王女マーガレット
ブクマありがとうございます!
後誤字報告も本当に助かります(T_T)
今回こんな感じになる予定では無かったんですが、何故か大幅に内容が変化しちゃいました……
これ……苦情コメント来そうな予感がします……
アルメシア王国、王都アルシア城内のとある一室。
豪華絢爛なソファーに座り、頭を抱えるケンヤの姿があった。
そんなケンヤを口元を押さえ、ニヤニヤしならシルが宣う。
「いや〜、さっすが勇者よね〜もうカッコ良すぎ! 我々は必ず創造主から皆を守ると誓おう!! だってさ! ケラケラ」
こめかみをヒクヒクさせながらシルを睨むケンヤ。
「なによ〜! そんな事はこの勇者ケンヤがさせない!! とも言ってたわね!」
ギャーっ!
シルの攻撃にソファーから滑り落ち、悶絶しながら転げ回るケンヤ……
「勝った! ビシっ!」
ポーズをとるシル……
「シルちゃん……その辺してあげましょ。ケンヤさん本当にカッコよかったですよ!」
ミコトはシルを諌めフォローをすると、トオルとサラも目をキラキラさせてケンヤを称え始める。
「ケンヤさん! ミコトさんの言う通り、めちゃくちゃカッコよかったです! 俺感動しちゃいました!!」
「うんうん、凄く勇者らしくて私見とれちゃいましたから!」
トオルとサラに称えられ更に悶絶するケンヤ……、もう立ち上がる気力を失っている……
アバロンは声を掛けるか悩む……下手な事を言ったらデコピンが飛んできてしまう……
コンコン
勇者パーティがそうやって遊んでいるとノックの音がし、ガチャりと扉が開く。
現れたのは数名の側仕えを従えた今回の仕掛け人、王妃であるマリアンヌだ。
流石に王妃の前で転げ回る訳にはいかない。
ケンヤは気力を振り絞り立ち上がると一礼をする。
トオル、サラ、アバロンも立ち上がり礼をとった。
「皆様、お座り下さい」
艶やかな声で座る様勧めてくるマリアンヌ。
金色の髪を複雑に編み上げ、朱色のドレスに身を包んだ王妃は優雅に腰を掛けケンヤ達を見渡す。
洗練されたその姿に目を奪われながソファーに座り直すメンバー達。
年齢を感じさせない王妃の美貌にケンヤは
(この人……出会った時も思ったけど、あの王様の奥さんなんだよな……絶対政略結婚だ! 政略結婚に違いない!!)
訳の分からない願望を呟くケンヤ……
ミコトの微妙な表情にも気が付かない……
トオル、サラ、アバロンは聞こえないふりだ。
聞こえたのか聞こえなかったのか王妃マリアンヌはケンヤに微笑み掛け
「勇者ケンヤ様、わたくしのワガママを聞き入れて下さりありがとうございます。創造主のお話しは……王からの報告だけでは貴族達の不安は拭えなかったでしょう……、勇者様のあの演説のお陰で皆勇気を貰いましたから!」
一国の王妃に頭を下げられたらケンヤも文句言えない……
これが王からの提案なら間違いなくデコピンをかましていたケンヤである!
美人に弱いのであった……
「それで勇者様方はこの後魔族領に行かれるのですよね?」
「はい、魔族領でゲートの魔法を使える魔族と帝国に向かうつもりです。帝国ともゲートで繋ぎ、お互い交流出来た方が今後なにかと都合が良いかと。ゲートが繋がれは此方にマモル……いや、マモル王も連れてきますよ!」
マモル達は転移出来るが、人族は転移出来ないのでゲートを繋いだ方がお互い行き来出来て良い。
それにマモル達のあの姿を見れば、勇者の存在もある程度薄れるのでは? と言うケンヤの打算もあったりなかったり……
「まあ! 天使であられるマモル王が! それは楽しみすですわね」
本当に楽しみだと微笑むマリアンヌ。
あ……この笑顔……、マザコンの気があるマモルには毒かもしれん……
などとくだらない事を考えているとまたノックの音が聞こえる。
入ってきたのはこの国の王ルイスと宰相のマザラン、そして……
おそらく10歳前後であろうか? 王妃マリアンヌを幼くしたような顔立ち、金色のストレートの髪は背の中程で切りそろえられ、耳元には朱色の薔薇の髪飾りが金の髪によく映えており、クリーム色のドレスを身にまとった姿はとても可愛らしい。
「マリアンヌよ、来ておったのか。勇者殿、魔王殿、お疲れでしたの。勇者パーティの面々も労わさせて頂こう」
王が口を開き労いの言葉をケンヤ達に掛けると、宰相のマザランが一礼をし、恐らく王女であろう女の子はスカートの裾をそっと摘み、少し腰をおとして礼をする。
