物語バトンをどすこいシスターズが答えたら。前編
「物語バトン」。別名では「悪魔撃退バトン」とも呼ばれている、かなり長めのバトンを、この二人に答えさせてみました。
たぶんほとんどの方にとって、これまでに見た中で「最長」のバトン回答になると思います(笑)。
「ねぇよりきりちゃん。いま団長から渡されたんだけど、二人でこの“バトン”に答えろだって」
「……相変わらず唐突ね、団長も……あんたも」
「練習までまだ時間あるしいいじゃん。暇つぶしにやろ」
「別に私ヒマじゃないよ。これからレポート作るんだから」
「今じゃなくてもいいじゃん。なんだったらあたしが手伝ってあげてもいいし」
「あんたに手伝って貰ってスムーズにいった試しがないよ。……ほら、団長にきまぐれに毎回つき合ってたら時間がいくらあっても足りないんだから」
「……よりきりちゃん、今日なんか機嫌悪いね。生理?」
「ベタなことを云わないでよ!」
「じゃ、当たり?」
「ハズレ。……生理前ではあるけど」
「ほら、カイロあげるから。やろうよ、面白そうなんだって! 売店でシュークリームも買ってきたんだよ」
「うわ、ホントだ」
「これ一緒に食べながらやろうよ。“物語バトン”」
「……物語、バトン?」
「そう。なんかね、ふつうのバトンと違くて、なんか質問にストーリー展開があるんだ」
「へぇ」
「面白そうでしょ?」
「……別に、いいよ。やっても」
「そうこなくっちゃ! ……えっとね、まだ全然中身は見てないんだけど、このバトン、どうやらファンタジーRPG風の世界みたいな設定なんだ」
「ふうん。どれどれ……?」
◆第一章『出発の時』
1.あなたの名前と職業は?
「……名前はわかるけど……職業?」
「ゲーム風の設定だから、たぶん“戦士”とか“魔法使い”とか、そういうやつのことだよ。よりきりちゃんだったらやっぱし――“狂戦士”、とかかな?」
「さらっと失礼なこと云わないでよ。それより、ふつうバトンってひとりで答えるものでしょ? この「あなた」っていうのは、私のこと、それともあんたのことなの?」
「あんたって呼ばないでよよりきりちゃん。ちゃんと「はりきり」っていう、親がつけた立派な名前があるんだからさぁ」
「アンタの親が怒るよ、そんな嘘ついたら。……で、この「あなた」ははりきり、それとも私?」
「よりきりちゃんにしよう。あたしはね、狂戦士ヨリキリの肩に留まったりまわりを可憐に飛びまわるフェアリーみたいな存在で、よりきりちゃんにアドバイスをするの。ティンカーベルみたいなイメージ」
「フェアリーはいいとしても、その“狂戦士”はやめてよね。どうせなら私、魔法使いの方がいい」
「魔法使いがいいの?」
「だって私、ハリー・ポッター好きだもん」
「マクゴナガル的な?」
「いや……どうせならハーマイオニーの方がいい」
「いいよ。じゃ、魔法使いね。それじゃ……」
名前:よりきり
職業:魔法使い
「最初の質問はこれでいいよね。次に行くよ」
2.何時ごろ出発しますか?
