交渉
今回仕事が忙しく、なかなか投稿できませんでした!(T_T)
ダンジョンを出てから3日後
ケンヤは久々にギルドを訪れる。
その3日間、何度もオリブの宿にギルドから面会の依頼があったが、ケンヤは無視……
オリブや、オリバ、ジータは進んでギルドからの面会者を撃退してくれる。
宿のベットでずーっとゴロゴロしたり、オリブと遊んだりして過ごしていた。
たまにシルに外に出ようと誘われ、街に買い物に出たが、ギルドには行かず、ブラブラ買い物や買い食いをした後、また宿に引きこもる。
此方の世界に来てからほぼ休み無しで活動していたのだ。
ケンヤなりの休暇のつもりである。
周りの迷惑など全く気にしていない……
その際、ダンジョンでシルに言われた事を思い出し、ステータスをチェックくし目を丸くする。
ま、マジかよ……
ケンヤ レベル92
種族:ヒューマン
職業:戦士
HP:999
MP:95
攻撃力:615
防御力:715
魔力防御:300
スピード:515
ラック:505
スキル
攻撃力upLv5 防御力upLv5 アイテムボックス
大精霊の加護 ケンヤ流衝撃波斬 ケンヤ流真空波斬
2つもレベルが上がっていた。
この辺りの魔物をいくら倒しても、レベルが上がる訳がないと思っていたけど……
しかもステータスの上がり幅がデカい!
それに……スキル欄……
衝撃波斬や、真空波斬が……
こんな事ならもう少し真面目に技名考えるんだった……と別の角度で後悔するケンヤ……
この世界に来た影響か、はたまた加護のせいかケンヤには分からないが、また一回り強くなってしまった!
ケンヤ自身、このままトオルやサラとレベル上げして行けば、レベルMAXまで行けるかも? とか思ってしまう。
実際レベルMAXが99かは分からない。
古参のプレイヤーでもレベル99は居なかった。
なにせレベル90からの取得経験値が半端ない!
1つ上がれば劇的にステータスアップされるらしいが、その1つ上げるのが大変なのだ!
スキルに関しても、もしかしたらレベル91から取得できる物? なのかもしれない。
なんにせよ、この先のレベルアップは未知なのだ!
もう自分自身のレベルアップは諦めていたケンヤである。
それがまだ成長できる!
本当は1週間ぐらいのんびりするつもりが、居てもたってもいられず、トオルとサラを誘い、冒険者ギルドを訪れた。
最初はそのままダンジョンに行くつもりが、何度もギルドから面会依頼があった事を思い出し、ギルドに顔を出した次第だ。
ギルドの扉を開け受付に向かおうとすると
ガシッ!
腕を捕まえられる!
何度か顔を合わせた事のあるギルド職員だ。
「ケンヤ殿確保!! 至急ギルド長に連絡を!!」
俺とトオルとサラは何事かと目を丸くしていると、奥からギルド長が出てくる。
何故かおかんむりだ! なぜ?
ギルド長は俺を捕まえているギルド職員に
「大至急領主邸にいらっしゃるローレンス伯に連絡を! 本来は此方から伺うべきだが逃げられるかもしれん!! ケンヤは儂らがおさえておく!」
そう言うと、そのギルド職員は急いでギルドを出て行き、俺達をギルド長と複数の職員が囲む。
「な、なんなんですか? トオル、サラ、お前達なんかした?」
トオルとサラに聞くと2人共青い顔で首をふる。
するとギルド長が
「貴様じゃ! 2人は関係……無いこともないが……い、いやケンヤ! 貴様じゃ!!」
ギルド長……なんか意味分かりません。
シルは真っ赤になって唸るギルド長を見て
「キサマジャ! だって! ケラケラ」
シルさん……流石にそれはギルド長が可哀想……
ギルド長はキッ! っとシルを睨んだ後
「ケンヤ! 何度も何度もオリブの宿に使いを出したのじゃぞ! 何故出て来ん!!」
ん〜、なんでって言われても……
「休暇中だから?」
俺が答えると、ギルド長は更に顔を赤くし
「き、休暇じゃと!! この国中が混乱している最中に休暇じゃと!!」
へ? そんなに?