その姿にミコトが
「キャー! 可愛らしい!」
場違いな奇声を上げ慌てて口元を押さえている。
そのミコトを諌めるでもなく、ミコトに娘を可愛らしいと言われた事が嬉しいのか、ルイスはこれ以上ないと言う程目尻を下げ
「紹介致しましょう。我が末の娘、第3王女であるマーガレットと申す。さあマーガレット皆様にご挨拶を」
ルイスに促され1歩前に出ると
「勇者御一行様、魔王様初めまして、第3王女のマーガレットと申します。このアルシアに足を運んで頂き嬉しくぞんじます」
そしてまたスカートの裾を掴みちょこんとお辞儀をする。
「キャー!」
ミコトが叫ぶが聞こえ無かった事にしよう……
「これは御丁寧なご挨拶痛み入ります。私共勇者一行、そして魔王ミコト、第3王女であられるマーガレット様にお会い出来至極恐悦でございます」
胸に手を添え膝をつきマーガレットに礼を尽くすケンヤ。
ミコトもケンヤに習い膝をつく。
トオルとサラはどうしたら良いか分からず、慌ててケンヤ達の真似をする。
アバロンは……腕を組み棒立ちだ……
魔人にとって人族の王族に対する礼などどうでも良い事なのだろう。
「まあ、勇者様、魔王様、それにトオル様とサラ様でしたか? その様な御丁寧な礼等私には不要でございます。どうかお立ち上がり下さいませ」
そう言ってニコリと微笑むマーガレット。
本当王妃のマリアンヌにそっくりである。
王様に似なくて良かったね〜と、密かに思う勇者パーティ……
「では私は色々やる事があるのでこれで失礼する。マリアンヌ、マーガレット、後の事は頼んだぞ」
何やら意味深な目配せをマリアンヌとマーガレットにし、そそくさと退場するルイス王……
ん? なんなんだ?
ルイス王が退場するとマーガレットの笑顔が消えた。
眉が釣り上がり口元をへの字に曲げ
「それで! どちらがわたくしの将来の夫になるのかしら?」
へっ!?
先程までの可愛らしさはどこえやら……
今は腕組みをしふんぞり返っている!
「あらあらマーガレット、そんなあからさまな……うふふ」
っ! 王妃は窘めるつもりがない!!
「だってお母様! 私の一生の問題なのですよ! まあ普通に考えたらこちらの勇者様なんでしょうけど……」
マーガレットはケンヤに近付くとじーっとケンヤの顔を覗き込み、全身を舐める様に観察する。
顔を引き攣らせ仰け反るケンヤ……
するとマーガレットは溜息をつき
「この勇者様は……私の夫には向きませんね! カッコ良すぎですわ。将来きっと何人もの女性に言い寄られるでしょう……いえ、もう既に……ですか……わたくし1番でないと嫌ですの! 何十人の中の1人なんてゴメンですわ!! たたでさえ勇者なんておモテになられるでしょうに、この見た目は反則です!」
マーガレットの発言に目を丸くするメンバー達。
当のケンヤはポカーンだ!
「あらマーガレット、素晴らしい才能や能力をお持ちの殿方が、数人の女性を妻に娶るのは当然ではごさいませか。優秀な子を沢山頂く為に!」
な、なにをこの親子は話してるんだ!?
「お母様、よく考えて下さいませ! 数人なら良いのです、数人なら! この勇者様は数人ではきっと収まりません! 必ず数十人と囲むハズです! 私にはわかります、それに……この方は真摯にお願いされると断れない性格をしております! ええわかりますとも! きっと流され易いのでしょうね……、断り切れず何十人も……お母様は良いのですか? 私にとってそれは幸せですか?」
マーガレットの捲し立てる様な発言にどんどん落ち込んで行くケンヤ……
お、俺……そんな流され易いの? 10歳の女の子に性格見破らる程薄っぺらい? しかも……流され易くて頼まれたら断れないって……当たってるし……
ソファーの上で体育座りをしブツブツと呟いている……
一目でケンヤの性格を見抜いたマーガレットにトオルとサラは驚き目を丸くする。
確かにケンヤさんは頼まれると断れない……けど……
少しムッとしてミコトが口を開こうとすると
「ちょっと待って下さい! 確かにケンヤさんは頼まれると断れない性格をしています。だけどそれは信頼している仲間や友達にだけであって、皆に対してじゃありません! マーガレット様! 今のは酷すぎます! ケンヤさんに謝って下さい!!」
サラが物凄い勢いでマーガレットに噛み付く!