「何時ごろ? 時間とかわざわざ聞くんだ」
「どうするの、よりきりちゃん」
「出発って、ふつう朝じゃない? あんまり深く考えなければ」
「じゃあ。深く考えるなら、いつ?」
「……敵に狙われていたりしてるってシチュエーションなら、見つかりにくいように夜移動するのがいいんでしょうけど。……どうせ、答えなんて無いんだから、いつだっていいんじゃない? 朝にしとこう」
「そんないい加減に答えちゃ駄目!」
「……なんでよ」
「よりきりちゃんは魔法使いなんでしょ? 魔法使いは時間に正確なのが特徴なんだから」
「それって……『ロード・オブ・ザ・リング』のこと云ってんの?」
「そう。魔法使いは遅れない。早くも来ない。欲しがらない。寝坊しない。魔法使いは正確に来ようと思ったときに来るんじゃ」
「なんか余計なものを意図的に加えたでしょ」
「あの有名な白ひげの魔法使いダンブルドアが云ってるんだから、時間の問題はないがしろにしちゃ駄目なの」
「ダンブルドアじゃなくてガンダルフ! わざと間違えてるでしょあんた」
「あんなにたっぷりの白いひげに覆われたたら見分けつかなくてもしょうがないよ」
「ダンブルドアとガンダルフの違いはわかるよ、いくらなんでも」
「だけどよりきりちゃんだってこないだ『ハリー・ポッターのダンブルドア校長の役者さんって、2で代わったっけ、それとも3からだっけ?』とかって聞いてたじゃん」
「あれは……まあ、そうだけど」
「あれ? このシュークリーム前食べたのと味が違う。どうして?」
「……パッケージは似てるけど、メーカーが違うからだよ。私はどっちのも好きだけど」
「そっか、間違えて入れちゃったんだ。あたし普通のヤツ買ったつもりだった」
「飲み物、買ってこようか? 私がおごるよ」
「ああ、いいよ。お茶でいい」
「そう? ……はい、どうぞ」
「ありがとう。さ、それじゃあ、次の質問にいってみようか」
3.これから悪魔を倒しに行きますが、
何を持って行きますか? (A.B.C.と指定する事)
「……悪魔を倒しに行くんだ。“魔王”じゃないんだ。あたし、魔王の方がいいな」
「へんなところにこだわるね、はりきり」
「“悪魔”ね。――この物語バトンのモチーフって、『ドルアーガの塔』なのかな。それとも『悪魔城ドラキュラ』なのかな?」
「ごめんはりきり。私どっちも知らない」
「あたしも『悪魔城ドラキュラ』は全然知らないよ。『ドルアーガの塔』はお兄ちゃんがやってたから少し知ってるけど」
「……あんたって、なに考えてんのかときどきわかんなくなるよ」
「それがあたしのチャームポイントだからね。よりきりちゃんのチャームポイントは肌がきれいなことだよね」
「なによ、急に誉めても何も出ないよ」
「そんだけ肌がきれいだからナチュラルメイクが決まるんだよね」
「はりきりだって肌きれいじゃん」
「うん、きれいだけど、なんかさ、よりきりちゃんの顔は“愛されメイク”が似合う顔だから羨ましい」
「愛されメイク?」
「そうだよ。小悪魔メイクの反対。小悪魔メイクは男の人の目を奪うメイクで、愛されメイクは男の人の目を引きつけるメイク」
「えっと……どこが違うんだろ?」
「簡単に云うとSかMかってことよ」
「簡単に云いすぎでしょ、それ!」
「香澄ちゃんはMだから、愛されメイクが似合うのかなぁ」
「ちょ、ちょっと、急に本名で呼ぶのやめてよ! あんたが私のこと名前で呼ぶの何年ぶり?」
「1年ぶりくらい?」
「それになんで私がMなの?」
「どうして香澄ちゃんがMになったのかなんてあたしは知らないよ。それよりも大事なのは相性のいいSとめぐり逢うことだと思うな」
「もっともらしいこと云って。それに、私MとかSとかホントによくわかんないんだけど」
「可愛い子猫がいるとするじゃない?」
「う、うん」
「それを見て『うわあ可愛い~っ』って云って抱き上げるのが“猫好き”」
「猫好きの説明はこの際いいから」
「Mはね、その猫に爪で引っかかれたり噛まれたりしても怒んないで、むしろ嬉しくなるタイプのこと」
「ふうん」
「Sは、可愛いから、屋根の上に置いて、降りて来れずに困ってる様を眺めて嬉しくなっちゃうタイプのこと」
「美梨は、どっちなの?」
「あ、あたしのことも本名で呼ぶんだね。――あたしは屋根の上に上げたことあるよ。あたし、いじわるなんだ」
「美梨がいじわるなのは付き合い長いからよく知ってるよ」
「だからさ、“小悪魔メイク”の方を極めていくしかないわけよ、あたしとしては」
「…………ねぇ、もしかして、さっきのバトンの質問の“悪魔”から連想して、メイクの話を延々してたんじゃないでしょうね」
「え? あ、そうか。うん、そうみたい」
「……あんたってヤツは……」
「それじゃ、悪魔退治に持っていく3つのアイテムを決めちゃいましょう。よりきりちゃん、なんにする?」
「魔法使いなんだから、もちろん基本的な装備――ローブを着て、杖を持って、そういうのはカウントしなくてもいいんだよね?」
「え、駄目なんじゃない? 3つのアイテム以外は手ぶらだよ」
「そんな装備で、悪魔退治どころか近所への散歩もできんわ!」
「そんなに怒んないでよ。じゃ、着るものと、背負い袋と杖は最初から持ってたことでいいよ。さてさて、その他に、でいいから、3つのアイテムは何を持っていく?」
「そうだね。美梨だったらなににする?」
「えっとね、『ごはんですよ』はマストアイテムだね。これでいつでもごはんを美味しく食べれる」
「それ、本気で云ってるの?」
「半分本気、半分冗談。よりきりちゃんならカントリーマアムかな? シュークリームは潰れちゃうもんね」
「はいはい。他の二つは?」
「相手がドラキュラなら、十字架とニンニクと木の杭と銀のピストルを持っていくんだけど、“悪魔”っていうのがどういうヤツなのかわからないからなぁ……」
「さりげなく4つ云ってやがる、こいつ」
「ほれ。行くのはよりきりちゃんなんだから、自分で選んで」
「それじゃ、食料と、水の入った水筒と、金貨の入ったお財布かな」
「わお! おどろくほど無難な優等生的回答!」
「いいでしょ、別に」
「それじゃあ……」
A.食料
B.水の入った水筒
C.金貨の入った財布
「これでいい?」
「うん。次の質問に行こう」
第二章『山道で………』
1.山道で、魔物と遭遇しました。
持って来た道具を使って、どうやって倒しますか?
