残された魔族達と悪魔の陰謀
何度も同じになりますが、ブクマありがとうございますm(_ _)m
ブクマが増える度、意欲が湧きます!!
今回はシリアス展開になります。
お気楽なお話しを楽しみにして下さっている方々、申し訳ございませんm(_ _)m
残された魔族3人
ポカーンと神龍が飛び立った後を見つめていた……
しばらく放心が続く……
「ご、ゴホン! 行ってしまわれたな……」
「ですな……我々では魔王様のお役に立てぬと言う事か……」
悔しがるオズマ……
「お義兄様……私達も鍛えましょ! 幸いにもダンジョンが目の前にあります。今は無理でも今後少しでも魔王様のお役に立てるように」
マリアの言葉に2人は頷く。
マリアはこの事を伝える様に兵士に伝令を出すと
「さてと……もういいかしら? そこに隠れている貴方! そろそろ姿を現したら?」
何もない空間にマリアは声をかける。
……
その何も無い所から邪神の使徒と思われる者が!
「流石は魔族……まさか私のスキルが見破られるなんてね……」
姿を現したのは帝国より密偵として魔族領に入っていたナチである。
ナチはこのダンジョンに隠れてついて来ていたのだが……
人族の勇者に神龍……目の前に起こる事態に暫し呆然としていた。
…………しかも
それに追い討ちをかける様な出来事が……
「もういいわ……」
マリアは訝しげにナチを見る。
「もういいって何がかしら? 貴方その姿邪神の使徒ね!」
マリアをチラリと一瞥すると
「今……そうまさに今、私達の仲間が狩られているの……、新たに現れた邪神にね!!」
3人の魔族達は目を見開く。
「私達使徒はね、繋がっているのよ……色々と。どうやら私達は新しい邪神には邪魔の様ね……私もいずれ狩られるで……グガッ!!」
突然身体を硬直させ、ピクピクと痙攣させるナチ!!
マリア、オズマ、カシムは何事! と臨戦態勢を取る!
「やっと見つけた。残滓を追って転移してみたら、まさかの魔族領とはね」
感情のない声がナチの後ろからすると、徐々にその姿が現れる!
…………現れたのは
「「「ま、まさか! 悪魔か!!」」」
悪魔はナチの延髄辺りに指を埋め込んでいる。
「これはこれは魔族の皆さん、御機嫌よう! そして……さようなら、またいずれ」
そう言うと、ナチと共に姿が消える。
転移したのだ!
唖然とする魔族達。
「あ、悪魔だと! 新たに産まれた邪神は悪魔を下僕に使っているのか!!」
「オズマ殿、邪神は召喚術に長けていると言う……、恐らく召喚し使役しているのであろう……しかし、なんて者を召喚したのだ!! 神への反逆者! 絶対の悪! その正体は……元は天使! そんな者達相手に我々は勝てるのか!?」
悪魔
堕天した元天使。
何故堕天したのかは謎のままである。
元は天使なだけにその戦闘能力は凄まじく、この世界の人々が悪魔を倒したと言う事例はない。
ただ、滅多にその姿を現すことはなく、この世界にあまり興味は無いようである。
ごく稀に召喚に成功する事はあるようだが、召喚者ごとその町や都市、あるいは国を破壊しつくし、破壊する物がなくなると元の世界に帰って行く。
この世界の創造主と絶えず争っていると言われているが、それを確認する術はない。
「悪魔を召喚し使役出来る存在……邪神! これは私達が少々レベルを上げてどうにかなる問題ではありません! 義兄様、カシム殿! 一刻も早く戻りましょう!! 帝国との国境の防御を強固にしないといけません!」
オズマとカシムは頷くが……
「あの勇者と魔王様に頼るしかないのか……」
悔しがるオズマ。
そんなオズマの肩にマリアは手を置き
「お義兄様……戦いは直接対峙する者達だけでは勝てません。後方支援も重要です!」
マリアは自分に言い聞かせる様にオズマを諭す。
肩に置かれたマリアの手に自分の手を被せ、目を瞑り何やら考え込むオズマ。
意を決した様に顔を上げると
「ならば……私は私の出来る事をしよう! 義妹よ、お前は直ぐ帰路につきベリト殿にこの事を伝えるのだ! 私はダンジョンから人族領に向かう」
「お、お義兄様!?」
「人族に協力を仰ぐ! 幸い私は魔族領を代表する内の1人だ。人族の王も無下には出来ぬだろう。一致団結せねば邪神に悪魔……太刀打ちできん! お前の言う後方支援をするにしてもな」
それは何時ものマリアが見ている情けないオズマではなく、魔族領領主の顔をしたオズマの姿があった。
「では俺も出来る事をしよう! オズマ殿、俺もご一緒しましょう。領主様を1人で行かすわけにはいかん! 護衛は必要でしょう?」
そう言って笑うカシム。
オズマはその笑顔に苦笑いで応え
「ふん! 魔王様が帰って来た時に、お褒めいただくのは俺1人でよいのだがな!」
そんな軽口を叩く。
「では義妹よ! 俺達は早速ダンジョンに入る。報告は頼んだぞ!」
「お義兄様、カシム殿、お気をつけて」
駆け足でダンジョンに入るオズマとカシム。
暫しダンジョンに消えて行った2人を見送ると
「すぐに天幕を片付け急ぎ戻ります! 一刻の猶予もありませんよ!」
兵に指示を出しマリアはダンジョンを後にしたのだった。
トルムン帝国
謁見の間の玉砕に座るマモル。
マモルの隣には女型の悪魔オノクリスか控え、階段を挟み、マモルの眼下に2体の悪魔が臣下の礼を取っていた。
マモルから向かって右側の悪魔の名をコカビエルと言い、左側の悪魔はウァプラと言う。
オノクリスが上段にコカビエル、ウァプラが下段で膝をついてはいるが、この3体に上下関係は存在しない。
強大な力を持つ子供……マモルのロールプレイに付き合っているのだ。
マモルに支配されているのは間違いではない。
だが、悪魔達がその気になれば、その召喚の縛りを解くのはそれ程難しくは無い。
では何故?
