レベルアップ
またまたこんな時間になってしまいました。
友人が今までの投稿を読んで、少しふざけ過ぎ!と指摘されたので、今回は抑え気味です笑
代わりに説明文多めになってしまいました。
何かご意見等あればお願いしますm(_ _)m
宿のベッドで横になりながら、明日の事を考えるケンヤ。
「鍛えるって言っても何すればいいんだ?」
ゲームではガンガン魔物倒すだけだったし、鍛え方なんて分かんねえぞ?
「安請け合いしちゃったかな……」
原因を作った本人はスーピースーピー寝息を立てて既にご就寝中。
「明日ひたすらスライム狩らせるか、そう言えばアイツらのレベル聞いてなかったな」
一応倒せるみたいだからレベル3ぐらいか? いや、単独ではキツそうだったし、倒すのも2人で強力してだから、下手すれば1か2? だとしたらあの場に俺が居なかったらアイツら死んでたぞ!」
ため息をつく……
「とりあえず、単独でも倒せるぐらいにはしないとな」
俺が居ない所で死なれたらかなわん!
なんか、こんなに他人の事考えたの久々だ。
寝息を立てるシルを見て
「楽しそうか……」
一言呟き瞼を閉じた。
次の朝、早くからギルドの前には既にトオルとサラの姿があった。
ギルドに入って行く冒険者達を眺めながら、ケンヤ達が来るのを待つ。
何人かの顔見知りに声をかけられたが「ナイショです!」って返し不審がられ
「何するのかは分からんが、無理して怪我すんじゃねぞ?」
と注意される。
あたり前の事だが、自分達も見習いから始め今がある。
下手をし、死にかけた事のある者や、実際命を落とした者もいた。
まだ子供っぽさの抜けない双子が皆心配なのだ。
そうこうしてるうちにケンヤが現れる。
「悪い! 遅かったか?」
2人がケンヤのもとに駆け寄って来た。
「ケンヤさん、おはようございます。全然! 俺達今日めちゃくちゃ楽しみで、ちょっと早く来すぎたんです」
トオルもサラもワクワクが止まらね〜ぜ! って感じだ。
「な〜んも心配は要らないよ! 全てこのシル姉さんにお任せあれ! ビシ」
じゃあ後はシルさんに任せた!
って訳にもいかない……
街を出る前に双子にはちょっと待ってもらい、俺だけギルドの解体場所に向かう。
解体場で昨日放したバサンを2匹程買い戻しする為だ。
バサンを買い戻した後2人のもとに戻る。
「じゃあ早速東の平原に行きますか」
俺が言うと
「「「レッツラゴー!!」」」
……
悪影響ってホントにあるんですね。
街を出て歩きながら今のレベルを聞くと、やはりと言うかまだレベル1らしい。
話しによれば、そこそこの数のスライムは倒しているようだった。
やはりプレイヤーと比べると、レベルの上がり方が遅い様だ。
ゲームではパーティを組み、メンバーと一緒に戦えば、自分以外が倒しても経験値は入る。
てっとり早いのは俺とダンジョンに入り、俺が高レベルの魔物をガンガン倒す方法だ。
ただ囲まれた場合、俺はともかくトオルとサラは万が一がある。
やっぱしばらくはスライムだな。それでレベル5まで上がったら、北の森でゴブリンだ。
「じゃあ、とりあえず2人のレベルを手っ取り早く5まで上げるぞ!」
トオルとサラは「へっ!?」てなる。
「まあ見てろ!」
俺はそう言って、アイテムボックスからバサンを取り出し、ナイフで首を落とす。
昨日の光景を思い出し、少し心が傷んだが2人のためだ。
そのバサンを更に細かく切り、ポイッと放り投げしばらく待つと、スライムがワラワラ湧いて来た。
(おお! めちゃめちゃ湧いた……100匹以上居るんじゃね? スライムもこんだけ湧くとキモイな……)
「ではケンヤいっきまーす!」
大量のスライムの中に突っ込んで、ロングソードを振り回す! 振り回す! 振り回す!
「ふうーっ! 殲滅完了!」
トオルとサラはあんぐり口を開け固まって、シルは2人のその顔を見て、お腹を抱えて笑い転げでいる。
俺は2人を振り返り
「レベル上がったかあ?」
聞くとトオルとサラは我に返り、自分のレベルを確認する。
するとトオルが
「ま、マジか……」
サラも自分のレベルを見て
「ウソ……、こんな事って……」
2人ともレベル5になっていた。
するとトオルが突然「ウォー!」と叫び
「すっげー! 一瞬でレベル5だ!!」
サラも満面の笑みで俺に
「ケンヤさん、こんな一瞬でレベルが上がるなんて……まるで夢の様です!」
喜んでる2人には悪いが忠告させて貰おう。
「ただこの方法だと経験値は稼げても、熟練値は稼げない、実際に戦闘に参加しないとな」
ソードマジックファンタジーでは、この熟練値がスキルや魔法の取得、その威力に大きく関係している。
レベルを上げると取得出来るスキルや魔法もあるが、熟練値を上げないとその威力は低い。
レベルアップだけではダメなのだ。
パーティに居るだけでレベルは上がるけど、楽に強くは成れねえぜ! って言う運営の思惑である。多分……
ただレベルを上げる事により、単純にHPやMPその他ステータスは上がる。
先に手っ取り早くレベル上げる事で、怪我や死ぬリスクを下げようとケンヤは考えたのだ。
「じゃあもう一度同じようにスライム集めるぞ! 今度は自分達だけで倒すんだ! レベル上がったし、前よりかなりラクに倒せるはずだ」
俺が言うと2人は少し不安そうに頷く。
「大丈夫! いざとなったら俺も手伝うから。後これを渡しておく」
ポーションとマジックポーションだ。
ポーションがHP回復用、マジックポーションはMP回復用だ。
ケンヤのアイテムボックスの中には、各種ポーションが大量に入っている。
ゲームでは魔物を倒すと色々アイテムをドロップする。
ケンヤはそのアイテムを殆ど使っていなかった。
もう使わない装備やアイテムも売らずに持っている。
何故か、勿体ないから!