この国の第3王女に対して鼻息も荒く抗議している……
同じ事を言おうとしたミコトは、サラに言いたい事を言われ口をパクパクしている……
あ、あの……サラさん……、物凄く有難いけど相手は王女様だよ……大丈夫?
するとサラはミコトをキッと睨み
「ミコトさん! ケンヤさんがあんな風に言われて平気なんですかっ! なんで黙って聞いてるんですか! ミコトさんケンヤさんと【お付き合い】してるんですよね? お付き合いって良くわかんないけど、そんなんなんじゃ私がケンヤさんを取っちゃいますよ! 良いんですか!」
ちょ、ちょいサラさん……何言ってんの?
ミコトは目を見開く……まさか……サラちゃん、もしかして……
最後のは不味いと口元を押さえるサラ……
変な空気が部屋に流れる。
パチパチパチパチパチパチ!
突然拍手の音が!
マーガレットがサラに向け拍手をしている。
「貴方! 素晴らしいですわ! ええ! 素晴らしいわ!! わたくしこんな気持ち初めてです! サラ様といいましたね。お願いします、私とお友達に……親友になって下さいませ!!」
はあ?
い、意味がわからん……
だかサラは一瞬キョトンとするが直ぐに笑顔になり
「いいよ! お友達になろ。けどケンヤさんの悪口はやめてね! ちゃんとケンヤさんに謝ったらお友達になるよ!」
サラがそう言うとすぐさまケンヤの前で頭を下げる……
「勇者様、先程は失礼な発言お許し下さいませ……」
頭を下げチラチラと上目遣いに此方を伺ってくる……
「あ、ああ……えっと……気にしてませんから……」
それを聞いたマーガレット、口端が上がり言質取ったとばかりに
「サラ様! 許して頂けました! これで私達親友ですわ!」
サラの手を取り満面の笑顔のマーガレット……
するとマーガレットはハッと真顔になり
「あの……サラ様、其方のトオル様とは実のご兄妹でしたわよね?」
ん? と思うが素直に頷くサラ。
サラの手を離すとトオルの前ままで来て、ケンヤにしたようにまじまじとトオルを観察し始める。
「悪くないですわね……」
皆マーガレットが何をしたいのか分からない。
「決めましたわ! わたくし、このトオル様と婚約致します! そうすればサラ様とは義姉妹に! 我ながらナイスアイデアですわ!!」
な、何を言ってるんだ?
トオルは目の玉が飛び出る程目を丸くし
「ちょ、ちょっと待って下さい! 僕の意思は……気持ちは無視ですか!?」
トオルの意見は当然である。
だがこのお姫様はトオルより一枚も二枚も上手だった……
「あら……トオル様、わたくしではご不満ですか? まあ突然で驚かれたとは思いますが……良く考えてみて下さいませ! トオル様は勇者パーティの一員でしかもSランク冒険者であられます。今後付け狙うストーカーの様な女子に悩まされますよ?」
うっ! トオルは絶句する。
「そんなに深く考えずに、そう言った者達を追い払う為とお考え下さいませ。一国の王女と婚約となればおいそれと近付く者は現れません!」
ぐぬぬ……悩むトオル……
お、おいトオルよ! 言いくるめられているぞ!
「納得致しましたか? しましたね! ではお母様、早速婚約の準備を致しましょう! ではサラ様また後ほど」
とっとと退出してしまった……
王妃のマリアンヌはゆっくり立ち上がると
「本当ゴメンなさいね……あの子言い出すと聞かなくて……誰に似たのやら……ではわたくしもこれで」
マリアンヌも足早に退出していく。
だかケンヤ達は見ていた……
退出時のマリアンヌのほくそ笑む横顔を!
ケンヤとトオルは抱き合い
「こ、こえ〜! この国の王族の女性は皆んなあんななのか…………超こえ〜!」
「ケンヤさん……俺……初めて蛇に睨まれた蛙の気持ちが分かりました……」
カタカタ震えるケンヤとトオル。
後日、トオルとマーガレットの婚約が発表された……
どさくさに紛れてサラの思いは有耶無耶に……、その事についてだけはホッとするサラだったが、しかしミコトはちゃんと覚えていた……
サラちゃんもケンヤさんを……
最終決戦前に色々と荒れそうな予感がする……
アバロンはそっと目を伏せ全力で空気になっていた……
トオルくん……おめでとう……なの……か?




