アルメシア王国
ブクマありがとうございます!
物凄くモチベあがりますm(_ _)m
今回また真面目? な、お話しになってしまいました。
次回はふざけます! はい
王都アルシア
ピサロ領を含むアルメシア王国の首都である。
このアルシアにある王城内謁見の間に今、この国の主立った貴族が集められていた。
先日の魔族領方面から見えた光の柱の件、そして各ダンジョンの異常……
貴族達の顔色は悪い。
それはこの国の王、ルイス15世も同じである。
「それで……帝国からはまだ何も来ぬのか?」
宰相のマザランは首を振り
「恐らく帝国内も混乱の最中でありましょう。こちらに何かしらの報告が来るのも、しばらく先になりましょうな……」
ルイスはその話しを聞き
「では皆に問う、先日のあの光の柱、魔王誕生のものであると思うか?」
貴族達が顔を見合わせる中、1人の貴族が発言をする。
「恐れながら陛下、古い文献からの引用ですが、『虹色の光の柱立つ時、強大な魔力を持つ者現る』とございます。恐らくは……」
そう応えたのはソフィアの父、ローレンス伯だ。
「ふむ……やはり魔王が誕生してしまったか! 昨今のダンジョン異変の件は魔王が関係していたのだな」
王の言葉に宰相のマザランが
「王よ、魔族領の魔力が高まり、ダンジョンが活性化したのは間違いございませんが、魔王との因果関係はまだ解明されておりません。魔族領の魔力が高まるから魔王が生まれるのか、魔王が生まれるから魔族領の魔力が高まるのか……」
それを聞いたルイスは少し語彙を荒らげ
「ふん! そんな事はどうでもよい! 大事なのは魔族達の動きと、ダンジョンをどうするかである!」
マザランは少し焦り
「は! しかし魔族達の事は、帝国と連絡が取れなければどうする事も出来ません。帝国はこの大陸唯一、魔族と交流のある国ですから……」
アルメシア西の隣国、トルムント帝国
かつて魔族との戦いにおいて、強大な軍事国家として魔族と激しい戦闘を繰り広げてきた国である。
トルムントの西には広大な森林が広がっており、その森林の更に先に魔族領はある。
そんな魔族と帝国の関係だが、数百年たった現在では、森林に住むエルフを通じ交易を行っていた。
魔族と魔人、同じ様に考えられがちだか実は全く別である。
魔人は魔物から進化した者だ。知性は高いが元は魔物なだけに人とは相容れない。
それに対し魔族は人族である。魔力が高い亜人種だ! ドワーフやエルフ、獣人、ヒューマンと同じである。
戦争が終わり誤解が解けた現在では、同じ人族同士交易も可能なのだ。
ルイスはマゼランの話しを聞き
「確かにな、帝国から何かしらの連絡が来ぬうちはどうしようも無いか……、ではダンジョンの方はどうなっておる」
ルイスが問いかけた時、ローレンス伯の元に一通の文が届けられる。
こんな時になぜ? とローレンス伯は思うが、こんな時に届けられる文だ、緊急事態なのだろうと文を開くと……
「なっ!」
思わず声を上げてしまった!
(し、しかしこれは……)
ローレンス伯は歩み寄り
「陛下! 我が娘、ソフィアからです」
と、文を差し出す。
その文を先ず宰相のマゼランが受け取ると
「な、な、なんと!! 陛下これを」
ルイスは文を取り目を通す。
「ほほう! すでにピサロでは異変後のダンジョンを攻略したそうだ!」
集まった貴族達は「おお!」と声をあげる
ルイスはローレンス伯を見やり
「ローレンスよ! 確かそなたの娘、Aランク冒険者のソフィアはピサロに居るようだな。この文では詳しくは書かれておらんが、ソフィア嬢がダンジョンを攻略したのであろう! 流石我が国が誇るAランク冒険者だ!」
ルイスは上機嫌になる。
他国に先駆けて、異変後のダンジョンを攻略出来たのだ。
すると宰相のマザランの元に、別の報告書が渡される。
今度はピサロ領主ネイスからのものだ。
マザランは封を切り報告書を読むと唖然とし、報告書をルイスに渡す。
ルイスは訝しげにその報告書に目を通すと
「どうやらピサロのダンジョンを攻略したのはソフィア嬢では無い様だ」
ピサロ領主ネイスはケンヤの事を忠誠心から誤魔化せず、そのままの出来事を報告してしまった。
貴族達は驚く! Aランク冒険者のソフィア以外に、そんな事が可能なのか?
貴族達は王の次の言葉を待つ。
「この報告書にはケンヤなる人物がダンジョンを攻略したらしい。あの噂の精霊を連れた戦士ケンヤか!」
皆が目を見張る!