けどこの世界の魔物は、アイテムドロップしないのよね〜
まあ、実際に生きてる魔物からアイテムが出て来たら、それはそれで不気味な気がする……
話しが逸れた。
この世界のポーションは、それなりの値段がするようで、下級ポーションでも見習いには手が出し辛く、俺が渡そうとすると遠慮して受け取るのに渋る。
「各ポーション大量にあるから遠慮なく使え! それに強くなって、稼げるようになったら返してくれるんだろ?」
俺がニカッと笑いかけると
「「必ず強くなって返します!」」
ウンウン素直って素晴らしい!
「じゃあ作戦を説明するぞ! まずトオルは絶対スライムをサラに近づけさせるな。レベルが上がった今、少々スライムの攻撃を受けても大丈夫なはずだ! 壁役をやりつつ倒していけ! そんでダメージが溜まって来たら即ポーションな!」
トオルが「はい!」と元気良く応える。
「次にサラだが、必ず一定の距離を取って戦え、魔術師の基本だ。距離を取りつつ魔法を放て! 今のお前なら1発でスライムを倒せる! ただ魔術師のお前はMPに依存している。MP残量には絶えず気にしていろ! マジックポーションは遠慮なく使うんだぞ」
サラも元気に「はい!」と応えた。
2人共レベルが上がった自分を、試したくて仕方ないんだろう。
するとシルが
「ねぇねぇ! あたしはあたしは!!」
……
「シルは一生懸命応援してなさい」
「ラジャ!」
そうしてまたアイテムボックスからバサンを取り出し、同じ様に切り分け、今度は違う方向に放り投げた。
またスライムがわらわら湧いてくる。
トオルがサラを守るようにショートソードを構えると、サラは魔法の詠唱を始めた。
バサンに集まってたスライムが、トオル達に気付き襲いかかる。
ショートソードで叩き落とし2撃目でとどめを刺す!
トオルは驚いていた! 以前なかなか倒せなかったスライムを、僅か2撃で倒せたのだ!
(これがレベルアップか!)
サラはサラでマジックボールを連発し、スライムの数を確実に減らしていた。
(凄い! 以前なら数発でMP尽きていたのに、まだ余裕がある)
2人共レベルアップのおかげで、強くなっている事を実感していた。
ただ、流石に数が多い。
トオルは何度か攻撃を受け息が荒くなる。
サラもトオルが守っていた為ダメージはないが、MP残量が心許ない。
そこでケンヤからの声が届く。
「お〜い! ポーションどうした!」
2人はハッとなるが、なかなかポーションを飲む余裕がない。
するとケンヤが「やれやれ」と2人の所まで来て、スライムを両手で無造作に掴み、ヒョイヒョイって感じで投げ飛ばしていく。
思わぬ光景に唖然としてると
「今の内にポーションな!」
ケンヤに言われ、急ぎポーションを飲む。
「じゃ、頑張って!」
ケンヤは手を振りながら離れて行った。
ケンヤが元の場所に戻るとシルが
「ねえケンヤあ……」
「なんだ?」
「退屈う〜」
シルさん……2人の応援は?
数回ケンヤが割って入りポーション補給を繰り返し、かなり時間がかかったが、スライム殲滅に成功! この戦闘で更にレベルが上がり、トオルとサラのレベルは7に上がっていた。
ただ2人共疲れ果て、その場に座り込み立ち上がれないようだ。
「お疲れさん、どうだ? レベルが上がった気分は」
俺が聞くとトオルはハアハア息を切らしなから
「途中、ケンヤさんに助けてもらったけど、俺強くなってる! 今日こんなにレベル上げれるなんて思っても見なかった!」
サラも同じ様に息を切らしながら
「私もビックリしてます! レベルってこんな簡単に上がるんだって!」
俺がウンウンと聞いてるとシルが
「こ〜んなやり方ケンヤにしか出来ないよ? ってかさあ、バサンでスライム集めようなんて誰が考えるのよ!」
え?
シルの話しを聞いてトオルも
「確かにパーティ内で、経験値共有は理解出来るけど、スライム数百相手に数秒で殲滅してしまうケンヤさんって……」
シルはさらに追い討ちをかけてくる。
「それに手掴みでスライムを放り投げるのよ? ありえなく無い?」
味方が欲しくてサラに目を向けると
「私もアレはちょっと……引いちゃいました……」
うっ……味方が居ない……オジサン泣いちゃうぞ!
「と、とりあえずこの大量の魔石、とっとと拾わないと日が暮れるぞ」
3人で魔石を拾う。
大量過ぎてかなり大変だった……
帰り道、トオルとサラの背中を見つめながら、そっと小声でシルに話しかける。
(なあシル……世界最強……)
シルがハッとし俺を見てニヤっと笑う。
(やっちゃう? 世界最強やっちゃう?)
俺もニヤリと笑う。
後ろでそんなやり取りをされてるとは知らないトオルとサラは、レベルが上がった喜びで胸いっぱいになりながら街を目指し歩いていた。
数時間後、大量の魔石を見たギルド長の「なんじゃこの量は!!」と言う叫び声がギルド中に響き渡る……
世界最強……なれるんでしょうか?




