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平凡な戦士職の成り上がり  作者: 司純


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魔王誕生

前回、次の日に必ず投稿すると言って嘘を付いてしまいました!


新たに最初から見直すと、誤字が酷くて修正していました。


内容もいつか落ち着いたら最初の方、改変したいと思います。

 魔族領アイザッフィル


 人族が住む地域に1番近い街である。


 周辺に衛生都市を持ち、かの魔都のあった場所もアイザッフィル領内だ。


 アイザッフィル領主ベリト・コパ・アイザッフィルが魔都の異変に気付けたのもその為である。


 そのアイザッフィルのベリトの居城にミコトは居た。



 此方の世界に来た当初は戸惑いを隠せないミコトだったが、数日たった今ではこの世界にも少し慣れてきたようだ。


 元の世界にそれ程執着はない。


 親友と呼べる様な友達もいなかったミコトである。


 ただ家族ともう会えないと思うと、未だに少し涙が出る。


 だかいつまでもメソメソしてはいられない。


 

 現在この城の物凄く豪華な一室を与えられている。


 その部屋に今、身の回りの世話をしてくれるマリアと言うメイドが部屋の扉の前に控え、目の前にはこの城の当主であるベリトが膝を付き、臣下の礼を取っていた。


 この城に通された後、色々説明されたが、混乱が大き過ぎてあまり良く覚えていない。


 それを察したベリトはミコトが落ち着いてから、再度説明しようと提案し、ようやく落ち着いたミコトからベリトにお願いしたのだ。


「ベリトさん、ゴメンなさい……私色々混乱してしまってて、ご迷惑おかけしました」


 ミコトが頭を下げるとベリトは慌てながら


「な、なんと恐れ多い! 我々の事などお気になさらすに。私も舞い上がってしまってまして、我が王の心中察する事が出来ずに申し訳ございません」


 ベリトが頭を擦り付ける勢いなのをミコトは焦って止める。


「べ、ベリトさん! もうそれぐらいで……」


 人にかしづかれる経験など無いミコトである。


 それが明らかに父親程の男性が、頭を地面に擦り付ける様に下げるなど、居心地が悪すぎる!


 ベリトに頭を上げてもらい、現状の説明をしてもらう。


 現状魔族領には4つの大きな街があり、それぞれが1つの国として栄えていて、その領主の1人はベリトさん、後の3人は以前旧魔王城に現れたあの3人だ。


 オズマさん、ドリスさん、ラダさんと言うらしい。


 この4人はかつての魔王軍の四天王と呼ばれていた者達の末裔だそうだ。


 それぞれの領から旧魔王城にはゲートと呼ばれる魔導具を使い、一瞬で行き来できる。


 現在は魔王不在だった為、魔力が足りず使用できなかったが、私がこの世界に来て使える様になったようだ。



 この数百年魔王が不在の為、魔王の存在は伝説のものと捉えている住民が殆どで、今回私が出現した事で各領、大騒ぎになってるみたい……


 伝説と思われていた魔王の誕生!


 騒ぎと言ってもお祭りの様な騒ぎで、各領共私の事を歓迎してくれているらしい。


「でも……魔王って……私の職業は魔導師で、魔王なんて職業じゃないですよ? 何か勘違いしているんじゃないですか?」


 私の質問にベリトさんは


「いえ、職業に魔王などはございません。言い伝えでは、数百年事に強大な魔力を持つものが生まれ、魔族を導く王となる、とございます。我が王のその溢れ出す膨大な魔力、そしてその輝くばかりの美しい瞳の色、間違いなく我々魔族を導くお方です」


 …………導く者って


 あ……ベリトさん語っている間にまた熱くなったのか、目に涙を溜めて私を凝視している……


 うっ……、勘弁して欲しい……


 ゴホンと咳払いをし、説明を続けてもらう。


 人族との関係が気になる。


 まさか戦争中とかじゃないでしょうね?


 人殺しの指示なんて無理なんですけど!


 私のそんな心配は無用だったみたい。


 昔は人族との間に大きな戦があった様だが、現在は魔族領の東にある、広大な森林に住むエルフを通じ、交易を行ってるらしい。


 と言っても、魔族領に1番近いトルムント帝国と言う国とだけで、他の人族の国とは全く交流はないようだけど。


 一先ず、戦争とかしていない事に胸を撫で下ろす。


 私がホッとしているとノックの音が聞こえ、扉に控えていたメイドのマリアさんが


「各領主様がいらっしゃいましたが、お部屋にお通ししても宜しいでしょうか?」


 多分私が落ち着いて来たのをベリトさんが伝えていたのだろう。


 私が頷くとマリアさんは扉を開け、3人を招き入れる。


 先日旧魔王城で出会った3人だ。


 3人は私の前に並ぶと一斉に膝をつき、臣下の礼をとる。


 私がその様子を少し引き気味に見ていると、ベリトさんがそっと耳打ちして


(頭を上げる様指示して下さい)


