ピサロ一次帰還②
ブクマ&評価ありがとうございますm(_ _)m
誤字報告もありがとうございますm(_ _)m
前回と同じ誤字で……唖然としてしまいました……
今回もピサロ編です。
やはり思い入れがあり、このピサロ編長くなりそうなw
出来るだけ次回で終わらせたいのですが……
領主邸の前に馬車が止まる。
降りて来たのはケンヤ達だ。
ここまでの道のりは酷かった……
ピサロの街ってこんなに人っていたっけ? と言うほど人が集まって来た。
中には家の屋根に登りケンヤ達を見ようとしてる人の姿も……
後に聞いた話しでは報告を聞いた兵士が
「勇者様ご帰還! 勇者様ご帰還!」
と領主邸まで大声で叫びながら走っていたらしい……
後で見つけてデコピンしてやる!
見覚えのある執事さんとメイドさんに案内され通された部屋は……
「なんだ……この無駄に豪華な部屋は……」
トオルもサラも目を白黒させている……
幾らするのか想像もつかない様な調度品の数々……
天井には巨大なシャンデリア……
今座っているソファー1つとっても、相当値が張る物だと思う……
迎賓室……ってヤツか?
3人掛けのソファーに俺とトオル、サラが座り、横の2つある1人掛けのソファーにはミコトとアバロンがそれぞれ座る。
…………なんて居心地の悪い。
俺の両隣に座るトオルとサラもキョドっておりまする……
これは嫌がらせか? 黙って夜逃げしたから嫌がらせなんだな!
ケンヤがそう確信するとノックの音がする。
入って来たのは……
領主であるネイス、ソフィアの父であるローレンス伯、ソフィア、ギルド長、最後に副ギルド長のメイだ。
ソファーに座る前に……皆一斉に膝をつき……
「無事のご帰還一同心待ちにしておりました。勇者様」
ネイスが口を開くと……
「この度は無事魔王様と合流出来たと報告を受けております」
ぐっ! なんだ? なんの茶番だ!?
ギルド長と目が合うと……
に、ニヤついてやがる!!
やはり嫌がらせかっ!!
けど……なんでローレンスさんが居るの? 王都に帰ったんじゃ……それにミコトの事も……
ローレンスさんが顔を上げ
「其方が魔王様でございますかっ! これは……なんともお美しい……はっ! こ、これは失礼致しました! 私は伯爵家のローレンスと申します。実は魔王様にお会いしたいと言う方々がおられまして、此方にお通ししても良いでしょうか」
ミコトはキョトンとするが頷くと、パタパタと足音が聞こえ、2人の魔族が飛び込んで来た!
2人はミコトの前に膝をつき
「魔王様! よくご無事で! このオズマもう心配で心配で……」
「魔王様、まさかこれ程早く再会出来るとは、このカシム頑張ったかいがありました!」
魔王領領主であるオズマとサーチャーのカシムであった。
「お、お2人共……えっ? なんでここに居るの!?」
驚くミコト!
