新たな仲間
ブクマ&評価ありがとうございますm(_ _)m
最近2日に1話ペースになってきてしまってまする……。
トオルとサラは、ギルドでの出来事の鬱憤を晴らすかのように、ダンジョンの魔物を駆逐していく。
まさしく駆逐だ!
レベル32のソフィアでも、上位種単独なら倒せるのだ。
レベル42のトオルとサラなら楽勝である。
ロードでさえ問題なくなってきた。
「うん! そろそろ2人でボス攻略してみようか!」
その言葉にトオルとサラは目を輝かせ
「「良いんですか!!」」
「流石にまだ無限は無理だから、召喚される上位種一体だけ残してボスを倒す。後サラ、ボス戦の前に召喚の杖試してみよう!」
アイテムボックスから召喚の杖を出しサラに渡す。
この召喚の杖、最初に倒したボスからは落ちたのだが、それからは全く落とさない。
この杖で召喚している訳ではなさそうだ。
多分スキルかな?
じゃあ何故最初のボスは杖を持っていたんだろ?
理由は分からない。
分からない事を深く考えたりしないケンヤである。
それはそれとして、サラに杖を使うよう促す。
1度ぐらい試しておかないとね!
サラが杖に魔力を込めると、サラの目の前に魔法陣が出来る。
その魔法陣が回転しながら光だす! 回転は段々早くなり、輝きも激しくなってきた。
サラは大丈夫? と不安そうに俺を見るが、俺は続ける様目で促す。
激しさが増し、眩いくらい魔法陣が輝くと光が弾けた!
そして
人型が召喚される。
「ま、まじかよ……」
召喚されたのはまさかの魔人……しかも上位魔人だ!
ケンヤがゲームで散々戦ってきた相手、ぶっちゃけめちゃくちゃ強い!
どれ程かと言うと、魔法は勿論パワーも半端なく、レベル50時代のケンヤはボコボコにされ、からくも逃げ帰った相手である。
レベルが上がってからは逆に美味しい経験値稼ぎ相手だったが……
しかし今のサラが召喚出来る相手ではない!
その魔人は俺達を見渡し
「誰だ! 我を呼んだのは! ん?」
魔人はサラの持つ召喚の杖を見つけると
「き、貴様の様なガキが我を呼び出しただと! ふん! ガキの使い魔になるほどこの魔人アバロン落ちぶれておらん! 逆に取り殺してくれよう!」
ニヤリと笑うと、アバロンと名乗った魔人はサラに詰め寄り、手を振りかざす。
ガシッ!
ケンヤはその振り上げたアバロンの手を掴み
「ふん!」
ぶん投げた……
アバロンは回転しながら宙に舞い、ダンジョンの壁に激突する。
ただ流石は上位種魔人! 壁に激突したぐらいではダメージは入らない。
しかし魔人の自分を放り投げた事に、アバロンは驚愕を覚える。
そのアバロンの下にケンヤは近付き、アバロンの脇腹を蹴り上げた。
「グハっ!!」
今度は確実にダメージが入る。
ダメージが入るどころではない!
(こ、殺される! この上位魔人であるこの我が…………)
ケンヤはアバロンの脇腹をガンガン蹴りながら
「ね〜! サラに何しようとしたの? ね〜、聞いてる? ちゃんと答えようよ」
サラに手を出そうとしていた事が許せないケンヤ……
死なない程度にダメージを与えている所がなんともえげつない……
それを見ていたシルが
「ケンヤさ〜、怒るのは分かるけど、それじゃあその人何も話せないよ? せっかく召喚したんだし、それくらいにしといたら?」
シルに言われケンヤは我に返る。
「あ、確かにせっかく召喚したんだしな! 殺しちゃあ勿体ないか」
ケンヤはかがみ込み、アバロンを睨みながら
「でさ〜、お前誰でなんで召喚者であるサラを攻撃しようとしたの?」
ケンヤに睨まれ震え上がるアバロン……
は、早く応えないと本当に殺されてしまう!
