ピサロ一次帰還④
ブクマに評価ありがとうございますm(_ _)m
結局ピサロ編終われませんでした……
次回で必ず終わらせます……
部屋の隅に置かれている机で何やら手紙を書いているケンヤ。
その隣りでベッタリとくっつき、ケンヤの手紙を覗き込むミコト。
その様子にシルと雷龍は……
「なに!? その付き合うなんて意味のよく分からない風習!!」
「雷ちゃんもそう思うよね! 意味分かんない! あんなに仲良さそうなんだから、さっさとプロポーズしなさいよ! ああ、イライラする!」
何やら言ってますが無視です無視!
段取りは大事!
幾ら此方の常識とは違うとは言っても、長年日本人してきたのだ!
そうそう変われませぬ……
手紙を書き終えたケンヤは
「シル、悪いんだけどこの手紙オリブの宿に届けてくれ」
シルでも持てる様に小さく畳んだ手紙を渡す。
「ん? 別に良いけど、これなんの手紙?」
「今晩、表に集まってる連中が引いたらこっそりオリブ達に会いに行こうと思ってな! シルもオリブ達と会いたいだろ?」
領主低の外には勇者一行を一目見ようと人だかりが出来ていた……
もう日が暮れると言うのに中々立ち去りそうにない……
ケンヤは諦めて皆が寝静まる時間まで待つ事にした。
流石にそんな時間に突然現れたら迷惑だろうと手紙を書いた次第だ。
「うん! 会いたい! じゃあ早速届けてくる! バビューン」
さっきまであんなに文句言ってたのに……
シルさん相変わらずチョロい……
そんな様子に雷龍は
「ケンヤさん……シルちゃんの扱い上手すぎない?」
はて……なんの事やら?
思っていたより早く人が履け、部屋の窓からミコトの飛行魔法で外に出る。
「ミコト、ゲームでのオリブの宿覚えてるか?」
「うん! 大丈夫、じゃあケンヤさん私の腰にしっかり掴まって下さいね!」
それまでミコトの肩に置いていた手を腰に回す。
「じゃあいきますよ」
ピサロの夜空を勇者と魔王が舞う。
このまま空中散歩と行きたい所だが、そう言う訳にも行かない……
オリブの宿に降り立ち、ガチャっと扉を開けると……
「お帰りなさい!!」
オリブが飛び込んできた!
「おっと、オリブちゃんただいま」
ケンヤからの手紙が届いてから、仕事中もずっと店の扉が開くのを意識していたオリブ。
満面の笑みでケンヤを向かえ入れる。
オリブの声で気が付いたオリバとジータも出迎えてくれ、食事処にまで案内される。
そこには……
ルークス、マリン、ミモザ、ジェイク、モリス、ピサロの冒険者ギルドの主要メンバーに、ギルドで顔馴染みの冒険者も集まっていた。
その冒険者達はミコトの姿を見て目が点になる……
「まさか……そのべっぴんさんが……魔王様か?」
ルークスが目を見開き尋ねてくる。
ミコトは皆を見渡すと、ニコリと笑顔で挨拶をする。
「皆さん初めまして、魔王なんかしてるミコトって言います。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると……
皆ポカーンだ……
「ちょいちょいちょい! 魔王様って事は魔族の王様だろ? こんな所に来ていいのか?」
驚くルークスにミコトは
「あ、そう言うの気にしないで下さい。普通にして頂ける方が有難いです」
そう言ってルークスや皆に笑顔を向けるミコト。
ずっきゅーん!!
何人かの冒険者が落ちた……
ミコトさん……その笑顔は狂気です……
そこに肩にシルを乗せたオリバが
「こんな所で悪かったな! ルークス……出禁にするぞ!」
オリバに土下座するルークス……
シルさん……帰って来ないとおもったら、オリバさんと遊んでたのね…… どんだけ親友なんだ!
「手紙には魔王様を連れて来るって書いてたんだが、このシルが黙ってた方が面白いとか言い出してな!」
なるほど……シルとオリバさんのよく分からない遊びに付き合わされた訳ね……
「さあさあ、立ち話もなんだし、皆席に着きなさいな! ケンヤちゃんも其方のミコトちゃんも! 料理とお酒の準備できてるから」
流石ジータ! 魔王を既にミコトちゃん呼びするその胆力!
冒険者一同の尊敬の眼差しを受けている。
ジータに促され皆席に着くが……
当たり前の様にケンヤの隣に座るミコトに皆ピンと来た!
