
俺はふと横を見ると、レヴィアの顔が暗かった。
「レヴィア?どうしたの?」
「え?あ、ううん。大丈夫。旅は大変だろうけど、私は応援してるよ。」
するとリュートさんが、
「レヴィア、一応言っておくけどお前もだぞ。」
「え?」
「当たり前だ。お前は従者だぞ。仕えるべき主人の元を離れるなんてことがあるか。」
そしてローグも
「レヴィア、ユーリは頭はアリアに似てとても良いが、如何せん、アリアに似ないで生活力は皆無だから君の手伝いが必要だ。」
「俺からも頼むよ、レヴィア。レヴィアが一緒に来てくれるなら心強い。」
「そ、そこまでおっしゃるなら、私も少しながら手伝わせてもらいます。」
そう言いながらレヴィアの頬は赤くなっていた。
「じゃあ、次にだが、、、この武器についてだ。これは一見ただの杖に見えるが、魔力を通してみろ。」
俺は言われた通り魔力をとおした。すると杖らしきものの上の方にあった宝石が赤く輝いた。
「それでその武器の所有者はお前になった。それじゃあ、、、後はわかるはずだ。」
俺はうなずいた。これに魔力を通した時に俺にはこれがなんなのかがわかった。俺はその杖の持ち手を持ってそれを抜いた。そう、それは杖ではなく、片刃の長剣だった。まっすぐではなく少し剣が反っている。
「それは刀という種類の剣だ。あまり知られてないがな。どういうわけかあいつと癖がお前を似通っていたからな。。。」
あいつ?いったい誰のことだ?
「父さん、あいつって?」
「その刀の元の所有者であり、俺の兄であり、お前の本当の父親だ。」
「「「・・・え?」」」