「持ってきた道具を使って? しまった。使えそうなものがない」
「魔物に、おむすびを食べさせて倒した、ってのでどう?」
「あ、それいいね。それでいこう」
2.倒した後のキメ台詞はなんですか?
「決めゼリフかぁ……。難しいな」
「好きなヒーローとかヒロインの決めゼリフをパクレばいいんだよ。よりきりちゃんの好きなヒーローってなに?」
「う~ん、そうだなぁ。急に云われてもな……」
「じっちゃんの名にかけて! とか、真実は常にひとつ! とかさ」
「どっちも名探偵の台詞じゃん。――はりきりの好きなヒーローって、誰?」
「あたしが好きなのは、『ローンナイト』のマイトと、『ジョジョ』の空条承太郎と、槇原敬之かな」
「ひとりヒーローじゃない人が混ざってない?」
「マッキーはヒーローだよ。歌で聴く人に勇気をくれるからね」
「なるほど、じゃ、マッキーがあんたにとってヒーローだったとして、だけど“決めゼリフ”はないから参考にはならないでしょ?」
「マッキーの決めゼリフか。
『もう恋なんてしないなんて、云わないよ絶対!』」
「そのセリフ、どんなシチュエーションで云うのよ」
「よりきりちゃんはどうなの? 好きなヒーローは誰?」
「……えっと、小さいとき好きだったのは、セーラームーンかな」
「よし、きまり。それじゃ、決めゼリフは、
『月に代わってお仕置きするけどいいよね。答えは聞いてない!』」
「ほらまた、なにか勝手に足してるでしょ」
◆第三章『砂漠で……』
1.……道に迷いました。どうしますか?
「砂漠とか通るんだ。けっこうハードだね」
「ここでよりきりちゃんにクイズです。砂漠で遭難したときにとるべきベストな行動とは何でしょう?」
「クイズ? なぞなぞじゃなくて?」
「子どもじゃないんだからなぞなぞなんてしないよ。真面目なクイズ」
「あんたがいつも不真面目だから聞いてるんじゃない」
「まぁまぁ。それで、答えは?」
「う~ん……状況とか、持ってる持ち物とかにもよるんじゃない? 遭難って、どういうシチュエーションなの?」
「旅客機に乗ってて、砂漠を横断してたら、故障しちゃって、不時着したの。乗客は……10人くらい。水とか食料は、最低限は揃ってる。地図や、方位磁石や、航空写真もあるの。さ、どうする?」
「真面目に答えるなら、……移動せずに、パラシュートとかを使って日陰を作って、できるだけ動かないようにして救助を待つのが正解なんじゃない?」
「おおっ?! ……面白くないなあ。それが正解だよ」
「あ、そうなの?」
「砂漠で下手に歩きまわったらすぐに死んじゃうんだって。水分不足にならないようにするのが一番肝心なことで、水が一番重要なアイテム。塩は採っちゃ駄目。あとは、火を燃やしたり、パラシュートとかを使って目立つようにしたりして、救助隊が見つけやすいようにする。……よりきりちゃんって、賢いんだね」
「だからほめてもなんも出ないよ」
「それじゃさ、さっきのバトンの質問はどうする? 道に迷ったんだって」
「この場合、待ってたって助けが来るわけじゃないんだから、脱水症状を起こさないように給水しながらボチボチ歩くしかないんじゃない?」
「はいよ。じゃ、次の質問」
2.とった行動は、全くの無意味でした。どうしますか?
「なによ、無意味って」
「歩いて駄目ってことは、寝てみようか。果報は寝て待て」
「……なんでもいいよ」
3.……さらに無意味でした。しかし、そこへ神様が現れ、
あなたを砂漠から脱出させてくれました。お礼の言葉は?
