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ツンデレ誕生 2話目

「お、おはよう、ございます。ま、間に合ったー」


 危なかったよ、全力疾走してギリギリだなんて、ついてないときは、本当に何をやってもついてないよ。


「遅いぞ、西園寺。新学期早々から慌ただしいなぁ。でもまぁ、その頑張りに免じて、ギリギリ遅刻にしておいてやろう」


「な、なんでギリギリ遅刻なんですかっ。ま、まだ一分前ですよねっ!」


「いや、先生の時計だと三十秒過ぎてるんだわ。潔く諦めることだなっ」


「くっ、こんなの横暴よ。こんな横暴が許されていいわけないわよ。で、でも、今日だけは大人しく従います。か、勘違いしないでね、今日は特別な日だからよ。それだけ、なんだから」


 ため息しかでませんね。


 ホント、最悪のスタートになってしまいました。


 でも、モノは考えようなんだから。

 人間ポジティブに生きないと……。


「特別な日……。そうだ、西園寺」


「な、なんですか、加地先生」


「貧乳ツンデレは時代遅れだぜー? だからあっさりフラれるんだよ。まっ、これからは勉学に励むんだなっ」


「な、なんでフラれたことを知ってるのですかっ!」


「俺今日早番でさー、校内を見回ってたら、たまたま目撃したんだよね。そんなことより、早く席につけよな、負け組の貧乳ツンデレラさんっ」


 これが教師の言うことですか。ありえません、ありえませんわよ。傷口に塩を塗る教師が、どこにいるというのよ。


 はいはい、ここにいましたね。そうですよね、加地先生はそういう人でしたもんね。


 何が『負け組貧乳ツンデラ』よ。


 もう、反論する気力もありません。今日はなんて最悪な日なの、新年度早々に絶望とか、世界は私を闇堕ちさせたいのかしら。


 このツンデレ属性だって……私がどれほど苦労して手に入れたと思ってるのよ。


 高校一年の大半を犠牲にしてまで手に入れたのに……。



 一年前──。


 入学式の日、私はあの人を見かけ、全身に電流が駆け巡ったのよ。でも、声をかけるなんて、私には絶対無理な話。だって、中学の三年間はずっと……陰キャだったから。


「はぁ、この性格を直したいんだけど。そんな勇気なんてないし。きっとこのまま、平坦な高校生活を送って、誰の記憶にも残らない青春時代が、黒歴史として刻まれるのね」


 陰キャという、天から授けられた私の属性。


 別にレアな属性ではなく、いわゆるハズレ属性というモノ。


 陰キャ属性なんてメリットがひとつもない。影が薄くなるし、中学の同級生にはもう忘れられているし。


 だって、卒業後すぐに同窓会があったのよ。


 陰キャ属性の私には声すらかからなかった。


 しかも誰も気づかず、たまたま街であったら──『あっ、そういえば西園寺さんも同じクラスだったね』ですよ。


 卒業アルバムだって、私はクラス写真しか写ってない。ありえないでしょ、先生ですら陰キャ属性に負けて、私の存在を忘れるだなんて。


「でも性格って、どうやったら変えられるのかな。もし、私が陽キャだったら──あの人に告白して、バラ色の高校生活をエンジョイするはず。そうよ、絶対にそうなるはずなんだからっ」


 新入生が溢れかえる廊下で、私はひとりで妄想の世界へ入り浸る。


 脳内で展開されるあの人との甘い恋人生活。


 自然と笑みがこぼれ、周囲から怪しい視線が突き刺さっていた。


「鷺ノ宮君、私、聞きたいことがあるんだけど……」


 ──あれ、この声はまさか……。


 私を妄想の世界から帰還させたのは、入学式の日に一目惚れしたあの人だった。

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