表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/83

ツンデレ誕生 4話目

 ──ピンポーン。


 呼出音はいたって普通。そう、普通なのだが──なぜか押したあとすぐに、機械らしき女性の声が、私に話しかけてきた。



『なによ、私に用でもあるのかしら? まったく、たとえ用があっても、私を呼び出さないでよねっ。で、でも、ほんの少しだけなら、相手してあげてもいいわよ。か、勘違いしないで欲しいわ。そうよ、今日は特別な日だからよ、ただそれだけ、なんだから……』



 音声が終わると同時に、重厚なトビラがゆっくりと開き始める。


 中は暗闇に覆われ外からは何も見えなかった。


「な、何よこれ。意味がわからない、なんでインターフォン押しただけで開くのよ。暗証番号の意味なんて、ないじゃないのっ」


 ひとりツッコミをしつつも、私の足は自然とトビラの奥へ歩き出した。


 中は真っ暗で一寸先は闇の状態。


 入口から漏れる光だけが私を照らしていた。


「暗くて何も見えないよ。もしかして、何かのアトラクションとかで、あとから高額請求される新手の悪徳商法とかなのかな……」


 ゆっくり奥へと進む私。


 なぜか、戻るという選択肢は浮かんでこなかった。


 慎重に光と闇の境目まで歩くと……。


 ──ブーッ、ブーッ、ブーッ。


 室内に警告音のような音が鳴り響き、重厚なトビラが下界との入口を遮断する。室内から光は完全に失われ、私の周囲は暗闇が支配してしまった。


「なんでドアが勝手に閉まるのよ。これじゃ暗くて何も……。そ、そうだ、スマホよ、スマホの光で照らせばいいんだよ」


 私は急いでカバンからスマホを取り出そうとする。が、暗闇の中で見つけるのは非常に困難だった。焦る気持ちを抑え、手探りし続けること数秒。突然、奥にスポットライトで照らされた年配女性の姿が目に映る。


 人……だよね。人形なんかじゃないよね。ホラー系だったら、私泣いちゃうよ。


「あ、あの……。す、すみませーん、インターフォン押したらドアが開いたので、勝手に入っちゃったんですけど……」


 恐怖と戦いながらも、私は勇気を振り絞りその女性に話しかけた。きっと大丈夫、怒られたりはしないと、自分に言い聞かせながら……。


「ソナタを待っておったぞ。ここは選ばれし者しか入れない、特別な場所ぞ。さぁ、今こそワシと契約するのじゃ、さすれば、ソナタの願いは叶えられるであろう」


 契約ってどういうことよ、それに選ばれし者だなんて。ひょっとして、危ない宗教とかなのかな。なんで私はいつも、こういうトラブルに巻き込まれるのよ。


 こうなったら、適当にあしらって帰してもらおう。


 うん、それが一番よね。


 WINWINの関係で終われるんだし。


「ご、ごめんなさい。ちょっと、道に迷ったみたいで、今すぐにでも、ここから出たいんですけど……」


「なんと、道に迷ったと。そうか、そうか、だが安心するがよい。ワシと契約すれば新しい道を切り開けるぞ!」


「え、えっと、話を聞いてましたか? 私、ここから出たいだけ、なんです」


「なるほど、ツンデレになりたい、そう、申すのか。ツンデレこそが、世界の頂点に君臨するべき存在。お若いのにそれを知っているとは、ソナタはただ者ではないな!」


 私が話してるのって、人間……ですよね?


 ゲームに登場するNPCなんかじゃないよね。


 こんなにも会話が成立しないだなんて──もしかしたら話が通じない人なのかも。


 もぅ、こんな面倒臭い人に絡まれるとか、陰キャ以外にも隠し属性があるのかな。


 って、あの人ツンデレって言いましたよね?


 そういえば、ここの看板にもツンデレ道場って書いてありましたし──話ぐらいなら、聞いてもいいよね。

面白かったらブックマークや評価、いいねをいただけると、励みになりますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