「また、実にファンタジックというか、ナンセンスというか」
「ゲームとかではよくあるんだよ、神さまが助けてくれるのって」
「へぇ、そうなの?」
「女神リーブラとか、女神イシターとかが現れて、窮地を救ってくれるの」
「ううん……これまた元ネタがわからん。はりきりって、常識はないのに無駄な知識はたくさん持ってるよね。ときどき感心する」
「それってほめてるの? けなしてるの?」
「いや、けっしてほめてはいないな」
◆第四章『悪魔の城へと続く道』
1.ここまで来ると、さすがに強敵ばかり現れます。
そこで、あなたはこう考えました。
『そろそろ新技が必要だな…』
その技を習得するための修行はどんな修行?
「強敵ってどんなんだろうねよりきりちゃん」
「ファンタジーで、強い敵って云ったら……やっぱりドラゴンなんじゃない?」
「ええーっ。ありがちだなぁ。他には?」
「ほか? そうだなぁ。ほら、ロード・オブ・ザ・リングにも出てきたトロールとか」
「それもベタすぎ!」
「じゃ、どんなモンスターだったらいいのよ」
「強敵といったらふつうビホルダーでしょう!」
「ビホルダー? はじめて聞いた」
「目玉の暴君! 大きな一つ目の化け物で、口もついてるの。すべての魔法を無効化する能力があって、魔法使いには天敵なんだよ」
「一つ目の化け物……」
「イメージが浮かばない? わかりやすく云うとね、『ゲゲゲの鬼太郎』のバックベアードみたいな感じのヤツよ」
「ごめん、バックベアードも知らないや」
「じゃあ、帰りにレンタル屋さんに寄っていこうよ。今夜はゲゲゲの鬼太郎鑑賞会を開こう」
「別にいいよ、観なくても。……それより、そろそろ練習がはじまる時間だよ? この続きは明日にしない?」
「ええーっ!!」
「そんなに大声出さなくてもいいじゃない」
「練習後に、晩ご飯食べにいこ! それで、続きを考えよう!」
「……いいよ」
* * *
「お疲れさま」
「晩ご飯、どこに行く?」
「焼き肉定食が食べたい」
「いつものところね、わかった。じゃ、私はチキスパにしよう」
* * *
「さあて、続きをやりますか!」
「どこまでやったっけ?」
「砂漠で遭難して、バックベアードに襲いかかられたところだったかな?」
「違うよ。……なんか、強敵が現れて、“新技”を習得することになったんじゃなかったっけ?」
「そっか。新技。新技の修業か」
「美梨なら、どんな修業をする?」
「修業といったらやっぱり“精神と時の部屋”だよね」
「……ドラゴンボール?」
「正解! その部屋の中では外界よりもずっと遅く時間が進むから、短時間で長い修業ができるの」
「なるほど、うってつけなわけね」
「ホントは、山ごもりが一般的なんだろうけど……」
「あんたって、発想が昔のマンガ的ね」
「よりきりちゃんならどんな修業する?」
「このキャラは魔法使いなんだから、新しい呪文の修業ってことでしょ? だけど、悪魔討伐の旅の途中にそんな修業の時間なんてあるのかなぁ」
「そうだよね。状況がよくわかんないから、次の質問も見てみようか」
2.新技を習得するのに、どれくらい時間がかかると思いますか?
「時間はかけてられないでしょうに」
「短時間で編み出せる新技かぁ。あんまり想像できないな。ハリー・ポッターではさ、あの白い光がふわ~って出てくる魔法、どのくらいで会得したんだっけ?」
「『エクスペクト・パトローナム』のこと? あれは、やっぱり何日もかかったんじゃなかったっけ」
「そうだよね。必殺技は、簡単に会得できちゃダメだよ」
「じゃあ、旅の途中だけど、一応修業の時間はとれたってことにしておこうよ。どこか安全な王立図書館みたいなところで修業できたって設定ならいいんじゃない?」
「期間は?」
「……一週間」
「はい。それじゃ次の質問」
3.新技の名前は?
