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ドカ食い気絶部新入部員の目茶田部内くん

作者: 仁鳳

「好きです!僕と付き合ってください!」

「ごめんなさい。ちょっとそんなガリガリなのは…私無理かな…」

 あっけなく振られた。

 この子は入学して早々に僕が一目惚れした子だ。

「ガリガリ…か……」

 どうやったら体を大きくできるんだろう…

 そう途方に暮れていた時、ある張り紙を校内で見つけた。

「ドカ食い気絶部…?」

「食べ物を食べまくって体を大きくする部活です。」

 ……僕にピッタリじゃないか!

「しかもよく見たら初期費用とかも何いらないじゃないか!」

 この部活に入ろうと決心した時にはもう、先に足が部室へ向かっていた。


「失礼しまーす。ドカ食い気絶部の部室はここだと聞いたんですがー…」

「おおお!よくぞ来てくれた!部員が少なくて困っていたところなんだ!まずは自己紹介をしておかないとな!」

「俺は部長の怒火食好男(どかぐいすきお)だ!」

 うわっ。この人めっちゃ体大きい…すごい…

「僕は目茶田部内(めちゃたべない)と申します」

「田部内くんよろしくね。田部内くんはここが何をする部活かは知ってるかな?」

「はい。もちろん知っています。ドカ食い気絶する部活ですよね?」

「そうだ!なら話は早いな……でも、言っちゃ悪いと思うんだが…田部内くん体小さすぎない?」

 そう!僕は振られた時に言われた通り、身長155cm体重35kgの度がつくほどのガリガリなのである!じゃあ、何でこの部活に入ろうと思ったかって?それは…

「僕、この部活で体をめっちゃ大きくして好きな子と付き合いたいんです!!!」


「・・・・・・」


「非常にいい意気込みだ!君はこの部活にふさわしい志を持っているようだな!では早速、今日は新入部員歓迎会として、Mashdonald(マッシュドナルド)へ向かうぞ!お前ら、準備はいいかー!!!」

「おーー!!!!」

 すごいやる気だな、先輩たち…僕も負けないように気合を入れていくぞ!


 そして僕たちは部長に連れられるままにMashdonaldへ向かい、早速注文を開始する。

「じゃあまずは、ポテトのLサイズを30個と、Mashdoバーガーを15個、ナゲッツを15個と・・・」

 え、そんなに食べるの??この人たち…

 もしかして僕はやばい部活に入ってしまったのだろうか?

「よし、それでは本日の部活を始める。礼!」

「いただきます!!!!」

 挨拶がいただきますなんだ…

 それにしても、すごい迫力だ…店員さんもめっちゃびっくりした顔で注文受けてたし、やっぱおかしいよねこの量。

 けど、この部活に入りたいって言ったのは僕だ!つべこべ言わずにまずは食べてみよう!

「田部内くんは食べないのか?冷める前に食べてしまった方がいいぞ」

「はい。ちょっと緊張してて…いただきます!」

 まずはバーガーから片付けることにした。

 と、思ったのだが…

「バーガー一個ですらお腹いっぱいだ…どうしよう」

 そう!僕はなんと言おう!超少食のガリなのだ!ハンバーガー一個ですらお腹いっぱいになってしまうほどのね!

「怒火食部長。僕もう食べられないです…」

「なんだ?もう限界なのか?」

「はい…」

「そうか…ならこれを試してみるか?」

 そう言って部長が差し出してきたものは…

「胃袋拡張剤!?!?」

「こんなものどこに売ってるんですか!」

「はっはっは…知りたいか?」

 僕は黙って頷く。

「ちょっとこっちにきてくれるか?ここでは話せない内容なんだ」

 そう言われるがままに僕は部長についていった。


「ここなら大丈夫だろう」

「で、その胃袋拡張剤とは一体なんなんですか?」

「その名の通り、胃袋の大きさを拡張してくれるサプリみたいなものだ。だがしかし、ただの拡張サプリではないぞ!」

 部長が怪しげな顔で言う。

「これは俺たちドカ食い気絶部が開発した、独自のサプリなのである!」

「ほう…!」

「何がすごいのかって言うとな…一言で言えば、胃をブラックホール化してくれるんだ」

 ???

 一体この人は何を言っているんだ?

