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カプセル配達

作者: かがみ百年
掲載日:2026/01/22



 遠い未来のとある小さな国では、配達物が球体状のカプセルに入っている。

 それは『カプセル配達』と呼ばれ、手紙やハガキの郵便物から、通信販売で注文した品や贈り物などの宅配物まで、中身に合わせたさまざまな大きさのカプセルで届けられる。

 使用されるカプセルは丈夫なプラスチック製で、防水加工が施されているから書類が濡れたり破けたりしないし、また、しっかりと緩衝材が詰められているから中身の品物が壊れたりするということもない。

 カプセルで配達されるようになって間もない頃は不満の声もあがっていたが、次第にそのような声はなくなっていった。なぜなら、すべての国民がこの配達方法で不便な思いをすることが一度もなかったからである。

 そのため、カプセル配達はいまもなお続き、国民にとってそれは当たり前になっていた。




 そんなカプセル配達が日常風景になっている都会から離れた山奥、ひっそりと佇む建物があった。

 ここは政府が秘密につくった研究所。質素な外観で、働いているのは博士とその助手の二人だけ。


「博士、今日最後の収集車が来ました」

「そうか。いつも通り、裏の投入口から流すように運転手に伝えてくれ」


 ガラガラ、と何かが転がっていく音が聞こえ始めて、博士はある大きな機械のスイッチを押した。投入口から太いパイプを通って、何かが機械に溜められていく。研究所内に機械の稼働音が鳴り響いた。


「今日も大変でしたね」助手が一日の疲れを吐き出すように呟いた。

「大変なのは収集車の運転手たちだ。一日中カプセルを集めに走っているのだからな」


 この国では、街々のいたるところにカプセル用回収箱が設けられており、収集車は一日中回収箱に捨てられた大量のカプセルを集めにまわっている。

 どうやら集められたカプセルはすべて、この研究所に運ばれているようだ。


「この機械がつくられてからもう数年経つのですね」

「そうだな。政府にこの研究所を任され、この機械をつくれと言われたときは不安だったが、なんとか完成して良かった。君も私もよく頑張ったよ」

「けれど、本当にちゃんと送られているのですか? いつも不安になりますよ」

「問題ないさ。昨日も政府から定期報告があって、無事に届いていると教えてくれた」


 機械の音が止み、博士と助手は帰る準備を始めた。研究所の明かりを消す前に、博士が機械の内部を確認する。

 カプセルが溜められていた機械の中はからっぽになっていた……。



 この機械ができる数年前、この国の政府にとある通信が送られてきた。どうやら、相手は数百年前の世界を生きている人間らしく、政府は少し怪しみながら対応した。


「過去から連絡がくるなんて驚きですよ。どうしたのです?」


 画面に映し出された過去からの通信者は若々しい男で、非常に困った様子であった。


「私はあるおもちゃ会社の者です。どうしても、あなた方に頼みたいことがあって通信を送ったのです」

「なるほど。お聞きしましょう」

「私はあるモノを求めて、あらゆる未来の、あらゆる国にコンタクトを取ってきました。しかし、なかなか良い巡り合わせがありませんでした。ですが、その過程で、この時代のこの国にそのモノが大量にあることがわかったのです」


 そう言うと、彼はある小さな球体を見せてくれた。


「それはっ!」


 政府の者たちは驚きの声をあげた。なぜなら、彼が手に持っているその球体は大きさは違えど、この国で配達に使用されているカプセルと全く同じだったからである。


「我が社は、カプセルがどうしても必要なのです。どうにか不必要になったカプセルを過去に送っていただくことはできませんか?」


 なんとも大変なお願いである。しかし、さまざまなことが発展したこの遠い未来の時代には、時空を超えた配達を行う機械をつくるのは容易いことであった。また、政府は増えるばかりのカプセルの再利用方法に少しばかり悩んでいた。


「わかりました。準備を進めましょう。ほかに何か要望はありますかな?」

「実は、こちら側で使用するカプセルはサイズに指定がありまして……」

「なるほど。では、特定のサイズに変更させる機能を合わせ持つ機械にしましょう」


 こんなことから、あの研究所が誕生し、博士と助手はあの機械をつくることになったのである。

 あの機械は未来から過去に、配達に使用されたあと不必要になったカプセルを送っていたのである。——しかも、モノの大きさを変えることができる機能まで付いて——。

 研究所が山奥にあるのも、作業員が二人しかいないのも納得である。そういったことは、誰の目にもつかない場所で、少数の人間で秘密に行われるのがたいていである。



 ところで、いったいなぜ、おもちゃ会社は大量のカプセルが必要なのであろうか。機械をつくり始めたころの博士と助手は疑問を抱いていた。機械をつくる側からすれば当然の疑問である。二人は政府に質問してみることにした。

 すると、このような回答が返ってきたという。


「どうやら、おもちゃ会社のある数百年前のその国ではあるものが流行っていて、それにカプセルが必要不可欠なんだそうだ。だが、あまりの流行に生産が間に合わず困っているらしい。なんでも、過去の人間たちはそれに一喜一憂するようで、たしか、百円玉という硬貨を使用する小型の販売機で、付属の取っ手を回すとガチャガチャと音が鳴って……」




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