悪魔達は退屈していたのだ。
この数百年……天使達との争いもない。
折角この世界に召喚されたのだ!
この子供を使って退屈を紛らわさせて貰う。
ある意味悪魔らしいと言えばらしいのであろう。
その悪魔の1人ウァプラの右側には捕えられたナチが頭を掴まれ、床に押さえつけられていた。
「マモル様、なんか魔族領で見つけた奴がいてね、取り敢えず残滓は取り除いて、何していたのか聞いてみたんだけど……なかなか面白い展開になってさあ! 聞きたい?」
およそ支配されているとは言い難い口調でウァプラはマモルに尋ねる。
マモルはその口調に気にした様子も無く
「へ〜! 面白い展開? なんだろ? 聞きたいな! そいつが教えてくれるの?」
ナチは押さえつけられていた手が外れ頭を上げると…………
「あ、貴方が新しい邪神様!!」
圧倒的な力に押し潰されそうになる!
手が外れ自由になった筈であるが、ナチは自ら頭を床に擦りつけるように下げる。
その肩はカタカタと震えていた。
「もう! そんな礼はいいからさあ! 早く何があったのか教えてよ!」
マモルが急かすと、横にいるオノクリスがマモルを諭す様に言い聞かせる。
「マモル様、面倒かもしれませんが、こういうのも大事なんですよ。マモル様は王なのですから」
そうなの? とオノクリスを見上げる。
オノクリスはマモルに微笑みで返答すると、ナチに向かい
「その者、魔族領で何があったのか、王にお聞かせしなさい」
口を開こうとするが、恐怖で口が震えカチカチと歯が合わさり上手く喋れない。
その様子を見たマモルは
「ん〜……、喋れないなら……殺しちゃう?」
青ざめるナチは
「しゃ、喋ります! 喋りますから!!」
必死で震えを押さえ、魔族領で見た事を語る。
人族の英雄が精霊と出会い、既に勇者となっていた事、勇者と魔王が手を組んだ事、勇者パーティの1人が神龍の力を取り込んだ事、他3体の神龍の所に向かっている事。
全て喋り終え肩で息をするナチ。
「ふ〜ん、勇者に魔王、それに神龍か……」
マモルは少し考え、3人の悪魔に問う。
「ねえねえ、あのさ〜! その勇者と魔王が神龍を捕まえるのを邪魔するのと、神龍を連れた勇者と魔王を倒すのとどっちが面白いと思う?」
その発言にナチは驚愕する!!
この邪神は……勇者も魔王も神龍でさえ恐れていない!!
この3人の悪魔の中で1番生真面目そうなコカビエルは
「1番確実に勇者や魔王を倒すには、神龍を取り込む前に勇者か魔王を倒す。またはマモル様が神龍を召喚してこちら側に取り込むか、消滅させる事ですな」
コカビエルの答えにウァプラは
「それは面白くないだろう、マモル様はそんな事望んでないぜ! そうだな〜、確かに先に神龍をこちら側にってのは勇者や魔王が悔しがるだろうけど……パンチにかけるなあ〜。どうせならアイツらが神龍を取り込んで、コレで万全! って乗り込んで来たのをあっけなく倒す方がアイツら絶望しない? 俺達なら問題ないっしょ!」
「ならマモル様、こう言うのはどうでしょう? そのナチだったかしら? の話しでは、もう氷結と光は間に合わないわないから、残りの2体に呪いをかける! 2体別の呪いですね! その呪われた神龍をどうするのか……高みの見物しません? 私の使い魔ならその様子を映像化できますよ」
マモルはパッと顔を輝かせる。
「面白そう!! それ採用ね!!」
「ではマモル様、呪いは私の得意分野なので早速行って参りますね」
そう言い残しオノクリスは転移する。
「楽しくなりそう!」
無邪気な声が謁見の間に鳴り響く。
その映像にマモルの良く知る人物が映し出される事を、この時は想像もしていなかった。
オズマさん……一皮剥けた?w




