王の誕生
ブクマありがとうございますm(_ _)m
前回のふざけた内容? とは違い、少しシリアスなお話しになっております。
ご意見ご感想お待ちしております。
トルムント帝国
深夜寝静まった王城、その地下には巨大な水槽があり、培養液で満たされている。
中央には元は何か生物の左手の様な物が浮かぶ。
人の手ではない……
紺の肌に異常に膨れ上がった指の節、その指から生える爪も血の様に赤く、この世界に存在するどの生物にも、この様な左手を持つ生物は存在しない。
その水槽に浮かぶ左手をじっと見つめる者がいた。
マモルである。
「気に食わない」
…………ボソッと呟く。
その左手から何やら思念がマモルに伝わってくる。
(破壊……破壊……、ゆう……しゃ……、まお……う、消滅さ……せ……)
「ふんっ!」
頭に響くその声を無視し辺りを見渡す。
「死んだ訳ではないようだけど……、ここは……何処? それにこの気持ち悪い手……」
何気に自分の右手を見ると……
「な、何! これ……」
そこに浮かぶ左手とそっくりな自分の手……
自分の手から視線を外す。
水槽にうっすら映る自分の姿を捉え目を見開いた!
「ば、バケモノ……い、いや違う! ゴブリン…… そ、それもテュポーン……?」
ゲームで使っていたアバターが……
ま、まさか………………まさか!!
目を見開く水槽に映る自分を凝視し
「く、くくく……あははははは! やったあ!!」
まさかの異世界転移!!
しかもテュポーンで!!
恐らくこの世界で僕に適う奴なんて居ない!
何せ"邪神"なのだから!!
もうあんな苦しい辛い思いはしないで済む!
いや……、逆に僕が……
ニヤリと顔を歪ませる。
(破壊……破壊……、ゆう……しゃ……、まお……う、消滅さ……せ…)
「うるさいなー! お前か? 僕に指図するな!!」
瞬間…………、水槽の中の左手が消滅した!
「何となくだけど……僕に指図する意志? 思念? がまだ残ってる様な……、先ずそれ片付けよ!」
マモルが床に手をかざすと、3つの大きな魔法陣が展開される。
魔法陣から光の柱が立ち、光が爆ぜると……
そこには3体の悪魔の姿が!!
「まさか我らを召喚出来る様な者がこの世にいようとは……クク、面白い!」
「ふん! きさま……その姿邪神か? 500年前の奴とは別者か?」
「あらら、この私を召喚ね〜……取り殺しちゃおうかしら?」
3体の悪魔は三者三様の態度を取る。
普通なら高位の悪魔3体の召喚など不可能、500年前の邪神でさえ召喚に失敗したのだ!
もし当時の邪神が彼ら3体の悪魔の召喚に成功し、支配出来ていれば……
勇者や魔王に倒されなかったかもしれない……
それ程の悪魔をマモルは召喚してしまったのだ!!
挑発的な態度を取る悪魔達を一瞥するマモル。
するとマモルの赤い瞳が妖しく光った!
「「「ぐはっ!」」」
3体の悪魔はマモルの前に平伏するかの様にしゃがみ込んだ!
「わ、我らを支配するだ…………と!」
「ぐっ! し、縛られる!!」
「おぞましい程のパワーね……」
そんな悪魔達を見下ろすマモル。
「で……、どうするの? 僕に従う?」
苦しみながらお互いの顔を見合わせ、マモルに視線を戻すと…………
静かに首を縦に降った。
「そう! 従うのね、じゃあさあ! なんか僕が気に食わない思念ってかさ〜、何か残ってるんだよ……、君達、それ排除してくれない?」
思念? 悪魔達は感覚を研ぎ澄まさせると……この城いや、この国全体に広がる思念と言うより怨念の様な物を察知する。
「主よ……、これは以前の邪神の残滓の様な物かと……要は残りカスですな」
「なるほど……以前の邪神か……、そんな物が我が主を不快にさせるとは! さっそく排除致しましょう」
「なら我が主、私に提案があるわ! この城いいえ、この国って以前の邪神に取り憑かれてる様なのよ。皆殺しにするのは簡単なんだけど、それじゃあ楽しさ半減じゃない? どうせならその残滓だけ排除して、我が主の奴隷にすれば良いんじゃない? 国を乗っ取るのよ!」
マモルはその女の悪魔の話しに興味を持つ。
「ただ殺すだけじゃつまらないか……確かに虐める相手が居なくなったらつまらないもんね! その意見採用!! じゃあさ、じゃあさ! とりあえずこの国乗っ取って、全世界に戦争を仕掛けるなんてどう? 僕達はそれを高みの見物するの! 戦争ゲーだあ!!」
「まあ、我が主、それは楽しそうね! じわじわ苦しむ姿を楽しめるわ! ああ、ゾクゾクしちゃう!!」
女の悪魔とマモルの会話を聞いた2体の悪魔は
「我は早速この城から制圧いたします!」
「俺は近くの街にとりあえず行ってくるよ、なんかいっぱい気配感じるしね〜、残滓の」
2人の悪魔はマモルに「では」と告げるとその場から消える。
恐らく転移系の魔法だろう。
残されたマモルと女の悪魔。
「お前名前は?」
女の悪魔はマモル前に膝まづき、顔を上げると妖艶に微笑む。
「オノクリスよ」
「じゃあオノクリス、お前は僕についてこい! 城内探検だあ!」
そう言って水槽のある部屋から飛び出すマモル。
クスッと笑いオノクリスはその後に続く。
場内に悲鳴が鳴り響く中、口笛を吹きながら場内を探索中、とある大きな扉を見つけた。
その扉を開くと扉から一直線に真紅の絨毯が敷かれていて、その先には階段になっており、階段の先には贅の限りを尽くしたであろう、玉座が陣取っていた。
マモルは玉座まで走り出しすと
「へ〜! これが玉座かあ! 初めてみた!」
「我が主、座ってみてはいかが?」
チラッとオノクリスを見、頷くと玉座に座る。
玉座から見下ろす。
だれも居ない巨大な空間。
恐らく学校の体育館ぐらいの広さあるのでは?
ここに人が集まり、マモルに皆が跪くのを想像する……
ゾクッと背中が震えた。
オノクリスはマモルの座る玉座の横に立ち。
「我が主、今日からこの玉座は我が主の物ですね」
マモルが見上げるとオノクリスは微笑み頷く。
その光景は邪神と悪魔でありながら、まるで母と子の様であった。
次回も投稿遅れますm(_ _)m