痛む身体にむち打ち起き上がるアバロン。
3人の前に膝まづき
「わ、我はアバロン、上級魔人だ。し、召喚者を攻撃しようとしたのは……我々魔人を召喚出来るものは、500年前に現れた邪神だけだ! それがまさかこんなガキに……」
アバロンの言葉にケンヤ喉元を掴むと
「ま、待ってくれ! ガキと言ったのは謝る。しかしこんな子供が我を召喚出来るなんて……」
ふむ……、子供に召喚されてびっくり〜! 殺して召喚の呪縛解いちゃえ〜って感じかな?
するとトオルが
「け、ケンヤさん……邪神とか聞こえたんですが……」
確かにいったね〜
「お前今邪神って言ったよな? 誰だそいつ」
俺が聞くとアバロンは目を丸くし
「じ、人族は500年前のあの出来事を覚えてないのか?」
アバロンは驚くが知らない物は知らない。
どういう事か説明させる事にする。
「我々魔人はその力にもよるが、上位魔人ともなるとその寿命は300年程になる。500年ほど前の事ならば、前世代の者から伝え聞く事が出来るのだ。確か人族の寿命は70年程であったな! なるほど、人族にとって500年は長すぎた訳か……」
ケンヤは話しを続ける様に促す。
アバロンの話しによると約500年前、この世界に突如邪神なる物が現れ、魔人達を召喚、世界を破壊しようとしたらしい。
魔人達はそんなモノに興味はなかったが、邪神の強力な召喚の縛りには抗えず、命じられるまま破壊活動を続けていた。
そんな中、唯一邪神の召喚の縛りに抗えた者がいたのだ。
魔人の王!魔人王タナトス
タナトスはその強大な精神力で邪神の縛りを振り切り、当時の魔族の王に世界を救う様依頼したらしい。
その際、タナトスは力を使い切り、魔族領でその生命を落としたという。
魔王は悩む……
邪神の力は魔族領にも及んでいた。
人族より圧倒的に魔力が強い魔族である。
なんとか凌いではいたが、いずれそれも瓦解するだろう。
それ程、邪神の力は強大であった。
魔王は1つの決断をする。
人族との共闘!
もうそれしかない。
魔王は人族の王に共闘を依頼した。
人族側としては願ってもない申し入れだ!
人族の地は荒れ果て、もう自分達だけではどうする事も出来ず、邪神に飲み込まれるのを待つだけであったのだ……
そこで人族の王は1人の若者を送り出す。
唯一魔人と互角に渡りあい、これまで数々の武功を上げてきた英雄、精霊に愛されしアキラ!
アキラと魔王は邪神の居るとされる遥か北、氷に閉ざされた地にあるダンジョンを目指す。
「その後の事は我々にもわからん……、ある日突然召喚の縛りが解けたのだ。おそらくだか魔王と人族の英雄が邪神を倒したのであろうが、詳細は不明だ。後に我々魔人族、魔族、人族がそれぞれ北の地に調査隊を派遣したが、破壊されつくしたダンジョンには邪神、魔王、英雄の死体や残骸も残っておらず、その生死すら不明だ」
この魔人の言っている事が事実なら……
ちらっと聞いた魔族と人族との戦争って、後から捻じ曲げられて出来た話しって事になる。
あくまでこの魔人を信じればだが……
しかも英雄アキラ? なんて日本人的な名前……。
もしかしたら、俺と同じ様にこの世界に来たプレイヤーかも! いや! 絶対そうだ!
色々考えているとシルが
「えっとね〜、その人の話しはホントよ! アキラってのと一緒にいた精霊ってあたしのとーちゃんだから! ビシ」
へ!?
その場にいる全員が固まる。
「し、シルさんや……、どう言う事かな?」
シルは「ん〜」と考えた後
「とーちゃんが言ってたの! そんでね、じゃしん? を倒したから、その魔王もアキラもとーちゃんも上の世界に行くんだって!」
ど、どう言う事だ?