ギルド長はひたすら今の状況を説明してくる。
半時間程くどくどと……ケンヤは真面目に聞いていない。
ギルド長がハアハアと息が切れた頃を見計らい、ケンヤは口を開く。
「ダンジョンが活性化しただけでしょ? それについては、各地から強者を集めて、北の森のダンジョンでレベルを上げてから対応するじゃ?」
それに……
「あの〜、何かあったからといって、俺がギルドに縛られるっておかしくないですか? 俺Dランクだし、魔王云々も関係ないと思うんだけど……そりゃあ知ってる人になんかあったら助けはするけど、強要する権利ギルドにないですよね?」
俺のその言葉にギルド長は「ぐぬぬ……」と何も言えなくなった。
「なるほど……これは一筋縄ではいかぬな!」
ん? 後ろから声がし振り返ると、領主のネイスさん、ソフィア、デイル、そして見た事のない貴族前とした壮年の男性と、如何にも武人って感じな2メートルを越すような2人。
「その方がケンヤか、私はソフィアの父、ガリア・ローレンスだ」
その言葉にギルド内にいた全員が跪く。
え! そ、ソフィアのお父さん? って事は伯爵様!
ケンヤも皆に習い膝をつく。
「皆、畏まらなくてよい。ケンヤよ少し話しがあるが良いか? ギルド長、奥の部屋を借りるぞ」
ローレンス伯はそう言うと、ギルド長室に向かう。
俺達も何故か連行される様に連れていかれた……
ギルド長室には、ローレンス伯、ソフィア、デイル、ネイス、ギルド長、メイ、武人風の2人、そして俺達。
ローレンス伯がおもむろに口を開く。
「ケンヤよ、今我が国、いや全世界で異常が起きているのは知っておろう? お主は既にピサロ北の森のダンジョンを攻略したと聞く。その力、この国に貸して貰えぬか」
ローレンス伯の言葉を聞きケンヤは少し考え
「え〜と、異常ってのはダンジョン活性化の件ですよね? ダンジョンが活性化したとして、何が問題なのでしょう?」
ケンヤが質問すると、ローレンス伯の代わりにギルド長が応える。
「問題だらけじゃ! 今まで入れていたダンジョンに入れなくなる! そうするとダンジョン産の魔石や、アイテムが取れなくなる。アイテムはともかく、魔石はエネルギー源じゃ! エネルギー不足に陥り経済は回らなくなる。国が崩壊するぞい!」
そのギルドの意見はちょっと……
「ギルド長、別にダンジョンの魔石じゃなくても、平原や森の魔獣も増えてきてるんですよね? ピサロでも一斉間引きしたぐらいだし。それで十分補えるんじゃ……後、ダンジョンの魔物が強くなったって事は、今までレベルが頭打ちだった人達はレベル上げれるチャンスでは? この前ダンジョンに入った人達は皆レベル上がりましたよ?」
俺のその意見に皆押し黙る。
「ピサロでは皆さんにお世話になっているので、これからも色々お手伝い出来る事があれば手伝うけど、他の地域の事まで一冒険者である俺が、何故手を貸さなくてはならないんでしょう? 困ってるのなら俺じゃなく、先ず国やその地域を管理している貴族達じゃないですか? ダンジョンをどうにかするのに国や貴族は何かしたんでしょうか? まさか何も動かずに、俺がダンジョン攻略したから協力させようなんて思ってないでしょうね! なんの為に国は軍を持っているんですか? 先ずそれを動かすべきでしょう!」
俺が一気にまくし立てると
パチパチパチ
シルが拍手をし
「キャハハハ! さっすがケンヤ! メンドクサイ事回避する為には口がまわるまわる」
こ、これシルさん! せっかく皆さん俺の口車に騙されかけているのに!
すると武人風の2人が剣を抜き、俺の鼻先に剣を突き出した!
「ケンヤとか言ったな! 貴様、今の言葉は国と軍を愚弄したように聞こえたぞ!」
ふむ……愚弄ね〜
もう1人も
「サザン殿の言う通り! 貴様の様な若輩者の冒険者風情が何を偉そうに!」
あ〜この人達……人に物頼む態度じゃないね〜、これ命令じゃん!
「あのさ〜……、あんた達が何様か知らないけど、その若輩者の冒険者風情に、力を貸してくれって頼みに来たんじゃないの?」
2人は「ぐっ!」と口ごもる。
俺は続ける。
「権力を傘に来て、ほぼ命令の様なお願い! そんで断ると武力で言うことを聞かせようとする。そんな奴らの言う事なんか聞かないよ?」
そう言うと、その武人達は剣を持つ手に力を込め
「なるほど! では死ね!」
剣を突き刺そうとする!
その時
2人の周りに数十の氷の槍が浮かび、2人の首元にはトオルが剣を突き出していた!