「ブラックホール…化?一体どういうことですか?」

「このサプリを使えば、実質的に無限に食べることができるんだ。もちろん栄養もちゃんと吸収される。俺たちの体がこんなに大きいのもそれが理由だ。わかったか?」

 そう。この人たちめっちゃ大きいとは言ったけど、度がすぎてるんだ。

 目測だけれど、多分…身長は200cmぐらいで…体重はおそらく200kgはあるんじゃないかな?でもってボヨボヨな脂肪ではなくて、しっかり筋肉でそれが構成されてるんだ。

「すごい…!これを使えば僕も体を大きくできちゃうんですね!」

「ああ、そうだ。でも一つ注意点がある」

 部長は真剣な眼差しでゆっくりと言った。

「運動をしないと体が壊れる」

 確かに、栄養を無限に吸収できて無限に食べれるのだからそうなるよね。

「では、先輩たちは毎日どのような運動をしているんですか?」

「それはとりあえず全部食べてから部室で話そう」

 部長は戻ろうとして振り返った。

「あ、そうだ。とりあえず今日は一粒だけサプリをやろう。一度体感してみるがいいぞ」

 そう言って部長はそそくさと店内へ戻って、食べるのを再開してしまった。


 店内は先輩たちのすごい熱気に包まれていた。

「先輩たち本当にすごいな…やっぱり飲むべきなのかな…」

 物は試しと言うし、一回飲んでみよう。


「ゴクッ…」


「え…なんだ…これ……」

 サプリを飲んだ瞬間、僕の体の中に言葉では表現できない、でも、凄まじいことが起きたのだけはわかった。

「これならいくらでも食べられそうな気がする!」

 僕はそう感じ、自分が驚くほど無我夢中でバーガーたちを貪っていた…


 1時間はすぎただろうか。

 僕たちは注文したものを全て平らげ…


 気絶していた。


 そう!これがドカ食い気絶である!事前に調べた情報では、ドカ食い気絶部とは、ドカ食いをして気絶するのが醍醐味らしい!

「ふー食った食った。それじゃあお前ら部室に戻るぞー!」

「「「おーー!」」」




「それじゃあまず腕立てからだ!」

「あの、部長。何回ぐらいするんですか?」

「うーん。今日は500回ぐらいにしとくか」

 は?500…???50じゃなくて…?

「あの、50回じゃなくって…?」

「何を言ってるんだ?500回だぞ」

 おいおい、まじかよ…正気じゃないよこんなの。

 しかもあんだけ食べた後だか…ら?

「なんか全然お腹が膨れてる感じがしない…?」

「気づいたか。これがあのサプリの真の効用だ」

「真の効用?」

「ああ、そうだ。無限に食べれて無限に栄養を吸収し、そして消化スピードを神速にしてくれるんだ」

 なんだそれ…?まじでなんなんだあのサプリ…

「なるほど…とりあえずあのサプリはすごいんですね!」

 そろそろツッコむのがしんどい。うん。

 いや待て、それでも腕立て500回はおかしすぎるでしょ!!!

「よしじゃあ始めるぞー。1!2!3!4!5!6・・・」

「あっ、ちょっ…」

「何してるんだー?早くしないと帰れないぞー」

「いやっでも、流石にやばいですよ部長!」

「メニューが終わるまで帰らせないからなー」

 なんか部長ここにきた時より厳しくなってません?本性表してません?

「ああ!もうやけです!!!1!2!3!4・・・」

 こうして僕の地獄の体づくりが始まってしまった…




 でもこんな生活を一ヶ月もしていると流石にガリガリの僕と言えども慣れてくる。

「部長!今日のメニューはなんですか!腕立て1000回ですか!!」

「まあまあ待て。そんな焦らんでもいくらでもやらせてやる」

 この一ヶ月で僕の体は、常人とは言えないものとなっていた。

「にしても田部内、すごい成長したな!部長として嬉しいぞ!」

「全部部長のおかげです!体も大きくなってこれで女の子にモテモテ確定ですよ!

「ははっ。そうだな!これでモテモテだ!」

 部長はすごく嬉しそうだ。僕も嬉しい。こんな力強い体になれるとは思ってもなかった。

「部長。僕、今日好きな子にこの後告白してきます!この自慢のムキムキボディーで魅了してやります!!!」

「おう!田部内のその体なら誰でも即堕ち間違いなしだ!自信を持っていってこい!」

「はい!」

 そう言い僕は堂々とした立ち振る舞いで好きな子の元へ向かう。

「大切なお話があるんだ!ちょっと屋上にきてほしい!」

 この部活のおかげか、最近の僕は言動にまで自信が出てくるようになっていた。


「君はガリガリなのは嫌だと言っていたよね?だから頑張って体を大きくしたんだ!僕と付き合ってください!!!」


 ・・・・・・


「ごめんなさい。ムキムキすぎるのはちょっと……」

 バケモノでも見ているかのような顔をしてそう言うと、その子はものすごい勢いで走り去ってしまった。

「…」

「一体僕の何がいけなかったんだぁぁぁぁ!!!!!!!」

 僕は絶望した。なんのために僕は頑張ったのだろうか。


「でも、今の僕にはあの部活がある!」


「こんなことで落ち込んでいてどうする田部内!そんな時は食って食って食いまくれと部長に教わっただろう!」

 そう僕は叫んでいつもの部室へと走っていった…

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