「ギャラクティカ・マグナム?」
「知らない」
「……なによぉ。とりつく島もない」
「新技の名前か。つまり、新魔法の名前よね」
「どんな魔法?」
「攻撃魔法かな。それで、できれば魔法の効かないような相手にも通用するようなものがいいな」
「なかなか贅沢というか、わがままな要望だねよりきりちゃん」
「だってさ、4人パーティーとかなら戦士や騎士が仲間にいて、魔法の効かないモンスターが出てきても剣でやっつけてくれるだろうけど、こっちは魔法使いひとりなんだから、物理攻撃ができないとこのあとの戦い、厳しいと思うんだ」
「それはもっともね」
「こんなのはどうかな。召還魔法。大きな岩の塊とか、鉄の塊とかを敵の頭上に召還して、押しつぶすの」
「うわぁ……過激な攻撃だね」
「これなら相手が魔法に耐性があってもダメージを与えられる」
「あ、だけどよりきりちゃん。その魔法、建物の中とかで使っても大丈夫なのかな? 悪魔の城とかで使って、自分も建物が崩れて巻き込まれたら意味がないよ?」
「そうか……それじゃ、鉄の塊だけじゃなくて、鋭い刃物みたいなものを降らせることができる魔法」
「うう~ん……刃物はしっかり斬らないと、降ってくるだけじゃダメージは与えられないと思うよ」
「……意外とこういうところには厳しいんだね、はりきりは」
「やるからには凝らないと」
「ま、そうだね。……じゃあ、これでいこう」
「いいアイデア思いついた?」
「強大な鉄の塊を落とすんだけど、地面につく瞬間に消すことができるの」
「いいんじゃない、それ」
「よし、決まり!」
「で、魔法の名前は?」
「名前かぁ……」
「よりきりの必殺技、パート2! とか」
「あんた好きだねそれ」
「鉄の塊って、どこから喚んでくるの?」
「そうだな。……それは、単なる鉄の塊じゃなくて、なんか別の巨大な鉄の巨人とかの足だったりするんだよ。それで、巨人の足だけをこの世界に喚びだして、敵を踏み潰してもらうんだ」
「よりきりちゃんも、意外とこういうの思いつく人なんだね。意外だった。さすがはあたしの友だちだね」
「感化されちゃったのかも」
「それじゃ、新技の名前は“女神のかかと落とし”ってことで、決定!」
「ん? 少し変わってるな。まあいいか」
4.新技を習得し、先へ進むと門がありました。そこに何がいますか?
「門番、かな?」
「敵の騎士かな。どんな門番だろう」
「悪魔の騎士?」
「それってどういう姿?」
「えっと……角が生えてて、牙が生えてて……」
「ベタね。いい意味で」
「ほめてないでしょ」
「とにかく、悪魔の騎士と呼ばれる門番がいたのね。次行くよ」
5.「4の回答」は敵みたいです。新技を使ってみました。
その時の相手の台詞は?
「さっそく新技使っていいんだ」
「“女神のかかと落とし”ね。――あ、よりきりちゃん。料理来たよ」
「うわぁ、やっぱ美味しそう」
「話の続きは食べてからにしようか」
「そうしましょ」
「それじゃ、……いっただっきま~す!」
「鉄板がジュウジュウいってる。これが好きなんだよね」
「熱そぉ。舌、火傷しないの?」
「冷ましながら食べるよ。美梨は猫舌なんだっけ?」
「猫舌。そういう熱々の料理は10分は放置しないと食べれない」
「そうか。たいへんだね」
「ずるいなぁ。あたしも熱々のできたてが食べれるようになりたいなぁ」
「無理しない方がいいよ」
「スパゲティに、タバスコ入れないの?」
「私、あんまり辛いのはダメ」
「そうだっけ。……香澄ちゃん、サザエとかの巻き貝が苦手なのは“何舌”っていうか知ってる?」
「え、そんなのあるの?」
「うん。“巻き舌”」
「……ダジャレじゃない」
「ダジャレじゃないよ。なぞなぞだよ」
「ほら、さっきの質問の続き考えるよ。――『新技を使ってみました。そのときの相手の台詞は?』か。“女神のかかと落とし”を使ったんだよね。どんなセリフを云うかな?」
「『最初に云っておく。我々はか~な~り、強い!』とか」
「ゼロノス?」
「普通はまず『動くな! 我々は悪魔軍の騎士だ。妙な動きをしたら容赦はしないぞ!』とか云って、それから仲間を呼ぶ」
「仲間なんて呼ばれる前にしとめちゃおうよ」
「で、『女神さまーっ!』と叫んで死ぬ」
「意味がだんだんわからなくなってきた……」
6.あっけなく倒せました。門が開き中へ入ると、城にはカギがかかってました。
「……かかってました、って、質問形になってないんだ」
「鍵がかかってるからって、はいそうですかと引き下がるようなよりきりちゃんじゃないってところを、悪魔たちに見せつけてやりなよ。……さて、どうする?」
「魔法使いらしく、鍵開けの呪文を唱える」
「アンロックね。開くのかな?」
「開いたことにしよう。でないと先進めないよ」
「それもそうだね」
◆第五章『悪魔城・1階』
1.城の中に入ると、突然お腹が痛くなってきました。その原因は?