それにはオズマが応える。
「あの後……私にも何か出来る事は無いかと考えまして……、ダンジョンを抜け、人族領に入り、この国の王に謁見を求めたのです! この一大事、魔族と人族、共に手を組めないかと……」
カシムも
「この国の王は真摯に対応してくれましてな! 厳戒態勢を敷いて頂きました。そして王都にゲートを設置する事を認めて下さいました! ゲートは領主一族にしか伝わらない魔法、オズマ殿のお陰で今はこの国の王都と魔族領はゲートで繋がり、魔族と人族の交流が始まっております」
これにはオズマも胸を張り
「些か苦労しましたが……ゲートの設置には膨大な魔力が必要でして、手持ちのマジックポーション全て使い切り、カシムの手持ちでも足りず、この国の王に頼み込んでようやくゲートを通す事が出来ました!」
ミコトに褒めて欲しいと……アレ? なんか尻尾がブンブン……気のせいか。
それを聞いたミコトは
「人族との交流! 凄いです! それにゲートの事も!」
2人を褒めると、カシムは深く頭を下げ、オズマは……更に尻尾がブンブン……気のせい……だよな……多分……
ローレンス伯は「ゴホン」と咳払いをすると
「このお2人が魔王様と勇者様が立ち寄るならどの街かとお尋ねになられまして、恐らくこのピサロであろうと……私がお2人をピサロまでお連れした次第であります。人族領でケンヤ様を捕まえる……いや、ケンヤ様が訪れになるのならこのピサロであろうと、網を張り……いや、お待ちしておりました!」
所々なんか気になるが……
するとギルド長が
「勇者様、トオルにサラも冒険者カードをお出し下さい」
あ……嫌な予感……
「冒険者ランク上げるなら渡しませんよ!」
俺がそう言うと……
「バカモン! Dランクの勇者など聞いた事ないわい!! トオルもサラも! 聞いておるぞ! お主らのレベル46らしいの! そんなレベルでいつまでも見習いにしておける訳ないじゃろ!! しかもサラには氷結龍が……クドクドクドクド…………」
ひとしきり叱られました……はい
ようやくギルド長に何時もの調子が戻ってなりよりだが……
しかし
許せない事がありますね〜
ケンヤはオズマの前に行くと……
その胸ぐらを掴み
「お前……何トオル達のレベル喋ってんの? 1度死んでみる?」
「す、すみません!! は、話すつもりは無かったんです! つい話しの流れで……」
ケンヤはミコトに
「なあミコト……コイツ少しお仕置が必要だと思うんだが……いいか?」
縋るような目をミコトに向けるオズマ……
「オズマさんは以前もトオル君に失礼をしましたよね……そして今回また言ったらダメなレベルを……オズマさん、諦めましょ……」
絶望するオズマ……
ケンヤはオズマを羽交い締めにし
「お前……レベル幾つだ?」
…………
口篭るオズマ……
「おいおい、人のレベルはペラペラ喋っておいて自分は言わないのか? 随分魔族の領主ってのは横暴なんだな!」
「くっ! 私はそんな……36だよ……」
ん〜、なら軽くなら死にはしないか……多分
「トオル、コイツにデコピンして良いよ! ただ今のお前が思いっきりやったら死んじゃうから、手加減はしてやれよ」
へっ!?
指名されたトオルはブンブン首を振り
「け、ケンヤさん……俺別にレベルバレても怒ってないから……そんな事しなくても……なあサラ」
サラもカクカク頷く。
ケンヤは少し考え
「じゃあお前に選ばせてやる。俺にデコピンされるのと、トオルにデコピンされるのと何方か選べ!」
オズマはカタカタと震えながらトオルを選ぶ。
「だからケンヤさん! そんな事しなくても……俺は……」
トオルは拒否の発言をするが
「ダメだ!!」
思わぬ強い口調にトオルはビクンとする。
「トオルいいか! コイツはお前の事を軽く見ている。以前の事も今回の事も! 確かにお前はまだ子供で、コイツからしたら侮る相手かもしれん。だけど……いいのか? ここでちゃんと自分の力を示さないと、今後ずっとコイツに舐められたままだぞ!」
ケンヤに言われ考え込むトオル……
羽交い締めにされているオズマの前まで来ると
「あの……ゴメンなさい……手加減はするんで……」
目を閉じグッと体を固くし防御体勢に入るオズマ。
…………すると
ドゴっ!!
物凄い鈍い打撃音が室内に響く!!