 な、なるほど……私から声をかけないといけないのね……


「か、顔を上げて下さい」


 私がそう言うと、3人は顔を上げ私をマジマジと見る……、い、いや……なんか怖いんですが……


 その3人のうち、1番若そうな人が(多分20代かしら?)思わず口にする。


「う、美しい……」


 その声に


「こ、これ! オズマ! 不敬であろう!」


 オズマと呼ばれた若い男はハッとし


「し、失礼いたしました! し、しかし……」


 まだ私をマジマジと見てきます……


 ミコト自身、自分の見た目が悪いとは思ってはいない。


 そのせいでこの世界に来るまで、色々と嫌な思いをしてきたのだ……しかし


 これ程の熱視線を受ける程では……


 オズマの発言を咎めた男が


「オズマの事、失礼致しました! 私はドリスと申します。しかしオズマの心情は私も良くわかります。改めてそのお姿を拝見させて頂いた私も、我が王のあまりの美しさに、目を奪われてしまいましたから!」


 その言葉にもう1人が


「ドリスの言う通り! まるで天上の女神がご降臨されたのかと……し、失礼致しました! 私はラダと申します」


 て、天上の女神……この人達、頭大丈夫かしら……


 そこでベリトさんが助け舟を出してくれる。


「3人共、我が王が困っておいでである! あまりの美しさに賞賛したい気持ちは分かるが、それぐらいにしておきなさい」


 ベリトさんの言葉に3人共、バツの悪そうな顔をしている。


 けどベリトさんって、この人達より立場は上なのかしら? 気になったのでベリトさんに聞いてみると


「お答えさせて頂きます。我々4人はかつての四天王の子孫だと説明いたしましたな、その中において私のご先祖様は魔王様の1番の側近でして、魔王様ご不在になった後も代々魔王様の代理として、各領地のまとめ役などを行ってまいりました。私の代になってもそれは変わりません。ただ我々魔族は魔力至上主義です。もし今後私の一族の魔力が低下すれば、その立場も他の者に取って変わられるでしょうな」


 なるほど! ベリトさんが今の魔族領で1番魔力が高いって事ね!


 すると1番若いオズマが


「我が王よ! その溢れ出す魔力! 恐れながら、我々に見せて頂く事は可能でしょうか?」


 そのオズマの言葉にベリトさんは怒りをあらわにし


「オズマ!! 貴様我が王に願い事だと! しかも我が王直々に動かなければならぬ様な願い! 貴様そこに直れ! 成敗してくれる!!」


 ベリトさんは物凄い殺気を放ちオズマさんを睨むと、腰から禍々しい剣を抜く!


 オズマは自分の興味本位からの失言を後悔する。


 ベリトに斬られても仕方ない……


「我が王よ! 不用意な発言失礼致しました。ベリト殿、我が王に侵した私の罪、万死に値します。どうかこの命で償わさせて下さい!」


 オズマはベリトに向い首を差し出す!


「ちょ、ちょっと待って!! だ、ダメよ! 死ぬなんてダメです!!」


 そんな事で命を差し出すなんて……


 びっくりぽんです……


 私が必死に止めるとベリトさんは剣を鞘に仕舞い


「我が王よ! 何と慈悲深い……」


 オズマさんも平服して


「わ、我が王よ!」


 2人共涙を流し感激している……


 何故か関係のないラダさんまで、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってます……


 このノリに私これからずっと付き合わないといけないのね……


 ちょっとした虚無感……


 ただ今のこの空気変えないと! こんなの耐えられません!


「えっと、オズマさんでしたっけ? 私の魔力ですね。全然見せますよ? どうすれば良いですか? 何処かに魔法でも放ては良いのかな? ただガッカリしても知りませんよ?」


 提案してみる。


 まだ此方の世界で魔法は使っていない。


 上手く発動するかも分からないのだ!


 それでガッカリされても仕方ない、逆に其方の方が普通の魔族として生活できるのかも! 