「謎の腹痛が魔法使いよりきりちゃんを襲った。よりきりに500ポイントのダメージ。よりきりは死んだ」
「コラコラ簡単に殺すな! ……しかし、なんで急にお腹痛くなったんだろ」
「変なものを食べたとか……」
「ここに来るまで食堂どころか街にも寄ってないよ」
「持ってきた食料にカビが生えてたとか」
「う~ん……それはあるかもしれないけど」
「あ、そうだった!」
「なに?」
「忘れてたよ。お腹痛い理由。よりきりちゃん、自分で云ってたじゃん」
「え? なに?」
「生理」
「……お店の中で、普通の声で生理とか云わないでよ、恥ずかしい」
2.その状態のまま最上階へと目指して行きます。
「お腹痛いのを治す魔法を使った、とかは無しかな、はりきり」
「それは無しだよ。回復呪文や治癒系の呪文は僧侶や神官や司祭しか使えちゃダメ。閻魔大王が許してもそれはあたしが許さない」
「お厳しいことで。それじゃ腹痛を抱えたまま進む、と」
2階へ上がると、階段の前にとても強そうな敵がいます。
戦える状態ではないので、話し合いをしようと試みます。どんな会話?
「階段の前に、強敵出現、ね。この敵って、どんなやつ?」
「会話が交わせると云うことは、スライムみたいな知性のないモンスターじゃないってことだから、亜人族系統のモンスターなんだろうね。かといって、ゴブリンとかホブゴブリンとかオークとかは“強敵”って感じじゃないし、リザードマンか、ミノタウロスか、サイクロプスってとこかな」
「リザードマンって、身体が人間で頭がトカゲの人?」
「正確に云うと違うかな。二足歩行で、人間並み……いや、人間以上の体格をしてるトカゲって云った方が近いかな。尻尾もあるし」
「あ、なるほど。いわゆる“半獣人”じゃないわけね」
「おっ、よりきりちゃん。半獣人なんて、なんか本格的な云い方だね」
「これでもハリポタファンですから。ケンタウロスとか良く出てくるし。顔が人間で、身体が馬なのがケンタウロス。上半身が人間で、下半身が魚なのが人魚。顔が牛で、身体が人間なのがミノタウロス」
「列挙したねぇ! そうだね。ファンタジーの世界には、そんな“組み合わせ系”のクリーチャーはたくさん出てくるよね。馬に羽根がついてるのがペガサス。上半身が鷲で、下半身がライオンがグリフォン。グリフォンと馬の合いの子が、ハリー・ポッターにも出てくるヒポグリフ」
「あ、ヒポグリフって、そうなんだ」
「物知りはりきりちゃんに、わからないことはなんでも聞いてよよりきりちゃん♪」
「マニアックな質問にだけは強いからなぁはりきりは」
「さて。階段の前の強敵とは、そんなこんなで“サイクロプス”でした。魔法使いよりきりちゃん、どう切り抜ける?」
「あれ? サイクロプスはどんなモンスターだっけ?」
「一つ目の巨人! 目がひとつしかないヤツは、だいたい強いんだよ」
「ビホ……なんとかみたいに?」
「ビホルダー。バックベアードも強いし、目玉のオヤジも……目玉のオヤジは弱いか。鬼太郎も弱いし」
「ゲゲゲの鬼太郎も目、ひとつしかないの?」
「あの人は一つ目というより、生まれたときに片目が潰れちゃっただけだから、今いったラインナップには加えちゃダメだったね、ごめんなさい」
「変なところで律儀に謝るのねあんた。……あれ? じゃあ、鬼太郎のお父さんの目玉のオヤジは、鬼太郎の片方の目じゃないの?」
「違うよ。目玉のオヤジは、お父さん自身の目だよ。死んだお父さんの目が、我が息子を心配するあまり、もぞもぞ動き出して、視神経の部分が手とか足になって、赤ん坊の鬼太郎のところに這っていったの」
「そうなんだ、知らなかった」
「まぁ、鬼太郎の過去の詮索はそのくらいにしておいて、サイクロプスの対処法を考えようよ」
「はいはい。『戦える状態ではないので、話し合いをしようと試みます。どんな会話?』……話し合いねぇ」
「相手の名前がわかればね。サイクロプスは背広も着ないし名札もつけないだろうからなぁ」
「名前がわかればなんかうまくいくの?」
「交渉術の基本だよ。できるだけ相手の名前を呼ぶ。自分の名前を繰り返し呼んでくる相手を、人はだんだん敵とは感じなくなって親しみを感じてくるの」
「ほう」
「あと、自分が話すより、できるだけ相手の話を聴くことを心がける」
「なんか講義で聴いたことをそのまま話してない?」
「ちがうよ。マンガで得た知識だよ」
「なるほど……」
「というわけで、サイクロプスと戦えない状態のよりきりちゃんは、サイクロプスの身の上話を聴いてあげることにしました」
「別にいいよ、それで」
3.三時間近くにも及ぶ会話の末、
ようやく戦闘モードに突入です。相手の弱点はどこだと思いますか?
