勇者演説!
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今回も2日間空いてしまいました……
申し訳ございませんm(_ _)m
王都城壁には常時100名近い兵士が駐屯している。
特にダンジョンの異変から始まり、魔王の誕生、邪神の復活等、ここ最近の異変に次ぐ異変に、駐屯兵の数も増やさずを得ず混乱を極めていた。
城壁の最上部にも普段の倍以上の見張りの兵士を置き、少しの変化も見逃さ無い様気を配っている。
事実魔物の数も増え、普段現れない様な強力な魔物も現れている。
この国の最高戦力、Aランク冒険者ソフィア不在の今、王城を守護する近衛騎士団を筆頭に、末端の兵士に至るまで厳戒態勢をしいていた。
その城壁の見張り台の兵士達が何やら東側上空に異変を発見する。
「な、なんだあれは!」
最初点にしか見えなかったソレが物凄い勢いで此方に近付いて来る!
その姿がハッキリと分かる距離まで近付くと、見張りの兵士達は腰を抜かしてしまった。
「ど、ドラゴン! しかもデカい! ま、まさか……あれが噂に聞く神龍か!?」
神龍と思われるドラゴンは王都近くの林に降りて行く。
「あれが神龍だとすると……勇者パーティか!! 急ぎ報告を! 勇者様がいらっしゃったぞ!!」
隣りにいる部下に指示し伝令に向かわせる。
噂に聞く勇者ケンヤ! この国に居る事は聞いていたが、何故か辺境のピサロに拘り、頑なに王都に来るのを拒んでいると聞く。
その勇者が王都に……
恐らく王に謁見をしなくてはならない程の何かが起こっているのであろう。
良い方の報告であればよいが……
不安に駆られる兵士達であった。
王城内謁見の間
その入口の巨大な扉が開く。
現れたのは……黄金に輝く兜に鎧、手甲に足鎧を装備したケンヤの姿が! その肩にはシルがふんぞり返っている……
後ろに続くのは漆黒に美しく金で装飾されたローブを羽織り、手には双頭の龍を象った杖を装備する魔王であるミコト。
その後ろには緊張してガチガチのトオルとサラ、トオルはケンヤに貸してもらったプラチナ装備一式を見に付け、サラはミコトからブルーを基調にし魔法を付与されたローブを羽織り、手にはコレもミコトに借りた5つの宝玉が埋め込まれている杖を装備している。
そのトオルとサラを見守る様に最後に現れたのは上級魔人であるアバロン、魔人らしいく漆黒のシンプルな鎧ではあるが、アバロンが進む度何やらその鎧から漆黒のオーラが揺れ動いていた。
ケンヤ達は赤を基調とした絨毯の上を進む。
謁見の間両端にはこの国の貴族達が並び、初めて見たケンヤ達勇者パーティを羨望の眼差しで眺め、口々に称える声が聞こえてくる。
「あの先頭の黄金に輝く装備を身に纏っているのがこの国、いや、世界初SSランク冒険者、勇者ケンヤ殿か!! 成程! 凄まじいオーラだ! それにあの肩に居るのは精霊!? 【精霊を連れた戦士ケンヤ】その二つ名に偽りなしだな! しかもなんと見目麗しい……是非我が娘の婿に!」
等と、口々にケンヤを称える声が聞こえてくると思えば、他のメンバーに対しても賞賛の声が聞こえて来る。
「勇者ケンヤ殿の後ろにいるのが、魔王……これは……なんとも美しい……だが美しいだけでは無い! 私には分かるぞ! 凄まじい魔力だ! これが魔王! それにあのローブもそうだがあの杖はなんだ! 双頭の龍だぞ!? どれ程の威力が……いや、そんな事より………………美しい!」
ミコトの美貌に心を奪われ、よく分からない事を呟く貴族達……
そしてトオルとサラに目を向けると
「あのまだ幼い双子が勇者の弟子であり、Sランク冒険者のトオル殿とサラ殿か! なんとも愛らしいが……噂によるとその力は既に人の限界を越えているとか! それにトオル殿の装備……まさか……プラチナか? ミスリルの上位素材だぞ!? サラ殿のローブも……恐らく付与されている魔法は一つや二つではあるまい……、一体あれ程の装備を何処で……それより、今のうちに唾を付けて置こうと、裏で動いている貴族が多数いるらしいぞ! 出来れば我々も……」
などとケンヤにデコピンされそうな事を呟いている。
最後のアバロンにも注目が集まる。
「あれが魔人……本当に勇者パーティに参加していたのだな! 実際こうして見ると人族と変わらんではないか」
時折トオルとサラは不安からか振り返ると、アバロンは「大丈夫」とまるで2人の兄かの様に微笑えんでいる。
その様子を見ていた貴族達は
(これは……双子を取り込むにはあの魔人をどうにかしないと……)
他のメンバーとは違う意味でアバロンは注目されていた……
真っ直ぐ絨毯を進むと階段が現れる。
この壇上王座に座り待つのがこの国の王ルイス15世、その右隣には宰相であるマザランが控え、左隣に座るのは王妃であろうか? ケンヤ達に優しく微笑む妙齢の女性がいる。
通常であればこの段下にて膝を付き臣下の礼をとるのだが、ケンヤ達勇者パーティにその必要は無い。
勇者パーティとはこの世界においてそれ程の地位なのだ!
