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第二話

ザァイ歴414年。

ファイアス王国、ヴァイス領。


鉱山資源が主になっている世界三大国。

 広大な領地は、岩だらけの丘陵と要塞に囲まれ、鉄と血の匂いが漂う。

ファイアス王国は、大陸7つの王国の中でも、鉱山資源を掲げ軍事力で頂点に立つ。

ガタリス王国との冷戦は、鉱山の支配を巡る緊張から生じている。

 ヴァイス領は、ファイアスの前線基地であり、ガタリス国境に近く、軍事訓練と諜報活動の中心地だ。


 軍の中核を担うのは、力を持つ者だけで構成される特殊部隊


力を持つ師団(ガイラス)


ファイアス王国の軍の中でもトップクラスの実力を持つものしか入隊を許されず、総員は15名程度。

 彼らは冷戦の監視、賞金首の捕獲、そして最近囁かれる【影の陰謀者(バイスソウルズ)】の動向調査を任務とする。

力を持つ師団(ガイラス)】の兵士は、黒い身軽な装備と、“とある者“の力を宿した武器を持っている。


そのとある者こそ、国の中で最も崇拝されているであろう【力を持つ師団(ガイラス)】の師団総長。

史上最年少17歳で師団総長になった男。

名を、【リーバ・ライオス】

世界に20人しか持っていないと言われている能力。

その一つである【崇高なる感覚(ルミナス)】を所持している。

身軽な装備で戦場に切り込み、一分隊なら容易く蹴散らすほどの力を持つ。

地道な努力をしてきた老兵からは忌み嫌われているが、若者。

特に国の女性からは熱望を度々向けられている。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


俺はあの日、気がついたら知らない場所にいた。

元いたナーラガント領の自然豊かな森林とは打って変わり、枯れ木ばかり。

まるで戦場のような雰囲気だ。

リーバはふと、両手を見る。

両手に抱えていたジェーンは消えていた。

「っ!」

それにすぐに気がつき、慌てて体を起こした。

「ジェーン!ジェーン!!」

呼びかけたが、自分の声だけが無慈悲に反響して返ってくる。

「っち!」

不甲斐なさ。

悲しさ。

苦しさ。

どれが俺を掻き立てたかはわからない。

気がついたら草原を泣き叫びながら走っていた。

ヴァイス領の森は、岩と枯れ木に覆われ、冷たい風が吹き抜けていた。

ジェーンがいない。

一番大切だった。

妹の小さな体温、笑顔、俺を呼ぶ声——すべてが消えていた。

「ジェーン!いるんだろ!答えてくれよっ!」

彼女は生きている。そう信じたかった。

俺は叫びながら走り続けた。

足がもつれ、岩に倒れても、ジェーンの名を叫んだ。

どうして守れなかった?

なぜここにいる?

ジェーンはどこだ?