「おいおい! 戦わないための会話じゃなかったの? 3時間は無駄じゃん!」
「よりきりちゃんには無駄だったかもしれないけど、彼にとっては有意義な3時間だったと思うよ」
「その“彼”を今から倒さないといけないんでしょ? やっぱり無駄だよ!」
「怒んないの。短気は損気よ」
「怒ってはいないけど」
「短気・損気・ウソツキ。いつもドキドキ」
「なにそれ」
「ううん、こっちの話。じゃ、いよいよ戦闘シーンだね! 相手の弱点を攻めるのは勝負の鉄則!! 遠慮なしにやっちゃえ~!!」
「弱点か。……目かな?」
「目が弱点じゃない生き物なんてそういないからね。いいんじゃない?」
「よし。それじゃ、サイクロプスの目を、攻撃呪文で射抜く」
「そういうときは、『これでもくらえ!』と叫ぶのがお約束なんだけどね」
「それも、漫画かアニメかのネタ?」
「ううん、違うよ。とある有名なゲームに、『これでもくらえ』っていう攻撃呪文があるんだ」
「……そういう知識、はりきりと出会わなかったら一生知らないままだっただろうね」
「嬉しい?」
「いや、特に」
「冷たいなぁ。よりきりちゃんって、Mのくせにあたしに対してけっこうズバズバ云うよね」
「長い付き合いだからね」
「この恨み、いつか晴らしてやる~!」
「そんなこと云って、あんた気を悪くしてもひと晩寝たらそんなこと全部忘れてるでしょ?」
「そうだっけ?」
「“根に持つ”っていう言葉の意味、わかんないでしょ」
「それくらいわかるよ。草の根分けても探し出せ、とか、根も葉もない噂、とか、『あの人根は善人なのに、根暗よねぇ』とか。根に持つっていうのは、そういうことよ」
「はい、不正解」
4.勘が当たったみたいで、一発で倒せました。しかし、
その戦闘で持って来た道具・AとCを失ってしまいました。
「『これでもくらえ』の一撃でサイクロプスを倒しちゃった! よりきりちゃんすごい!」
「でも、3つのアイテムのうち2つも失っちゃったみたいよ。AとCってなんだっけ?」
「Aはキス。Cは――」
「それ以上云わないで。私が恥ずかしいから」
「Aは食料。Cは金貨だよ」
「はじめからそう答えてよ。じゃあ、残ったのは水の入った水筒だけなのか。このあと大丈夫なのかな。……って、元々、悪魔城に来てしまってるんだから、食料も金貨も使わないか」
「なによりきりちゃんノリツッコミやってるの?」
「別にノリツッコミとかじゃないよ」
5.そして、いつのまにか腹痛も治っていました。治った原因は何ですか?
「痛みに負けルナ?」
「はいはい、ベッキーの出てるCMね。はい、次行くよ」
◆第六章『悪魔城・2階』
1.二階に上がると、敵が全くいませんでした。
しかし、上へと続く階段が見つかりません。
「今度は頭を使う階みたいね」
「階段がないフロアー。人影もない。ひんやりとした空気が漂っているだけなのに、どこかしら敵意のような気配も感じとれる――」
「はりきり。あんた小説家になれるんじゃない? 今みたいな表現力と、妙な知識量があれば面白い物語が書けそう」
「小説? あたしあんまり小説読まないからな。絵がないとさ、途中で飽きちゃうんだ」
「はりきりらしいね」
「上への階段、どこにあるんだろ?」
「えっと、例えばさ、このフロアーから上の階に上がる手段は、階段じゃないのかもしれないよ」
「お、いいねよりきりちゃん。例えば?」
「魔法陣かなにかが隠してあって、そのうえに乗るとふわふわ浮いて、上に上がっていけるとか」
「『ヨンヨン召喚』か……! なるほど。……ケムケムみたいに浮かんで昇るわけか……!」
「……お~い。自分の世界に入ってしまわないで~」
「あ、ごめん。あまりにもよりきりちゃんがいいこと云うから、つい」
「ホント変なやつね、あんたって」
「ありがと」
「ほら。ふつう『変なやつ』って言葉を誉め言葉っていう風にとるひと珍しいんだよ? 美梨は“変”って云われると基本的に喜ぶよね、いつも」
「“変”は誉め言葉だよ。個性的、ってことだから」
「そうかもしれないね。……よし、それじゃさっきの質問の答えは、『魔法陣で浮かんで昇る』ってことで」
「ファイナルアンサー?」
「うわ、……それ、ちょっと古くない?」
2.残念ながら、あなたの勘はハズレのようです。あなたはまた探し始めます。
そんな中、どこからともなく声が聞こえてきます。なんて聞こえますか?