「なあ……もしかしてあの2人……」
マリンが隣にいるミモザにカクカクしながら尋ねる。
「ん〜、分からないけど、イケメンと美少女が並んで座ると絵になるわね〜」
2人をウットリ眺めるミモザ。
他の冒険者達も2人の雰囲気にただならぬ物を感じている……
ミコトの笑顔に恋し、一瞬で恋破れた気分になる冒険者達……
冒険者達に突っつかれ
「自分で聞けよ……」
とか言っていたルークスが溜息をつき、ケンヤに尋ねる。
「なあ……2人の関係って何なんだ?」
ルークスに問われたケンヤとミコトは、お互いの顔を見合わせた後
「ん〜、そうですね……ミコトとは同郷なんですよ!」
「「「同郷!!!」」」
そのケンヤの言葉にミコトも頷き
「はい! そうなんです。以前に命を救われたんです!」
「「「ま、魔王様の命を救った!!!」」」
これにはケンヤも困惑する……
ミコトの耳元で
(ちょっ! アレはゲームの中での事だろ!? 見ろよ! 皆勘違いしてるぞ!!)
ミコトは素知らぬ顔で
(間違いではないですよ? 私はあれで色々救われましたから!)
ぐぬぬ……そう言われたら何も言えねぇ
「同郷でケンヤが魔王様の命を救ったのは理解した……いや、理解出来ていないが理解した事にする……それで今の2人の関係は?」
そのルークスの問いにミコトは恥ずかしそうに答える。
「えっと、ケンヤさんとは……お付き合いさせていただいてます」
(((お付き合い???)))
ケンヤは頭をかき
「ですね……ミコトとお付き合いする事になりました!」
皆またポカーンとなる。
お付き合いとは?
「なあケンヤ……お付き合いってなんだ?」
へっ? なんだと言われても……
「なあミコト、お付き合いってどう説明すればいいんだ?」
ミコトも悩み……
「お付き合いはお付き合い……ですよね?」
「だよな?」
結婚前の準備? いや違う
婚約? いや違う
ん〜……上手く口で説明出来ん!
「「お付き合いはお付き合いです!」」
皆、更に謎が深まった……
それを見ているシルは
普通に恋人ですと言えば良いのに……
溜息をつくが敢えてそれを言わない……
何故? その方が面白そうだから!!
雷龍はイライラしながら会話を聞いていたが、我慢出来なくなり口を開こうとすると……
「さあさあ、食事とお酒並べるわよ!」
と、料理とエールをテーブルに並べだした。
…………話しの腰を折られる形になり、何も言えなくなる雷龍……
皆に食事とエールが行き渡ると、オリバもなみなみとエールが入ったジョッキを片手にテーブルに着き
「ケンヤが帰って来た! 勇者の凱旋だ! 飲むぞ!!」
「「「うおーーーー!!」」」
凱旋って……まだ何か達成した訳じゃないんですが……
まあ雰囲気って大事だもんね……
オリバの音頭に苦笑いしつつ、久しぶりにエールをあおる!
う、うめ〜!!
五臓六腑に染み渡る!!
おっと、オジサン臭を出してしまった!
ある程度酔いが回ってくると、皆遠慮がなくなって来て、ミコトの周りに集まり、色々と聞き出そうとする。
ミコトの年齢や、魔族領の事、どうやってケンヤに命を救われただの色々だ。
それを少し離れた所からルークス達と呑みながら眺めるケンヤ。
「魔王ちゃん取られちゃってるけど良いのか?」
ルークスが茶化して聞いてくるが
「まあ、魔王のミコトが人族の冒険者と交流を持つのも悪く無いかなって……、アイツ今は魔族領で幸せにしてる見たいだけど、故郷では友達もいなかったって言ってたからね……」
「へー! あんなべっぴんさんなのに……」
ルークスが呟くとミモザが
「あれだけ容姿が良かったら、同性には反感買うものよ! 特に女の子はね」
そう言うもんかと呟きエールをあおるルークス。
「あ、そう言えばお前や、あの双子達はどうなんだ? 街を出てから全く噂を聞かんぞ? 多分ギルド長やウチのオヤジが隠してるんだろうが……」
俺達の事は今日報告したばかりだし、そりゃ伝わらないか……ってか俺のSSランクなんて口が裂けても言えねぇ〜
「じゃあ、この街を出た辺りから話しますか!」
俺がそう言うと、興味があるのか皆集まってくる。
街を出てひたすら走り魔族領に繋がるダンジョンを目指した事、ダンジョン内で神龍のフロストドラゴンに出会い、サラがそのフロストドラゴンの宿主になった事、その際魔王であるミコトと再開した事、次に向かった先でトオルが大活躍し、巨大トロールを光龍と共闘し倒した事、光龍に気に入られたトオルがその宿主になった事、雷龍は呪われていてケンヤとミコトが協力して呪いを解いた事。
所々長くなるから省いたが、トオルの活躍はケンヤも力を入れて語る。
皆、驚きを隠せない!
