お嬢様、大惨事です。
数週間はケガを治すためにベッドで寝た切り状態。エリザが毎日のように来てくれたので退屈はしなかった。ケガがおおむね治るとセバスさんが執事教育を私につけようと言う。私も恥をかいてはいけないので承諾。
そして、地獄は始まる。
「背筋が伸びていません」
「はい!」
これで頑張って伸ばしているつもりなのだが・・・?
「帝国の歴史は覚えましたか?」
「ま、まだ・・・」
この人口数が少ないせいでほぼほぼ自力で覚えなくちゃならない。優しそうだが随分と鬼畜だ。
「この後は剣術をお教えします」
ひぇぇぇぇ・・・・。
そんなこんなで半年が過ぎた。私の執事力も随分と上がってきている。鬼畜特訓のたまものだろう。
しかしまあ自分は随分と美少女に生まれ変わったらしい。銀髪の髪にエメラルドの瞳。なんだか聖女様みたいな見た目だ。そういえばこの世界って、魔法あるんだろうか。訓練が忙しすぎて考えもしなかった。
まあそれは後で確認すればいいので、今日も今日とて寝起きの悪いお嬢様を起こしに行くぞい。鏡を見ながら手際よく髪をくくる。さあ、今日も働くぞ!
「エリザ様、起きてくださーい」
「命令よ、五分後に起こしに来なさい」
ていうかそんなにハキハキ喋れるくらい目覚めてるなら起きればいいのに。
「お断りします」
はい、有無を言わさず布団をひっぺがす。そしてお姫様抱っこをして鏡の前の椅子に座らせた。なにか文句を言っている気もしたが、それは無視。半年のうちにこの方法が一番手っ取り早いと気づいたのだ。
「エリザ様、今日はお出かけするんでしょう?」
「そうだったわ!とびっきり可愛い服を用意しなさい」
「エリザ様はどんな服でも世界一可愛いですよ」
「なっ・・・!」
頬を赤らめるエリザかわいい。単純すぎて誘拐されちゃいそう。
「早く準備をして頂戴!」
と、いうわけでとびきりかわいい服を用意してエリザに着てもらう。執事の服装は目立つので私も服を与えられた。・・・この服、レースが多すぎやしないかね。
「どうかしたの?着替えないの?」
「えっと・・・」
あ、こいつめっちゃニヤついてる。分かっててこの服選んだな!
「命令よ、早く着なさい!」
泣く泣く着替えた。
「あら、似合ってるじゃない」
「・・・・」
「拗ねてるの?可愛いわね。あ、このイヤリングは絶対つけなさい」
「イヤリング・・・?」
「私たちの髪色って目立つのよ。このイヤリングは髪色を変えてくれるから、ありがたく使いなさい」
「便利な道具ですね」
これは魔法が存在している予感。
イヤリングを受け取って耳に付ける。
「あ、それ1000万はするから無くさないようにね」
「そいうことは早く言いましょう。無くしたら大惨事です」