 一般ピーポーの女子高生に、魔王のロールプレイは難し過ぎる。


 私の言葉に4人は


「「「「ま、魔王様の魔法が見られる!!」」」」


 よ、4人共私の魔法が見たかった様です……


 …………さっきのやり取りが茶番に思えてきた。


「で、では早速この城の裏手のベランダに参りましょう!! そこから強力な魔物が住むそれほど高くない山が見えます。そこには人は居ません! 是非我が王最大の魔法をお願いします!」


 べ、ベリトさん……そんなに見たいのね……


 


 4人に急かされ、城の裏手にあるベランダに移動する。


 ベランダからその山までの距離はそんなに離れてはいない。


 その距離に強力な魔物がいるなど、住民には危険なのではと聞くと、その山周辺にはベリトさん一族が代々結界を張っていて、まず魔物がその山から出て来ることは無いらしい。

 

 ごく稀に、結界の綻びから出て来る事もあるらしいが、この領の兵達は優秀で直ぐ討伐出来ると言う。


 

 その山を見つめミコトは魔力を溜める。


 さて、どの魔法を試そうかな? 初めてこの世界で使う魔法だし、1番得意な雷系の魔法が良いよね!


 ミコトの周りが魔力で溢れる。


 その様子を見て4人は驚愕し、城の外にいた兵や城勤めの者達が何事かと、ベランダに目をやる。


 ミコトか手を差し出すと、その山の遥上の空が黒々とした雷雲に覆われ、その雷雲は更に膨らんで行く。


 ベランダから見てもその雷雲から、バチバチと雷の光が見て取れた。


 そしてミコトは呪文を唱える


「テスラ!!」


 すると突然


 ズン!!


 と言う重低音と振動の後


 ドッカーーーーーーーーンッ!!!


 大爆破が起こる!!


 山までそれ程離れてないとは言っても、数キロ離れているのだ!


 なのにその衝撃はすざまじく、大地を揺らし城の壁が崩れる!!


 ミコトはヤバい!! と急ぎ街全体を結界で覆い、なんとか壊滅は防いだが……


 後数秒遅れていれば……ミコトは戦慄してしまった。


 ゲームでは実感無かったが、魔法の威力がこれ程とは……


 戦慄しているのはミコトだけではない!


 ミコトの近くでその様子を見ていた4人、そして城勤めの者達。


 特に近くにいたベリト、ドリス、ラダ、オズマは腰を抜かし、黒い煙と粉塵でまだ隠れて見えない山を凝視している。


 しばらくし、粉塵が散ると……


 さっきまでそこにあった山は無くなり、巨大なクレーターが出来ていた……


 こ、この魔法……封印します!


 ミコトは心に誓う!!


「あ、あのう……、少しお城壊していまいました……後、街の人達は直ぐに結界を張ったから怪我とかは無いとは思うけど……、建物は壊れちゃいました……ゴメンなさい!」


 やらかしてしまった……


 べ、弁償かしら……一応ゲームでそこそこお金は貯めていたけど、お城と街の建物の一部……絶対足りないわよね……


 どうしよ……


 ミコトが青い顔で謝ると、正気に戻ったベリトが


「と、とんでもない!! 我が王よ! 我が王が謝る必要などございません! そもそも我々の願いにわざわざ応えて下さったのです!」


 ドリスやラダも


「ベリト殿の言う通りでございます! し、しかしこの威力……やはり伝説の魔王!!」


 オズマはミコトの前まで這ってくる……、腰が抜けて歩けないようだ……


「わ、我が王に永遠の誓いを!!」


 …………


「と、とにかく街の人達に謝らないと! 私、街に行って来ます!!


 私のその言葉に4人共が焦り


「我が王よ! それはいけません! 我が王が自ら出向き民衆に謝るなど」


 そうは言うけど、そのまま放置なんて出来ない。


「いえ! 行きます! じゃあ!」


 そう言ってミコトは走りだす。


 その後ろを


「お、お待ちくだされ! 我が王よ!」


 必死に追いかける4人。



 ミコトは街に降り、一軒一軒壊れた建物を見てまわり謝る。


 最初ミコトが誰か分から無かった民衆も、ミコトの瞳を見て新たに現れた魔王だとわかると、逆に平服していまい、魔王と民衆が頭を下げ合うという傍目にもおかしな現象が起きていた。


 なんとかそれを止めようとする4人の領主達。


 

 一通り街を回るまでミコトは止まらなかった。


 そして最後にベリトにも


「ベリトさん、お城壊しちゃって本当にゴメンなさい!」


 もう1度頭を下げる。


 その姿に4人も、その様子を見ていた街の人々も、新たに現れた魔王の人となりを理解する。



 

 その見た目の美しさ、恐ろしい程の魔力、しかし民衆にも普通に接してくれる気さくな人柄、城や街を壊してしまったミコトだか、この街だけでなく、この事の噂は魔族領全体に広がり、魔族達に絶大なる信頼を勝ち取る事になる。



 本当の意味でミコトが魔王となった。





 



 




 







 


 


 






 


 




 


 



ミコトさん……チート過ぎる……

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