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平凡な戦士職の成り上がり  作者: 司純


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ギルド長

思ったより早く書き終わったので、予定より早く投稿します。



「頭痛い……」


 流石に昨晩は呑みすぎた。


 ってかオリバさん酒強すぎ! ザルだザル!


 部屋のテーブルにある水差しから、コップに水を注いで飲む。


 シルを探すと、部屋の脇にある観葉植物の葉の上で、鼻ちょうちんを膨らませながら「スーピー、スーピー」と寝息を立てている。


 そう〜っと近づき指で鼻ちょうちんを割る。


 パーンって弾けると、ムクっと起きたシルが


「むにゃむにゃ……ケンヤ……おはよう、そしておやすみ〜」


 とまた夢の世界に戻ろうとする。


「こらこらもう起きろよ! 今日は冒険者ギルドに行くんだからな、寝てるなら置いてくぞ!」


 そう言うとガバッて起きて


「いくう〜あたしも行く〜」


 と言って、ぺたぺたと寝癖を直しだした。


(精霊も寝癖つくんだ……)


 俺も身支度しないと


 装備を付け直し1階に降りる。


 昨晩呑み過ぎて遅くまで寝ていたせいか、1階の食事処には誰も客はいない。


 するとオリブが宿のカウンター越しに


「ケンヤさんおはようございます。シルちゃんもおはよう」


 笑顔で挨拶をしてきた、昨晩でかなり打ち解けたようだ。


「オリブちゃんおはよう」


 俺が挨拶すると、シルはオリブの方へふわ〜と飛んでいき


「オイッス!!」


 と右手を上げて挨拶……ドリフかっ!


 オリブちゃんはクスクス笑ってる。


「今朝はゆっくりですね、昨晩お父さんに付き合って、かなり呑んでたから心配してたんです。大丈夫ですか? なんならお薬ありますよ?」


 オリブちゃんいい子です。


「大丈夫! ちょっと頭痛いけど」


 苦笑しながら言うとクスッと笑い、そっとお薬出してくれました。


 そんな優しくされたらオジサン泣いちゃうぞ!


 それを見ていたシルが


「幼女趣……ムギュ!」


 言わせね〜よ!!


 頬をつまんで黙らせる。


「えっと、お食事どうします? もう遅いんで余り物ならだせるんですが」


 流石にお昼前だしな〜


「ギルドに行く途中で何か買って食べるよ。今日はギルドに寄って、魔石買い取ってもらうだけだから、そんなに遅くならないと思う」


 オリブに見送られながら宿を出る。


 道すがら屋台で以前も食べたバサン(ニワトリに似た魔獣)の串を2本買い、シルと食べならかギルドに向かう。


 シルは串に刺さった肉の1切れを「うんしょ、うんしょ」と外し、両手に持ってかぶりつく。


(そういえば北の森にバサンは見当たらなかったな? それもギルドで聞いてみよ)


 肉を食べ終わる頃冒険者ギルドに着いた。



 ギルドに着いて扉を開けると、流石にこの時間ギルド内は閑散としている。


 何故かギルドに入った瞬間、ギルド内の女性全員に見られた様な気がしたが……多分気のせいだろう。


 するとまだギルド内に残っていた、冒険者の1人がケンヤに話しかけてくる。


「おう! お前が例の新人か? 随分と調子乗ってるらしいじゃねえか!」


 ん? 調子に乗るも何も……昨日ギルドに来たばかりだし、そんなに人と絡んでないんだか?


 俺がキョトンとしてると


 スっと俺とその男の間にギルドの女性職員が入ってきた。


「ケンヤ様ですね、本日はどういったご要件でしょうか?」


 け、ケンヤ様? 今様って言った?


 後ろに居る男もキョトーンとしている。


 とりあえず今日の予定を伝える。


「えっと、昨日北の森に行って、ゴブリンを倒してきたんで、魔石の買い取りをお願いしたくて」


 と言ったら、後ろの男が女性職員を押しのけながら


「嘘つけ! 昨日今日冒険者になったばかりのヤツが、いきなり北の森に行って、ゴブリンを倒せるわけないだろ! 嘘も休み休みに言……グホーっ!」


 男は首根っこを捕まれ持ち上げられていた。


 その男を持ち上げているのは、昨晩肩がぶつかったマリンだ!