「上の世界って?」
シルは顎に人差し指を当て首を捻り
「わっかんな〜い!」
ズコーです……、ほんとズコーです……
「んでシルさんや……なんで今まで言わなかったの?」
答えは分かっている、分かってはいるが敢えて聞いてみると
「ん? 聞かれなかっから?」
やっぱり……
すると魔人アバロンはシルを凝視し
「さ、さっきまでは気が付かなかったが……、まさか大精霊!!」
アバロンはなるほどと頷く。
「我が敵わぬ訳だ! 大精霊を連れているとなると人族の英雄だったか! 魔王と共に邪神を倒した存在……私が適うはずもない」
い、いやちょいまてよ!
「あの〜、俺そのアキラって人じゃないよ? ってか今生きていたら500歳以上……そんなのもう人族じゃね〜し!」
アバロンは首をふり
「そう言う意味ではない。大精霊は我々魔人や魔族、ましてや人族になどと行動を共にはせん! 大精霊に好かれるって事は、世界を救う者と我々魔人族では伝承になっているのだ。数百年単位で世界に異変が起こる時、大精霊に選ばれし者が世界を救う……史実に数千年前の伝承には魔人族の英雄が精霊を連れ、世界を救ったという」
ま、まじか……
これヤバくね? この事が知れたら俺、英雄にされてしまう……
けど言わないと、今魔王云々で騒いでるのは間違いだと説明出来ない。
俺が頭を抱えているとトオルが
「ケンヤさん、これ報告しないとまずいんじゃないですか?」
サラも真面目な顔で
「お兄ちゃんの言う通りだと私も思います」
ぐっ! やっぱり報告しないとダメ?
シルはニヤニヤしながら
「ケンヤが悩んでるのは英雄云々の所よね? そこ省いて報告すればいいんじゃない?」
ふむ……それしかないか……
「よし、じゃあ報告しに街に戻るぞ! アバロンだったか? 召喚そのままにしておくからお前が説明しろ!いいな!」
面倒くさいんで丸投げです! ビシっ
アバロンは何か言いたそうだか、俺が睨むと震えながら頷く。
なんか俺が召喚者みたい?
ダンジョンを出ようとしたその時
「け、ケンヤさん! つ、杖が!!」
サラが叫ぶ!
サラの持つ召喚の杖の先にある宝玉が輝きだした!
そして……
パキっ!
宝玉が割れる。
あらら……、壊れちゃった。魔人なんか召喚したからかな?
勿体ない事したなと俺が思っていると
「ああああああ!!!」
アバロンがめっちゃ叫んでます。
「な、なんて事……、その杖で我を召喚したんじゃ……それ壊れたらどうやって帰るんだ!!!」
あ! 確かに……
「魔人族の住んでる所ってここから遠いの?」
アバロンはアハハと乾いた声で笑い
「ここが何処かも分からない我にその質問を?」
あ! ご、ゴメン
トオルとサラは顔を合わせ頷くと
「「じゃあ帰れる目処がたつまでパーティを組もうよ!!」」
俺とアバロンは目を丸くする。
トオル君、サラさん、何言ってんの?
トオルは
「だって帰れないんでしょ? サラが呼んじゃったんだから責任取らないと!」
サラも
「うん! 私のせいだから頑張ってアバロンさんの面倒見ます!」
面倒って……犬や猫じゃないんだから……
その言葉にアバロンはぐっと来たみたいで
「わ、我の召喚者はなんとお優しい! 分かりました! このアバロン、精一杯お仕えさせていただきます!」
お、俺が意見言う前に決まってしまった……
何故か魔人が新たなパーティに加わり、困惑しなからダンジョンを出るケンヤ達。
これ……ギルド長がアバロンを見たら、ビックリしてひっくり返るんじゃない?
街に戻りアバロンを見た瞬間
「ま、魔人族!!!」
と、見事にひっくり返るギルド長だった。
次回この続きにするか、ミコトの回にするか……
悩み中です。




