閑話~第32回定例会議~
評価ありがとうございますm(_ _)m
今回は閑話にしました。
本編を期待していた方々、申し訳ございませんm(_ _)m
ケンヤ達が去り、孤児院に巨大怪獣出現!! 等と噂が立つ頃、そんな噂はどうでも良いと、ギルドの職務も放棄し会議室に集まる面々。
会議室のホワイトボードには
【第32回ケンヤ様を見守る会定例会議】の文字が……
ケンヤ達が知らぬ間に32回目を迎える定例会議、メイとサチがズーンっと落ち込んでいる……
額と目に沢山の縦線が見えるのは……恐らく気のせいであろう。
なんとなくだか噂を聞いてるメンバー達は
「今回のあの噂……本当なのでしょうか……」
嘘だと言ってくれ! と言う願望を込めて質問をする。
メイはその質問にフラフラと立ち上がると
「先ずは私が知り得た事実のみをお伝え致します」
皆「ゴクリ」と生唾を飲み込む。
「ケンヤ様達はピサロを離れた後、無事魔王様と合流された様です」
その事はメンバーも噂で聞いていて皆素直に頷く。
「その魔王様がケンヤ様達とピサロに訪れたのですが……皆様、そのお姿を拝見した方はいまして?」
皆首を振る。
あまりの人だかりに魔王様の姿を確認出来なかったメンバー達、なんとか近くまで人を掻き分け前列まで移動出来た者も、馬車の中までは確認出来ない。
「ではこのメンバーでお姿を知っているのは……私メイとソフィア様、マリンさんだけですね……因みにですが……ソフィア様は魔王様とケンヤ様の前では気丈に振る舞われ、なんとか体裁を保っていたのですが……今はその魔王様のお姿を思い出す度、寝込んでしまわれる様で……今回の会議も欠席するそうです……」
お労しい……
と声がする。
あれ程要注意人物だったソフィアだが、敵になり得ないと分かると急に優しくなれる……
「今回の魔王様は女性でした……しかも……しかも……」
メイは口ごもる……
サチが優しくメイの肩に手を置く。
サチの目が頑張ってと訴えているのが分かる。
そのサチの手にそっと手を添え、意を決し顔を上げると
「魔王様は、魔王様は……超絶美少女でした!!」
ガーーーーン!!!
メンバー一同にこれ迄に無い衝撃が走る!
椅子から滑り落ちる様に倒れる者達もいた……
「そして……恐らくですが、魔王様はケンヤ様に好意を抱いていると思われます! 私に対してのあの挑戦的な目! 間違いありません!!」
あちらこちらで悲鳴があがった!
ふぅーっ、と息を吐き、心を落ち着かせるメイ。
「私達は魔王様の人となりを知る必要があります! そこで今回は特別ゲストをお招きしております。どうぞお入り下さい」
ガチャっと会議室の扉が開き入って来たのは……
なんと! 魔族領領主であるオズマだ!
会議室に入った瞬間、部屋中に広がる女性の香りと、彼女達から発せられるオーラに一瞬部屋に入るのを躊躇するオズマ……
メイに目で合図されると、何故か引き寄せられる様にメイの横に並ぶ……
(な、なんだ! この女性は! この目の威圧……人族の女性はこんなにも……マリアの魅了眼に匹敵するかもしれん……)
恐れるオズマだが、当然メイにそんな力は無い……
「では紹介させて頂きます! 皆さんも既にご存知の方も居るかもしれませんが改めて、魔族領領主のお1人で、今回の人族と魔族との架け橋となり尽力なされたオズマ様です! 皆さん拍手を!」
パチパチパチ
皆拍手をするが今回の件になんの関係が? と戸惑っている……
そんなメンバー達を見渡すメイは
「え〜、此方のオズマ様! 魔族領領主と言う肩書きの他にもう1つ肩書きがございます!」
ゴクリと生唾を飲み込むメンバー達。
「このオズマ様は……なんと、こっそり魔王様親衛隊の隊長なのであります!」
こ、こっそり魔王様親衛隊!!
「そう! オズマ様は魔王様側の我々の様な組織の隊長なのです!」
「おお!!」
「ならばお互いに色々と協力出来ないかと思い、今回お声掛けさせて頂きました!」
成程! と回りから声が上がる。
オズマは恐怖を感じていた……こっそり魔王様親衛隊は秘密組織である。
こんなにもあっさりその存在を突き止める情報収集能力……
逆らってはいけない!
オズマの防衛本能が警鐘をならす!
ぶっちゃけると、王都にゲートを通した際、オズマはこっそり魔王様親衛隊のメンバーを大量に此方に送り込んでいたのだ。
ピサロへもこのメンバーメインで来ている。
そこに、なんとかケンヤ達の魔族領での情報を得ようと、ケンヤを見守る会のメンバーが接触!
