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とあるむすめのはなし

作者: 明鏡止水

わたしは、ごく普通の女の子です。

今年で、ちょうど10歳になります。


お父さんは、どこにでもいるお父さんです。

夜は家にいなくて、朝に帰ってきます。


お母さんは、ごく普通のお母さんです。

いつもお家にいて、わたしにご飯を作ったりしてくれます。


わたしは、ごく普通のお家に住んでいます。

そして、わたしには自分の部屋もあります。

お父さんとお母さんは優しいので、わたしの部屋の家具はわたしの好きなものを買ってくれます。

なので、この部屋はわたしの好きなものだけがあります。

わたしは、この部屋が大好きです。


棚の上に飾ってあるお花からベッド、そして飼っているペットまで、全部わたしの好きなものです。

ペットは2匹います。

去年かってもらった生き物で、どっちも今までにわたしは見たことがない、珍しい生き物でした。


何ていう生き物なのかは、わたしにはわかりません。

でも、わたしはこの生き物は嫌いじゃないです。

お父さんが、くれたものだから。

足とか顔が、かわいいから。


わたしは幸せです。

大好きなお父さんとお母さん、そしてかわいいペットに囲まれて、生活できているから。








わたしは、ごく普通の女の子です。

最近、お父さんたちがちょっと変です。


二人とも、なんだかいつも暗い顔をしています。

お父さんは、なんでもないよ、平気だよ、って言います。

お母さんも、大丈夫だよ、心配しないで、って言います。


わたしは心配です。

大好きなお父さんに、何かあったら。

この幸せが、続かなくなったら。

そう思うと、怖くて仕方ありません。

でも、お母さんが大丈夫だって言うなら、きっと。

きっと、大丈夫なんだと思います。


お母さんが、わたしに嘘をつくはずないから。

お父さんが、わたしを嫌いになるはずないから。








わたしは、普通の女の子です。

今日、ちょっとおかしなことがありました。


朝起きたら、部屋の窓が割れていました。

しかも、その向こうに変なものがいました。

丸くて、頭が真っ黒くて、その下に並んだ2つの白と黒の穴と、中に白い変なものがいっぱい見える1つの黒い穴があって。


それは、わたしに何か言ってきました。

でも、なんて言ってるのかわかりませんでした。


それは、わたしに長いものを伸ばしてきました。

怖かったので、部屋を出てお父さんを呼びに行きました。

そしたら、ここで待ってなさいって言われました。

どうして?って聞いても、答えてくれませんでした。


しばらくして、お父さんに入ってきていいよって言われました。

部屋に入ったら、窓の向こうの変なものはいなくなっていました。

このことをお母さんに言ったら、お母さんはよかったね、って言ってました。




部屋に戻ってきて、ふと気づきました。

ペットが、いなくなっていました。

それも、2匹とも。


窓が割れたままだったので、おそらくそこから出てしまったのでしょう。

わたしは、お父さんたちにそれを言いました。

そしたら、また新しいのをかってあげる、と言ってくれました。

よかったです。



そして、いま…

わたしは、窓をじっと見ています。


わたしが見た、変なもの。

それが何だったのか、気になっていました。


もちろん、もうあの変なものは窓の外にいません。

でも、やっぱり気になります。


あれ。

そういえば、あの変なものって…

なんだか、わたしのペットに似ていました。

もしかして、あれはわたしのペットだったのでしょうか。


いや、そんなはずはありません。

だって、わたしのペットはかわいいから。

あの変なものは、怖かったです。


わたしは、思わずペットの名前をつぶやきました。

そしたら、窓から長いお父さんの手が出てきました。

お父さんは、「おいで」って言ってました。










わたしは普通の女の子です。


今日の夜は、久しぶりに豪華なご飯になりました。


変な色をした、4本足の生き物。

わたしのうちでは、時々この生き物を食べています。

正式名称は、わたしは知りません。

でも、わたしはこれの「あたま」ってところが大好きです。

なので、当然そこを取りました。


わたしは、これが本当に大好きです。

全体のお肉は柔らかくて、「め」ってところはとろとろしてて、おいしいです。

あと、「した」っていうちょっと硬い赤いところも、わたしは好きです。


「した」の周りには、小さくて細長い、白くて硬いものがあります。

これは、わたしは嫌いなので食べません。

ちなみに、わたしはお父さんから、これが「は」っていうんだよ、って教えてもらったことがあります。


わたしがお肉を食べてる間、お父さんとお母さんは、わたしが取らなかった大きなお肉を食べていました。


4本足の、変な生き物。

これが何なのか、わたしにはわかりません。

でもそれは、わたしやお父さんやお母さんとは全然違う見た目をしているし、なによりおいしいので、きっと食べるための生き物なんだと思います。




ご飯のあと、お母さんが嬉しい話をしてくれました。

わたしに、弟か妹ができるというのです。


お父さんは、これで家族が増えるね、みんな、もっと幸せになれるね、って言ってくれました。


お母さんは、もう赤ちゃんが生まれる準備はできてる、と言っていました。





わたしはお母さんの部屋に行ってみました。

たくさんの赤ちゃんのもとが、糸に包まれていました。


こんなにいるなら、もっともっと幸せになれるね、って言ったら、お母さんはそうだね、って言ってました。



お父さんは、これからはもっとたくさんがんばるって言ってました。


わたしは、嬉しかったです。


だって、お父さんが頑張るってことは…

あのおいしい生き物のお肉を、もっとたくさん食べられるからです。



そういえば、わたしのペットはあの生き物に似てた気がします。

でも、きっと関係ないんでしょう。


わたしが飼ってたのは、かわいいペットです。

わたしが好きな食べ物は、おいしいお肉です。



あ、そうだ。

わたしは、「くも」っていいます。

お父さんもお母さんも、みんな同じです。

それと、わたしが前まで飼ってたペットは「ニンゲン」っていう生き物らしいです。


お父さんは、ここじゃないところに行けば、たくさんの「ニンゲン」がいるって言ってました。

だから、いつか行ってみたいです。


そして、また新しい「ニンゲン」を…

わたしのペットにしたいと思います。



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