瞬間オズマの意識が飛んでしまった……
やり過ぎた!? とオロオロするトオル……
気絶したオズマをそのまま床に放置するケンヤ……
オズマに駆け寄りポーションを飲ませるカシム……
トオルと同じ様にオロオロするミコト……
地獄絵図である……
この光景を作ったケンヤはソファーに戻り
「これでコイツも懲りただろ!」
ニヤリと笑った……
するとシルは溜息をつき
「とても勇者とは思えないわね〜、ケラケラ」
「だってさあ! コイツ、ウチのトオルなめすぎだろ?」
「ケンヤって……トオルとサラの事となると頭のネジ飛んじゃうよね……まるで……お父さん?」
お、お父さんだ……と
ケンヤはトオルとサラを振り返り
「トオル、サラ、お父さんって呼んでいいんだよ!」
「「よ、呼びません!!」」
ハモって拒否され落ち込むケンヤ……
そのケンヤの頭を撫でるミコト……
「この茶番いつまで続けるでござるか?」
アバロンのツッコミに皆正気に戻る。
ギルド長は「ゴホン」と咳払いの後
「あの、勇者様……ああ! もう面倒臭い! ケンヤ、トオル、サラ、さっさとギルドカードを出さんか!!」
あ……ギルド長がキレた……
もう逃げられないか……
ギルドカードを差し出すケンヤ。
トオルとサラもカードを差し出す。
カードを受け取ったメイはケンヤを見てニコリと笑いかけ退出して行った。
その様子に敏感に反応するミコト!
先程とは違いケンヤの隣に座り直す。
女の感が働いたのだ!
それをギリっと歯軋りしながら見ているソフィアをミコトは無視……
…………
何も言わず1人掛けのソファーに移動するトオル……アバロンに頭を撫でられていた……
皆がソファーに座り直すとローレンス伯が口を開く。
「もう良いか……普通に話すぞ! ケンヤよ、この街に戻って来たのは何かあったからであろ? 何があった?」
普通に話しだすローレンス伯にホッとし
「いや、邪神の復活や悪魔の事報告に来たんですが……もう既に知っていたみたいですね」
「なるほど、その事に関しては既に国として動いておる。安心してくれ。後、そなた達が動き易い様、王より各国に通達しておる。他の国でも動きやすくなるであろう」
…………あっ!
ケンヤは重要な事に気がついた……
「フロストドラゴン、次の闇龍だけど人族のどの国に居るんだ?」
ケンヤの問いにサラの指輪から声がする。
「えっと……ここからずーっと東に向かって海にある小島ね! 確かその島はどの国にも属してないと思うよ?」
フロストドラゴンが応えると
「い、今の声が神龍の声か!」
今まで発言を控えていたソフィアが驚く!
「ああ、ちょっとデカいからこの部屋で具現化するのは無理だけどな! 因みに、トオルとミコトも神龍を宿しているぞ」
一同「へっ?」となる……
ギルド長はトオルに
「と、トオルよ……お主……ホントか?」
ギルド長に聞かれトオルは元気に答える。
「はい! 光龍さんです! 人前ではあまり喋らないけど、僕の中では結構お喋りさんです!」
「…………フッ」
「あ、お喋りさんって言っちゃったから照れちゃいました」
ギルド長、ソフィア、ローレンス伯がポカーンと口を開く……
「魔王様はともかく……サラに続きトオルまで……サラの事はそちらの魔族の方々から話しは聞いていたのじゃが……トオルよ、お主と光龍の事、詳しく聞かせてくれぬかの……」
トオルは巨大トロールとの出来事を皆に語る。
一同目を見開きトオルの話しを聞いている。
話し終えるとギルド長が
「ケンヤよ……今の話し全て本当の事なのじゃな? 神龍である光龍が苦戦する程の相手を……」
ケンヤは頷くと
「ああ! 凄かったですよ! あの巨大トロールの足首を切り落とした技なんて、俺にはあんな真似出来ないな!」
ケンヤには出来ない!!
その言葉にまた一同唖然となる!
「あ、あれは俺が非力だから……ああするしか無かっただけで……ケンヤさんなら1太刀でしょう? それに次の雷龍さんなんて……ワンパンにキックで倒したじゃないですか!」
し、神龍の雷龍をワンパン!!!
