勇者夜逃げ?
毎度投稿遅くなり申し訳ございませんm(_ _)m
今回も短めですがキリが良いので、これで投稿します。
「あーーーー、超うぜぇ!!」
勇者認定されてしまったケンヤ。
それ以来どこに行っても人だかりができる……
…………サインまで求められる始末だ。
今オリブの宿の部屋に篭っているが、宿の外には出待ちの人で溢れかえっている……
宿にも迷惑だ! オリブ達は何も言わないが、他の泊まり客から苦情が来ている。
いっそ逃げるか……!
「なあシル……、どっか別の街に行かね?」
シルはそんなケンヤの言葉に
「あたしはいいけどさあ〜、トオルとサラはどうすんのよ!」
そだよな〜……
連れて行きたいけど、孤児院長に反対されるかも……
そんな事を考えているとノックの音がし、アバロンが入ってきた。
アバロンは今現在孤児院に滞在している。
トオルとサラが面倒を見ると言って聞かなく、アバロンも召喚者のサラと離れたくないとか言い出して……
召喚された時サラを殺そうとしたとは思えない懐きっぷりだ。
そのアバロンが部屋に入るなり
「ケンヤ殿! サラ様とトオル殿を助けてくだされ!!」
サラ様? いつの間に様呼びになった!?
まあそれは置いといて助ける?
「今、孤児院に人が溢れているでござる!」
ご、ごさる!?
い、いや……それより、何故孤児院に?
俺より先にシルがそれに反応する。
「なんで孤児院に人が溢れてんのよーー! アバロンあんた何かした?」
アバロンは首振り
「せ、拙者は何もしてないでござる! どうやらサラ様とトオル殿が勇者パーティだと噂がながれて、一目見ようと集まって来てる様でごさる……、拙者はサラ様の為にそんな奴ら皆殺しにしようとしたのでござるが、それはダメとサラ様に叱れてしまい……、サラ様とトオル殿はケンヤ殿にどうすれば良いか聞いて来いと、拙者を遣わされた次第でござる」
"拙者とござる"が気になって全然内容が入ってこねぇーーーー!!
「あのさあ、その拙者とかござるって何?」
俺よりが聞くとアバロンはハッとし
「あ、この喋り方でござるか! 拙者、己が認めたお方にはこの様な喋り方になるでござる。拙者と言うか魔人は皆そうでござるよ?」
ま、魔人皆!? 魔人は武士……メモしておこう……
「ケンヤ殿! サラ様とトオル殿を救って下され!!」
う〜ん……、まさかトオルやサラまでそんな事になっているとは……
「シル、やっぱ落ち着くまでしばらくピサロから離れた方が良くない? トオルとサラも連れてさ! そんな状況ならしばらく俺と街を離れても、孤児院長も納得するんじゃね?」
シルも俺の意見に賛成の様で
「だね〜! トオルもサラもそんなんじゃ可哀想だし! よし! 夜逃げだあ!!!」
…………シルさん、言い方
ただ夜に街を出るのは悪くない、門番を如何に説得出来るかだが……
そこでケンヤはピンっと閃く!
南門の門番のロイドさん!
読者は覚えているだろうか? ケンヤが初めてピサロの街に来た時、かなり融通してくれた門番だ。
あの人なら事情を説明すればなんとかしてくれるかも?
ケンヤは現状、如何に困っているかを切実に訴える内容の手紙を書く。
シルはその内容を見て
「ケンヤ…………、それ盛り過ぎじゃない?」
こういうのは少し大袈裟な方が良いんです! ウンウン
ついでに孤児院長宛にも、トオルとサラを連れてしばらく街を離れると言う内容の手紙を書き
「アバロン、こっちの手紙を南門のロイドさんに渡してくれ、絶対ロイドさん以外に渡したらダメだぞ! 渡す前にちゃんと名前を確認するんだ! そしてこっちの手紙は孤児院長に、トオルとサラにはお前が直接伝えろ! 今晩出発するから準備しておけって、孤児院まで俺が迎えに行く。急な話しだけど、早くピサロを離れないと、どんどん酷くなりそうだからな!」
そう言って窓を覗くと、ケンヤの姿を窓越しに見つけた女性達から、悲鳴の様な歓声が聞こえる…………
それを見ていたアバロンは真剣な顔で頷き出ていった。
そうだ! オリブ達にも伝えないと!
部屋を出てオリブちゃんにオリバさんとジータさんを呼んで来てもらう。
オリバさんは恐らく察していたのだろう。
「出ていくのか?」
俺は頷く。
オリブちゃんは今にも泣き出しそうだ……
そんなオリブちゃんに目線を合わせ頭を撫でながら
「ずっと離れる訳じゃないから、また落ち着いたら帰ってくるよ」
シルもオリブちゃんの頭を撫でる。
「ホントですよ! 絶対帰って来て下さいね!」
無理をして笑顔を作るオリブ。
宿をやっていれば出会いや別れは絶えず経験しているオリブだ。
だが何故かケンヤはずっとこの宿に居るものの様に思っていた。
けどケンヤも冒険者なのだとこの時思い出したのだった。
冒険者は冒険に旅立つ者! 笑顔で見送らないと!
オリブのその言葉と笑顔にグッとくるケンヤ。
正直留まろうかと思うが、自分がいれは宿に迷惑がかかる。
一先ず離れるのが1番良い。
しかし、この俺が人の迷惑とか考える様になるとは……
他人と関わるのが面倒! 1人が気が楽とか言ってたのにな。
このオリブ家族達、シルにトオルとサラ、いや! この街の人達との出会いが俺を変えたのかもしれない。
俺は立ち上がりジータに伝える。
「今晩トオルとサラを連れて出立します。しばらくしたらまた帰ってくるんで、その時はまたよろしくお願いします」
ジータは優しく微笑んで
「いつでも帰っておいで、あんたの様なイケメンの上客は中々居ないからね!」
そう言ってウインクをする。
「ジータさん、それオリバさんがヤキモチやきません?」
俺がおどけて言うとオリバさんはムッとした顔で
「ふん! お前の様な若造には出せない大人の魅力が俺にはある!!」
そう言ってジータさんの肩を抱いた。
「オリブ! 弟か妹欲しくないか?」
オリブちゃんはキョトンとした後
「欲しい!!」
目を輝かせる!
あ、あの〜オリバさん何を突然……
もしかしてヤキモチ焼いてたの? マジで?
びっくりぽんです!
ジータさんはオリバさんの頭をバシと叩き
「あんた! 何言ってんだい!」
頭を叩かれたオリバは何故叩かれたのか分かってないようだ……
悲しそうにジータを見ている。
「ぷっ!」
そのオリバの悲しそうな顔に思わず吹き出してしまうケンヤ。
オリブも釣られて笑う。
ジータは苦笑しオリバはキョトンだ。
ここは居心地が良い。
必ず戻ると心に誓うケンヤだった。
オリバさんのカワイイ一面がw