ーー精霊を連れた戦士ケンヤーー
噂には聞いた事はある。たが俄には信じられないでいたのだ。
しかし、その者がダンジョンを攻略したのであれば……
マゼランは口を開く。
「な、ならば魔族領に魔王が誕生した様に、こちらには勇者になる者が生まれていたと!」
その言葉を聞き、貴族達はざわめき始める。
ルイスは皆を鎮め
「その者が勇者かどうかはまだ分からん。何方にせよその者を王都に呼び寄せるか、誰かピサロに行き接触を図らねばならん」
貴族の1人が言う。
「まだそのケンヤなる者が、勇者か分からんのでしょう? それに本当にその者がダンジョンを攻略したのかも疑わしい! そんな得体の知れない者の為に、わざわざこの王都から使いをださなくても、文を書いて呼び寄せてはいかがですか?」
するとローレンス伯がその貴族に
「いや……、実は娘のソフィアからある程度の報告は受けておるのだよ。身内の恥であまり公にしたくなかったのだが……」
そうローレンス伯は前置きした後
「ソフィアはそのケンヤに命を救われたそうだ! 異変後のダンジョン内でな。ソフィアの目の前で1000に迫るボブゴブリンを1人で殲滅したそうだ! そしてついでのようにロードまで倒したと言う……」
その言葉に国王始め、皆驚愕の表情でローレンス伯を凝視する。
「王に報告が遅れた事、深くお詫び致します。ただ報告が遅れたのには、そのケンヤなる人物の性格が少々問題でして……」
ルイスは目で話しを続ける様促す。
「ソフィアとは別に、ピサロのギルド長からも報告を受けておりました。ケンヤは何かに縛られるのを極端に嫌う、国の動き方次第では……この国とケンヤとの戦争になるだろうと! そして我が国は滅ぶとさえ申しております」
貴族の中からは
「それは言い過ぎではないか? 1個人が国を滅ぼすなど」
嘲笑気味に言う貴族に向かいローレンス伯は
「では貴公に問う、ホブ1000体にロード、更に奥にいる強力な魔物、そしてそのダンジョンのボスを1人で倒せてしまうケンヤと我が国の平和ボケした軍、どちらが勝つと思う?」
誰も答えられないでいる。
「しかもケンヤは精霊を友としている。この精霊はただの精霊ではない、大精霊だ! 文献ではその魔法1つで魔人数百を倒したと言う! たった1発の魔法でこの王都が吹き飛ぶぞ!」
ローレンス伯の言葉に貴族達は押し黙る。
ルイスはローレンス伯に
「ならばどうすれば良いのだ? この非常事態にその様な者が現れたのだ! 我が国に居る以上何かしら協力して貰わんとな! このピサロ領の領主からは、攻略したピサロのダンジョンで、兵士や冒険者のレベルを上げ、各ダンジョンに対応すればどうか? とあるが……」
ローレンス伯は少し考え
「では王よ! 私ローレンスがピサロに赴き、そのケンヤなる人物に協力して貰う様説得して参ります。ケンヤとウチの娘ソフィアは、それなりに懇意にしている様子。そのソフィアの父である私なら、ケンヤも邪険には扱わないでしょう」
ルイスは成程と頷き
「よし! ではローレンス伯、貴公にケンヤなる人物の事は任せる! 逐一報告はする様に」
「はっ!」
ローレンス伯は「では早速」と謁見の間を後にした。
「さて、ピサロのダンジョンでレベル上げの件だが……マゼラン、其の方に人選等任せる。何方にせよ我が国の戦力底上げは必要だ」
マゼランは「はっ!」と応え、王と目配せをした後
「では謁見は終了である。自領にダンジョンを持つ者は常に警戒を怠らない様に! では国王陛下ご退場である」
国王であるルイスを膝をつき見送る貴族達。
色々思う所はあるが保身に長けた者達だ。
ローレンス伯からの報告を聞くまでは、迂闊に動く者は居ない。
ただローレンス伯の発言を面白く思わない者もいた。
この国最強戦力、近衛騎士団隊長のバラン、そして大将軍の地位にいるネメリスだ!
この2人の思いは同じである。
日々万が一に備え、近衛も軍も厳しい訓練をしているのだ。
それを
「平和ボケ」
と言われたのだ! 腹が立たない訳が無い。
バランはネメリスに
「近衛からはロキを出す! 精霊を連れた戦士だかなんか知らんが、ロキを見れば腰を抜かすであろう!」
ネメリスは
「ほほう! あのロキを、ならこちらは1番隊隊長のサザンを出す!」
2人はニヤリと笑い
「ローレンス伯には悪いが、そのケンヤがどれ程の者か見極めさせてもらう!」
宰相のマゼランが決める前に、ピサロ行き2人の人選が決まってしまった。
ローレンスさん……、お宅の娘さんとケンヤ、それ程仲良しじゃないですよ?w