もう皆ずっと唖然としっぱなしだ……
「アレは……微かに記憶が残ってるわ……思い出そうとすると身体が震えるの……これが防衛本能ってヤツなのね……」
ミコトの頭にあるティアラから雷龍の声がする……
「フッ!」
いや……光龍さん……いい加減喋ろうよ……
ギルド長は溜息をつき
「ケンヤはともかく……トオルにサラの事、儂の判断は間違って無かったと言う事じゃの!」
判断? なんの事? なんて思っていたら、メイさんがギルドカードを持って戻って来た。
一瞬メイの動きが止まる……
メイはソフィアに目を向けるとソフィアは真剣な表情で頷いた。
視線を戻すメイ……
笑顔だ……笑顔なのだが……
ちょっと……メイさん……目が……なんだ? チョー怖え〜
すると……隣に座るミコトが更に距離を詰めて……
ミコトさん……それ以上はお尻くっ付いちゃうから!
な、何やらミコトとメイさんがバチバチと……
オレの目がおかしいのか? 見えない何かが見える……
トオルとアバロンは抱き合ってカタカタ震えているし、サラもアバロンの膝の上に避難している……
「ご、ゴホン!」
ギルド長の咳払いにハッと我に返るメイ。
3枚のギルドカードを出し、ケンヤとトオル、サラに渡す。
そのギルドカードには……
「なっ! こ、これ……どう言う事ですか?」
トオルが動揺するとサラも……
「ぎ、ギルド長さん……これって……」
トオルとサラは顔を見合わせるとギルド長に向かってギルドカードを差し出す!
「「ランクSって! 意味わかりません!!」」
冒険者ランクS
それはかつての勇者アキラだけに認められた称号!
世界を救う者の証だ!
それをまだ12歳のトオルとサラに……
「当然じゃろ? お主達は既に人族の限界を超えており、更に伝説の神龍を宿しておるのじゃぞ? これは国王様の了承済じゃ!」
ギルドカードを持つ手が震えている双子達。
そこにケンヤの声が……
「なあ……トオルとサラのランクSは理解したけど……俺のコレは……」
ケンヤが冒険者カードをテーブルの上に置き皆に見せる。
ケンヤ 15歳 戦士
ランク SS
発行 王都アルシア (所属ピサロ)
「ランクSSってなんなんですか!!」
ケンヤがギルド長に詰め寄ると
「そんなもん弟子がSランクじゃぞ? その師匠の称号に相応しいと思わんか?」
ニヤリとするギルド長……
「色々と功績もあるしの! 双子をSランクまで育て上げた功績、魔王様と共闘を取り付けた事、神龍云々、小さな事も含めるとその功績は数えきれん! 誰しも納得するじゃろ」
ぐぬぬ……
ギルド長は優しく微笑むと
「ケンヤよ……これでもかなりの譲歩を国から引き出せたのじゃよ……王都の貴族共はの、お主達を王宮のお抱えにとか、王直属にとか言い出してのう……ローレンス伯が骨を折って下さったのじゃ……所属をピサロに出来たのはそのおかげじゃ、色々すまないとは思うがの、これが儂らの出来る精一杯じゃったんじゃ」
ギルド長のその言葉にこれ以上我儘は言えない……
溜息を1つつくと……
「分かりました……ただ……」
「ただなんじゃ?」
「ギルド長やローレンス伯の顔を立てて、この件は受け入れる事とします。 しかし、トオルとサラにこの国の貴族共が、何かしら意にそぐわない事をしようとした時は……」
「その時はなんじゃ!!」
ケンヤはニヤリと笑い
「一人一人見つけてデコピンの刑に!」
先程のトオルのデコピンを見た一同……
ケンヤならどれ程の……
デコピンされてもいないのに、皆おでこを隠すのであった……
ミコトVSメイさん……




