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平凡な戦士職の成り上がり  作者: 司純


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結束の夜

ブクマ有難うございます!


後、毎度毎度更新遅れてすみませんm(_ _)m

 冒険者ギルド内ギルド長室。


 白銀のミスリルソードを持つ、フードを被った全身黒ずくめの男と頭を抱えるギルド長。


 フードの男はケンヤに伝言を任されたタスクだ。


 既に全てを伝え終え、目の前のギルド長の反応を待っている。


 タスクがギルドに入って来た際、その手に持つミスリルソードに皆騒然とした。


 タスクは剣を掲げ


「勇者からの伝言である! 責任者はいるか!」


 と入って来たのである。


 その声にギルド長は奥から飛び出しギルド長室に招きいれ、タスクから事情を聞き現在に至る。


「アバロンからある程度邪神云々の話しは聞いていたが……、まさか帝国がその様な事になっていたとは…………」


 動揺が隠せないギルド長。


「して、ケンヤ達は魔族領に向かったのじゃな?」


 頷くタスク。


 …………彼奴、邪神云々では無く、絶対勇者だと騒がれるのイヤで逃げおったな!!


 色々と帝国の陰謀が暴かれている現在、勇者と魔王が会うのは間違いでは無い。


 ただ、せめて一言断りを入れてから行かんかい!!


 勇者の出立じゃぞ! 街、いや国を上げて送り出すもんじゃ!!


 ………………ただ


 このタスクと言う者の話しではまだ、帝国内に勇者が誕生した事は知られてはおらんようじゃな、ケンヤの判断は奇しくも正解だったかの?


「何はともあれその話し、中央に報告しなければじゃ、本国へは領主様を通じて行っていただく。タスクとやら、今から領主邸に行く。付いて来て今の話し、もう一度して貰えるか?」


 タスクは黙って頷く。


「では早速向かうぞ!」


 ギルド長とタスクは足早にギルド長室を出て行った。





 魔族領に向かうケンヤ達一行。


 ピサロを出て只ひたすら南西を目指す。


 ケンヤの目指す場所までの移動手段は徒歩しかなく、点々とある村々で休憩、補給をして行く。


 通常徒歩なら1ヶ月程かかる距離だが、そこはケンヤに鍛えられたトオルとサラだ! アバロンにしてもステータスの高い魔人である。


 村から村までひたすら走り続ける体力があるのだ。


 普通では考えられない速度で走り続け、僅か10日余りで目的地近くの村まで到達、そのまま宿に向かう。

 

 ただ流石にトオルもサラもクタクタだった……、アバロンにしてもだ、ケロッとしているのはケンヤとシルだけ、宿に着くと皆ぐったりとしていた。


「勇者とは、かくも化け物じみた体力をしてるのでござるか……」 


 アバロンは呆れ気味にケンヤを見ると、トオルとサラも同様に


「「化け物……、確かに!」」


 ハモリならがケンヤにジト目を向ける。


「化け物〜! キャハハハ」


 シルさん……


「仕方無いだろ! その邪神ってのが何時復活するのか分かんないから、急いだ方がいいって行ったのはアバロンじゃねえか! トオルもサラもそれに賛成したろ?」


 文句を言うケンヤだが、かなり強行だったとは思う。


「じゃあ今日はこの村で1日休養するか、ダンジョンに入るのは明日だな!」


「「ダンジョンに入るんですか?」」


 トオルとサラはビックリして聞いてくる。


「ケンヤ殿、ダンジョンに入って何をするでござるか? そんな事をしている時間はないでござるよ!」


 アバロンからは避難の声が


「アレ? 言って無かったっけ? そのダンジョンは魔族領と繋がってるんだ!」


「「「だ、ダンジョンと魔族領が繋がってる!?」」」


 シル以外の3人は驚愕する。


「ああ、かなり長いダンジョンで、中の魔物も竜族だ! 異変後、どんな変化したのかは分かんないけど、多分かなり強力な竜族が湧いていると思う。そんで問題はボスだな……、北の森のダンジョンのボスの様に、ボスが変異しているとすると……、俺も本気を出さないといけないかも?」


 トオルとサラは


「…………ケンヤさんの本気」


 呟くとアバロンは逆に


「ほほう! 竜族でごさるか! 腕がなるでござる!!」


 やる気になっている様だ。


「そんでそのボス部屋に魔族領方面のダンジョンに繋がる扉がある。どちらにせよ魔族領に行くにはボスを倒さなくちゃならない! トオル、サラ、お前達も強くなってはいるが、ボスは俺が倒す! 絶対手を出すなよ!」


 少し残念そうだが、ケンヤがそう言うのならと納得する2人。


 それを様子を見たケンヤは苦笑いを浮かべながら


「まあ、ボス部屋までは2人もガンガンレベル上げしてもらうぞ! 竜族の経験値や熟練値は北の森の魔物とは比較にならない位美味しいからな! じゃあ明日に備えてもう寝るぞ!」


 

 皆疲れているからか、すぐに寝息が聞こえてくる。


「ね〜、ケンヤ……、なんでダンジョンが魔族領と繋がってるって知ってんの?」 


 シルがこっそり俺に聞いてくる。


 ん〜、シルになら話してもいいかな?


