家庭科室
「よくもまあ、みんな外であんな騒がしくできるよね」
家庭科室で紅茶を楽しんでいた直樹が、口元に笑みを浮かべて呟いた。中庭や校庭の喧噪が遠くに聞こえてくる。
桜色のモンブランを食べていた瑠美がクスクスと笑い声をあげる。
「いやぁ、馬鹿騒ぎってのもたまにはいいんじゃないですかぁ?」
「じゃあ瑠美いってきたら?」
「冗談やめてくださいよぉ☆ こんなオイシイ場所離れるわけないじゃないですかぁ☆」
「僕も離れる気はないね。風もないしうるさくもないし桜も見られるし」
直樹が紅茶のカップをすこし高めに掲げると、横に立っていた神前がカップを受け取った。
「失礼致します」
頭を下げた神前が紅茶をそそぎ、カップを直樹に渡す。それから彼は瑠美の皿が空になったのを確認し、彼女の目の前にあるチーズケーキを皿に取り分けた。
もうすぐ太陽の光はオレンジ色に変わるだろう。
外では花吹雪が舞っている。
そろそろ宴も終るだろう。
直樹と瑠美はいつもどおり紅茶と洋菓子を楽しんで、外の喧噪とは無関係に穏やかな時間を楽しんだ後――クスクスと、小さく静かな笑い声を漏らしたのだった。