第2話 ユーリ 15歳の誕生日②
俺は食事を終えた後庭に向かった。食後の運動ってわけだ。すると、父さんも同じ考えだったのか俺同様に庭に出てきた。
「あれっ、珍しいね。父さん仕事しなくて良いの?」
「ああ、今日はお前の誕生日だからな。アリアに許可をもらったんだ。最近お前の剣を見てやれなかったからな。」
「ほんと?それは嬉しいよ!俺も前やった時より上達したからね、今日こそは勝つよ。」
「ほう・・・やってみろ。」
そうして俺と父さんは向かい合った。お互い剣を構え、お互いに威圧をする。2人で模擬戦をするときに必ずやっている、いわばルーティンだ。 久々に父さんの威圧を受けるけど、、、やっぱきついな。。。一瞬でも隙を見せたら威圧だけでやられるな。毎度思う事だけど。さてと、集中しようか。
ユーリとローグの威圧がぶつかり合うなか、2人は一歩も動かない。そんな中、この威圧のぶつかり合いを終わらせるかの如く、近くで寝ていた獣の雄叫びが上がった。
「アオオオオオオン!!!!!」
その瞬間に2人は足を踏み出し、一瞬でお互いの目の前に現れ、剣を打ち合った。ユーリはスピードを活かしてヒット&アウェーで攻撃を繰り返し、ローグはユーリの素早い攻撃をその場から動かずに全ていなす。ユーリはこのままでは何もできずに負けると思い、焦り始める。すると、動きが短調になっていき、ローグにも見て取れた。
「どうした、ユーリ。今日こそは俺に勝つんじゃなかったのか?戦いに焦りは禁物だぞ!俺が最初に教えた事だ!忘れたか!?」
そうローグはユーリに向かって叱咤するとユーリを弾き飛ばす。
・・・俺は何やってるんだ・・・父さんに良いところを見せてやるって思って無駄に力入れて・・・それで焦っちゃって・・・焦りは禁物。死ねば終わり。何度も父さんに言われた事だった。模擬戦だからって浮かれすぎたな。これ終わったらしっかり反省だな、こりゃ。反省するためにも、、、この戦い終わらせないと!
「父さん、冷静にしてくれてありがとう。ここからは、、、俺の舞台にさせてもらうよ。」
俺はそう言って立ち上がり、父さんと向かい合った。そうして、、、父さんに向けて走り出し、父さんの前にきた瞬間全身のバネを最大限に活かして翔んだ。さっきまでの行動と違ったからか父さんは一瞬驚き、しかし、熟練の剣士ゆえかすぐに俺の背中からの攻撃を俺を見ずに防いできた。
「やるね、、、、!!!」
「今のは惜しかったな。俺の勘が当たっちゃったな。」
俺はすぐに距離をとり、右、左、右、と揺さぶりをかけて袈裟斬りした。しかし、それも読まれていたのか、簡単に防がれる。でも、、、防がれるのは予定通り! 俺はすぐにその流れに身を任せ、回し蹴りをした。今まで体術を使用してこなかったからか完全に父さんは反応に遅れて父さんの横腹に俺の足は入った。
「よし!!!父さんにやっと当てることができた!」
「ちぇ、、、、体術駄目とは言ってないけど、ずるいぞ〜ユーリ。」
「父さんに一撃当てたら勝ちだからね。実戦じゃそもそも何がくるかわからないし。そりゃ〜剣で一本も取れないのは悔しいけどさ、、、そもそも一度も勝てたことないのに剣だけで勝つとかこだわってたら一生勝てないって思ったんだ。まずは自分のできること活かして、格好悪くても良いから勝たないとって思ったんだ。」
「そうか、、、それで良いんだユーリ。剣だけに、魔法だけにって拘るのも悪いことじゃない。でもそれはお前の様な半人前が今やることじゃない。何がなんでも勝つ。その信念が大事なんだ。これからもそれを忘れるな。」
「うん。でもいつかは剣だけで父さんに勝ってみせるよ。」
「その時を楽しみにしてるよ。」
ユーリは疲れたのか家の中に戻っていった。それを見たからか一匹の狼が俺に近づいてきた。
「ユーリも強くなったもんだな。ローグ。」
「ああ。剣だけでも前より上達していたし、実際外でたらあいつはだいぶ強いぞ。後は命のやりとりのある戦闘経験をいっぱいすればいつかは俺に勝てるさ。お前もそう思うだろ、シュウ。」
「そうかもしれないな。子供は育つのが早い。」
「狼のお前がそれを言うか!ハハハ!!」
俺はそうして声を大にして笑った。
「ガブッ」
「イッテエ!!」
笑ったことを気に入らなかったのか思いっきりシュウに噛まれた。
「てめえ、何すんだ!!」
「俺を笑うのが悪い!!」
「やんのか!?」
「良いだろう!」
なぜかここで第二戦が始まった。