「あ、あのトオルとサラが……神龍の宿主だと!」
「神龍ってあれだよな? 神話やおとぎ話に出てくる……」
「それに巨大トロールだと……」
1人の冒険者がケンヤに尋ねる。
「なあ……お前に鍛えて貰ったら俺達もそれぐらい強くなれるのか?」
その質問には皆が興味を示すが、突然シルが腰にてを当てて現れて
「そんなの無理に決まってるじゃん! トオルとサラは盲目的にケンヤを信頼してるから出来る事よ? あんたケンヤに言われて2週間ダンジョンに籠る事出来る?」
あっ……
そう言えばそんな事もあったな……
「あれ……常人がやれば精神崩壊起こすわよ?」
そう言って俺にジト目を向けてくる……
確かに……あれは不味かった……と目を泳がせるケンヤ……
すると……
「わ、私はそれぐらい平気だぞ!! 早速ダンジョンに行こう! ケンヤ! 早く行こう!!」
突然立ち上がり興奮気味にまくし立てるマリン……
ああ……マリンさん、かなり酔ってるな……
周りの冒険者に宥めすかされ真っ赤になり席に着くマリン……
「マリンさん、マリンさんなら頑張れば直ぐにAランクぐらいにはなれますよ!」
マリンはパッと顔を上げ
「ほ、本当にそう思うか!?」
俺が頷くとマリンはジョッキに入っているエールをグビっと飲み干す。
「よし! 今日は呑むぞ!! 今からのエール代は全部私持ちだ! 皆呑めーーーー!!」
「うおーーーー!!」
ありゃりゃ……マリンさん……大丈夫?
いつの間にか隣りに来ていたミコト……
「ん? どうした?」
なにやら恐ろしい笑顔の後……
思いっきりお尻をつねられました……何故
そこからは……いつもの様にぐちゃぐちゃだ……
あちらこちらで飲み比べを初め、耐えきれず外に嘔吐しに行く者が続出……
だかマリンの奢りとばかりにまた戻ってきては、浴びる様にエールをあおる……
ルークスが脱ごうとしてオリバさんに取り押さえらると、マリンも負けずに脱ごうとして周りの冒険者に取り押さえられる……
その取り押さえている冒険者を投げ飛ばすマリン……
酔った勢いでミモザさんに告白するも、あえなく撃沈する者多数……
シルは……何やらオリブちゃんと踊っているぞ? 何やってんだ?
チビチビ呑みならがら眺めていると、ミコトが隣りに座る。
「凄く楽しい人達ですね! ケンヤさんがこの街に立ち寄りたかった気持ちよく分かりました」
ケンヤは頭をかき
「まあな……前にも言ったっけ? 俺はずっと人付き合いが苦手だったんだ……ずっと……それが…………」
言葉に詰まり代わりにエールを流し込むケンヤ。
「ケンヤさん……ちょっと焼いちゃいますね……ここの人達に」
そう言ってニコリと微笑むミコト。
周りは騒がしくケンヤとミコトに目を向けてはいない。
2人の距離が少しずつ近くなる。
そして……
…………そっと唇を重ね合わせた。
お互い真っ赤になり下を向くケンヤとミコト。
ふと視線を感じ顔を上げると……
これ以上ないぐらいニヤケてるシルと目が合う!
しかも……
「私の存在も忘れてたでしょう」
ら、雷龍……
あたふたする2人……
すると
「あっ!! 2人で何してんだ! コッチきて呑め!! ミコトちゃんも! 今日はトコトンのむんだからな!!」
ルークスに腕を引っ張られ酔っ払い集団の輪に連れて行かれるケンヤとミコト。
明け方までこの騒ぎは続くのであった。
闇龍さん待たせて何やってるんでしょう……