「返してよ…」

俺は水たまりの上で足を止め、そこで座り込んだ。

心臓が苦しい。

両親を亡くした時も感じたこの感覚。


ふと水たまりを見ると、涙でぐしゃぐしゃな顔面が映った。

「くそっ!くそっっっ!!!」

俺は力一杯に地面を殴り続けた。


そして、気がついた時には保護されていた。

目を開けると知らない天井が広がっている。

どうやら仰向けの状態らしい。

丸石の無秩序な並びが羅列されている。

「ジェーン…!」

俺は咄嗟に立ちあがろうとしたが、足が動かない。

足を見ると、包帯で固定されていた。

「動くな」

「傷が開く」

声が聞こえた方向へと目を向けると、屈強な男がいた。

その男はこちらを見もせずに窓を開けて葉巻を吸っていた。

「ここは…どこだ」

屈強な男は葉巻の火を消して、ポケットに突っ込んだ。

「ここはファイアス王国。お前は戦場でぶっ倒れていて、ひどい怪我をしている」

「何も覚えていないのか?」

俺は記憶を辿ったが、ここにいる理由は全くと言っていいほどわからない。

「…わからない」

屈強な男は窓を閉めて、こちらを向いた。

そして、顔をじっと見つめてくる。

「…まあ無理もないか」

 屈強な男は呆れた顔をする。

「もう少ししたら医者が来る。怪我はそこまで深くない。適切な治療をしたら歩けるはずだ」

屈強な男はそう言いながら部屋の扉へと向かう。

「そしたら医者に聞いて俺の部屋へ来い」

そう言って紙を渡してきた。

紙を開くと【ザイオン師団長】と書いてあった。


そうこうしていると、医者と思しき男がやってきた。


数分後、俺はおぼつかない足でザイオン師団長の部屋を訪れた。

部屋には剣や盾が飾られており、棚には多くの勲章が飾られていた。

「お、やっと来たか」

ザイオンと名乗る男は椅子の上に座り、机に足を上げていた。

「まあ座れよ」

ザイオンは部屋の隅にある椅子を指差した。

俺は足を痛めないようにそこに座った。


「さて」

ザイオンの顔が険しくなった。

「お前、光の崇高者(ロフティエレメント)に出会っただろ」

と言われたが、見当もつかない。

「誰だよって顔してるな」

「まあ無理もないか…」

ザイオンは葉巻をまた咥えて、吸い始めた。

「…説明した方がいいか…?」

俺はコクっと頷いた。

「はあ…」

「少し長くなる」


「お前、光のフードを被った奴に会っただろ?」

俺は記憶を辿る。

曖昧だが、確かに会った記憶がある。

「…会った」

「あいつ…いや、あいつらは光の崇高者(ロフティエレメント)と呼ばれる集団だ」

光の崇高者(ロフティエレメント)は、力を与える者。としか言いようがないな…」

曖昧すぎてよくわからない。

「とにかくだな。“俺と同じ力“もしくはそれ以上の物を持っている、可能性がある」

「だから、折行って相談があるんだが…」

ザイオンが席を立ち、こちらにやって来る。

「訓練兵にならないか?」


と言われたが、何が何だかでよくわからない。

こいつは一体何を言っているんだ。

リーバは疑惑と困惑が混じった眼差しをザイオンに飛ばした。

「なんだその目は」

「…まあ無理もないよなぁ…」

ザイオンは葉巻に再び火をつけて吸い始めた。

「ともかく、明日の早朝に俺の部屋へ来てくれ」


そう言われ、部屋を追い出された。

冷たい廊下が体に染みる。


遠い考えがリーバの脳内を巡る。

光の崇高者(ロフティエレメント)

『俺と同じ力』

何が何だかさっぱりだ。

だが、子供ながらに考えはまとまっていた。

『ジェーンを奪った世界を“噛み殺す“』


後日、早朝にリーバはザイオンの部屋を訪れた。

「トン、トン」

「リーバです。来ました〜」

反応がない。

もう一度ドアをノックする。

「トン、トン」

またも反応がない。

リーバは扉のドアノブに手をかける。

「ガチャ」

鍵がかかっておらず、そのまま扉を開ける。


部屋を見ると、隅の方にあるベッドでぐっすりと眠っている男がいる。

「ふぅ…ん…」

寝息が聞こえてくる。

『早朝に来いって言ったのアンタでしょ…』

リーバはそう思いつつ、ザイオンを起こしに近寄っていく。

部屋は薄暗く、窓から差し込む朝の光が剣や盾に鈍く反射してる。

棚の勲章が、まるでザイオンの過去を誇るように並んでる。

『こいつ…本当に師団長なのか?』

と内心で毒づきながら、肩を軽く揺する。

「ザイオンさん、起きてください。朝ですよ」

ザイオンは目を擦り、寝ぼけた顔でリーバを見上げる。

「ん…?」

「…ああお前か」

ザイオンは体を起こして、伸びをした。

「少し待ってろ」

ザイオンはベッドから立ち上がり、机の中にある引き出しを開け始めた。

「あれ。どこやったっけ…」

ザイオンは何かを探しているようだった。


「なあ」

ザイオンが、引き出しを開けながら話しかけてきた。

「お前はさ、どんな人になりたいんだ」

『どんな人』

リーバは言葉が詰まる。

だが、絶対に守りたい人がいる。

いや、“居た“と言った方が正しい。

「一番大事な人を守れる人」

「…になりたい」

声が小さく震える。

守れなかった者が言うべき言葉ではないのは、心の奥底では分かっている。

だが、まだこの世にいるかもしれない妹を、まだ諦め切れていない。

「…良い心がけだな」

ザイオンはそう言って、リーバの前に書類を出してきた。

『訓練兵登録書』

「これにサインを」

ザイオンは万年筆を渡してきた。


書類を書き終わり、万年筆と書類をザイオンに渡した。

「どれどれ…」

 ザイオンは眼鏡をかけて、書類を見始めた。

「9歳か…若すぎるな…」

ザイオンは険しい顔をしながら書類を見ている。

「まぁこの際、関係ないな…」


「…よし」

ザイオンは書類に何かを書き始めた。

「これでお前は仲間だ。早速、今から郊外に行くぞ」

「え?」

困惑しながらも、ザイオンに連れられて行った。


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