「マリンさんその男をギルドからつまみ出して下さい!」


 女性職員がマリンに指示をだす。


「了解」


 と一言だけ言ってマリンはその男を外に連れ出した。


 外から「ドカッ! ボコッ! うぎゃー!」って音や声が聞こえたが……聞こえなかった事にしよう……うん。


「では案内いたします」


 ニコッと笑って案内してくれる。


 一応昨日聞いて場所は分かるんですが……まあ人の行為を無にする訳にもいかない。


 職員の後ろについて来て行く途中、 シルがコソコソ話しかけてくる。


(……冒険者ギルドってコワイ所だね)


(だな……)


 激しく同意だ。



 そして買い取りのカウンターまで案内され、女性職員は深々と頭を下げて去っていった。



 カウンターには昨日と同じドワーフさんが座っている。


「すみません、魔石の買い取りお願いしたいんですが」


 ドワーフさんはチラッとこっちを見ると


「ふんっ、昨日のガキか、今日もスライムか?」


 なんか無愛想だな……まあ、これぐらいの方が俺的に気楽だけど


 基本人付き合いが面倒くさいケンヤである。


「イヤ、スライムもあるけどゴブリンもあるんだ」


 そう言うとドワーフさんはビックリした様子でこちらを見る。


「お前さん昨日冒険者登録したばかりじゃろ? それがいきなりゴブリンじゃと! まあとりあえず魔石を出してみろ」


 じゃあとケンヤはアイテムボックスから、昨日倒したスライムの魔石5個とゴブリンの魔石50個を出し、カウンターに並べた。流石に55個の魔石を並べるとカウンターいっぱいになってしまった。


 ……


 ドワーフさん目が点になってます……


 もしかしてやっちゃった?


 ゴブリンなら問題ないって思ってたけど、そういやあ昨日の受付の人も、スライムで驚いてたもんな〜


「こ、これお前さんが1人で倒したのか?」


 もう嘘ついても無駄だな正直に話すか


「はい、そうです」


 さらにドワーフさんは聞いてくる。


「しかもアイテムボックス持ちじゃろ」


 ん? アイテムボックスって珍しいの?


「知らんのか……まあそうじゃな、持ってるヤツは少ないが居ない訳でもない。ただし、貴重で便利なスキルでもある。故にアイテムボックス持ちはかなり重宝される。貴族のお抱えになった者もいれば、ひと財産1代で稼いだ者もいる。そう言うスキルじゃよ」


 びっくりぽんです。


「なんにせよ魔石の買い取りをしようかのう、スライムの魔石1個1000G、ゴブリンの魔石1個1500Gしめて80000Gじゃ」


 おお! オリブの宿代10日分以上を1日で稼いでしまった。


「それにしてもお前さん色々異常だな! その肩に居るの精霊じゃろ?」


 あ! 気づいちゃいました? そりゃ気づくよね〜


 さっきはゴタゴタしてたから、他のギルド職員達は気づいてなかったみたいだけど


 するとシルがドワーフさんの目の前に飛んでいき


「流石ドワーフ! 私の正体に気づいたようね。では自己紹介しよう! あたしこそ森と風の大精霊、超カリスマ、スーパーウルト……ムギュっ」


 ……


「えっと、精霊のシルウェストレ、シルって呼んでます」


 代わりにおれが応える。


「ちょっと、ケンヤ! あたしが超絶カッコイイ自己紹介してるのに邪魔しないでよ!」


 プンスカ怒ってますが無視です。


 とりあえず魔石の買い取りも終わり、ドワーフさんに挨拶をして立ち去ろうとすると、ドワーフさんに呼び止められた。


「ちょい待て! お前さん達、これだけ人を驚かせておいて、何事もなく帰ろうとするでない」


 そりゃそうだ。


「ちょっと奥の部屋で話しがある。ついてこい」


 カウンターの横から入り奥の部屋に通される。

 

 面倒くさい事にならなきゃいいが……




 通された部屋でしばらく待っていると、ドワーフさんと最初に受付をしてくれたメイさんが入ってきた。


 部屋には俺とシル、そしてドワーフさんとメイさんがソファーに対面で座る。


 ドワーフさんが口を開いた。


「改めて、このギルドでギルド長をしておるドヴェルクじゃ」


 おお! ドワーフさんギルド長だったのね! おっと、ドワーフさんじゃなくてドヴェルクギルド長か。


「そして私が副ギルド長のメイです。最初の受付で会いましたよね」


 メイさんは副ギルド長かあ、確かになんか出来る女の人って感じがする。


 ってか何でギルド長が魔石の買い取りしてるんだ?


 聞いてみると


「趣味じゃ!」


 さいですかっ……


「でじゃ、お主かなり異常って事に自分で気がついておるか?」


 異常って酷くね……けど


「薄々は……」


 なんせ転生者だし


「1つ1つ確認するぞ! まずその若さでその武力、どこで身につけた」


 う〜ん……なんて誤魔化そう……


「えっと、村にいた時冒険者に憧れていて、自己流で鍛えたり、たまに来る冒険者に鍛えてもらったりしてました」


 以前メイに言った説明をそのまましてみる。


「うむ……有り得なくはないか、高ランクの冒険者と一時的にパーティを組んでいれば、経験値も稼ぎ安いからの〜」


 納得してくれたかな?