ただトオルとサラ、アバロンはここまで。
ケンヤとミコト2人で壇上に上がる。
事前の打ち合わせで言われた事だ。
トオルとサラはSランク冒険者で勇者パーティの一員だが勇者では無いし、アバロンに関しては扱いがよく分からない……と言う事で3人は段下で待機、ケンヤとミコトだけ壇上に上がる運びとなった。
2人がルイス王の前に立つと、ルイス王は立ち上がり大きく手を広げ
「よくぞ参った、勇者ケンヤよ! そしてよくお越しくださった魔王ミコト殿! 我々は勇者ケンヤと魔王ミコト殿の来訪を心より歓迎する!」
王らしく重低音の声が謁見の間に響き渡ると、貴族達の拍手が沸き起こる。
ルイス王はその拍手を手を上げて納めると
「本日、皆に重大な報告がある! 勇者パーティによりもたらされた報告だ!」
重大な報告……皆が固唾を呑み王の次の言葉を待つ。
「先ずは例の邪神の件だ。かの邪神と勇者ケンヤは一騎打ちを行い邪神に勝利を収めた!!!」
「「「おおおおおお!!!」」」
謁見の間に歓喜の雄叫びが響き、こんなにも早く邪神の脅威が去った事に皆口々に勇者パーティを称える声を上げる。
その声をまた手を上げ制し、ルイス王は話しを続けた。
「そしてその邪神と勇者ケンヤは仲間になり、邪神マモルは帝国の王となった。現在様々な改革を行っており、我が王国とも開けた国交を求めて来ている。今までの様な帝国内一都市だけの交易と異なり、様々な帝国産の素材や魔石が我が王国にもたらされる事となるであろ!!」
じゃ、邪神を倒しただけでなく仲間にした!?
驚きざわめく貴族達をルイス王は諌め
「驚くのも無理は無かろう。だが事実だ! しかし驚くのはまだ早い! 帝国王邪神マモル殿とそれに仕える悪魔達の正体、それは天使! しかも帝国王マモルは6枚の翼を持つ上級天使であったのだ!!」
えっ!? 王は何を言って居られるのだ?
邪神や悪魔が天使……いや、確か悪魔とは天使が堕天した姿だと聞いた事がある!
なら邪神も!! その堕天が解けたと言う事が!
1部の貴族達が理解しだした頃、ルイス王が口を開く。
「皆、ここからが重要な話しになる」
ルイス王はケンヤ達から報告のあった創造主の作った邪神システムに付いて貴族達に語る。
貴族達は固唾を飲み、王の話しに耳を傾けていた。
ケンヤ達は王に全てを話した訳では無い。
思考生命の存在や、それが太陽に居る事等は報告していない。
邪神システムにて創造主が人族や魔人を間引きしていた事のみを伝えている。
一度に全て報告するのは混乱を招くだけとの判断でだ。
王が語り終わると、数人の貴族達はその場で経たり混んでしまいカタカタと震えていた。
「創造主? 邪神は創造主が人々を間引く為のもの? なんだそれは!!」
「いや……創造主なる者が本当に居るとするならば……人族など虫けらと変わらぬであろうよ……」
「そんな……我々はこれからいつ間引かれるのか日々怯えて暮らすのか……」
悲観的な声がぽつぽつ上がる中……
「そんな事はこの勇者ケンヤがさせない!!」
ケンヤの怒号が謁見の間に響き渡る!
「確かに創造主、邪神システム等と聞けば皆恐れるだろう。気持ちは分かる。しかし! その邪神システム、今回はこの勇者ケンヤが打ち砕いた!!」
貴族達はハッとする!
そうだ! 勇者ケンヤは邪神を倒し仲間にしたのだ!!
貴族達目に力が戻る。
「それに俺だけでは無い! 隣りにいる魔王ミコトも協力してくれる!」
人族側最高峰とも言える勇者と魔王が手を組んでいる! これ程心強い事があるであろうか!!
「前回の邪神出現の際にも、勇者と魔王が協力し、邪神を倒した事、皆もう知っていると思う。勇者と魔王が創造主の邪神システムを壊したのだ! 創造主と言えど、皆が思い描いているような全知全能では決して無い!!」
そうだ! 前回、勇者と魔王は手を取り合い邪神を倒したのだ!
そして今回も勇者が一騎打ちにて邪神を倒したと聞いた!
腰を抜かししゃがみ込んでいた貴族達が次々に立ち上がる。
「今回は俺や魔王ミコトだけでは無い! その邪神も我々の味方となったのだ!! そして見よ!」
ケンヤ号令を掛けると
サラの周りに氷の粒子が舞い上がり白縹色の神龍が現れると、トオルからも光の粒子が溢れ出し白金に輝く光龍が現れる! アバロンからも漆黒の煙の様なオーラが漏れ出すと黒に輝く闇龍が姿を現した!!
「俺の弟子、Sランク冒険者のトオルとサラは氷結龍と光龍を従えている!! 魔人の仲間であるアバロンには闇龍が!!」
初めて見る巨大な神龍の姿にド肝を抜かれる貴族達!
「そして魔王ミコトには雷龍が!!」
ミコトからバチっとスパーク音がすると壇上を覆い尽くす程の巨大な雷龍が現れた!!
「この4大神龍、皆我々の仲間だ! 帝国に居る天使の軍勢、4大神龍、そして俺達勇者パーティ! 我々は決して負ける戦いをする訳では無い!!」
ケンヤは斬魔刀を抜き剣を掲げ
「我々は必ず創造主から皆を守ると誓おう!!」
うおおおおおお!!!
謁見の間に怒号とも悲鳴ともつかない喝采がわき起こる!
この歓声は王やケンヤ達が退場してからも暫く続くのであった。
ケンヤ……らしくない……




