勇者VS邪神②
ブクマありがとうございますm(_ _)m
少しづつですが増えて来て嬉しい限りです！
絶え間なく襲ってくるロードを苦もなく屠って行くケンヤに、ロードを召喚しバフを重ねがけしていくマモル。
このままではただの消耗戦だ。
恐らくだか消耗戦になるとケンヤの方が上。
マモルは冷静に判断する。
今のケンヤを見る限り、体力は無限にありそうだ。
それにHPを削れたのも、不意をついたネクロマンサーのあの一撃だけ。
その魔法も防御装備を固めた今のケンヤに、ダメージを負わせるのはもう不可能であろう。
「流石ケンヤだね！ 仕方ない、とっておきを出すよ！」
マモルの回りにロードやネクロマンサーを召喚した時より遥かに大きく、複雑な魔法陣が展開された。
「ぐっ！」
一気にMPを持って行かれる感覚に顔をしかめる。
そして召喚されたのは……
鳥の形をした炎の魔物、巨大な亀の魔物、真っ白な虎に似ている魔物。
いや魔物では無い！
朱雀、玄武、白虎
イービル・アイと同じく神獣である。
ロードを屠りながらその様子を見ていたケンヤは
「おいおい……神獣って、マジかよ！」
目を見開く！
「ハアハア、どうだ凄いだろ！」
息を切らしならがマジックポーションを飲むマモル。
亀に似た玄武を己の前に据え、防御を固めると
「朱雀、白虎！ 行けーー！！」
自身の前に壁役を置き防御を固め、アタッカーに攻撃をさせる。
これこそが召喚士本来の戦い方だ！
朱雀、白虎がケンヤに襲いかかる。
朱雀が空中で羽を広げると、夥しい数の炎に包まれた羽がケンヤを襲う。
「ちっ！」
珍しく舌打ちをし、片手でロードを倒しながらその攻撃をもう片方の剣で振り払う。
全て防ぐのは不可能だったようで、数発攻撃を食らうが光の鎧のおかげでダメージは少ない。
そこへ白虎が飛びかかって来た！
身体を捻り躱そうとするケンヤだが
ガキン！！
白虎の爪がケンヤの黄金に輝く兜に当たり、ケンヤは数メートル吹き飛ばされた！！
「よ、よし！ 今だ！ 皆かかれーー！」
次々にロード達がケンヤに覆いかぶさって行く！
ケンヤは剣を振るい排除するが白虎と朱雀が厄介だ！
2体は神獣！ 物理攻撃をほぼ無効化してくる！
白虎の攻撃にぐらつくケンヤ。
白虎に向けて剣を振るうが致命傷を与えられない！
そこに朱雀の炎の羽が襲って来る！
避けられない！
すかさず剣を交差し防御するが、その隙にロード達がなだれ込んで来た！
マモルはそれを見て
「勝ったな！！」
確信を持つ。
「大分HPは削れたんじゃないかな？ これ以上やると死んじゃいそうだし……」
ゲーム内では散々プレイヤーキルを行って来たマモルだが、現実世界で人殺しなんてしたくは無い。
見た目は邪神だが中身は日本人の小学生なのだ。
「ねえ！ そろそろ降参したら？ そのままだとホントに死んじゃうよ？」
マモルがケンヤに向け叫ぶと
ズバーーーーン！！！
凄まじい斬撃音と共にロード達が吹き飛んだ！！
その勢いで神獣達も吹き飛ばされる！
なんとその神獣達までも青い血を流し、ダメージを負っていたのだ！
目を丸くし驚くマモル。
「い、一体なにが！？」
吹き飛んだ中心地にケンヤが立っていた。
その両手には……
斬魔刀ともう一本幻魔刀が握られていた！！
幻魔刀
文字どおり、実体を持たない魔物に対し絶大な力を発揮する剣である。
ソードマジックファンタジーにおいて、その種の魔物は数多く存在し、当然その手の魔物に対抗する武器も数多く存在する。
この幻魔刀はその中でも最高峰に位置し、ケンヤはゲーム内で数々の幻獣や神獣と戦ってきたのだ！
マモルが驚愕する中、ケンヤは真っ直ぐ白虎に向かうと素早く幻魔刀を十字に振るう！
ケンヤの攻撃に白虎は音も無く霧散し散って行く！
返す剣で朱雀に剣を振るう！
幻魔刀での真空波斬だ！
直撃を受けた朱雀も白虎と同様に霧散し消える。
神獣を倒したケンヤは辺りを見渡し、ロード達がまた波の様に襲って来るのを確認すると、その場で思いっきりジャンプした！
ケンヤのステータスでのジャンプだ！
一瞬で空に舞い上がり、その姿は地上からは点にしか見えなくなると……
上空からロードに向け次々と真空の刃が降り注ぐ！！
まさかの上空からの攻撃にロード達は為す術もなく倒れて行く。
しかもその攻撃力は凄まじく、1つの真空の刃で数百ものロードが倒れて行くのだ！
ケンヤが何をしているかと言うと……
ロードが襲いかかって来る前に、その身体能力に任せ思いっきりジャンプ。
ロード全体を空中から確認すると、その上空から真空波斬を放っていたのだ！
しかもその剣速は尋常ではなく、どんどんスピードがまして行く！
「確かトオルがやってたな……真似っ子しよっ！」