女性に耐性のなさそうな兵士を狙い情報を引き出していたのだ!!
普段女性に笑顔で話しかけられる事など無い魔族の兵士は真っ赤になり、自分の知っている全てを話してしまったとか……
ケンヤ見守る会のメンバー恐るべし!
オズマが恐れるのもある意味正解なのかもしれない……
「オズマ様、魔王様とはどの様なお方なのでしょうか? そしてどの様にして出会ったのか、お聞かせ下さいませ」
笑顔で聞いてくるメイ……オズマの背中に冷たい汗が流れる……
「あ、ああ……魔王様はそのずば抜けた魔力と、その圧倒的な美貌を除けば……一言で言えば天然で可愛いお人だな」
て、天然ですって!!
メンバーに衝撃が走る!!
「そ、そんな……計算高いお方だと此方も対処出来るのですが……」
メンバーの1人が思わず口にする。
「くっ! 最終決戦兵器……【天然さん】だとは……」
メイも衝撃を受ける。
「ソフィア様の時の【変態さん】も対処不能でしたが……【天然さん】ですか……かなり厄介ですね……」
天然に何故そこまで? と疑問に思うオズマだが、勇者と魔王様との出会いの事をこと細かく説明をする。
すると……
「なっ! そ、その様子だと、ケンヤ様と魔王様はお知り合いだったと?」
全員が固まってしまった……
「その辺りの事はマリンさんから報告を受けています。マリンさん皆さんに説明を!」
フラフラとマリンが立ち上がる。
普段の精強さなど微塵も感じられない……
「ああ……昨晩、ケンヤと魔王様はオリブの宿に現れてな……その時に言っていたんだ……同郷だと」
「「「ど、同郷!!!」」」
マリンは続ける。
「しかも、しかもだ! 魔王はケンヤに……命を救われた事があるらしい……」
「「「い、命を救われたあ!!!」」」
皆に絶望が走る!!
「そんなの……絶対惚れちゃうじゃないですか!!」
「ケンヤ様に命を救われる……そんな物語の中の様な出来事が……」
「うそよ! うそだと言って!!」
皆それぞれに驚きを口にする!
この事はオズマも初耳だったようで、その場で崩れさってしまった……
「ただ……」
ただ?
マリンが思案げに口を開く。
「ルークスが2人の関係について聞いたんだ」
ふ、2人の関係……
マリンはメンバーを見渡し
「ケンヤと魔王、2人はお付き合いをしてるらしい!」
おお! お付き合い! お付き合い? お付き合いって?
メンバーの1人が
「…………あの……お付き合いってなんですか?」
皆キョトーンだ。
メイはオズマに話しを振る。
「オズマ様……魔族領にその様な男女の関係がございまして?」
オズマは首を振る……
皆が『お付き合い』について思案、考察をする。
するとマリンがポンっと手を打ち
「もしかすると……ど付き合いじゃないか?」
「「「どつきあい!!!」」」
「ああ……勇者と魔王だからな! 普通にどついたり出来る相手なんて居ないだろう! ステータス的に、ケンヤが何気に殴ったりしたら高レベルの冒険者でも命に関わる! そんなケンヤがどつき合える相手が魔王なんじゃないか?」
な、成程!!
皆の目に希望の光が戻って来た!
サチもその話しに乗る。
「有り得ますね! 気軽にケンカ出来る! それが『お付き合い』って事なのでしょう。ケンヤ様と魔王様は普段のストレスを『お付き合い=どつきあい 』をして解消しているのでは?」
メイの目にも光が戻る!
「あのケンヤ様が好きになった女性に対し、手を上げるとは考えられません! と言う事は、魔王様の思いはともかく、ケンヤ様は魔王様を女性とは見ていないと言う事に!!」
皆がその意見に「おお!!」と賞賛を送る。
見守る会のメンバーが盛り上がる中、オズマだけは……
(い、いや……有り得んだろ……)
口にしたいがもうそんな空気ではない……
「安心しましたわ! ただその『お付き合い』の関係がどの様に変化するかは分かりません! 今後も今までどうり、我々の目の届く間は油断せず見守らなければなりません! 何せ相手は【最終決戦兵器 天然さん】なのですから!!」
皆が真剣に頷く。
招待されたオズマだが……もうその存在自体を忘れさられてしまっていた……
オズマはそっと会議室を後にする……
オズマが去った会議室では、まだああだこうだと議論をするメンバー達。
ドンドンドンと扉を叩く音が……
「お願いじゃあ! もう良いじゃろ! 仕事に戻ってくれーーーー!!」
ギルド長の切ない叫び声が響き渡る……
どつきあい……