「ただじゃ、まだ登録もしてない子供と、パーティを組んでくれる酔狂な冒険者……ウチにそんなヤツいたかの〜」


 多分居ません……


「えっと、なんかソロの方で色々旅をしてると言ってました。はい」


 く、苦しいか


「なるほど、旅の冒険者か。それもソロとなるとかなりの実力者じゃな! その冒険者の名前はなんて言う?」


 な、名前……え〜とえ〜と


「名前は教えてくれませんでした。俺も師匠って呼んでたし」


 俺ナイス!


「ふむ、ソロで旅となると、もしかしたらあまり身分を知られたくなかったのかも知れんな。よしこの件は大体理解した」


 ふう〜乗り切った!


「次にアイテムボックスの件じゃが、とうやって獲得した?」


 するとメイさんが


「ギルド長、スキルに関しての質問はマナー違反では?」


 メイさんがギルド長をギロっと睨む。


「た、確かにそうじゃな! ケンヤ悪かった」


 ギルド長がそう言って頭を下げてきた。


「あ、大丈夫ですよ。別に隠していなかったし、ギルド長に聞かれるまでは、普通に皆んな持ってると思ってましたから。多分生まれつき持ってたと思います。物心ついた時にはもう既にありましたから」


 はい! ゲーム初期から当たり前にプレイヤーは持ってます。


「分かった、では最後に……その精霊、シルウェストレじゃったかな? それは……」


 ギルド長が言い終わる前にシルが応える。


「はい! はい! はい! ケンヤを気に入ったからあ!!」


 両手を上げて猛アピールである。


「ケンヤって面白いんだよ! ドサッってなってバサッてしたらゲロゲロってなってまたバタンってな……」


 俺が睨むと、すっとメイの後ろに隠れやがった!


「そっそうか……よく分からんが、ケンヤが精霊にかなり懐かれてるってのだけはよく分かった」


 じゃあもう話しは終わりかな? って思って立ち上がろとすると、ギルド長に止められる


「これ! 話しはまだ終わったとらん!」


 まだ何かあるのかと思い座りなおす。


「ケンヤ、ギルドカードを出しなさい」


 言われた通りギルドカードを出しギルド長に渡す。


 するとギルド長はメイさんに俺のギルドカードを渡し、何やらコソコソ話した後、メイさんは部屋を出て行った。


「ケンヤお前さん今日からDランクな!」


 へっ? 目を丸くしてギルド長を見る。


「あたり前じゃ! ゴブリンの魔石50個だぞ! 1日でそんなに稼ぐ冒険者を、Eランクになんかにしておけん! アイテムボックスや精霊を連れてる段階でホントは一気にCランクにしたいぐらいじゃ! ただ流石にCランクにするには貢献度が足りん!」


 う〜ん、いきなりDランクかあ……まあとりあえずDランクは目指してたし、まっいっか!


 ただ絶対Dランク固定でいかなければ! これ以上ランク上げると色々面倒になりそうだし。


 確かマリンさんが、この街で唯一のCランクって言ってたもんな!


 そう決意を新たにしていると、メイが部屋に戻ってきた。


 そしてギルドカードを俺に差し出す。


「お待たせしました。此方ががケンヤ様……いやケンヤさんの新しいギルドカードになります。」


 ケンヤ様? メイさんも今ケンヤ様って言ったよね! どうなってんだ?


 気を取り直しメイからギルドカードを受け取って、カードの内容を確認する。


 シルが「見せて見せて」とギルドカードを覗きに来た。


ケンヤ15歳 戦士


ランクD


発行ピサロ



 ランクがDに上がってる。

 

 するとギルド長が


「登録してから2日目でDランクに上がるとは前代未聞じゃぞ!」


 上げたのはアンタじゃん! と言いそうになる。


 ランクも上がったし、話しはこれでもう終わりかな?


 今日は早く帰るってオリブに言っちゃったしね。


「じゃあ帰っても大丈夫ですか?」


 そう聞くと


「ああ引き止めて済まなんだな」


 俺は立ち上がりギルド長とメイさんに挨拶をする。


「ではギルド長、メイさんこれで失礼します」


 シルも「バイバーイ!」と両手を振り、俺は頭を下げ部屋をでた。





 ケンヤが去ったギルド長室。


「なあ副ギルド長……」


「なんでしょうギルド長」


「……数百年前、この街から旅立った勇者もあんな感じだったんじゃろか」


 ギルド長がつぶやく。


 それを聞いたメイは微笑みながらケンヤが去った後を見つめていた。




次話をストーリーの続きにするか、閑話を入れるかで悩み中です。

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