トオルは両手の剣を突き出したまま
「ケンヤさんに手を出すなら、俺が相手になるぞ!!」
サラは何時でもアイススピアを発動出来る様身構え
「ケンヤさん、魔法を発動する許可を下さい! この人達許せません!!」
あらら……君達……、いや……、嬉しいよ! 嬉しいけど君達まで国にケンカ売っちゃあ……
首に剣を突きつけられ、数十の氷の槍に囲まれた2人は、驚き恐怖に震えるが剣は引かない。
「そこまで!!」
ローレンス伯か叫ぶ!
「ロキにサザン! 剣を引け! 何をやっておるのだ!」
ローレンス伯の言葉にロキとサザンはハッとするが、2人にも意地があるのだろう、目の前のケンヤに子供2人の態度に引くに引くなくなってしまっていた。
ケンヤは「ふう〜」と溜息をつくと、おもむろに目の前の剣を左手で掴み、右手を振り下ろす。
「パキンっ!!」
剣を素手で砕いてしまった!
ロキとサザンは目を丸くし、何が起こったのか理解出来ない。
「トオル、サラ、もういいよ」
俺が言うとトオルは剣を下げ俺の後ろに控え、サラも魔法アイススピアを消しトオルの横に並ぶ。
「あの〜……、話し合い出来そうにないんで、俺達はこれで失礼しますね! 冷静にお話し出来る様になったら連絡下さい。では」
俺はそう言うとトオルとサラを連れ、ギルド長室を後にする。
ギルドを出るとトオルが
「なんなんですかあの人達!」
サラも
「いきなり剣を突きつけるなんて! 許せません!」
2人共お怒りです。
「まあまあ2人共、その怒りをダンジョンの魔物にぶつけよう! もうお前達ならロードも楽勝だしな!」
「「はい!」」
そうして俺達はダンジョンに向かった。
ケンヤ達が去ったギルド長室。
ロキとサザンはその場にへたり込む。
ロキはカタカタ震えだし
「な、なんなんだ! あの氷の槍! 何十本あったんだ! あれあの魔術師の子供の仕業だよな?」
サザンも
「あの軽戦士であろう子供も……剣を突きつけられるまで、全く気が付かなかった!」
サザンは更に続け
「それにケンヤ……ミスリル加工されてる剣を素手で折りやがった!」
その様子を見ていたソフィアは
「貴方達……誰に喧嘩売ったのか理解できたかしら?」
2人はソフィアを見やり
「ま、まさかあれ程とは……」
ソフィアは溜息をつき
「貴方達は権力を振りかざしケンヤさんに剣を突きつけ本気で殺そうとした……父上が止めたにも関わらず、意地でも剣を納めようとしなかった。貴方達がトオルとサラに殺されていても、私はあの子達を擁護してたわよ?」
ソフィアに続きローレンス伯も
「唯一魔王に対抗出来るかもしれんケンヤを怒らせてしまった……万が一魔王が何らかの動きをした場合、もうケンヤは我々の味方はしてくれんかもしれんな……何せ殺そうとしたのだ、私だって自分を殺そうとした者の味方などせぬ!」
先程までの光景に泡を吹きかけていたギルド長は、ようやく正気にもどり
「ろ、ローレンス伯、ケンヤは冷静に話しが出来るようになれば連絡しろと申しておりました。まだ本気で怒っては無いようですぞ! 双子は怒っている様子ですが……」
ローレンス伯はそのギルド長の言葉にハッとする。
「確かに彼は冷静だった……ま、まさか! 全て彼の計算だったのではないか?」
皆の視線がローレンス伯に集まる。
「敢えて横柄な態度を取っていたのでは? そして我々が怒って彼に手を出すのを待つ。交渉は決裂する。手を出したのはこちらだ、次からは彼の優位に話しが進む様になる。何せ彼を殺そうとし、また彼とその弟子達の力を見せつけられた……」
ロキとサザンはゴクリと生唾を飲み込む。
「高度な交渉術だな! 彼は自分の力や置かれている立場をよく理解している。我々が彼の力を必要としている事も……。今回は全て彼の手のひらの上で事が運んだようだ……ケンヤはまだ15歳だと聞くが……どこでこの様な交渉術を学んだのか……」
皆が真剣にローレンス伯の言葉に耳を傾けているがギルド長は……
(い、いや……ローレンス伯様……ケンヤはそんなに深く考えてませんぞ……)
…………とても言い出せずにいる。
そして……それまで一言も発していない副ギルド長のメイ。
恍惚の表情で何やら報告書の様な物を書いていた……
メイさん……