以前トオルが巨大トロールの足首を切断した技！ 今ケンヤはソレを両手で行おうとしていたのだ！ ただ切るのではない、真空波斬でだ！！
スピードの増した剣速はとうとうトオルにおいつく！
余りのスピードにケンヤの両腕が止まって見える。
自由落下で両腕を広げ降りてくるその黄金の姿は、まるで天上の戦神が舞い降りてくる様な錯覚に囚われてしまう。
事実マモルは見とれていた！！
ただ単純に
「す、すげー……」
それ以上の言葉は見つからない……
その目には涙さえ滲んでいた。
永遠の様に思われたその光景も終わりを迎える。
ケンヤは飛行魔法を使える訳では無い、ただの戦士職だ。
落下の衝撃に備える。
ズドーーーン！！！
落下の衝撃で辺りに土埃がたちあがり、ケンヤの姿が見えなくなる。
既にマモルの召喚したロードはほぼ全滅していた。
するとマモルの前に突然ケンヤが現れ、1太刀で強力な防御力を誇る玄武を消滅させ、ケンヤはマモルに斬魔刀を突きつけた。
「納得したか？」
…………
…………呆然とするマモル。
ドスンとその場に尻もちをついてしまう。
「待って！！！」
突然声が聞こえる。
それまで荒野だった空間が一瞬歪み、大きく広がったダンジョンのボス部屋にケンヤとマモルは対峙していた。
マモルに駆け寄る女形の悪魔がマモルを守る様に抱きしめ
「お願い！ もう止めて！ この子を許してあげて！！」
涙を流しケンヤに訴えて来る。
へ？ となるケンヤ……
な、何これ……俺めっちゃ悪者みたいじゃん……何故……
思わぬ光景に思わず1歩下がる。
「ちょっと！ あんた、宅のケンヤをなんか勘違いしてない？ その邪神とケンヤは知り合いって聞いてたのよね？ その子にケンヤが何かすると思う？ 実際何のダメージもその子受けてないでしょ！」
オノクリスは目をこれ以上無い程見開く
「確かに……勇者はマモル様に対して一切の攻撃をしなかった……何故……」
オノクリスの質問にケンヤは溜息をつく
「はーっ！ そんなん当たり前だろ？ 見た目は邪神でもマモルはまだ小学生の子供だよ？ ましてやゲームでは出会う度に強くなっててさあ、俺気に入ってたんだぜ？ そんな奴傷付けたり出来る訳ないじゃん！」
ポカーンとするオノクリス……
マモルは目を剥いてケンヤを見つめる。
「ぼ……僕を気に入って……た？」
ケンヤはマモルに近づくと
「ああ、どんな形であれ、お前ゲームを楽しんでただろ？ そりゃ同じゲームをする者どうし、好感を持っていたよ」
マモルはケンヤから目を離せない。
「今回もな！ どうせならお前の攻撃全部受けきってやろうと思ってたんたが……お前強くなったな！ 流石にあれはキツかったぞ！ どうだ？ 思いっきり力だせて満足したか？」
僕の攻撃を受けきる？ なんで？
マモルのそんな表情に少し笑みを浮かべ
「お前……色々溜まってただろ？ 受け止めてやれる奴が必要だと思ってな！ お前がどんな過去を背負っているのか大体は想像がつく。49年も生きて来たらな、それに……俺も幼い頃似たような経験してるんだ」
えっ？
驚くマモル。
「恐らくマモル程では無いと思うけど、普通の学生していたら結構そういう経験してる奴多いと思うぞ？」
するとミコトが話に加わってくる。
「マモル君、私の事は覚えてるかな？」
「ミコト……」
「私もね……ずっと学校が嫌だったの……友達なんて1人もいなかった……」
まさか……こんな綺麗なミコトも……
「マモル、俺もミコトもこの世界に来て変わったんだ。お前もそうじゃないのか？」
ケンヤはオノクリスに目を向ける。
ハッとし目を合わせるマモルとオノクリス。
「悪魔がなんでそこまでマモルを変えれたのかわかんないけど……マモル、今孤独か？」
ケンヤの言葉に首を横に振る。
ニコッと笑顔をマモルに向けると
「ならもう大丈夫だ！ お前はもう以前のマモルじゃ無い。それに俺やミコトもいる！ どうだ？ 友達になるか！ かなり年齢差あるけど……嫌か？」
そう言って右手を差し出すケンヤ。
マモルはその差し出された手をじっと見つめ、オノクリスに視線を移すと、オノクリスは静かに首を縦に振る。
そっと右手を差し出す。
ケンヤはその手を掴むとグイッとマモルを立ち上がらせ
「よろしくな！」
「お、お前に言われたから友達になるんじゃない！ 俺がお前を友達にしてやるんだからな！」
目を背け照れながらそんな事を言うマモルに
(((じゃ、邪神はツンデレ！！！)))
衝撃を受けるミコト、トオル、サラ、アバロン……
握手をしているマモルの手のひらに、邪神にしては人の温もりを感じ、違和感を覚えるケンヤであった。
邪神はツンデレ……φ(・ω・｀)メモメモ