「まだ誰にも話して無いんだけど……、シル、絶対に内緒だぞ!」


 俺が真顔で言うと、シルも珍しく真面目な顔で頷く。


「俺は元々この世界の人間じゃあない! 転移者だ! いや……、姿形が変わってるから転生者か?」

 

 シルは驚く様子もなく俺の話しを聞いている。


 以前は此処と違う世界に居て、実年齢は49歳、ゲーム内の世界にここはよく似ている事、そのゲームをしていたら目眩がし、気がついたらピサロ東の平原にいた事、ゲーム内でのレベルもそのままで、此方に来た当初のレベルは90、現在は92まで上がっていること、ダンジョンが魔族領と繋がっているのを知っているのは、以前そのダンジョンでレベル上げをしていた事、などなどシルに聞かせた。


 シルはなるほどね〜と言いながら


「まあ、なんとなく察していたけどね、あたしのとうちゃんと一緒にいたアキラってのも転生者だったらしいしさあ〜」


 あっ! やっぱり!


「それにケンヤの実年齢? 何となく分かってたよ! 精霊ってさあ、気に入った人に加護を与えた時点で、その人の性格とか過去の記憶とかに影響されちゃうの! あたしの今はかなりケンヤの影響を受けちゃってるのよ」


 ま、マジか!! たまにシルがオッサン臭くなるのは俺のせい? シルさんごめんなさい!


「後、レベル90にはビックリだね〜! そりゃ強い訳よ! けどさあ、それトオルやサラには話さないの?」


 それは……


「だってさあ……、転生者でレベル90の実年齢49歳なんて信じるか? それに信じたとしても、そんな怪しいやつについて行こうなんて思わないだろ? こんな邪神とか現れる世界だよ? 俺はもう少しアイツらを強くしたいし、俺が居なくても大丈夫って思えるまでは言わない様にしようかなって。今離れて行ったら中途半端だしな!」


 俺がそう言うとシルは少し考えて


「別に言っても2人はケンヤから離れないと思うけど?」

 

「「絶対離れません!!!」」


 トオルとサラはガバッと立ち上がると、拳を握りしめ目に涙を溜めながら叫んでいる。


 ゲっ! き、君達起きてたの……?


 トオルは俺の目を見ながら訴える。


「お、俺、転生者が何かよく分かりません! 違う世界から来たのかな? とはなんとなくわかるけど……、けどそんな事で俺達はケンヤさんの事を嫌いになったりしませんよ!!」


 サラもトオルに続き


「お兄ちゃんの言う通りです! そりゃちょっとは驚いたけど、私ケンヤさんが迷惑に思わない限り、絶対ケンヤさんから離れません! もっと私達の事信用して下さい!!」


 2人の言葉に胸が熱くなる……、信用しろか……


「2人共、ありがとう。そんで悪かったな! 俺は臆病になっていたのかもしれない。人付き合いが苦手で、以前の世界では1人で居ることの方が多かったんだ。それがこの世界に来てからは、シルに出会い、お前達に出会い、オリブ親子に出会って人の温かみに触れてしまった。それを手放したく無かったんだ」


 自然と頬を涙が伝う。


 トオルとサラは俺の手をとって


「俺達は仲間ですよね? これからは何でも話して下さい! まだまだ頼りないけど、頑張ってケンヤさんを支えられる様になります!」


「うん! 私達にもう少し頼って下さい! まだまだ頼りないですが……」


 俺は2人を抱きしめ


「生意気な! 俺に頼れだと? 100万年早いわ!!」


 照れ隠しに憎まれ口を叩く。


 シルはその様子を優しく微笑んで見つめていた。



 ケンヤ達に背を向け寝ているアバロン。


 その瞳から大量の涙が溢れている。


 邪神復活の前に勇者パーティ結束が固まった夜だった。



 

 


 




 



 



 



次回は閑話入れるか、魔族領のお話しの続きにするかで悩んでますw

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