「魔法陣、なかったみたいだねよりきりちゃん」
「うん。ま、それはいいや。それより、声が聞こえてきたんだって。なんの声なんだろう」
「敵はまったくいなかったはずだから、建物自体が声を発しているとかかな。壁とか、床とか」
「なんて聞こえてきたの?」
「それはよりきりちゃんが答えて」
「う~ん。『引き返せ~』とかかな?」
3.その声は、天井から聞こえてきます。天井を探ってみると、
学校で良くみかける登り棒が出てきました。登り棒は得意ですか?
「天井からだったか」
「登り棒が降りてきたってことは、『引き返せ』というより『こっちへ来い』ってことみたいだね。罠なんだろうけど」
「香澄ちゃんって、登り棒得意だった?」
「また急に本名で呼ぶ。――得意だったよ。運動はけっこうできる方だった。美梨も運動神経いいよね」
「うん。――香澄ちゃんって、部活、軟式テニスだったんだっけ?」
「そうだよ」
「日焼けしてた香澄ちゃんって、イメージが浮かばないなぁ」
「黒かったよ。夏は真っ黒」
「今はこんなに色白なのにね」
「真っ黒って云うよりまっ赤、って感じだったな。ほっぺとかすぐ赤くなるし、日焼けしたら皮が剥げんの」
「うわぁ、剥がしたい!」
「こらこら」
4.その登り棒を登って行くと、さっきまでどこにも敵はいなかったのに、
下からドンドン登って来るではありませんか!
この危機的状況をどう乗り切りますか?(20字以内で答えよ)
「うへぇ! 敵がどんどん昇ってきたんだって。よりきりちゃん、どうすんの?」
「芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を思い出すわね」
「古典を思い出してる場合じゃないよ!」
「いや、そういう意味じゃないんだけど」
「でもさ、どうして急に敵が出現したんだろう。どこ探してもいなかったはずなのに」
「姿を消していた、とか?」
「透明マントか何かで? でもさ、なら不意打ちしてよりきりちゃんを倒しちゃえば良かったんじゃない?」
「それじゃ……登り棒を登りはじめたら、壁とかから自動的に出現する仕掛けになっていたとか」
「ああ、そうかもしれない」
「珍しく納得してくれたね。よしそれじゃ、この状況を切り抜ける方法を考えよう。……しかし、なんでここにきて20文字以内なの?」
「国語のテストじゃあるまいしね」
「ホントだよ。――こういうシチュエーションを切り抜けるのって、なにかいい方法あるのかな」
「油を持って来てればね……」
「油を垂らすの?」
「うん、そう。滑って昇って来れなくなる」
「油の代用を水でするのは……無理があるか」
「油のようには滑らないだろうね。他の方法を考えよ」
「なにかを落とすとか、投げつけるとか云っても、もう手持ちのアイテムは水筒くらいしかないしね」
「仕方ない。最後の手段よ」
「ん、なんか思いついた?」
「 がんばって 一目散に 昇りけり 」
「わざわざ五・七・五にしなくてもいいのに」
「これじゃ17字しかないや」
「別に20字で答えなくちゃいけないわけじゃないんだよ?」
「こういうのはピッタリ答えるのが気持ちいいの」
「余計なところにこだわるんだから……」
「 がんばって 一目散に 昇りけり (つづく)」
「はい。上手にできました」
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※いよいよ悪魔城の最上階までたどり着いた魔法使いよりきり!
はたして悪魔との戦いの行方は?!
物語バトン後編は、明日12月10日UP予定!
乞うご期待です!!
というわけで、続きます♪
現時点で、内容が“剣と魔法のファンタジー世界”を舞台をしたものなので、ジャンルを「ファンタジー」に設定しております。